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このマシンを「名車」として取り扱うメディアはそうそうないでしょう。名車というよりかは「迷車」の部類になるかと思います。見覚えのあるカラーリングの名門も全てが名車であるとは限りません。miyabikunはそんなマシンも丁寧に注目していく所存です。前回に引き続き、負のループにさまよう名門。1994年型のマクラーレンMP4/9です。

《設計》
 ニール・オートレイ
 アンリ・デュラン
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《外見》
基本的には前年93年のMP4/8から正常進化させたマシンです。しかし1994年は他のライバルと同様にマシンレギュレーションの中の「ハイテクデバイス禁止」に準じた仕様とし、エンジンはフォード製からプジョー製にスイッチしたため、それに見合った改良を施しています。MP4/9の特徴的なデバイスとしてはコクピット内にある3つのフットペダルのうち、クラッチを無くした2ペダル式を採用しています。IMG_4321
またサイドポンツーン前方の整流効果を高めるべく、フロントサスペンション後方からコクピットに沿う形でディフレクター(バージボード)を初搭載。ライバルもこの時期からこぞって搭載するようになり、以降のF1マシンに欠かせないデバイスとなりました。IMG_4323
カラーリングは歴代と変わらずメインスポンサーであるマールボロの赤白のツートンカラー。エンジンカバー付近にプジョーのロゴマークがデカデカと入ります。またノーズにはプジョーのトレードマークであるフランシュ・コンテ州の紋章に使用される「ライオン」がシェルよりも大きく鎮座します。信頼性があればマークの重みも増したことでしょう。

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《シャシー》
 全長:    -    mm
 全幅:    -    mm
 全高:    -    mm
 最低車体重量:515kg
 燃料タンク容量: - kg
 ブレーキキャリパー:ブレンボ
 ブレーキディスク・パッド:
 サスペンション:フロント プッシュロッド
          リヤ    プッシュロッド
 ホイール:スピードライン
 タイヤ:グッドイヤー

《エンジン》
 プジョーA6
  V型10気筒・バンク角72度
 排気量:3,498cc
 エンジン最高回転数: - rpm(非公開)
 最大馬力: - 馬力(非公開)
 スパークプラグ:NGK
 燃料・潤滑油:シェル

92年を最後にマクラーレンはホンダとのパートナーシップを解消。前年はフォードと組んで何とか場を繋ぎました。そしてこのシーズンからフランスの小型車メーカーであるプジョーと複数年契約を結ぶことになります。この3年で毎年エンジンが変わるという、、マシンはエンジンとの組み合わせで作り上げていくものです。コロコロ変わるのはチームにとっても操るドライバーにとっても決していいことではありません。

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《ドライバー》
 No.7 ミカ・ハッキネン   (第10戦を除く全戦)
        フィリップ・アリオー (第10戦)
 No.8 マーティン・ブランドル(全戦)

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ドライバーはセナがウィリアムズに移籍した関係で若手のハッキネンがエース格として繰り上がりました。前年93年の第15戦日本GPで初の表彰台登壇を果たし「ポストセナ」を仰せつかります。相方はベテランのマーク・ブランデル、ではなく現在は解説やインタビュアーでお馴染みのマーティン・ブランドルを召集。くれぐれもお名前のお間違えないように(笑)ハッキネンは第9戦ドイツGPのターン1で接触事故を起こし1戦出場停止を受けたため、翌戦のハンガリーGPはプジョー推しのフランス人アリオーが代走しています。晩年はクリーンなファイターのイメージが強いハッキネンも若かりし頃はなかなか生意気なクラッシャー。若い頃はみんな通る道です。

《戦績》
 42ポイント コンストラクター4位
 (1位0回、2位2回、3位6回、4位1回ほか)
 ポールポジション0回

リタイヤについて、上記に記載はありませんが、このマシン、とにかくリタイヤが多い!特に前半8戦が酷く、ハッキネンが8戦中6回、ブランドルも5回リタイヤし、ダブルリタイヤは8戦中4回を数えます。これ、この時代の誰もが知るマールボロ・マクラーレンですよ、あのカラーリングにしてコレは非常に恥ずかしい。悪くなったのはセナが抜けたから?!いやいや、それ以上の欠陥がこのマシンにありました。一番の原因は「プジョーエンジン」でした。開幕当初は非常に信頼性が低く、開幕戦ブラジルGPはハッキネン8番手、ブランドル18番手。結局決勝は両者リタイヤし、前年の前戦オーストラリアGPにセナがポールトゥウィンだったことが嘘だと思えるような幕開けでした。image
以前に「過去のレース」で振り返った第2戦パシフィックGPではオーバーヒート対策としてラジエターを改良し挑むも、予選4番手でスタートしたハッキネンが蹴り出し鈍いポールポジションのセナに追突してその後リタイヤという、改良の成果すら確認できないダメレースを演出してしまいました。
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前年まで隣にいて、初表彰台を讃えてくれたセナの逆鱗に触れてしまっていましたね。セナとハッキネンのレース上のコンタクトはこれが最後となりました。当時セナファンからハッキネンファンに切り替えたばかりのmiyabikunも絶句したの幼心ながら今でもよく覚えています。第3戦の「悲劇」の後、第4戦モナコGPでハッキネンはベネトンの宿敵M・シューマッハに次ぐ予選2番手を獲得しますが、こちらもスタート直後にD・ヒルと接触しリタイヤ。第5戦スペインGPは予選3番手からシューマッハ、ヒルら次世代のチャンピオン候補達と熱戦を繰り広げるも、48周目にプジョーエンジンが音を上げたためリタイヤとなりました。
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シーズン後半戦になると、マシンのドライバビリティがようやく改善、エンジンが信頼性を増したことで第11戦ベルギーGPの2位を皮切りに第14戦へレスでのヨーロッパGPまでハッキネンが4戦連続表彰台を獲得します。しかしブランドル含め優勝は無く、チャンピオン争いも程遠い不作なシーズンを終える形となりました。
ドライバー単位の成績はハッキネンが2位1回、3位5回。ブランドルが2位1回、3位1回となっています。ハッキネンはドライバーズランキング4位で翌年95年はそのままマクラーレンに残留。ブランドルは一度シートを喪失するも、リジェからお呼びがかかり、鈴木亜久里とシェアする形で参戦しています。

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マクラーレンは成績不振のガンともいえたプジョーエンジンをこの年限りの単年契約で切り上げ、95年から新規参戦となるメルセデスエンジンを採用することになりました。以降2年の歳月を経て、優勝。そして3年目にハッキネンによるダブルチャンピオンを獲得する「完全復活」を遂げます。現在2020年も引き続き復調を予感させるマクラーレン。来シーズンから再びメルセデスとタッグを組む予定となっています。名門の完全復活はメルセデスエンジンとのマッチングに期待が寄せられます。

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