来シーズンはいよいよマシンに大幅変更を伴います。テクニカル(マシン)レギュレーションやスポーティング(運営)レギュレーションが変更になる時は、F1関係者のみならず、我々ファンも「勢力図の変化」を大いに期待するものです。今回選んだ1989年はマシンに大幅な変更が行われました。アデレイド市街地で開催された最終戦オーストラリアGPです。89年の振り返りは4戦目、オーストラリアGPは6戦目、そしてアデレイド市街地のレースは初となります。
アデレイド市街地でのF1は1985年から95年までの11シーズンでヴィクトリア公園と一部周辺街路を使用して作り上げられた市街地サーキットでした。現行のアルバートパークと成り立ちは似ていますね。所在地やレイアウトが異なるのはもちろんのこと、他にはアルバートパークはシーズン開幕直後に行われていたのに対し、アデレイド市街地はシーズンの最終戦に行われていた点です。南半球ですから11月は「初夏」にあたります。
89年シーズンは前年まで採用されたターボエンジンが廃止され、自然吸気3.5ℓV10もしくはV8エンジンを搭載することになりました。そこで勢力図の変化が期待されますが、蓋を開けてみれば前年と同じマクラーレン・ホンダの突出した強さには変わりなく、前年チャンピオンのセナとその相方プロストによるチャンピオン争いが続きました。コンストラクターズランキング2位はフェラーリに代わってウィリアムズが浮上し、マクラーレンの2人が取りこぼしたレースを制しています。ドライバーズチャンピオンは前戦第15戦日本GPのシケインで同士討ちとなり「失格」となったマクラーレンのセナに対し、マクラーレンが提訴。
セナには罰金と「執行猶予付き出場停止」となり、一度チャンピオンが決定したものも「暫定」という形でオーストラリアGPを迎えます。プロストもマクラーレンだし、セナもマクラーレンです。プロストにしてみたら、チームがどちらにテコ入れしているのか考えると複雑な気持ちになりそうですね。
またmiyabikunもセナに魅了され、F1にハマった口ではありますが、やり方にいささか疑問を持つことがあります(今冷静に考えてみたら、なおさら)美化されがちなセナの戦績や闘志、また周囲のフォローなど、今現在のドライバーに当てはめたらどんな物議がなされたのか、興味があります。
ドライ環境で行われた予選はプロストがセナに対して0.3秒上回り金曜予選を制しますが、土曜予選はセナが唯一となる1分16秒台を記録、プロストに約1.0秒もの差を付けてポールポジションを獲得。3番手は驚くなかれ、ミナルディのマルティニが獲得しています。また日本代表、ロータスの中嶋悟は予選23番手、ザクスピードの鈴木亜久里は予選前の「予備予選」に突破できず終わっています。
《予選結果》
1 A・セナ (マクラーレン・H・GY)
2 A・プロスト (マクラーレン・H・GY)
3 P・マルティニ(ミナルディ・FC・PI)
※GYはグッドイヤー、PIはピレリ
FCはフォードコスワース
決勝は予選とは打って変わって大雨。予定を30分遅らせてスタートが切られますが、ただでさえ路面のよくない市街地サーキットですから、危険極まりない。
後方視界が全くありません。
雨のレースを苦手とするプロストはチャンピオン争いそっちのけでピットに戻り、自主的リタイヤ(棄権)を採ります。
こりゃ本当にレースどころではありません。レース中断です(上にチラッと見えている赤旗「中断」なので意味がわかるんだけど、2枚掲げられている黒旗は「失格」を示す旗ですが何で提示されているんだろう)
プロストのチャンピオンはひとまず「暫定」であるため日本GPの優勝が復活し、このレースも制することができれば、プロストを2ポイント上回れる可能性を残しています。限りなくゼロに近い希望に賭け、再スタートはセナが雨を味方につけ、優勝のみをめがけて逃げを打ちます。
ただ雨が得意とはいえ、このコンディションでは足元をすくわれてしまいます。
まるでコマのようにクルクルと回ってマシンを制御できずにいます。
13周目のブラバムのブランドルの後方車載カメラの映像です。背後には黄色いロータスのピケ、その後ろにはセナがモヤっと見えていますが、やはり視界不良。
ピケが向かって左側にラインを変えると、セナはそれをかわすべく右側のブランドルに近付き
クラッシュ。ブランドルはリヤウィングを失い、セナは右フロントタイヤをサスペンションもろとも破壊してリタイヤ。この瞬間にセナは裁定はどう下ろうとも、プロストのポイントに追いつくことはできず、完全にチャンピオンを防衛することができませんでした。
その後も波乱は続きます。17周目にフェラーリのマンセルもスピンしてタイヤバリヤに激突、リタイヤ。
19周目には先程難を逃れたピケも周回遅れのオゼッラ、ギンザーニにおかまをほってしまいリタイヤ。猛者が次々と戦線離脱していきます。
プロストは棄権、セナもピケもクラッシュし、マンセルがスピンとなると、中団勢にチャンスが巡ってきます。トップはウィリアムズのブーツェンが名乗りを挙げ「2時間レース」適用により、当初予定された81周レースが70周終了とともに打ち切られています。
《決勝結果》
1 T・ブーツェン(ウィリアムズ・R・GY)
2 A・ナニーニ (ベネトン・FC・GY)
3 R・パトレーゼ(ウィリアムズ・R・GY)
実に地味な表彰台の顔ぶれ(笑)失礼、荒れたレースを堅実にこなした面々が顔を揃えています。出走は26台(予選落ち9台)のうち完走扱いはたったの8台、70周をこなしたのはわずかに4台というサバイバルレースでした。ブーツェンは第6戦カナダGPに続くシーズン2勝目。また前戦日本GPで繰り上がり初優勝を挙げたナニーニが2位となり、連続表彰台獲得となりました。さらに4位の中嶋が日本人初のファステストラップを獲得し、気持ちのいいシーズンの締めくくり方をしました。
新たなマシンレギュレーション元年。勢力図に大きな変化はなく、マクラーレンがウィリアムズに対してダブルスコアでダブルチャンピオンを獲得した形で幕を閉じましたが、チーム内の抗争、意図的な同士討ち、勝利数はセナが6勝したにも関わらず、チャンピオンは4勝のプロストの手に渡るなど、何かと遺恨を残した89年シーズンとなりました。
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アデレイド市街地でのF1は1985年から95年までの11シーズンでヴィクトリア公園と一部周辺街路を使用して作り上げられた市街地サーキットでした。現行のアルバートパークと成り立ちは似ていますね。所在地やレイアウトが異なるのはもちろんのこと、他にはアルバートパークはシーズン開幕直後に行われていたのに対し、アデレイド市街地はシーズンの最終戦に行われていた点です。南半球ですから11月は「初夏」にあたります。
89年シーズンは前年まで採用されたターボエンジンが廃止され、自然吸気3.5ℓV10もしくはV8エンジンを搭載することになりました。そこで勢力図の変化が期待されますが、蓋を開けてみれば前年と同じマクラーレン・ホンダの突出した強さには変わりなく、前年チャンピオンのセナとその相方プロストによるチャンピオン争いが続きました。コンストラクターズランキング2位はフェラーリに代わってウィリアムズが浮上し、マクラーレンの2人が取りこぼしたレースを制しています。ドライバーズチャンピオンは前戦第15戦日本GPのシケインで同士討ちとなり「失格」となったマクラーレンのセナに対し、マクラーレンが提訴。
セナには罰金と「執行猶予付き出場停止」となり、一度チャンピオンが決定したものも「暫定」という形でオーストラリアGPを迎えます。プロストもマクラーレンだし、セナもマクラーレンです。プロストにしてみたら、チームがどちらにテコ入れしているのか考えると複雑な気持ちになりそうですね。
またmiyabikunもセナに魅了され、F1にハマった口ではありますが、やり方にいささか疑問を持つことがあります(今冷静に考えてみたら、なおさら)美化されがちなセナの戦績や闘志、また周囲のフォローなど、今現在のドライバーに当てはめたらどんな物議がなされたのか、興味があります。
ドライ環境で行われた予選はプロストがセナに対して0.3秒上回り金曜予選を制しますが、土曜予選はセナが唯一となる1分16秒台を記録、プロストに約1.0秒もの差を付けてポールポジションを獲得。3番手は驚くなかれ、ミナルディのマルティニが獲得しています。また日本代表、ロータスの中嶋悟は予選23番手、ザクスピードの鈴木亜久里は予選前の「予備予選」に突破できず終わっています。
《予選結果》
1 A・セナ (マクラーレン・H・GY)
2 A・プロスト (マクラーレン・H・GY)
3 P・マルティニ(ミナルディ・FC・PI)
※GYはグッドイヤー、PIはピレリ
FCはフォードコスワース
決勝は予選とは打って変わって大雨。予定を30分遅らせてスタートが切られますが、ただでさえ路面のよくない市街地サーキットですから、危険極まりない。
後方視界が全くありません。
雨のレースを苦手とするプロストはチャンピオン争いそっちのけでピットに戻り、自主的リタイヤ(棄権)を採ります。
こりゃ本当にレースどころではありません。レース中断です(上にチラッと見えている赤旗「中断」なので意味がわかるんだけど、2枚掲げられている黒旗は「失格」を示す旗ですが何で提示されているんだろう)
プロストのチャンピオンはひとまず「暫定」であるため日本GPの優勝が復活し、このレースも制することができれば、プロストを2ポイント上回れる可能性を残しています。限りなくゼロに近い希望に賭け、再スタートはセナが雨を味方につけ、優勝のみをめがけて逃げを打ちます。
ただ雨が得意とはいえ、このコンディションでは足元をすくわれてしまいます。
まるでコマのようにクルクルと回ってマシンを制御できずにいます。
13周目のブラバムのブランドルの後方車載カメラの映像です。背後には黄色いロータスのピケ、その後ろにはセナがモヤっと見えていますが、やはり視界不良。
ピケが向かって左側にラインを変えると、セナはそれをかわすべく右側のブランドルに近付き
クラッシュ。ブランドルはリヤウィングを失い、セナは右フロントタイヤをサスペンションもろとも破壊してリタイヤ。この瞬間にセナは裁定はどう下ろうとも、プロストのポイントに追いつくことはできず、完全にチャンピオンを防衛することができませんでした。
その後も波乱は続きます。17周目にフェラーリのマンセルもスピンしてタイヤバリヤに激突、リタイヤ。
19周目には先程難を逃れたピケも周回遅れのオゼッラ、ギンザーニにおかまをほってしまいリタイヤ。猛者が次々と戦線離脱していきます。
プロストは棄権、セナもピケもクラッシュし、マンセルがスピンとなると、中団勢にチャンスが巡ってきます。トップはウィリアムズのブーツェンが名乗りを挙げ「2時間レース」適用により、当初予定された81周レースが70周終了とともに打ち切られています。
《決勝結果》
1 T・ブーツェン(ウィリアムズ・R・GY)
2 A・ナニーニ (ベネトン・FC・GY)
3 R・パトレーゼ(ウィリアムズ・R・GY)
実に地味な表彰台の顔ぶれ(笑)失礼、荒れたレースを堅実にこなした面々が顔を揃えています。出走は26台(予選落ち9台)のうち完走扱いはたったの8台、70周をこなしたのはわずかに4台というサバイバルレースでした。ブーツェンは第6戦カナダGPに続くシーズン2勝目。また前戦日本GPで繰り上がり初優勝を挙げたナニーニが2位となり、連続表彰台獲得となりました。さらに4位の中嶋が日本人初のファステストラップを獲得し、気持ちのいいシーズンの締めくくり方をしました。
新たなマシンレギュレーション元年。勢力図に大きな変化はなく、マクラーレンがウィリアムズに対してダブルスコアでダブルチャンピオンを獲得した形で幕を閉じましたが、チーム内の抗争、意図的な同士討ち、勝利数はセナが6勝したにも関わらず、チャンピオンは4勝のプロストの手に渡るなど、何かと遺恨を残した89年シーズンとなりました。
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