先日ウィリアムズのマッサがF1引退を表明し、マクラーレンのバトンは来期のシートをS・バンドーンに譲り、裏方にまわる事を発表しました。バトンについてはF1引退ではなく、またレギュラーシートに復帰する可能性もあり得るなどの憶測が飛び交っていますが、個人的にはもうそのまま表舞台からフェードアウトしていくんだろうなと予想しています。2018年に復帰するならまた若手のバンドーンの行く手を阻んでしまうし、同じベテランのアロンソが先にチームを離脱することが前提になりますしね。アロンソはバトンより1歳、日本でいう2学年下になります。キャリアの長さや実績から考えても、アロンソよりバトンが退く方が先かなと考えてしまいます。

バトンは1980年生まれの36歳、マッサは1981年生まれの35歳です。まさしく自分と同世代の引退、第一線から退く話が出て、この歳ではF1の世界では引退なんだなと、他人事ではない話題でした。スポーツの世界ですから体の衰えや立場、今後の発展のために若手に引導を渡さなければならないだろうし、それが例えサラリーマンであっても同じ事が言えるから仕方がない事ですが。
F1ドライバーって何歳まで現役でいられるんだろう、と考えて今回は先日からのデータで「優勝経験者がF1引退した年齢」をみて「ドライバーの定年と継続できる年数」がどのくらいか調べてみました。


今回は1勝以上した事のある104人のうち現役が9人、現役でもマシンを降りる事が決定しているマッサとバトンを含めた合計97人を調査対象にしています。また、年齢は最終レース時点を採用しました。

引退レース時の平均年齢は35.87歳となっています。マッサやバトンの年齢が確かに大体のボーダーラインでした。
この歳の中に様々な引退理由があります。トップドライバーは「もう辞めたい」と自分の意志で決めて降りた者も少数派でいますが、引退の多くは乗るマシンやチームが見つからずにF1から身を引く形となる者がほとんどです。また、異例というかあまりあってはならない事、レース中の事故により再起できない怪我で引退せざるを得なかった者や死亡による者もいます。


引退するタイミングが時代によって違う場合もあります。F1創成期はデビューも優勝もチャンピオンも年齢が今より高めです。時代毎に区切ってみてみます。さらに参考までにデビュー年齢と勤続年数も当たったのでオマケで記載します。

1950年代引退 対象12人
   デビュー平均32.08歳 勤続5.83年
   F1引退平均37.92歳

1960年代引退 対象16人
   デビュー平均26.25歳 勤続8.19年
   F1引退平均34.44歳

1970年代引退 対象20人
   デビュー平均26.00歳 勤続8.95年
   F1引退平均34.95歳

1980年代引退 対象19人
   デビュー平均27.21歳 勤続9.37年
   F1引退平均36.58歳

1990年代引退 対象10人
   デビュー平均25.30歳 勤続11.90年
   F1引退平均37.20歳

2000年代引退 対象11人
   デビュー平均24.27歳 勤続10.82年
   F1引退平均35.09歳

2010年代引退 対象9人
   デビュー平均22.33歳 勤続12.56年
   F1引退平均34.89歳

通算 対象97人
   デビュー平均26.21歳 勤続9.66年
   F1引退平均35.87歳

こうして時代別にみてみると、1950年代は少し異例ですが、1960年代以降は概ね25歳前後にデビューし、10年程F1ドライバーとして勝利を収めて35歳前後で引退している事がわかります。F1ドライバーとして「オイシい期間」はたったの10年程度なんですね。厳しい世界です。
興味深いのは、引退する歳は時代に大きな差はなく、1990年代引退(それらのデビューは1980年代)から一気に若年齢化し、それに伴って現役ドライバーでいられている期間も伸びている事です。先日ブログでも書いた、近年ではフェルスタッペンをはじめとした最年少記録の塗り替えが頻発しています。もちろん昔とは年間レース数だけでなくマシン自体の機構や肉体への負担、レギュレーションに違いもあるので一概に比較はできませんが、もしかしたら現代のドライバーの方が長く活躍しやすい環境にもなっているはずです。


最後に現役ドライバーの30代を年齢順に並べてみました。
   ※データは2016年第14戦終了時点

K・ライコネン 36歳
   1979年生まれ 2001年デビュー
   14年目 246戦参戦(歴代8位)
   2017年はフェラーリ(継続)の予定

J・バトン 36歳
   1980年生まれ 2000年デビュー
   17年目 300戦参戦(歴代3位)
   2017年はマクラーレン(非レギュラー)

F・マッサ 35歳
   1981年生まれ 2002年デビュー
   14年目 245戦参戦(歴代9位)
   2017年はF1ドライブせず(F1引退)

F・アロンソ 35歳
   1981年生まれ 2001年デビュー
   15年目 267戦参戦(歴代4位)
   2017年はマクラーレン(継続)の予定

L・ハミルトン 31歳
   1985年生まれ 2007年デビュー
   10年目 181戦参戦(歴代21位)
   2017年はメルセデス(継続)の予定

N・ロズベルグ 31歳
   1985年生まれ 2006年デビュー
   11年目 199戦参戦(歴代18位)
   2017年はメルセデス(継続)の予定

R・グロージャン 30歳
   1986年生まれ 2009年デビュー
   6年目 97戦参戦(歴代74位)
   2017年はハース(継続)の予定

引退が決まっているドライバーを除くと、優勝がないのはグロージャン1人、チャンピオン未経験は「今のところ」ロズベルグを含めて2人で、他3人がチャンピオン経験者です。ベッテルは長くF1で活躍していますが、デビューが若かったこともあってグロージャンより歳下の2016年現在はまだ20代です。苦労したグロージャン以外は皆10年超えでライコネンとアロンソはボーダーラインの平均年齢を上回る歳です。
グロージャンは今のハースのままでは優勝までまだ数年を要しそうです。是非トップチームに昇格して優勝やチャンピオンを目指して欲しいし、ボーダーラインを超えた2人、ライコネンとアロンソには経験豊富でチャンピオンも獲得した「若手の見本と励み」になる走りで頑張って欲しいと願っています。