F1の2023シーズン前半戦が終わって2週間が経ちました。またあと2週間経てば後半戦を迎えるわけですが、これより毎年恒例となっている前半戦の総括、まとめを行いたいと思います。例の如く今回は「予選編」と題して全13戦改め全12戦の予選データをみていきます。
まず振り返る前に一つだけ注意点があります。先程書いたように、本来であれば今シーズンは全24戦、前半戦は13戦が該当する予定でしたが、洪水の影響により第6戦に予定されていたエミリア・ロマーニャGPが中止となりました。F1公式ならびに各メディアでは「第6戦は中止として残しつつ、翌第7戦はモナコGP、ベルギーGPは第13戦」とカウントされているところを、当ブログは第6戦をモナコGPに繰り下げて記載しています。
《ポールポジション獲得者》
開幕戦 フェルスタッペン(レッドブル・HRB)
第2戦 ペレス (レッドブル・RBH)
第3戦 フェルスタッペン(レッドブル・HRB)
第4戦 ルクレール (フェラーリ・F)
第5戦 ペレス (レッドブル・RBH)
第6戦 フェルスタッペン(レッドブル・HRB)
第7戦 フェルスタッペン(レッドブル・HRB)
第8戦 フェルスタッペン(レッドブル・HRB)
第9戦 フェルスタッペン(レッドブル・HRB)
第10戦 フェルスタッペン(レッドブル・HRB)
第11戦 ハミルトン (メルセデス・M)
第12戦 ルクレール (フェラーリ・F)
※中止となった第6戦以降の付番は繰り下げています
〈ポールポジション獲得率〉
1 7回 フェルスタッペン(58.3%)
2 2回 ペレス (16.7%)
ルクレール (16.7%)
4 1回 ハミルトン (8.3%)
同じドライバーの名前が続くのにどうしても目がいってしまいますが、チーム単位でみるともっと多い数が続いています。これまでの最多はフェルスタッペンの12戦中7回、レッドブルが12戦中9回ポールポジションを獲得しています。毎回のことながら「予選はあくまで予選であり、大事なのは決勝。レースとなればどうなるかわかりません」と言いたいところが、、そのセリフの続きは決勝編までとっておきましょう。
フェルスタッペン以外のポールシッターをみてみると、ペレスがフェルスタッペン7回に対して2回。昨年の今くらいまでならば「予選といえばフェラーリそれもルクレール」だったものの、昨年の対フェルスタッペンとはまるで正反対の2回に止まる。また一昔前までのポールポジション製造機、メルセデスのF1キングことハミルトンがわず1回止まってしまっています。特にメルセデスについては昨年までの異色なマシンコンセプトである俗にいう「ゼロポット」を戻しても、予選の成績には即反映は果たしていません。
フェルスタッペンについては、開幕当初からライバルに対してアタマ一つ抜けたマシンの完成度であることだけではなく、雨が降ろうが乾こうが、市街地だろうがオールドサーキットだろうが、ストレートが短かろうが短かろうが、得意不得意か関係無く速く、ポールポジションを重ねてきました。いつもにも増して速さを披露。おまけに2番手以降に大差をつけてしまうもチラホラあるなど、まるで容赦、妥協一切無し。フェルスタッペンから今シーズンのF1がどう見えているのか、ライバルは何を苦戦しているのであろうと見えているのでしょうか?
《予選最速タイムと各チームとの差》
予選各セッション通してのトップタイム(必ずしもポールポジションタイムとは限らない)と各チーム最速タイムとの差をグラフ化しました。毎予選後に並べていたやつのグラフ化です。まずはタイム差をそのまま素直にグラフ化します。
上のグラフは単純なタイム差、下グラフは以前に何回か試しでつくったことのある「トップタイムを100%とした場合の割合」です。ちなみに縦に入る水色の帯は「ウェット及びインターミディエイトタイヤを使用したGP」を示し、黄色の帯は試験的施行された「ATAによるタイヤコンパウンド縛りのあるGP」を示しています。つまり、これら帯のかかる予選では、各チームのタイヤコンパウンドが揃わない状況下での比較となります。ベルギーGP、特にウィリアムズの遅れがとんでもないことになっています。タイム差にして14.146秒遅れ、113.32%とアルボンであろうが無かろうが比較しちゃいけない差です。もうちょい削ろか。
タイム差にして3.5秒、104%を上限にしても通常期の比較がし難い状態にあります。すぐにドライタイヤを導入したイギリスGPはともかく、インターミディエイトからドライのソフトに切り替わった予選タイムではこれだけの差を生み出してしまいます。今回は上位と下位の2グループに分け、グラフの尺度を変えてみたいと思います。
こちらが上位5チーム(レッドブル、フェラーリ、メルセデス、マクラーレン、アストンマーティン)で上限値を1.6秒、102%としたグラフとなります。各GPの順位入れ替えは当然起きませんが、タイム差と割合で若干グラフの見栄え、プロット位置が変わります。
先程も書いたように、このグラフの基準点(縦軸の0)は必ずしもポールポジションタイムとは限りません。基本はレッドブル、フェラーリ、メルセデスのポールシッターが基準点となるものの、第8戦カナダGPに限り、基準点は上位メンバーではない、ウィリアムズ(アルボン)のものとなります。青い帯、ウェット予選でタイム差が大きくなる中、第10戦イギリスGPのマクラーレンのみが異端で「ライバルを差し置いてトップ(レッドブル)に近付いている」のが目立ちます。チームの母国、マシンのアップデート、さらには若さが雨を吹き飛ばす程の勢いを持つのか。またフェラーリ、メルセデスら上位常連は上下動はありながらも大体0.6秒以内(カナダGPとベルギーGPを除く)におさまっていますが、アストンマーティンは前半戦の前半、マクラーレンは前半戦の後半にその中に混ざり、勢力図の変化を感じます。
続いて下位のグルーピングをした5チーム(アルピーヌ、アルファロメオ、ハース、アルファタウリ、ウィリアムズ)は上限値を3.5秒、104%としました。第12戦ベルギーGPは対象5チーム全てが枠内にプロットできていません(笑)
このグループで基本的に上位につけるのはピンクラインのアルピーヌになります。しかし第6戦モナコGPを除くと爆発的な差を築いたものは無くわむしろカナダGPでトップタイムを獲得したウィリアムズやハンガリーGPで0.362秒落ちまで迫ったアルファロメオの方がインパクトが強く感じます。アルピーヌって上手く例えられませんが「掴みどころやメリハリが無い」感じ。
〈予選最速タイムと各チームとの差の平均値〉
1 レッドブル・HRBPT 平均0.047秒
2 フェラーリ・F 平均0.375秒(+0.328秒)
3 メルセデス・M 平均0.619秒(+0.572秒)
4 アストンマーティン・M 平均0.686秒(+0.639秒)
5 マクラーレン・M 平均0.875秒(+0.828秒)
6 アルピーヌ・R 平均1.499秒(+1.452秒)
7 ハース・F 平均1.855秒(+1.808秒)
8 アルファロメオ・F 平均2.200秒(+2.153秒)
9 アルファタウリ・HRBPT 平均2.227秒(+2.180秒)
10 ウィリアムズ・M 平均2.347秒(+2.300秒)
それら平均値をさらにチーム単位で平均化したものを差について、下のグラフは昨年のコンストラクターズランキング順、上記は速い順に並べました。カッコ内の数字はトップタイムとの差を示します。
レッドブルは12戦中9戦のポールポジションに止まるわけですが、平均化してしまうとほぼ遅れ無し。今シーズンは予選でも地味なフェラーリも単独の2位となる平均0.375秒落ちで、何だかんだで安定?はしています。ちょっと波があるのはメルセデスとアストンマーティンの0.6秒落ちの2チームで、前半戦終盤に突如頭角を示し始めたマクラーレンが0.8秒落ちで追ってきています。メルセデスはともかく、アストンマーティンを今後食う可能性を感じました。
どっちつかずのアルピーヌはさておき、下位4チームはなかなか熾烈。先程見た雨の大幅ロスの影響を受けているグループになります。予選のハースはヒュルケンベルグ様々(決勝は別問題)、アルファロメオのベテランと若手コンビは共に似たような位置をさまよい、アルファタウリのエース角田は順位こそ健闘するもトップとのタイム差は大きく、ウィリアムズはサーキット特性に左右されがち、というツバ競り合い。
《予選平均順位》
続いて後半戦予選の平均順位をみていきます。予選ですから当然リタイヤは無く、必ず順位が付きます。いつものように予選後のペナルティを含まず、先日の第10戦イギリスGPのボッタスのような失格があった場合は「順位無しの20位扱い」とみなします。
〈ドライバー〉
あれ、トップがフェルスタッペンなのは想像出来ましたが、平均値は3.00位になっちゃうの?!意外に思われた方も多いかと思いますが、第2戦サウジアラビアGPは15番手、第5戦マイアミGPは9番手となったことが、本算定で悪さとなっています(第12戦ベルギーGPは「決勝でのグリッド降格ペナルティ」のためポールポジション扱い)2位は意外(なんて言うのは失礼ですが)フェラーリのルクレールでなくサインツが5.00位、3位は同率で「過去と現代のフェラーリエース」2人が平均5.58位で並んでいます。上から10番目、平均10.17位につけるアストンマーティンのストロールあたりまでがQ3進出常連クラスであり、以降の出来ではピアストリがその座を奪ってきそうか。
中団上位には「予選屋」ヒュルケンベルグが平均11.42位、昨年のビリチームであるウィリアムズのアルボンが平均12.92位、そして今シーズンのビリチームになりそうなアルファタウリは角田が平均13.92位で健闘しています。角田の相方で期待大きいデ・フリースは母数が少ないため単純比較はできないものの、後任の先輩リカルドにも平均値で既に負けてしまっています。まあブランクがあるとはいえリカルド はポールポジション経験もあるベテランですから、比較するのも可哀想ですが。
同じマシンに乗り同じ路面状況下でマシンのポテンシャルを十二分に発揮すれば、理論上は似たようなタイムと順位で走れていいはず。チームで似たような順位にいるのがフェラーリ、メルセデス、アルファロメオの2人であり、逆に差がついてしまっているのがレッドブル、アストンマーティン、ハース、アルファタウリの2人でしょうか。犯人探しをするわけではありませんが、この後のデータでそれが丸裸になってしまいます。
〈コンストラクター〉
コンストラクター(チーム)単位の平均順位はこうなります。先程のチーム内格差が大きいと、一人が好調でももう一人に引っ張られてこちらの平均値を下げることとなります。
トップはレッドブルでなくフェラーリに代わります。ドライバーズではフェルスタッペンが1位でしたから、その原因はやっぱり、、そうペ◯スです。フェラーリは今シーズン地味でも派手にもやらかしていないため、このような位置付けに。トップでも平均値は5.29位と、平たく言えばそつがない。また大活躍アロンソ様があっても、参戦7年目の「研修生」がなかなかついていけず、メルセデスに順位を明け渡しています。
中団はマクラーレンとアルピーヌが相変わらずバチバチやっています。ただ繰り返し、マクラーレンは若手2人が覚醒、再建モードの兆候があるため、アルピーヌは迷走から早く抜け出さないと置いていかれます。下位4チームはやはりハースがヒュルケンベルグ効果でアタマ一つ前におり、ビリはアルファタウリとウィリアムズが僅差でバトル中。ドライバー経験値はアルファタウリがやや有利ではあるものの、ウィリアムズはメリハリあるマシン特性を有しているため、ワンチャンはウィリアムズ寄りか。いずれにしても、ウィリアムズはアルボン1人の腕にかかっています。
《ドライバー別グループ別予選順位変遷》
予選順位を3つのグループに分け、順位を折れ線グラフで示します。3つのグループ分けについては「この人はこのグループじゃないだろう」という腑に落ちないものもあるかと思いますが、miyabikunの好き嫌いではなく、意図したものであることをご了承下さい。
上位は昨年の上位であるレッドブル、フェラーリ、メルセデスによる3チーム6人になります。成績だけでいえば、レッドブル(もっといえばフェルスタッペン)はこのグループとは別に設けるべきですよね。それはチャンピオンとて生意気なので止めました(笑)
6人全員がQ3進出クラス常連ではありながら、中にはグラフが上下にブレて定まらないドライバーも見受けられます。一番目立つのは紺色の破線、レッドブルのセカンドを示しますからそれはペ◯スということになります。第2戦サウジアラビアGP、第4戦アゼルバイジャンGPはポールポジションを獲得していますから、ずっと悪いわけではない。ただ、前半戦の終盤、ヨーロッパラウンド本番に入ってからが絶不調でした。決勝レースがよければ予選なんぞ何番手であってもいいのですが、上位フィニッシュを目指すには自ずとパスする対象が増えます。やはり近代F1では上位グリッドからスタートした方がいいに越したことはありません。逆に一番浮き沈みが少ないのは、ポールポジションこそ無いものの、赤の破線、フェラーリのサインツでしょうか。ATA導入のハンガリーGPはQ2敗退しますが、地味でも安定。
今年の中団扱いは3チーム、アルピーヌ、マクラーレン、アストンマーティンによる6人です。ここの分け、悩みましたし違和感を覚えるところかと思います。アロンソに関しては先程の上位グループとみるに充分な成績ですし、前半戦の後半戦にあたる第9戦オーストリアGP以降のマクラーレンはフェラーリやメルセデスよりよっぽど上位に値します。ただこのグループ分けにした理由は今シーズン前半戦の「成績の浮き沈みがよくわかるグループ」だと思い、敢えてこのラインナップとチーム分けにしました。
前半戦の前半戦は緑の破線、アストンマーティンのアロンソ様が実にお元気でいらっしゃいます。全12戦において全てQ3に進出されるところはさすがです。しかし前半戦の後半戦に入ると、やや息切れされたのか、若手に追いやられているご様子をお見受けできます。その若手がオレンジラインの2人、マクラーレンのピチピチコンビが台頭してきています。出足は鈍いながらノリスはQ3進出をコンスタントに果たす中、マシンアップデートを入れた直後から新人ピアストリが猛威を振い始めます。第10戦イギリスGP、第11戦ハンガリーGPはノリス先輩の背後にピタリとつけ、ベルギーGPの予選ではいよいよ上回ることに成功しています。またココには表現できていませんが、ベルギーGPのスプリントシュートアウトではフェルスタッペンに次ぐ2番手を確保するなど、成長が著しい。アストンマーティン、マクラーレンの出来栄えに比べると、仲良しフレンチ軍団アルピーヌの2人はだいぶおとなしく、安定感も少なめ。そういえばピアストリって、昨年までアルピーヌで半決まりだったんですよね。どちらが正解だったのかな。
下位は今回最も多い4チーム8人に加え、途中のスイッチにより復帰を果たしたアルファタウリのリカルドをデ・フリースとは別の扱いをした計9人で構成されています。よって、見辛いかと思いますがデ・フリースの戦は第10戦イギリスGPで途切れ、第11戦ハンガリーGPからは別のパーソナルカラーでリカルドのラインが始まります。
このグループはQ2突破、Q3進出で拍手喝采となります。目立つのは第8戦カナダGPでのヒュルケンベルグの2番手、第5戦マイアミGPのマグヌッセンの4番手を筆頭に、ハンガリーGP予選が異様によかったアルファロメオの2人、土俵際でQ3にギリギリ入るウィリアムズのアルボン、エースの風格が漂うアルファタウリの角田あたりの健闘。ブランクが懸念されたリカルドもひとまず前任者よりも上位でスタートを切れましたので安泰でしょうか。
《チーム内対決》
予選編の最後はチームメイト対決です。単純にペナルティ降格前の純粋な予選順位で勝敗を決めます。後半戦は全13戦改め全12戦となったため、6勝6敗の引き分けというケースがあり得ます。
チーム内格差が大きかったのは、ウィリアムズの12対0。続いてレッドブル、マクラーレン、アストンマーティンの10対2。ハース、アルファタウリの9対3です。レッドブルはもっと極端な結果になるかと思いきや、ペ◯スも2回ポールポジションを獲っていますのでしっかり勝てているGPもあります。ちなみにアルファタウリの内訳は、角田対デ・フリースは8対2、角田対リカルドは1対1となっています(後半戦は10戦が予定されていますので、現時点でリカルドに対して勝ち越しが決まっているわけではありません)
接戦なのはアルピーヌのオコン6勝、ガスリー6勝、仲良し(笑)メルセデスのラッセル5勝とハミルトン7勝、アルファロメオのボッタス7勝と周の5勝。定まらないラッセルに対してハミルトンは文句言いつつも何気に復調がみられますので、先輩の面目は保てそうですが、アルファロメオは周の安定さとボッタスの締まりの無さが感じられるため、後半戦にシェアが変わる可能性もあります。最近のボッタスは昨年までのベッテルの晩年にもみられた「遠くを眺める様子」をよく捉えられていますので、もしかしたら別のことを考え始めていたりして。
今回はポイントには直結しないシーズン前半戦「予選」に関するデータ集、まとめでした。
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