F1 えきぞーすとのーと

よくあるニュースネタやこ難しいテクニカルな話ではなく、メインは予選や決勝のTV観戦したそのものを個人的観点から綴るF1ブログです。  また、懐かしのマシンやレースを振り返ったり、記録やデータからF1を分析。その他ミニカーやグッズ集めも好きなので、それらを絡めつつ広く深くアツくF1の面白さやすごさを発信し、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

タグ:1998年

昨シーズンはギュウギュウに詰まったスケジュールかつ「スプリント予選」なる新たなイベントが追加されたこともあり、毎度GP前の恒例にしている「過去のレース」シリーズをコンスタントに展開できませんでした。過去マニのmiyabikunにはややリズムを狂わされるシーズンでした。先日もスプリント予選に阻まれて、変なタイミングでイギリスGPを差し込みましたが、2022年「最初のレース」もそのスプリント予選によって日の目を見なかったGPから始めたいと思います。1998年第14戦にモンツァで行われたイタリアGPです。98年の振り返りもなかなかな多く、早7戦目。イタリアGPも同数となる7戦目となります。まだまだ在庫はあるから大丈夫!

98年シーズンは今シーズンに予定されているように、大幅なマシンレギュレーション変更がありました。日々向上を続ける速度を抑えるべく、マシンの全幅を2,000mmから1,800mmに狭められました。またグリップ力を低下させるためにスリックタイヤに溝を入れた「グルーブドタイヤ」が導入されています。
ダウンフォースとグリップが削がれた中、開幕戦からマクラーレンが台頭。このイタリアGPを迎えるまでにハッキネンが9回のポールポジションで6勝、クルサードは3回のポールポジションで1勝と他を圧倒する速さを誇っています。一方でフェラーリのM・シューマッハは出足はやや遅れポールポジションこそ無いもののシーズン中盤に三連勝を含めた5勝で追従、チームの地元モンツァを迎えました。チャンピオン争いは速さを武器とするハッキネンが77ポイント、M・シューマッハは本番の粘り強さと戦略で70ポイントとまだまだ予断を許さぬ状況が続いています。

予選は以前に振り返ったことのある前戦「雨のベルギーGP」でクルサードと一悶着あって遺恨を残したM・シューマッハが会心の1ラップを披露。マクラーレン2台を後方に追いやるシーズン初ポールを獲得します。2番手は早々にディフェンディングチャンピオンの野望が絶たれたウィリアムズのヴィルヌーブが獲り、肝心のハッキネンは3番手となりました。
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またこのシーズンは2人の日本人ドライバーが参戦していました。ティレルからデビューした高木虎之介はチームメイトのロセットにも及ばずの19番手。イタリアが地元のミナルディで2年目を迎える中野信治はチームメイトのトゥエロを上回る21番手と最後尾スタートは免れています。
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チームの地元でシーズン初ポールとは、粋な演出です。

《予選結果》
 1 M・シューマッハ(フェラーリ・F・GY)
 2 J・ヴィルヌーブ(ウィリアムズ・MR・GY)
 3 M・ハッキネン (マクラーレン・M・BS)
 ※GYはグッドイヤー、BSはブリヂストン
  MRはメカクローム(ルノーカスタム)

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スピード勝負のモンツァの決勝は逃げるが勝ち。ところがポールのM・シューマッハは蹴り出しが鈍い。
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3番スタートのハッキネンがその隙を見逃しませんでした。チャンピオンが並ぶフロントロウの壁を中央突破。
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ハッキネンに気を取られてイン側に寄ったM・シューマッハを4番スタートのクルサードがアウトから狙って、マクラーレンが早くもワンツー体制を築くことに成功しています。M・シューマッハはチームメイトのアーバインにも先攻を許し4位にまで後退。
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「ウチの主人は速いわヨ」婦人もご満悦。

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ところが素晴らしいスタートダッシュを決めたハッキネンのペースはイマイチ上がらず、8周目にクルサードを前に出す形となります。3周目にアーバインから3位を譲り受けたM・シューマッハとのギャップが徐々に縮まります。
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17周目のクルサードと3位M・シューマッハとの差は9.3秒。
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ただ2位のハッキネンとは0.5秒差にまで詰め寄られています。グランデ先に白煙?!まさかハッキネンか?!
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トップを快走していたクルサードでした。メルセデスエンジンはパワーはあれど信頼性がイマイチ。
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クルサードから飛び散るオイルをモロにかぶったハッキネンはロッジアを理想的なラインで走れません。
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ロッジアの先でM・シューマッハに並ばれて
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第1レズモでやられる。マクラーレンはチームで共倒れとなり、M・シューマッハは労せず元の順位にリカバー。
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これを見るために今日サーキット入りしたんだよー!スタンドも大賑わいです。

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1回キリのピットを終えても順位は変わらず終盤戦に向かいます。ポイントの上で優位なハッキネンも手は緩めず、少しずつM・シューマッハとのギャップを縮めていく。
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しかしまたもロッジアでハッキネンがブレーキトラブルからバランスを崩し
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グラベルの餌食に。
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どうにかトラックに復帰しますが、傷むハッキネンのマシンではもはやシューマッハを追うことができません。背後にはもう一台の紅い影が忍び寄る。
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53周レースの49周目にアーバインに抜かれ、ハッキネンは3位に交代。これだけでは済まない。
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51周目にはジョーダンのR・シューマッハに3位も奪われ、ハッキネンは散々なイタリアGPとなりました。
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《決勝結果》
 1 M・シューマッハ(フェラーリ・F・GY)
 2 E・アーバイン (フェラーリ・F・GY)
 3 R・シューマッハ(ジョーダン・MH・GY)
 ※MHは無限ホンダ

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高速リンクのモンツァにおいて、当時パワーが自慢のマクラーレンを駆り通算3回のポールポジションを獲得しているハッキネンですが、実は優勝が一度もありません。順番は前後しますが、以前に振り返った翌年99年も同じくロッジアでのシフトミスにより「森の中で男泣き」することとなりました。モンツァはハッキネンにとってあまり縁起のいいサーキットではありませんでした。

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一方でシューマッハはスタートのモタつきをマクラーレンの「自滅」によって取り返し、最終盤にアーバインと弟による「シューマッハ一派」の助けも得て、このイタリアで勝ち星もポイント差もゼロにしてみせました。残るはニュルブルクリンクでのルクセンブルクGPと最終戦日本GPの2戦。この2人は度々最終戦まで楽しませてくれましたね。
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今回はちょっぴり久々に1998年の第12戦8/16に行われたハンガリーGPを振り返りたいと思います。この頃は今のように明確なサマーブレイク、夏休みが無く、前戦第11戦ドイツGPからは2週間、翌第13戦ベルギーGPも2週間しか離れていません。観ている我々ファンからすればリズミカルですが、レースを行っている側からすれば中途半端なタイミングでレースがあるとゆっくりリフレッシュできないし、悪い流れを断ち切れないなんてこともあったりします。

この時代はちょこちょことレギュレーション変更があり、中でも98年は大幅な変更が行われました。一つはダウンフォース削減を目的としたマシン全幅を2,000mmから1,800mmと200mmも狭くされて見かけシュッとスリムになりました。また、コーナリング時の速度抑制を目論み、ドライタイヤの回転方向にフロント3本、リヤ4本の溝(グループドタイヤ)を設けています。
シーズンはマクラーレンのハッキネンが開幕戦から突如開花、圧倒的な速さで6勝9表彰台に登壇してランキングトップ。2位にフェラーリのM・シューマッハが4勝8表彰台で続いています。また日本人ドライバーとしてプロストからミナルディに移籍した中野信治、中嶋悟の愛弟子である高木虎之介がティレルからデビューしています。

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ハッキネンの母国フィンランドではGPがありません。ただハンガリーGPはポーランドを挟んだ先にフィンランドがあるため、フィンランドからの観戦者も多く、スタンドに国旗が多くたなびきます。IMG_0960
予選は「半母国」の後押しと改良を施したブリヂストンのフロントワイドタイヤが功を奏したか、ハッキネンが唯一の1分16秒台に入れ、シーズン8回目のポールポジションを獲得。ライバルのM・シューマッハはマクラーレンのクルサードに続く3番手に終わります。日本人2人は高木が22台中18番手、中野が19番手でいずれもチームメイトを凌駕しています。

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《予選結果》
 1 M・ハッキネン (マクラーレン・M・BS)
 2 D・クルサード (マクラーレン・M・BS)
 3 M・シューマッハ(フェラーリ・F・GY)
 ※BSはブリヂストン、GYはグッドイヤー

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フロントロウのマクラーレンは順調なスタートを切る一方、3番手のM・シューマッハは鈍めでむしろ5番手スタートのアーバインがよく、4番手に浮上。ターン1で早くもマクラーレン、フェラーリの四つ巴の展開になります。

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好スタートを決めたアーバインは17周目にギヤボックストラブルで戦線離脱。ただでさえ抜き辛いハンガロリンクで2対1の戦いを強いられるM・シューマッハは上位で最も早い25周目に1回目のピットをこなしています。
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一般的に予想された2回ピットはまだ少し先で、ピットアウトすれば赤いウィリアムズ、ヴィルヌーブの後ろ。正直これはちょっと厄介な展開。

その直後に2位クルサード、トップのハッキネンもピットイン。粘りに粘ったヴィルヌーブもようやくピットに入ったことで、M・シューマッハはペースを上げ、クルサードのテールを捕まえる位置になりました。ところが、、
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捕まえること無く、再びピットへ。
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静止時間6.8秒でガラ空きの本線復帰。一般的な2回ピット戦略であれば、9秒弱の静止を要しますが、これはもしや、、
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軽タンクで予選さながらカリカリに飛ばす。正攻法ではマクラーレンの前に立てないと考えたフェラーリ陣営は3回ピットストップで応戦することが明らかになりました。そう来たか、これはマズイぞ。
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クルサードの2回目は8.0秒。これが一般的な2回ピットの給油量と静止時間。
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ピットを後にするクルサードの隣に紅い影。IMG_0977
やられた、、。ハイペースで走行するM・シューマッハはひとまずクルサードの前に。
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初チャンピオンをかけてトップを走るハッキネンは8.4秒。どうか?!
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やられた、、。デジャヴのようにまたもや紅馬が銀の矢を追い抜いていく。M・シューマッハがトップに。

ただこれではまだレースは完成しません。もうピットインを行わないマクラーレン2台に対して、M・シューマッハにはあと1回ピットに入らないと、ガソリンが保ちません。
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軽タンクでずっと予選モード。
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毎周回少しずつハッキネンとのギャップを広げ、
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1回分のピットストップでのロスタイムを築いておかなければなりません。
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最終コーナーで外側にはみ出す。マシンを傷めること無く復帰できましたが、それだけ限界走行を続けている証拠。こうでもしないと、マクラーレンには勝てない。これをこなすのがM・シューマッハです。

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マクラーレンは決勝となると、改良したフロントタイヤが予想以上の負荷となり、なかなかペースを上げることができません。さらに2位のハッキネンは油圧系のトラブルが発生、このままではM・シューマッハとのギャップが広がってしまうため、52周目にクルサードに前を譲るフォーメーションを採ります。
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M・シューマッハと2位浮上のクルサードとのギャップは27秒近くまで離れました。この後3回ピットの判断の良し悪しが明らかになります。
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3回目はちょっと時間がかかったか7.7秒。果たしてクルサードの前か後ろか?!
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周回遅れを一台挟んで、余裕でトップ復帰。3回ピット戦略はこれにて成立。

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M・シューマッハはダメ押しか、ペースダウンして6位に陥落したハッキネンをラップダウンにしていきます。屈辱的、そしてこれぞ戦略勝ち。
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《決勝結果》
 1 M・シューマッハ(フェラーリ・F・GY)
 2 D・クルサード (マクラーレン・M・BS)
 3 J・ヴィルヌーブ(ウィリアムズ・MR・GY)
 ※MRはメカクローム(ルノーカスタム)

ハンガロリンクはモンテカルロ市街地と並んで抜き辛いことで有名です。抜けないのなら、別の方策でやっつけるしかない。またそれをきっちりやって退けてしまうのはさすがです。予選が速いことに越したことはありませんが、ライバルのペース、自身の身の丈に合った、またはそれ以上の戦略で勝てると「チーム一丸となって勝てた」という実感が大きいと思います。10ポイントを獲得したM・シューマッハに対して、ハッキネンは1ポイントに止まり、ポイント差は7にまで縮まりました。残るレースは4戦、長年続く同世代2人のチャンピオン争いはまだまだ続きます。

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現代には軽タンクでのハイペースラップなどの戦略はなく、タイヤのコンパウンド差や劣化によった戦略しか立てられませんが、こういうレースが観られれば、ハンガリーGPは決して退屈しません。

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日本人ドライバーやスポンサーも多く関わってきたティレルはテールエンダーのイメージも多くあるかと思いますが、マシンについては「類稀な」工夫も実に多く取り入れたチームでもありました。日本GPを前に「有終の美」とはいかなかった名車(迷車)を振り返りたいと思います。1998年のティレル026です。

《設計》
 ハーベイ・ポスルズウェイト

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《外見》
当時を知らないF1ファンが「純粋な気持ち」で見れば、このマシンはカッコよく見えるんじゃないかと思います。カラーリングも白を基調として黒とシルバーが鋭利に差し込まれていますし、ノーズもセクシーでしょう?!ただ、これは本来の姿ではありません。仮の姿です。
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ジャジャーン!これがあるべき本来の姿。サイドポンツーンにちっちゃなリヤウィングが付いている!何これ、レギュレーション違反じゃないの?!今やったら大変なことになりますが、当時はOKでした。というか「ダメとは書いていない」が正しい表現です。法律の業界もこんな表現をしますが「拡大解釈」というやつ。禁止されていることはレギュレーションブックに書いてある通りで、書いていなければ、ダメではないと解釈します。これが果たしてどんな効果をもたらすか。見て想像がつく通り、マシン中心部のダウンフォース増加に貢献します。1998年シーズンからマシン全幅が200mm狭められた1,800mmとなり、不足したダウンフォースをどうにか見出すための苦肉の策です。
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通称「Xウィング」です。026ではXっぽくないんだけど、コレの元は1997年の前作025に搭載されていました。
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こちらを見れば確かにXっぽい。前年まで在籍していたマイク・ガスコインのアイデアです。026は斜めのブレースが無くなり、1本のステーで外側に片持ち形状で取り付いています。カッコいい?それとも、ダサい?!miyabikunは当時からあまりカッコいいと思いませんでした。これで強ければ文句も言えないのですが戦績は、、あとで書きます。ただXウィングは他チームにも模倣され、泣く子も黙る名門フェラーリ様にも真似されたデバイスだったのです。
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こちらはもっとダサく見える。やっぱり本家が一番しっくりきます。本家ティレルと模倣組には大きな違いがありました。模倣組はあくまで「完成されたマシンを補完する形で設置」したことに対し、この026は「Xウィング込みで完成形とする」もの。他のチームは「撤去しなさい」と言われたら留め具を外せばいいだけの話なのですが、026は違う。サイドポンツーンと一体形成されて「外すとまともに走れなくなるのですが、、」状態になってしまうのです。後にも書きますが、シーズン途中で外すこととなり、ティレルにとっては「最後の頼みの綱」を失うこととなりました。
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026はその他にもいくつか工夫が施されています。ノーズにはコクピットをかわすように整流できる隆起した2つのフィンを施し、フロントサスペンションも油圧で作動させました。
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スポンサーは中嶋悟といえばPIAA、中嶋悟の愛弟子の高木虎之介、となれば高木虎之介にもPIAA、という構図。さらにはファスナーで有名なYKK、ミシンやファクシミリ(今や死語?)の大手であるブラザー工業など多くの日本ブランドが関わっています。

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《シャシー》
 全長:4,430mm
 全幅:1,800mm
 全高:   950mm
 最低車体重量: - kg
 燃料タンク容量: - ℓ
 ブレーキキャリパー: - 
 ブレーキディスク・パッド:AP、ヒトコ
 サスペンション:フロント プッシュロッド
                                    リヤ    プッシュロッド
 ホイール:BBS
 タイヤ:グッドイヤー

《エンジン》
 フォードZETEC-R
 V型10気筒・バンク角72度
 排気量:2,998cc(推定)
 最高回転数: - rpm(非公開)
 最大馬力: - 馬力(非公開)
 スパークプラグ:チャンピオン
 燃料・潤滑油:エルフ・テキサコ

前年025と同じフォード製ではあるものの、V8からV10のZETEC-Rに換装してようやくフォード直営のスチュワートと揃えられました。

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《ドライバー》
 No.20 リカルド・ロセット(一応、全戦)
 No.21 高木虎之介    (全戦)

《戦績》
 0ポイント コンストラクター - 位
 (8位1回、9位2回、11位1回、12位3回ほか)
 ポールポジション0回

97年から中嶋悟が「ティレル2000」というプロジェクトに参加し、愛弟子である高木虎之介をテストドライバーからのレギュラーシート獲得に成功しています。また98年にイギリスのタバコメーカー「ブリティッシュ・アメリカン・タバコ」いわゆるBATに買収され、創始者ケン・ティレルは代表を退任、後任にクレイグ・ポロックが就任しました。そのポロックは継続しようとしていたJ・フェルスタッペンに代えて、大口スポンサーを持つロセットを起用したため、不満を持ったティレルはチームを離れるという「ティレル」というチーム名こそ残されつつも、事実上の終焉を迎えました。現在のアルファロメオとP・ザウバーの関係とは比較にならないくらい、残念な名門の終焉です。
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当時の日本最速ドライバーと言われた高木と不足を工夫で乗り切るマシンをもってしても一筋縄ではいきませんでした。高木はF1デビュー戦オーストラリアGPで予選13番手を獲得して以降、16戦全戦で予選通過をしてみせますが、10位台後半から20位台をさまよう苦しい内容が続きました。一方で急遽相方となったロセットはスペイン、モナコ、ベルギー、日本の4GPでポールポジションから107%以上のタイムで予選落ちと高木のチームメイトどころか「F1ドライバーとしての資質」が足りず、ミナルディと最下位を争うところにまで低迷してしまいます。
ライバルも模倣する「頼りのXウィング」は第3戦アルゼンチンGPでザウバーのアレジがピットでホースを引っ掛けて脱落する事故を起こします。外見の醜さからも第5戦スペインGPで使用禁止が下り、排除を強いられた026はマシンそのものが成立しなくなってしまいました。自分のチームがきっかけではないアクシデントに巻き込まれる形で「オリジナルのアイデア」潰されて苦戦し、まさに踏んだり蹴ったりです。
結局高木の予選最高位は開幕戦オーストラリアGPと第3戦アルゼンチンGPの13番手、決勝最高位は第9戦イギリスGPと第14戦イタリアGPの9位となり、入賞圏内フィニッシュならず。ロセットは予選落ち4回、予選最上位は18番手2回、決勝は第7戦カナダGPで8位完走がチームの最上位となりました。高木の母国初凱旋となる最終戦日本GPではミナルディのトゥエロにカシオトライアングルでさされてクラッシュ。
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最後の最後まで悔しい思いをしたのを今でもよく覚えています。
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この026をもって29年続いたF1参戦の歴史に幕を閉じました。チームを立ち上げるや否やJ・スチュワートによる戴冠、異端の6輪車をも輩出し、晩年は水タンク事件による失格からの失落や資金繰りに苦労し、テールエンダーにまで落ちたケン・ティレル。チームを離れた2年後に膵臓がんのためこの世を去りました。乗っ取られたB・A・R以降のホンダワークス復活、ブラウンGPでの驚きチャンピオン、そしてメルセデスワークスでの最強時代にまで発展する系譜に関わったティレルは今のF1をどう見守っていることでしょう。

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やっぱりのどかー。この頃はまだF1にレッドなブルがいなかった頃。こちらはホワイトカウって感じですね。今回は現レイアウトでの開催2回目、1998年のオーストリアGPを取り上げます。

今年のオーストリアGPはまだまだ前半戦の第9戦に設定されていますが、この年は全16戦中の第10戦にあたり、後半戦に入っています。ここまでマクラーレンのハッキネンとクルサードの2人で5勝、そのうちハッキネンが4勝。一方で最大のライバルであるフェラーリはM・シューマッハ一人で4勝を挙げ、がっぷり四つの状態で進行しています。ただし流れは至近レースで3連勝中のシューマッハにあり、ハッキネンとしてはこのヨーロッパラウンド中盤を乗り切れるか否かが初チャンピオン獲得のカギとなっています。

予選は濡れた路面で始まり、ドライ方向に向かうという番狂わせの様相。走る度にコンディションがよくなるため、いかに「時間いっぱいギリギリでタイムアタックできるか」にかかっています。
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大穴登場!ポールをもぎ取ったのは参戦3年目、35戦目となるベネトンのフィジケラが初獲得。希少なイタリア人の久々の快挙でした。2番手はそのフィジケラにベネトンを明け渡してザウバーで戦う不運のベテラン、アレジ。ポール屋さんになりつつあるハッキネンは3番手に止まり、4番手のシューマッハと共にセカンドロウに並んでいます。日本人はティレルの高木虎之介が20番手、ミナルディから出走する中野信治が21番手で「予選落ち屋さん」ロセットの前はしっかり確保。

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《予選結果》
   1 G・フィジケラ(ベネトン・PR・BS)
   2 J・アレジ        (ザウバー・F・GY)
   3 M・ハッキネン(マクラーレン・M・BS)
   ※BSはブリヂストン、GYはグッドイヤー
     PRはプレイライフ(ルノーカスタム)

ココのスタートは登り坂の「高速椅子取り合戦」ですからね。
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3番手のハッキネンがターン1までに定位置を獲得、メルセデスエンジン+ブリヂストンの組み合わせは他とは蹴り出しが違う。4番手シューマッハもアレジまでは捕まえて、ハッキネンを易々と逃すわけにはいかない。
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ほら、ターン1は気を付けなきゃ!先頭集団ではなく、最後尾集団が散らかっています。
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中嶋師匠からPIAAを継承した高木がターン1で止まり切れず、前後が反転してリヤウィングを無くしています。決勝でコーナーを一つも曲がらず終了。実は中野もそのとばっちりを受けてしまっています。日本人同士のニアミス。
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1周目はこれで終わらない。続くレムズで「黒カラス」アロウズのサロとディニスがやらかした。
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そしてこの日は何故か黒銀のクルサードもこんなところにいてとばっちりを食らいました。クルサードは雨の予選に大失敗して14番手スタートでした。いつもの3,4番手とは勝手が異なります。2箇所でやらかせば当然コレの出番。
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クルサードは高木のケースと異なり、交換可能なフロントウィングのため、セーフティカー発動のタイミングを活かしてピットイン、楽々な最後尾に喜んで戻っていきます。

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せっかく逃げ逃げハッキネンの思惑は外れ、上昇気流に乗る紅のライバルが真後ろに迫ってきました。レムズで仕掛ける!
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ハッキネンはツボをつくライン採りでしのぎ、シューマッハの攻撃失敗。一度フィジケラを前にやり過ごします。
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初ポールごめんね、フィジケラを簡単にさばき、軽タンクで2ピット戦略のシューマッハはファステストラップを記録しつつ、再びターゲットをロックオン!
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今度はインからか?!ハッキネンは意地でも譲らない。ターン9でアンダーステアとなったシューマッハは、外側縁石を越え、
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うわ!
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フロントウィングをグラベルで粉砕して、傷を負ったまま1周分を乗り切らなければならないという試練が降りかかる。
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シューマッハも良かれと思って攻めた結果、ほぼビリの16位。

あさっての位置を走る先頭はさておき、シューマッハが消えて熾烈になるのは表彰台争奪戦。ヤングイタリアンVS輝き切れないベテラン。
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21周目のレムズ。
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インのフィジケラがガッつき、アウトのアレジは行く手を閉める。
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アレジはクルンと向きを変え、フィジケラはフロントサスペンションを折損して終了。フィジケラは勢いで行ってしまった。若いドライバーはどうしても前に出たいのです。こうやってベテランが諭して若手が洗練されていくものですね。

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初っ端のもらい事故により最後尾を強いられたクルサードは30周目にファステストラップを刻みながら実は2位まで浮上しています。この年のマクラーレンは本当に速い。もらい事故、もっと言えば決勝前日の予選から悔やまれますね。

こちらも最後尾を味わったシューマッハも54周目には5位まで浮上し、前はライバルチームの実弟R・シューマッハに遭遇します。
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抵抗はしないよねー。ボスも怒らないであろう(笑)
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最終盤67周目に3位走行中のチームメイト、アーバインもレムズ手前で進路を開けています。これはあくまでアーバインの「マシントラブル」とのこと。アヤシイ。。シューマッハはこのオーストリアGP前にフェラーリとの契約延長を発表していますが、これがあったからかどうか、アーバインもレース後にフェラーリとの契約延長にこぎつけています。

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《決勝結果》
   1 M・ハッキネン    (マクラーレン・M・BS)
   2 D・クルサード    (マクラーレン・M・BS)
   3 M・シューマッハ(フェラーリ・F・GY)

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先頭を走っている人を全く触れていませんでしたね(最近もこんなセリフ言った記憶が)スタートダッシュをしっかり決めて、後方での接触などつゆ知らず、ハッキネンがシューマッハの4連勝を食い止めました。いつの時代も後ろが見えないくらいぶっちぎっちゃうレース、あるものでした。数日後に控える2019年のオーストリアGP、今回こそはこうはならないレース運びだといいですね。

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今回のカード対決は5/5こどもの日ということで1998年のTBS「テレビのちから」という番組の中の「スーパーキッズ21世紀夢チャレンジ」で登場した12歳の小林可夢偉です。ハミルトンやベッテルも幼少時代から注目される天才児でしたが、日本でも同様に「F1に乗れそうな子」は昔から注目されてきているものなんですね。
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先日取り扱った「生ダラカート」でお馴染みの定岡正二が兵庫県尼崎市に住む小林家を訪ね、小林可夢偉と初対面しています。憧れのドライバーはアイルトン・セナ。将来の夢は、ちょっと字が薄くて読み辛いけど「F1レーサーになる」とデカデカと書いています。
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ひとまず固い握手を交わし、定岡とカート対決と相なりました。定岡正二ってセナをはじめ様々なドライバーとカート対決を行って場数を踏んでいますよね。
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名神高速道路、東名高速道路を辿ってはるばる千葉県市原市にある「新東京サーキット」に到着。カート対決御用達のロケーションです。
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定岡先行の半周のハンデを了承してもらい、7周のカート対決スタート!
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レース当日は雨は上がっていますが、路面はウェット。1周が約40秒と考えると、定岡のアドバンテージは20秒。7周レースということは小林は1周あたり3秒早く走らないと追い付きません。
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1周目は約2秒
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3周目は約3秒
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5周目も約3秒と着実にギャップを縮めて定岡のすぐ後ろに近付いてきました。
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コースをはみ出しつつ、アウトからかぶせて小林が見事ハンデ戦を制しました。

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ただ、このレースはこれで終わりではなかった。定岡のバックに元F1ドライバーが次なる対戦相手として控えていた。小林にはナイショ。
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この方、なぜか坊主頭(まさかアレか?!)の鈴木亜久里。オートバックスカラーのカートで颯爽と登場。
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小学生2人は拍手でお出迎え。レースは倍の距離となる15周とし、元F1ドライバーと将来期待されるF1ドライバーの対決スタート!
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鈴木はピッタリと小林の背後から離れません。うまく並びかけては
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青の小林が前を守るといったレース運びが続きます(これがこの後ちょっとした問題に)
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S字の切り返しで鈴木が前に。前を走るのは憧れのセナと一緒に走り、F1で当時唯一の日本人表彰台を経験した人。小林は是が非でもこの壁を超えていきたいところ。
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小林は意外と呆気なく抜き返し、幾度となくお尻を突かれながらも見事に勝利!さすがスーパーキッズ。

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レース後、勝利したにもかかわらず浮かばぬ表情の小林。鈴木や定岡も気になり問いかけています。どうした?!
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小林曰く、鈴木とのレースは「鈴木が手を抜いていたから勝てた」ということに悔し涙を流していたのです。小学生とはいえレース、バトルですからね。勝てても嬉しいやらナメられているような、複雑な気持ちだったのでしょう。負けず嫌いでないと、スポーツの世界は伸びません。
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ご存知の通り、後に小林はF1へステップアップ。このレースから14年後の2012年日本GPでは鈴木に続く日本人3人目の表彰台を獲得するまでに成長、活躍しました。まさしくこのレース対決した2人だけが、現時点での貴重なF1日本GP表彰台登壇者です。
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https://youtu.be/F69gMeGTvi4
https://youtu.be/9AB1TMy7RIE
https://youtu.be/JR7MdsEY5jo

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