F1 えきぞーすとのーと

よくあるニュースネタやこ難しいテクニカルな話ではなく、メインは予選や決勝のTV観戦したそのものを個人的観点から綴るF1ブログです。  また、懐かしのマシンやレースを振り返ったり、記録やデータからF1を分析。その他ミニカーやグッズ集めも好きなので、それらを絡めつつ広く深くアツくF1の面白さやすごさを発信し、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

タグ:雨

来シーズンはいよいよマシンに大幅変更を伴います。テクニカル(マシン)レギュレーションやスポーティング(運営)レギュレーションが変更になる時は、F1関係者のみならず、我々ファンも「勢力図の変化」を大いに期待するものです。今回選んだ1989年はマシンに大幅な変更が行われました。アデレイド市街地で開催された最終戦オーストラリアGPです。89年の振り返りは4戦目、オーストラリアGPは6戦目、そしてアデレイド市街地のレースは初となります。
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アデレイド市街地でのF1は1985年から95年までの11シーズンでヴィクトリア公園と一部周辺街路を使用して作り上げられた市街地サーキットでした。現行のアルバートパークと成り立ちは似ていますね。所在地やレイアウトが異なるのはもちろんのこと、他にはアルバートパークはシーズン開幕直後に行われていたのに対し、アデレイド市街地はシーズンの最終戦に行われていた点です。南半球ですから11月は「初夏」にあたります。

89年シーズンは前年まで採用されたターボエンジンが廃止され、自然吸気3.5ℓV10もしくはV8エンジンを搭載することになりました。そこで勢力図の変化が期待されますが、蓋を開けてみれば前年と同じマクラーレン・ホンダの突出した強さには変わりなく、前年チャンピオンのセナとその相方プロストによるチャンピオン争いが続きました。コンストラクターズランキング2位はフェラーリに代わってウィリアムズが浮上し、マクラーレンの2人が取りこぼしたレースを制しています。ドライバーズチャンピオンは前戦第15戦日本GPのシケインで同士討ちとなり「失格」となったマクラーレンのセナに対し、マクラーレンが提訴。
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セナには罰金と「執行猶予付き出場停止」となり、一度チャンピオンが決定したものも「暫定」という形でオーストラリアGPを迎えます。プロストもマクラーレンだし、セナもマクラーレンです。プロストにしてみたら、チームがどちらにテコ入れしているのか考えると複雑な気持ちになりそうですね。IMG_3095
またmiyabikunもセナに魅了され、F1にハマった口ではありますが、やり方にいささか疑問を持つことがあります(今冷静に考えてみたら、なおさら)美化されがちなセナの戦績や闘志、また周囲のフォローなど、今現在のドライバーに当てはめたらどんな物議がなされたのか、興味があります。

ドライ環境で行われた予選はプロストがセナに対して0.3秒上回り金曜予選を制しますが、土曜予選はセナが唯一となる1分16秒台を記録、プロストに約1.0秒もの差を付けてポールポジションを獲得。3番手は驚くなかれ、ミナルディのマルティニが獲得しています。また日本代表、ロータスの中嶋悟は予選23番手、ザクスピードの鈴木亜久里は予選前の「予備予選」に突破できず終わっています。

《予選結果》
 1 A・セナ   (マクラーレン・H・GY)
 2 A・プロスト (マクラーレン・H・GY)
 3 P・マルティニ(ミナルディ・FC・PI)
 ※GYはグッドイヤー、PIはピレリ
  FCはフォードコスワース

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決勝は予選とは打って変わって大雨。予定を30分遅らせてスタートが切られますが、ただでさえ路面のよくない市街地サーキットですから、危険極まりない。
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後方視界が全くありません。
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雨のレースを苦手とするプロストはチャンピオン争いそっちのけでピットに戻り、自主的リタイヤ(棄権)を採ります。
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こりゃ本当にレースどころではありません。レース中断です(上にチラッと見えている赤旗「中断」なので意味がわかるんだけど、2枚掲げられている黒旗は「失格」を示す旗ですが何で提示されているんだろう)
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プロストのチャンピオンはひとまず「暫定」であるため日本GPの優勝が復活し、このレースも制することができれば、プロストを2ポイント上回れる可能性を残しています。限りなくゼロに近い希望に賭け、再スタートはセナが雨を味方につけ、優勝のみをめがけて逃げを打ちます。
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ただ雨が得意とはいえ、このコンディションでは足元をすくわれてしまいます。
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まるでコマのようにクルクルと回ってマシンを制御できずにいます。

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13周目のブラバムのブランドルの後方車載カメラの映像です。背後には黄色いロータスのピケ、その後ろにはセナがモヤっと見えていますが、やはり視界不良。
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ピケが向かって左側にラインを変えると、セナはそれをかわすべく右側のブランドルに近付き
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クラッシュ。ブランドルはリヤウィングを失い、セナは右フロントタイヤをサスペンションもろとも破壊してリタイヤ。この瞬間にセナは裁定はどう下ろうとも、プロストのポイントに追いつくことはできず、完全にチャンピオンを防衛することができませんでした。
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その後も波乱は続きます。17周目にフェラーリのマンセルもスピンしてタイヤバリヤに激突、リタイヤ。
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19周目には先程難を逃れたピケも周回遅れのオゼッラ、ギンザーニにおかまをほってしまいリタイヤ。猛者が次々と戦線離脱していきます。
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プロストは棄権、セナもピケもクラッシュし、マンセルがスピンとなると、中団勢にチャンスが巡ってきます。トップはウィリアムズのブーツェンが名乗りを挙げ「2時間レース」適用により、当初予定された81周レースが70周終了とともに打ち切られています。

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《決勝結果》
 1 T・ブーツェン(ウィリアムズ・R・GY)
 2 A・ナニーニ (ベネトン・FC・GY)
 3 R・パトレーゼ(ウィリアムズ・R・GY)

実に地味な表彰台の顔ぶれ(笑)失礼、荒れたレースを堅実にこなした面々が顔を揃えています。出走は26台(予選落ち9台)のうち完走扱いはたったの8台、70周をこなしたのはわずかに4台というサバイバルレースでした。ブーツェンは第6戦カナダGPに続くシーズン2勝目。また前戦日本GPで繰り上がり初優勝を挙げたナニーニが2位となり、連続表彰台獲得となりました。さらに4位の中嶋が日本人初のファステストラップを獲得し、気持ちのいいシーズンの締めくくり方をしました。

新たなマシンレギュレーション元年。勢力図に大きな変化はなく、マクラーレンがウィリアムズに対してダブルスコアでダブルチャンピオンを獲得した形で幕を閉じましたが、チーム内の抗争、意図的な同士討ち、勝利数はセナが6勝したにも関わらず、チャンピオンは4勝のプロストの手に渡るなど、何かと遺恨を残した89年シーズンとなりました。

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今回はトルコGPの過去を、と思ったのですが、先日5月に2007年のトルコGPをやってしまっていました。。だってその時はまさかリベンジがあると思わなかったんだもん(笑)miyabikun先走ってしまいました。トルコのF1はまだまだ歴史が浅く、そう沢山過去のレースがあるわけではないし、さすがに一年で2回はしつこいですよね。ということで、未練がましく今回は同じ年の第15戦に行われた日本GPを振り返っていきます。日本なら2回連続いいのかって?!いいじゃないですか、こちらはまだまだ沢山在庫が残ってますから(笑)
ただこの日本GPはみんな大好き鈴鹿サーキットではありません。30年振りに富士スピードウェイで開催されたレースです。富士をバックにF1っていいですね。「これぞ、日本!」「ホンダでなくトヨタ」って感じです。
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新東名高速道路ではありませんよ、富士スピードウェイです(笑)30年前と大きく異なるのはサーキットレイアウト。
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左の赤ラインが以前使用されたレイアウト、右側の黒ラインが改修をうけ、初めてF1で採用されたレイアウトです。このレイアウトを誰が描いたか。そりゃあの人ですよ、近代F1サーキットといえば言わずと知れたヘルマン・ティルケ氏です。最近のF1マシンは「彼の手の上」を転がっています。
また、鈴鹿でのF1と異なる点として、観客動員に「パークアンドライド方式」(チケットアンドライド)を採りいれた点です。富士スピードウェイに行かれたことのある方はよくご存知かと思いますが、東京からの距離は近いものの、サーキットまでの交通手段が不便です。チケットを購入した者はバスに乗りサーキットに入場する形を採りました。よって、入場者は100%バスです。これには痛い思いをされた方も多くいらっしゃると思います。ちなみにmiyabikunはこのレースも含めて、富士スピードウェイでの日本GPはお休みしました。特にこの年は父が生死に関わる病気で入院が決まったばかりで、気分的に現地に赴く気分になれなかったのが思い出されます。もうあれから14年も経つのか、、早いなぁ。

2007年の振り返りは6戦目となります。このシーズンは今でも時の人、F1キングことハミルトンが鳴り物入りでデビューした年ですね。2年連続チャンピオンのアロンソは新天地マクラーレンに移籍し、その隣で堂々とデビューを果たして驚くべき戦績を重ねています。そして長年F1の頂点に君臨していたフェラーリのM・シューマッハの後任として、マクラーレンからライコネンが移籍するなど、新世代がF1を牽引し始めた頃です。
前戦第14戦ベルギーGPまでのドライバーズランキングは何と新人ハミルトンが3勝ながらトップの97ポイント。2位は3年連続をかけたチームメイトのアロンソが4勝で95ポイント。3位に同じく4勝を挙げたライコネンが84ポイントとやや離れ、4位がライコネンチームメイトのマッサで3勝の77ポイントとなっています。マクラーレンが7勝、フェラーリも7勝ということで、このシーズンはこの2チームによる優勝で進行しています。残り3戦で四つ巴、さらにランキングトップが新人という今では信じられないような状況ですよね。ハミルトンを筆頭にノンチャンピオンのフェルスタッペン、ルクレールがいる中、マゼピンがランキングトップってな訳でしょう、、うーん、あり得ない(笑)

富士山をバックにレース、非常にいいロケーションではありますが、久々開催、実質初開催の富士は土曜予選から暗雲が立ち込めています。
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雨というか、問題なのは霧です。フリー走行は救助ヘリが飛べない状況のため中止。予選は何とか開催にこぎつけたものの、ご覧の有り様。
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前やら後ろやらほとんど視界がない中、ポールポジションは僅差でランキングトップのハミルトンが4回目のポールポジションを獲得。2番手にアロンソ、3番手ライコネン、4番手マッサと正にランキング順がグリッド順になりました。
ほか、このシーズンのF1は日本勢が多く参戦していました。スーパーアグリ・ホンダの佐藤琢磨が22人中21番手、スパイカーの山本左近が22番手。ガチのお膝元トヨタのトゥルーリが14番手、相方R・シューマッハが16番手。この年ばかりはちょっと敵陣となるホンダのバトンが7番手、バリチェロが17番手。さらにトヨタエンジンを搭載したウィリアムズのロズベルグが6番手、ヴルツが18番手で予選を終えています。

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《予選結果》
 1 L・ハミルトン(マクラーレン・M)
 2 F・アロンソ (マクラーレン・M)
 3 K・ライコネン(フェラーリ・F)
 ※タイヤはブリヂストンのワンメイク

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決勝も引き続き雨、ということでセーフティカー先導によるスタートとなりました。
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低速にも関わらず、全く視界が無い。スタート直前にスチュワードより「エクストリームウェット(現 ウェットタイヤ)装着義務」の通達が下りましたが、3番手を走るライコネンらフェラーリ勢にはそれが伝わり切っておらず
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スタンダードウェット(現 インターミディエイト)を装着して出走してしまっています。このままでは失格にもなりかねません。この期に及んで何してクレトンネンということで、マッサ共々3周目と4周目にしれっとタイヤ交換かつ給油して後方に下がっています。
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しかしそれも束の間、ピットで給油したものの、序盤過ぎたかフィニッシュには足りない量であったことが判明し、11周後に早くも2回目のピットインを強いられてしまいます。セーフティカーランで21位のまま、ホボ・ビリヤネン。それにしても、なかなか長いセーフティカーランですね。
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67周レースの3割近くかかった19周終了時点でようやくセーフティカーが退去となります。IMG_2222
始まったら始まったで、鋭角右コーナーのターン1では佐藤琢磨がウィリアムズのヴルツを押し出し、前方にいたマッサに引っかけてしまうインシデントが発生。やっぱり雨ってF1には天敵です。

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2位走行のアロンソは27周目に1回目のピットイン。その翌周にトップのハミルトンが11.6秒のたっぷり給油でピットを済ませています。フェラーリ2台とは大きな差を築いてレースをリード。
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マクラーレンが一度下がると、ピットを引っ張るもう一人の若手が台頭してきます。こちらはF1デビュー6戦目、スピードに代わってトロ・ロッソのレギュラードライバーに昇格した20歳のベッテルちゃんです。たった3周に止まりますが、番狂わせとはいえ雨のトップ走行は立派、将来期待できそうな新人の一人。
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マクラーレン2台はその後、まだピットに入らないBMWザウバーとバトルすることになります。
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アロンソはハイドフェルドにかわされ、IMG_2231
ハミルトンはクビカと接触してコースオフ。IMG_2233
フェラーリは後方に沈んでいますし、クビカはこの後ピットに必ず入るから、バトルすることも無いでしょうが、前を走られていると抜きたくなるのがF1ドライバー。
日本メイクのチームも奮闘しています。19位を走行するトヨタのトゥルーリ対20位のホンダのバトンのバトル。
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ターン1をインから止まり切れないけど、、FullSizeRender
日本といえば、ホンダだよって。バトンの勝ち。
終始水しぶきの上がるレースも後半戦となる42周目のターン5IMG_2242
アロンソが単独クラッシュ、これで当然セーフティカーが発動されます。IMG_2243
ただでさえ雨で平均速度が落ちているので、規定周回をこなせず「2時間ルール適用」可能性も出てきました。ほぼ初開催の富士は荒れまくっています。セーフティカーが入ればタイヤも冷える。トップのハミルトンには多少の自由は利いても、以降は全てハミルトンのペースに合わせざるを得ません。ハミルトンの後ろ2位につけたレッドブルのウェバーに対し、3位のベッテルが見誤りオカマ。IMG_2245
先輩ブチ切れ、ベッテルは自力で戻るもこれでは修復不能。残念ながら最年少初表彰台が遠退きました。
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残り2周。2位に浮上したルノーのコバライネンに対し、いつの間にか3位にリカバリーしてきたライコネンが襲いかかっています。三代目フライングフィンの称号をかけて「ネンネン」対決やネン。IMG_2249
でもレースに勝ったのはこの方。

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《決勝結果》
 1 L・ハミルトン (マクラーレン・M)
 2 H・コバライネン(ルノー・R)
 3 K・ライコネン (フェラーリ・F)

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ハミルトンの言う通り、ドライバーや関係者にとってもリスキーかつ我慢のGPになりましたが、現地でファンがじっと寒さと時間に耐え、熱心に観戦していたことが何よりも素晴らしいです。日本人は堅実で我慢強いんだよ。
ハミルトンは10ポイントを加算し、107ポイント。一方でリタイヤで終えたアロンソとは12ポイント、3位ライコネンに17ポイントの差を付けて残り2戦となります。またコバライネンはF1初表彰台を獲得しています。この時点でこの先長く日本の地で走ることになるとは想像もしていなかったでしょう。住めば都。

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そして帰路のバス。本当に大変でしたね。こんなこと言うと怒られてしまいそうだけど、この時ばかりは行かないでよかったと、今だから言えます(笑)雨だの晴れだの、鈴鹿だ富士だ贅沢言わないから、来シーズンはとにかく日本でF1を開催しておくれー!

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「レース前にオレたち、何見せられてるんだろ」
ってのは冗談だけど、仕方無いでしょう。この国は今国歌斉唱できないんだから!COVID-19から復帰したライコネンはぱっと見目までマスクで覆ってみえる(笑)サングラスと一体化して、おそらくこの美しい舞をちゃんと見てないな。
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冗談はさておき、雨の予選からの決勝ですが、引き続き空模様が怪しいので早めにスタートタイヤを見ちゃいましょう。さすがにソフトタイヤをチョイスした者はおらず、ミディアムからハード、あるいはハードからミディアムに履き替える1回ピットストップがココの王道。繰り返し、レッドブルのフェルスタッペンは先日イタリアGPのペナルティ+パワーユニット交換による最後尾スタート、フェラーリのルクレールも交換ペナルティ、オマケにメルセデスのボッタスもまだ履歴が浅いはずなのに交換ペナルティを受けて後方に下がっています。真相を詳しく知りませんが「やれることは何でもやる」いや「疑わしきは予め対応」が正しいか。

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奇数列の走行ライン上が絶対的有利なスタートは3番手のラッセルが2番手サインツに並んでノリスに追従しますが、サインツはノリスを使ってターン2でトップを奪います。
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一方で4番手スタートのハミルトンは予想通りイマイチでしたね。蹴り出しのよい5番手リカルドに先攻を許しつつ、サインツの背中を使ってイン側の隙を狙いますが、
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ノリスに蓋をされ、行き場を無くして6位に降格。若手によるハミルトン包囲網発動のよう。逆に7番手のストロールは前方がアウト側、イン側にそれぞれ分かれたため、中央突破に成功。-3となる4位浮上。最近地味目できていたちゃまも存在感を示しています。
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1周目終了直前の順位昇降はこうなりました。ハミルトンは7位表示となっていますが、アロンソのショートカットがあったため、実質+2となる6位です。-7で12位に浮上したルクレールや-3のストロールやライコネンは成功組。TSUは+8で最後尾転落。。

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計画的?いや保守的に交換ペナルティを受けたボッタスは6周目にフェルスタッペンに抜かれています。もう任務完了?!あまり効果はなかったようで。
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ファステストラップを築いて堂々とトップを快走するサインツとそのお友達のノリスは3位以下を大きく引き離し始めました。ペース的には2位のノリスの方が余力がありそうですが、ココは抜けそうで抜けないソチ、レース序盤でタイヤを酷使するわけにもいきません。じわりじわりと近付き、ノリスは13周かけてトップ復帰へ。ポールトゥウィンの可能性を自ら引き寄せています。
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同じく13周目に3位以下の「動かぬひと塊」は4位ストロールを皮切りに翌14周目に3位ラッセルが動きをみせ、15周目にサインツもピットへ。

こうなれば速いマクラーレンの前が開けます。暫定2位のリカルドがハミルトンの行く手を阻み、ノリスに余裕を与えてあげるのが仕事。
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先日のイタリアGPでは久々の優勝を得たわけだしね、今回は立場が逆。連勝に向けてマクラーレンがしっかりワークスを抑え、往年のトップチーム復帰にまた近付こうとしています。

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23周目にメルセデスはフェイクで立ちはだかるリカルドのピットを誘発し、ハミルトンがノリスに対して猛チャージ。ひとまず追えるだけ追って27周目にハードタイヤへ。
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同じ周回にフェルスタッペンとピットロードでニアミス。今回はこれ以上に触れ合う心配はないかな。
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ハミルトンはピットでモタついたリカルドをオーバーカットして暫定9位へ。
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フェルスタッペンはダラつくラッセルの後ろとなる暫定12位で復帰。トップ争いにばかり目を向けているうちに、何気にフェルスタッペンもリカバリーしているんですよね。ソチの最後尾から何位でフィニッシュできるのか。ちなみにトップのノリスは29周目にハードを履いて1回ピットストップ勢3人に続く暫定4位(実質トップ)で復帰しています。

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やっぱりドライの決勝レースとなるとペースで敵わないか、30周目のストレートエンドとなるターン2でハミルトンがサインツをかわして、いよいよ同じパワーユニットを積む「新旧イギリス人対決」の構図が出来上がります。ノリスよ、どうにか逃げて、踏ん張ってほしい。
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そうそう、それでいい。ファステストラップで逃げる。

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46周目のノリスの背後に黒い影。あわせてスタンドは慌ただしくレインコートや傘が開き始めます。予想通りの雨が到来か。
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あれ、2.5秒のギャップを築くノリスがいない。
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おいおい、驚かさないでくれよ!ただでさえ使い込んだドライタイヤで足元をすくわれ始めました。雨のノリスだろ、ココで踏ん張らなければ初優勝は無いぞ?!
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雨足は強くなり、3位ペレスに45秒の空間をもつハミルトンは残り4周でインターミディエイトを履くことを決断。
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優勝しか見えていないノリスに選択の余地は無く、頑なにステイアウトを固辞。ハミルトンとの差は15秒あるものの、果たしてこの雨でハミルトンの追い上げが勝つか、ノリスの逃げ切りが勝つか、天とノリスの腕に全てが託されました。
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あーあ、オーバーラン。やっぱりダメだったか。。観念したノリスはようやくピットロードへ。
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こっちもオーバーラン。
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悲願の初優勝を目前まで掴んだのに、最終盤でこんなオチが待っていたとは。。

祝福するのも正直悔しいけど、ハミルトンはキリ番となる100勝目をようやく達成。また何位まで浮上してくるか見ものであったフェルスタッペンはこの波乱をうまく使い、何と2位フィニッシュ。何だかんだで「いつもの2人」が並ぶんですな。

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《決勝結果》
 1 ハミルトン   (メルセデス・M)
 2 フェルスタッペン(レッドブル・H)
 3 サインツ    (フェラーリ・F)

《ファステストラップ》
 ノリス(マクラーレン・M)1分37秒423
《ドライバー・オブ・ザ・デイ》
 ノリス(マクラーレン・M)

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《miyabikunの選ぶドライバー・オブ・ザ・デイ》
 ノリス(マクラーレン・M)

そもそも今回の予選がドライ環境であれば、ポールポジション獲得も難しかったのではないかと思います(ドライならばおそらくハミルトン)タイヤチョイスに成功し、決勝スタートで一度順位は落としたものの、トラック上でしっかりサインツを捉え、ファステストラップで逃げる様子は見事だったと思います。予選、決勝、ファステストラップ、そして本家のドライバー・オブ・ザ・デイ獲得を総ナメにしたノリスのポテンシャルと頑張りを大きく知らしめられた「ノリスGP」でした。それもあって、最後の選択ミス、意固地は悔やんでも悔やみきれません(この後の「ワースト」に続く)
ほか、しばらく勝利から遠ざかっていたハミルトンの決断とそのタイミングでライバル(ノリス)の手数を封じた走りは100勝目に相応しい底力を感じましたし、ロシアは捨てレースかと思われたフェルスタッペンも「恵みの雨」として2位を獲得したのも立派でした。

《miyabikunの選ぶ「ザ・ワースト」》
 ノリス(マクラーレン・M)

ベストドライバーでありつつも、こちらでもノリスを敢えて選びました。ワーストと表現すると角が立つし、適切ではないかもしれませんが、やはり言わずと知れたあの「判断ミス」に尽きます。チームは順位よりも悪化するトラックの状態から「最悪なケース」になることを避け、安否を気遣う指示を再三送っていました。しかし優勝しかみえていない、言い方を変えれば優勝するにはステイアウトするしかない状態におかれたノリスは「自分の腕」を信じて突き進みました。私達ファンや側からみている者からすれば、先日のベルギーGP予選のこともありますし、タイヤ交換に向かって確実な2位を獲得し、今後また訪れるであろう初優勝のチャンスを狙った方が賢明だと考えてしまいます。ただそれができなかった。目指せ1勝目に対して今回100勝目を達成したハミルトンとの差は「経験値の少なさと若さ」だったと思います。ノリス本人が最も悔しく、判断ミスに対して大いに後悔していることと思いますが、ベルギーGPで学習し、このロシアGPでも痛いほど学習できたはずです。まだノリスにはこの先長いF1ドライバー人生があります。実りあるこの経験をしっかり発揮して、次こそ誰からも笑われない「初優勝の喜び」を味わってほしいと思います。

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《第15戦ロシアGPのポイント》
・雨を侮るなかれ。若気の至り。ただこれも勉強
・珍しく降った雨も結果的にはメルセデスの元へ
・雨も味方しフェルスタッペンの損失は最小限に
・ハミルトン、キリ番100勝達成おめでとう

スタート以降は比較的ダラダラにまったりしがちなロシアGPですが、予選の雨上がり、そして決勝終了間際の雨と、予想外の波乱やドラマを生んで「刺激的な」ロシアGPになりました。激化するチャンピオン争いに加え、若手の台頭がしっかり感じられる非常に印象的なレースだったと思います。

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イギリスの空はいつでもどんよりの曇り空、なんて例えがありますね。F1はこのイギリスのシルバーストンから始まりました。常に風の影響を受け、時には雨やタイヤバーストなどでレースに悪さをします。数多くの歴史が詰まったシルバーストンはどのような予選順位から優勝を重ねてきたのか。いつものようにみていきます。
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シルバーストンは皆さんよくご存知の通り、戦時中に使用していた飛行場の滑走路をサーキット化させたこともあり、周囲に高い建物や起伏は無いのどかな土地にあります。そうなれば、風を味方に走らせるF1マシンに対して、時には敵となって立ちはだかります。
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以前にも使った主要なサーキットレイアウト変遷図になります。ピンクは滑走路のあった位置を示し、F1制定初期は3本の滑走路の外周をぐるりと周回するストレートで構成された実に単純な4.649kmの高速サーキットでした。経年と共にシケインが設けられ、高速S字が設けられ、現代のレイアウトは滑走路の1本を活用したインフィールドセクションを追加して5.891kmまで延長されています。ただ高速サーキットである名残は残しつつ、テクニカルな要素も取り入れたことにより、タイヤに厳しく、近年ではタイヤバーストを度々招くことでも有名です。シルバーストンはいわゆる「F1マシンの総合力を試されるサーキット」と呼ばれたりもしますが、実際にはここ以外の他にもいくつかそんな呼ばれ方をするサーキットがありますね。

《シルバーストンの歴代優勝者の予選順位》
 50     ファリーナ ★             予選P.P.→優勝
 51     ゴンザレス                 予選P.P.→優勝
 52     アスカリ ★                予選2番手→優勝
 53     アスカリ ★                予選P.P.→優勝 濡
 54     ゴンザレス                 予選2番手→優勝 濡
 55 
 56     ファンジオ ★            予選2番手→優勝
 57
 58     コリンズ                    予選6番手→優勝
 59 
 60     J・ブラバム ★          予選P.P.→優勝
 61
 62
 63     クラーク ★               予選P.P.→優勝
 64
 65     クラーク ★               予選P.P.→優勝
 66
 67     クラーク                   予選P.P.→優勝
 68
 69     スチュワート ★       予選2番手→優勝
 70
 71     スチュワート ★       予選2番手→優勝
 72
 73     レブソン                   予選3番手→優勝
 74
 75     E・フィッティパルディ 予選7番手→優勝 濡
 76 
 77     ハント                       予選P.P.→優勝
 78 
 79     レガッツォーニ        予選4番手→優勝
 80 
 81     ワトソン                   予選5番手→優勝
 82 
 83     プロスト                   予選3番手→優勝
 84 
 85     プロスト ★              予選3番手→優勝
 86 
 87     マンセル                   予選2番手→優勝
 88     セナ ★                     予選3番手→優勝 濡
 89     プロスト ★              予選2番手→優勝
 90     プロスト                   予選5番手→優勝
 91     マンセル                   予選P.P.→優勝
 92     マンセル ★              予選P.P.→優勝
 93     プロスト ★              予選P.P.→優勝
 94     D・ヒル                    予選P.P.→優勝
 95     ハーバート               予選5番手→優勝
 96     J・ヴィルヌーブ      予選2番手→優勝
 97     J・ヴィルヌーブ ★ 予選P.P.→優勝
 98     M・シューマッハ     予選2番手→優勝 濡
 99     クルサード               予選3番手→優勝
 00     クルサード               予選4番手→優勝
 01     ハッキネン               予選2番手→優勝
 02     M・シューマッハ ★   予選3番手→優勝 濡
 03     バリチェロ               予選P.P.→優勝
 04     M・シューマッハ ★   予選4番手→優勝
 05     モントーヤ               予選4番手→優勝
 06     アロンソ ★              予選P.P.→優勝
 07     ライコネン ★          予選2番手→優勝
 08     ハミルトン ★          予選4番手→優勝 濡
 09     ベッテル                  予選P.P.→優勝
 10     ウェバー                  予選2番手→優勝
 11     アロンソ                  予選3番手→優勝 濡
 12     ウェバー                  予選2番手→優勝
 13     N・ロズベルグ        予選2番手→優勝
 14     ハミルトン ★          予選6番手→優勝
 15     ハミルトン ★          予選P.P.→優勝 濡
 16     ハミルトン               予選P.P.→優勝 濡
 17     ハミルトン ★          予選P.P.→優勝
 18     ベッテル                  予選2番手→優勝
 19     ハミルトン ★          予選2番手→優勝
 20-1 ハミルトン ★           予選P.P.→優勝
 20-2 M・フェルスタッペン 予選4番手→優勝

 ★はその年のチャンピオン
 「濡」は雨もしくはウェットコンディション

さすが最古のF1開催だけあって、昨年の二開催まで書き上げると長いですね。ただし、よくみてみると1955年から86年までの31年間は一年おきの歯抜け。イギリスGPは初年の50年から昨年2020年まで絶え間無く行われてはいるものの、55年から62年まではシルバーストンとエイントリーの交互開催。64年から86年はブランズ・ハッチとの交互開催だったため、F1の72年の歴史のうち、開催は55回(昨年の二開催を含む)にまで減ってしまいます。ちなみにF1での最多開催サーキットはイタリアのモンツァの70回(80年の1年のみ非開催)となります。
イギリスの空はグレーの曇り空。チラホラと「濡」マークがあるものの、言われるほどウェットばかりではありません。それよりも目につくのが歴代の優勝ドライバーの面々でしょうか。シルバーストンでの優勝者を多い順に挙げていくと

 7回 ハミルトン   (イギリス)7/98=7.1%
 5回 プロスト    (フランス)5/51=9.8%
 3回 クラーク    (イギリス)3/12=25.0%
     マンセル    (イギリス)3/31=9.7%
     M・シューマッハ(ドイツ)  3/91=3.3%

と続きます。同率は先輩格を上位に並べていますが、イギリスGPはイギリス人が滅法強いんです。え、今年に限ってそんな縁起でもないつまらん情報は要らないって?!大丈夫です、皆さんの多くがご期待の方も今年から母国GPが予定されていますし、昨年はしっかり勝っていますから(笑)

 予選P.P. →優勝:20回 36.4%
 予選2番手→優勝:16回 29.1%
 予選3番手→優勝:  7回 12.7%
 予選4番手→優勝:  6回 10.9%
 予選5番手→優勝:  3回   5.5%
 予選6番手→優勝:  2回   3.6%
 予選7番手→優勝:  1回   1.8%
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勝利者の予選内訳をみてみましょう。いつもながらポールポジションからの優勝、つまりポールトゥウィンが最多ではあるものの、予選2番手も55回中16回となかなか多めです。以降も現代でいうセカンドロウ、3番手や4番手も決して少ない訳でもなさそう。面白いのは7番手が最後尾優勝となっており、あくまで統計的な話をしてしまうと、予選8番手以下になったら優勝は、、無い。レースで極稀にある後方スタートからの大逆転劇はこのシルバーストンにおいて通用しなさそうです。やっぱり「総合力」を問われますからね、おこぼれやたまたまは許されません。

歯抜けとはいえ歴代で55回もあると、どこに注目したらいいか、特筆すべきレースを思い出したり観返すのも大変ですね。ここはシルバーストンにおける後方スタートからの優勝を2つピックアップすることにしました。まずは現状の最後尾優勝となっている75年第10戦を簡単に振り返ります。
イギリスの大スターであるスチュワートが引退した後のF1は若きチャンピオンであるE・フィッティパルディを筆頭に、天才肌のラウダ、ベテランのレガッツォーニやロイテマンが上位に君臨していました。このレースの予選はそれまで中団にいることが多かったシャドーのプライスがポールポジションを獲得。フェラーリのラウダはブラバムを駆るパーチェの後ろとなる3番手、チャンピオン経験者でマクラーレンのE・フィッティパルディは何と7番手に沈んでいます。
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決勝スタートはドライで始まり、2番手のパーチェがプライスを早々とかわしてトップに立ちます。ところがレース中盤に雨が降り出したと思ったらまた上がるという不安定な空模様が続きます。
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ドライタイヤで走り続ける者やウェットタイヤに履き替える者が入り乱れ、クラブやストウではみ出してクラッシュするマシンが続出。各コーナーの外側には次から次へと吸い込まれるようにマシンがグラベルに溜まっていきます。着実に順位を上げるE・フィッティパルディは終盤となる68周レースの56周目に意を決してウェットタイヤにスイッチ。
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その直後、続出するリタイヤと強い雨足によりレース続行不可能と判断、トップを走るE・フィッティパルディがコントロールラインに到達してレース終了となったため、雨を味方につけた予選7番手からの優勝を果たしました。
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もう一つ、こちらは一気に近代まで飛び2014年第9戦に行われたイギリスGPです。パワーユニットをはじめ勢力図の大転換を迎えたこのシーズンのこのレースもフロントロウは好調のメルセデス2台で決まり、と思われていました。
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しかし予選Q3で雨により足元をすくわれたハミルトンはタイム更新に挑まずマシンを降りてライバルを待つ選択をします。
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その選択が仇となって次々とタイムを上回られ、結果的に相方N・ロズベルグがポールポジションを獲得。さらには当時のチャンピオンであるレッドブルのベッテルやマクラーレンのバトンにまで先行され、ハミルトンは6番手スタートとなりました。
決勝は晴れ、シルバーストンを得意とするハミルトンの追い上げに注目が集まります。
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ハミルトンのスタートは冴え渡り、1周目で2台をかわして早々に4位浮上。中団を走るフェラーリのライコネンの大クラッシュのため、レースは赤旗中断となるものの、レースが再開すると、マクラーレンの若手マグヌッセン、バトンと容易くパスし、4周目にしてロズベルグとのタイマン対決に持ち込んでいきます。
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お互いにファステストラップを出し合って頂上決戦が続くと思いきや、レース半ばの29周目にトップのロズベルグが力尽きリタイヤ。意外と呆気なく6番手スタートのハミルトンが予選の体たらくを自らしっかりリカバリーしてしまいました。このあたりがハミルトンだからこそなせる業か。75年も14年も予選や決勝の雨絡みによる番狂わせとなりました。雨のレースは個人的にあまり好みませんが、シルバーストンは風と雨によって演出されるレースが多くあります。
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今までのイギリスGPといえば、シーズンの折り返しというイメージがありました。しかし今シーズンはまだ前半戦。勢力図の入れ替わりが期待できるシーズンの伝統シルバーストンを制する者や如何に?!

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今週末はレッドブルリンクでの二連戦目となります。先日このレッドブルリンク編はやってしまいましたし、かといって何もやらないのも勿体無いので、今回はこのタイミングでカナダGPの舞台であるジル・ヴィルヌーブサーキットでの優勝者の予選順位をまとめてみました。本来であればカナダGPは第6戦アゼルバイジャンGPの翌週6/13に決勝レースが予定されていました。そこがこのご時世で2年連続の中止となったため、フランスGPを繰り上げ、オーストリアでの二連戦という形になりました。miyabikun個人的には日本との時差は辛いけど、カナダGPは毎回何か荒れるし、サーキットの景色も綺麗なので好きなだけに残念でした。せめてこのブログの中だけでもカナダGPを開催させてあげたいなという思いです。

カナダGP自体の歴史は古く、1967年にオンタリオ州のモスポート・パークで開催されたのが発祥です。以降ケベック州のモン・トランブランでの開催をまじえて行われ、76年のモントリオールオリンピックのボート競技で使用された跡地の公園の周回路を使ったジル・ヴィルヌーブでの開催が定着するようになりました。このサーキットは開催当初はセント・ローレンス川の中洲の名前の通り「イル・ノートルダム」という名前で呼ばれましたが、地元の人気ドライバーであるG・ヴィルヌーブが初開催初優勝を挙げ、82年のベルギーGP予選で命を落としたこともあって、サーキット名を改称し現在に至ります。
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サーキットレイアウトは原型は保ちつつも時代によって軽微な変更を繰り返してきました。以前にも使った図の青線は最も古いレイアウトになりますが、コントロールラインを示すチェッカーフラッグの位置が今と異なり、ターン10のヘヤピンを通過した先、ストレートの手前にありました。現在の位置に移動したのは88年からとなります。
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02年を最後に現レイアウトになって久しいですがサーキットの「行きと帰り」で2種類の顔を持つレイアウトとなっています。「行き」は右へ左へ度々振られながら、浅いランオフエリアを突き進む区間が続きます。モンテカルロ市街地顔負けのギリギリさ。
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追い抜きは場所を選びますが、ライン採りの正確さはもちろんのこと、マシンのグリップやトラクション性能を問われます。
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ターン10にあたるヘヤピンを最深部として折り返す「帰り」は最終のシケインを除けばほぼストレートです。行きで忙しくしていた分、帰りはちょっとだけステア作業を休められます。ただ安心はできません。コントロールライン手前に近付くと、直進するピットレーンに対して本線は右側にシフト、壁スレスレを左に折れるシケインがあります。ココではフリー走行をはじめ予選、決勝でも多くのドライバーが壁の餌食となり、マシンを大破させていきました。
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その多くはストレートでのオーバースピードや一つ目の右の内側縁石への使い方を誤るケースです。ちょっとした気の緩みが制御不能から「即スクラップ」に繋がります。

長いストレートを有しつつも「行き」区間の右左右左の影響もあって、平均速度はさほど高くありません。先日記載した平均速度調べによると、86年以前の開催初期は180.5km/h、87年以降の近代までで205.9km/hとなっており、メキシコGPエルマノス・ロドリゲスの203.9km/hやアブダビGPヤス・マリーナの203.5km/hに近い水準。低速で名高いハンガロリンクより少し速く、今シーズン既に行われたバクー市街地やカタロニアに少し及ばないような速度域となります。
ブレーキを酷使し、さらにはストップアンドゴーを繰り返しますから、燃費も非常に悪いです。近年のF1はレース中の再給油を認めていませんので、ライバルに近付かれないようにしつつリフトアンドコーストを使って燃費管理も必要と、ドライバーのやること、注意点は多いです。

《ジル・ヴィルヌーブの歴代優勝者の予選順位》
 78 G・ヴィルヌーブ   予選3番手→優勝
 79 ジョーンズ     予選P.P.→優勝
 80 ジョーンズ ★      予選2番手→優勝
 81 ラフィ       予選10番手→優勝 濡
 82 ピケ(父)     予選4番手→優勝
 83 アルヌー      予選P.P.→優勝
 84 ピケ(父)     予選P.P.→優勝
 85 アルボレート    予選3番手→優勝
 86 マンセル      予選P.P.→優勝
 87 
 88 セナ ★         予選P.P.→優勝
 89 ブーツェン     予選6番手→優勝 濡
 90 セナ ★         予選P.P.→優勝 濡
 91 ピケ(父)     予選8番手→優勝
 92 ベルガー      予選4番手→優勝
 93 プロスト ★       予選P.P.→優勝
 94 M・シューマッハ ★ 予選P.P.→優勝
 95 アレジ       予選5番手→優勝
 96 D・ヒル       予選P.P.→優勝
 97 M・シューマッハ ★ 予選P.P.→優勝
 98 M・シューマッハ   予選3番手→優勝
 99 ハッキネン ★      予選2番手→優勝
 00 M・シューマッハ ★ 予選P.P.→優勝 濡
 01 R・シューマッハ   予選2番手→優勝
 02 M・シューマッハ ★ 予選2番手→優勝
 03 M・シューマッハ ★ 予選3番手→優勝
 04 M・シューマッハ ★ 予選6番手→優勝
 05 ライコネン     予選7番手→優勝
 06 アロンソ ★       予選P.P.→優勝
 07 ハミルトン     予選P.P.→優勝
 08 クビカ       予選2番手→優勝
 09
 10 ハミルトン     予選P.P.→優勝
 11 バトン       予選7番手→優勝 濡
 12 ハミルトン     予選2番手→優勝
 13 ベッテル ★       予選P.P.→優勝
 14 リカルド      予選6番手→優勝
 15 ハミルトン ★      予選P.P.→優勝
 16 ハミルトン     予選P.P.→優勝
 17 ハミルトン ★      予選P.P.→優勝
 18 ベッテル      予選P.P.→優勝
 19 ハミルトン ★      予選2番手→優勝
 20

 ★はその年のチャンピオン
 「濡」は雨もしくはウェットコンディション

1978年からの開催なので、データ数も多いですね。miyabikunや現役最年長のライコネンよりもちょっぴり先輩。近年2年以外にもカナダGP自体が行われなかったのが87年と09年の2回あります。
ジル・ヴィルヌーブ(当時はイル・ノートルダム)サーキットの初回優勝には地元のジル・ヴィルヌーブが輝いています。それも自身初優勝が地元とくれば、カナダとして誇らしい歴史です。優勝者のラインナップは★マーク付きのチャンピオンも多く、いつもながらのドライバーが名を連ねていますが、近年に目を向けても、チャンピオンであるあの方の名前がありません。G・ヴィルヌーブの息子、J・ヴィルヌーブがいません。J・ヴィルヌーブは96年にファステストラップを獲得するも、決勝最高位は2位止まりで、10回参戦で優勝を挙げることはできませんでした。
全40回のうち、近年特にM・シューマッハとハミルトンの名前が目立ちます。両者はこのサーキット最多タイの7回の優勝を挙げています。割合にすると全体の35%がこの2人というのも恐ろしい。また初優勝もチラホラみられ、先程のG・ヴィルヌーブ以外には89年の濡れた路面で終盤粘り勝ちしたブーツェン、昨年「過去のレース」でも振り返った95年のバースデーウィンとなったアレジ、07年はデビューわずか6戦目のハミルトン、BMWザウバーを初優勝(唯一優勝)に導いた08年のクビカ、そして上級クラスに進級して間も無く先輩より先にシーズン優勝を果たした14年のリカルドと6人も輩出しています。

 予選P.P.   →優勝:19回 47.5%
 予選2番手  →優勝:  7回 17.5%
 予選3番手  →優勝:  4回 10.0%
 予選4番手  →優勝:  2回   5.0%
 予選5番手  →優勝:  1回   2.5%
 予選6番手  →優勝:  3回   7.5%
 予選7番手  →優勝:  2回   5.0%
 予選8番手  →優勝:  1回   2.5%
 予選10番手→優勝:  1回   2.5%
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一昨年19年までの開催回数は全40回なので、割合もまあまあキリのいい数字になります。最多はいつもながらのポールポジションでおよそ半分の19回、47.5%でした。フロントロウウィンは26回、65.0%となりますが、以降も9番手スタートを除いて10番手までポツポツとウィナーがいます。先日のレッドブルリンクほどではありませんが、ポールポジションやフロントロウ以外からも優勝がある印象を受けます。

全ての後方スタートをみていくことはできませんが、いくつかをピックアップしたいと思います。まず開催4回目となる81年は画像からもわかるくらいビタビタに濡れたウェットレースとなりました(今とはコントロールラインの位置が異なります)IMG_0438
ブラバムを駆るポールポジションのピケはスタートで鈍り、前年80年チャンピオンで3番手スタートのジョーンズ、2番手のロイテマンのウィリアムズコンビに先行を許してしまいます。その後、トップのジョーンズがスピン、代わってトップに立つプロストも脱落。着実にウェット路面で順位を上げるリジェのラフィが10番手スタートからシーズン2勝目を挙げています。

89年は開幕から6戦連続ポールのかかったマクラーレンのセナをチームメイトのプロストが上回ってのポールを獲得。決勝スタート直前で雨は上がったものの、ドライに変わりつつある状況からまたも雨が降り、解読の難しいタイヤチョイスを問われました。多くのスピンやクラッシュにより一台、また一台と脱落する中、雨に強いセナがトップを快走しますが、69周レースの66周目にホンダエンジンが根を上げ、代わってトップに立ったウィリアムズのブーツェンが当時最遅となる参戦96戦目にして初優勝を挙げました。
IMG_0439

時代は一気に近代まで飛び、05年のカナダGPはドライ、それも路面温度50℃を超える環境で「1アタック予選」が行われ、ポールポジションはBAR・ホンダのバトンが獲得しました。
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決勝スタートではセカンドロウのルノー2台の猛ダッシュが決まり、フィジケラ、アロンソのオーダーに代わります。燃料をたっぷり積んだルノーはピットを引っ張る作戦に出ますが、予選を中団で終えたマクラーレンも同様の作戦であることが判明、ルノーとマクラーレンはピットを合わせこんできます。チームメイトバトルに負けたフィジケラが戦線離脱すると、トップのアロンソはマクラーレンのモントーヤにまくし立てられた際にウォールにヒットしスローダウン。マクラーレンのワンツーに代わります。ポールのバトンのクラッシュによりセーフティカーが入り、その間に2位に浮上したライコネンがピットイン、ステイアウトしたモントーヤは遅れて入っことが裏目となりピットレーンの信号無視で黒旗失格。ライコネンが7番手スタートから大逆転勝利となりました。
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以前「過去のレース」でも振り返ったことのある11年は当時F1界を席巻したレッドブルのベッテルがフェラーリを凌駕しポールポジションを獲得。決勝は予報通りのウェット路面。マクラーレンで予選5番手のハミルトンと7番手のバトンが同士討ちを皮切りに「荒れ模様」が始まります。徐々に雨足が強くなり、2時間の赤旗中断。
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再開後も各所でアクシデントがありつつ、ペナルティ含め6回ピットをこなしたバトンがファイナルラップでコースオフしたベッテルをかわし、7番手から4時間超えのレースを制しています。
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これ以外にも荒れる要素の一つとして雨が影響しています。ようやく上記「濡」表記が役立ったように感じます(笑)また先程書いた初優勝6人のうち、07年のハミルトンを除いた5人は「ポールポジション以外からの優勝」となっています。このことからもこのサーキットは雨のほか新人や若手にチャンスが巡るGPであることが言えます。穏やかな緑が生い茂る川辺の都会公園はいざF1になると、悪天候や気の緩みからのクラッシュにより多くの波乱やドラマを生んできました。IMG_0447

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