今回の過去のレースは2001年第16戦にインディアナポリスで行われたアメリカGPです。決勝レース日は9/30だったわけですが、この年の9/11に世界を震撼させた「同時多発テロ」が起きた直後で、アメリカはおろか全世界的にもお祭り騒ぎがし難い状況下にありました。
特にアメリカでは大人数を集めるイベントは自粛する中、F1は予定通り敢行。チームやドライバーからも犯人の思惑に乗らず、むしろ国を奮い立たせる発言や行動が採られました。
ジョーダンから参戦していたアレジはこのレースで決勝出走200戦目を達成。マシンにはそれを祝う「200」の数字と星条旗が掲げられています。
2001年はこのアメリカGPを含め残り2戦。第13戦ハンガリーGPの段階でフェラーリのM・シューマッハが2年連続4回目のチャンピオンを獲得。次なる目標はドライバーズランキング2位以下の確定に絞られていきます。
予選はM・シューマッハがポールを獲得し、2番手にはマクラーレンのハッキネンが続きますが、そのハッキネンが翌日曜の決勝レース前のトラックインでピットの信号無視を冒し、最速タイムの除外、決勝スタートは急遽4番グリットに降格するという珍事が起きています。そのため、3番手につけたウィリアムズのR・シューマッハ、4番手のモントーヤが1グリッド繰り上がっています。
《予選結果》
1 M・シューマッハ
(フェラーリ ブリヂストン)
4 M・ハッキネン
(マクラーレン・メルセデス ブリヂストン)
2 R・シューマッハ
(ウィリアムズ・BMW ミシュラン)
3 J・P・モントーヤ
(ウィリアムズ・BMW ミシュラン)
※試験的に以前のものから表記を変えています
スタートは3番グリッドのモントーヤがよく、ターン1の進入でアウトからM・シューマッハを捕らえにいきます。
しかし4回チャンピオンは動じず、トップをしっかり守り抜く。
さらに活きがよかったのは5番スタートのバリチェロでした。2周目に入ったところでモントーヤのスリップストリームに入り、
ターン1のアウトからパス。早くもフェラーリのワンツー体制が成立します。
チャンピオンが獲れたらあとはどうでもいいM・シューマッハはバリチェロのランキング2位獲得を優先し、5周目に道を譲る。「世界最強の動く壁」の完成。
27周目にトップのバリチェロが1回目のピットに入ると、またもやM・シューマッハとモントーヤのバトルが始まります。貫禄たっぷりのモントーヤはこれでもF1でまだ1年目。日はめちゃ浅いけどキャリアと威勢がいいスタイル、この2人の絡みは面白かったですよね。
バンクってモンはなあ、
こうやって走るんだよ。
兄さんよう!
モントーヤはこのインディアナポリスでインディ500の覇者です。バンク使いはM・シューマッハよりベテランか。
こんな話をしていると、もう1人のシューマッハはタイヤの接続不良で順位を落としてからペースがどうもイマイチ。
36周目にテールを滑らせてジ・エンド。兄さんを超えられる日は果たして来るのかどうか。
そして威勢のよかったモントーヤは本人より先に38周目にマシンの方が息絶えてしまい、これにてウィリアムズ過激団も閉幕。
こうなれば前年2000年に三連覇を逃し、このシーズンは完全に脇役だったハッキネンが静かに台頭してきます。ハッキネンは46周目まで引っ張る1回ピット戦略を選び、これを済ませばチェッカーフラッグまでノンストップで行くつもり。
M・シューマッハはインフィールドセクションを終えて、これからバンクセクションに入ります。
ハッキネン間に合うか?!
M・シューマッハが来たー!さあどっち?!
ハッキネンが前でオーバーカット成功。
あとは50周目に2回ピットを行うバリチェロがどのタイミングで戻れるか。
心強い相方ね、実はさっきオーバーカットを食らって抜かれてしまったから、君に護衛はいないのよ。
2回ストップより、1回ストップが勝ち。ハッキネンが正真正銘のトップに立ちます。
トップを獲られたこと、バリチェロよりマシンが先に憂いたか、リヤから白煙がチラホラ。こうなっては攻めることはできないと、先程とは逆に攻守交代でM・シューマッハに道を譲り、
バリチェロのターゲットはハッキネンから4位走行のクルサードに変わる。色々お膳立てしても、エースはエースと、セカンドはセカンドとか。
残り2周にバリチェロのエンジンも白旗。トップから2周遅れとなる15位完走扱いでフィニッシュとなりました。
「どうしていつもこうなるんだ。。うーっ」
予選は2番手、グリッドは4番手、決勝で1位といつもは先行逃げ切りパターンの目立ったハッキネンがこのシーズン2勝目、通算20勝目を挙げました。
《決勝結果》
1 M・ハッキネン
(マクラーレン・メルセデス ブリヂストン)
2 M・シューマッハ
(フェラーリ ブリヂストン)
3 D・クルサード
(マクラーレン・メルセデス ブリヂストン)
前年までの3年間はずっとチャンピオン争いを演じ、勝つことが当たり前になっていたハッキネン。この年は珍しくポールポジションも届かず、表彰台登壇も厳しくなってきて精神的にも疲れたり傷付いたこともあったでしょう。前戦イタリアGPで休養宣言したことにより、心の中は軽く、穏やかになれたのかもしれません。この優勝がハッキネンにとってのF1での最終優勝であり、次戦日本GP終了以降、休養から再びF1の舞台に戻ることはありませんでした。「休養」としたのは我々ファンの気持ちを思ってのハッキネンなりの優しい表現だったのかもしれませんね。
ハッキネンの笑顔がいつもより輝き、嬉しそうにみえます。
今シーズンはベッテルが引退を決め、近い将来はハミルトン、そして現在ノリにノッているフェルスタッペンもいつかはこの時が訪れます。先日逝去したアントニオ猪木の病床での「最後の言葉」にもありましたが、ファンとしては「まだまだやれるよ、走ってほしい」という気持ちとともに、ドライバーを考えて「もう辞めていいんだよ。ありがとう、お疲れ様」という感謝の気持ちで優しく送り出すことも必要なのかもしれません。
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