このシーズンは4人のイギリス人ドライバーが参戦していますが、中でも最も人気を集めたのはやはりマンセルです。まだチャンピオン獲得には至っていませんが、直近4戦で3回の表彰台登壇と上り調子で地元入りしています。
現在イギリスGPが行われるシルバーストンと同じシルバーストンではありますが、例の如くレイアウトとコントロールラインの位置も現在と異なります。
現在は図の⑥のレイアウトで行われていますが、当時は③で行われていたものから、ちょうどこの91年を前に大改修を施し、④のレイアウトに変更された初年になります。③ではまだ高速の色が強い直線的なレイアウトもマゴッツ、べケッツ、チャペルをS字状にし、ストウとクラブの間にベールを設けて低速化を図り、さらには終盤にはグルリと回り込むルフィールドを設置するなどテクニカル要素が加わっています。コントロールラインは現在ターン8のウッドコートとターン9にあたるコプスの間にありました。
91年はいわゆる「四天王」と呼ばれたピケ、マンセル、プロスト、セナが揃う最終年となります。ピケがこのシーズン限りで引退、翌92年にはマンセル、93年でプロスト、そして94年はセナと立て続けにレジェンド級ドライバーがF1をあとにしました。一方で将来が期待される新人として、開幕戦からフィンランド出身のハッキネンが、このイギリスGPの3戦後に行われたベルギーGPからドイツ出身のM・シューマッハが参戦を始めるなど、世代交代も刻一刻と迫るシーズンです。
ここまでの7戦は前年90年チャンピオンのマクラーレン・ホンダのセナが開幕から4連勝と2つの3位を獲得したほか、第5戦カナダGPはベネトンのピケ、第6戦メキシコGPはウィリアムズのパトレーゼ、ヨーロッパラウンド初戦の第7戦フランスGPは同じくウィリアムズのマンセルが1勝ずつと、セナが頭一つ抜け出た状態で進んでいます。また日本人ドライバーはティレルから中嶋悟、ラルースから鈴木亜久里の2人がエントリーしています。
予選はフリー走行からトップを獲得する地元のマンセルが2番手セナに0.679秒、3番手で同じマシンに乗るパトレーゼに1.170秒も引き離す大差のポールポジションを獲得。
観客も大喜び!
4番手はマクラーレンのベルガーとなったことで、マクラーレンとウィリアムズが上位を奪い合う形となりました。5番手はフェラーリのアレジ、6番手は相方アレジ。
マクラーレンほか日本系はティレル・ホンダのモデナが10番手、中嶋が15番手。ブラバム・ヤマハのブランデルが12番手、ブランドルが14番手。ラルースの鈴木は26台中22番手となっています。
《予選結果》
P.P. N・マンセル
(ウィリアムズ・ルノー グッドイヤー)
2 A・セナ
(マクラーレン・ホンダ グッドイヤー)
3 R・パトレーゼ
(ウィリアムズ・ルノー グッドイヤー)
決勝のスタートの様子。現在でいう右ターン8であるウッドコートにグリッドがかかっているため、隊列が右に曲がっているのが特徴的。
ポールのマンセルのリヤタイヤから白煙が見えます。痛恨のホイールスピン!
当然その隙をセナは見過ごすこと無く、トップで右ターン1のコプスに向かう。マンセルは期待高まる地元で思い切り赤っ恥。
しかし戦闘力あるウィリアムズFW14であれば、マクラーレンを簡単に捕らえられる。チャペルの先にあるハンガーストレートでピタリとセナの背後につけると
内側から並んでいく。
ココ、有名ですね。よく見る画。
マンセルは半周足らずのストウ手前で前に。振り出しに戻します。
オープニングラップでパトレーゼと接触し、リタイヤに追い込みつつも3位をキープしていたベルガーは22周目にアレジ、プロストのフェラーリ勢に一気にかわされ5位に転落。
3位4位に浮上したフェラーリは若手のアレジが前。すぐ後ろのプロストの向きが不可解にも見えますが、、
あらら、スピン!そういうことね。
プロストもこんなミスするのね。85,86,89の3回チャンピオンは未勝利が続きます。
一方アレジはというと、鈴木を周回遅れにしようとしています。見辛い画像ですが、奥の深紅がアレジのフェラーリです。
あら、フロントウィング右側が無い!接触!
向かい合っちゃってまあ気まずい。。アレジは31周目、鈴木は29周目に共にリタイヤ。こりゃ日本人の綺麗どころでも紹介して謝罪せにゃ(笑)
41周目にジョーダンのデ・チェザリスが単独でウォールにクラッシュ。
勢い止まらず再びトラック上に戻ってきてしまいます。本線には後続の姿がチラリと見えるけど、、
危ない!フルブレーキング!
間一髪でかわし、クラッシュを免れました。もう1人の日本人ドライバー、中嶋でした。その後無事に8位完走(当時の入賞は6位まで)を果たしています。
トップ争いが無いため、大分放置してしまっていますが、2位セナはタイヤ温存で少しずつながらギャップを縮めつつも、最終周に悲劇が襲います。
何とガス欠。。チェッカーフラッグに辿り着くことが出来ませんでした。のちにコンピューターのエラーだったことが明らかになりましたが、理由はともあれ4位扱いで表彰台からは陥落してしまいました。
やーい、ざまあみろー!ユニオンジャックが大きく舞う。マンセルが勝てれば満足。
大きな声援を受けながらチェッカーフラッグを目指すマンセル。
マンセルは初の母国GPをフリー走行、予選、決勝を全てトップで完全試合を成し遂げました。
《決勝結果》
1 N・マンセル
(ウィリアムズ・ルノー グッドイヤー)
2 G・ベルガー
(マクラーレン・ホンダ グッドイヤー)
3 A・プロスト
(フェラーリ グッドイヤー)
ウィニングランで立ち往生しているセナを途中で拾う。
「おめでとう!パルクフェルメまでよろしく頼む」
マンセルの頭を撫でています。
「君、君!マシンの箱乗りはイカンよ!!」
「うるせぇ!あっち行け!」「ぬわぁ」
蹴りと突きで静止を振り切るセナ。このシーンもとても有名で、後世でも似たシーンがありましたが、これはダメな行為。禁じられています。
イギリス人がイギリスのチームでイギリスGPを制する。この上無き幸せ。
2023シーズンも3人のイギリス人ドライバーが参戦していますが、未だ勝ち星が無く進行しています。まあ1人は腐るほど勝ってきたのでどうでもいいけど、残る若い2人、どちらかでも優勝してくれないかしら。。
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