日本GPを前にもう一つ日本GPを振り返っておきましょう。2週連続の限られたタイミングに無理矢理差し込みました。このあげまんがバックにいたら結果を出さないわけにはいかない2000年の日本GPです。自身もこのレースは逆バンクから生で観ていました。土曜日も大学があったため予選はテレビ観戦で我慢し、土曜夜に東京から「ムーンライトながら」に乗って友達と四日市駅ホームで仮眠、帰りはずぶ濡れで白子駅まで歩くというハードスケジュールでした。当時はフェルスタッペンと同い年だからできた。今はライコネンの歳なので、できないだろうな。もう徹夜はできません。したとしても翌日が本当に使い物にならん。ありがとう、体育の日!

2000年を振り返るのは3レース目です。序盤でフェラーリのM・シューマッハが幸先よくリードし、逆にマクラーレンのハッキネンが精彩を欠くレースが続き、後半戦のオーストリア、ハンガリー、そして以前に振り返ったベルギーのスーパーパッシングで何とかチャンピオン争いに食らいついて、この鈴鹿を迎えています。毎年この鈴鹿でチャンピオンを決め、2年連続チャンピオンとなったハッキネンと、移籍5年目でそろそろ真価を発揮したいシューマッハの一騎打ち。歳もF1デビューもほぼ同じ、四天王の次の世代の2人はどちらが先に3回チャンピオンを獲得するのか?!

7年前となる前回の1993年も予選から白熱していましたが、この年も予選からすごいです。ずシューマッハがマクラーレンのクルサードの出した暫定トップタイムを0.539秒上回る1分36秒094で格の違いを見せつけてます。
続いてハッキネンがそれを0.077秒上回る1分36秒017で暫定トップが入れ替わります。この2枚の画像、ヘルメットがマシンと同化していて、ドライバーがいないように見える(笑)それをシューマッハが0.109秒上回り、いよいよ1分35秒台に入れてきました。
ハッキネンは「こいつしつこい」と言いたげに首を傾げてます。入れ替わりでガレージに戻ったシューマッハもハッキネンのアタックをしかと見つめます。セクター1はまだ勝っていましたが、1ラップ終えてくると0.074秒刻んで暫定ポールが移り
ドライバーがあまりカメラ目線をくれる機会はありませんが、この結果にシューマッハは笑うしかありません。カメラを見つめて「またやってくれたな」と言った感じで、悔しさよりも手応え充分な嬉しさにも見えます。
逆にガレージに戻ってきたハッキネンもシューマッハのラップをタイミングモニターで伺います。セクター1は勝ってますが、セクター2で上回られて時間いっぱい。結果を見ずに自身も最後のアタックに。
最後のシューマッハはハッキネンをわずか0.009秒上回るタイムです。シューマッハはもうマシンを離れてもいいのにコクピットで立ったままモニターに釘付けです。
セクター1をマイナスできたハッキネンでしたが、遅いマシンに前を阻まれてタイム更新ならず、シューマッハの勝ち。3番手のクルサードは2番手のハッキネンから0.4秒も離れています。まさに2人だけの別次元のポール争いとなりました。予選だけでお腹いっぱいなバトルですよね。予選方式の違いはあるけど、ハミルトンとベッテルで今こうにはならないんだよなぁ。

《予選結果》
   1 M・シューマッハ(フェラーリ・F)
   2 M・ハッキネン(マクラーレン・M)
   3 D・クルサード(マクラーレン・M)
     ※タイヤはブリヂストンのワンメイク


考えてみれば1998年も99年もこの年もフロントロウの順列が同じですね。前年のフェラーリの主役はあくまでアーバインでしたが、今回はシューマッハ自身が主役です。
スタートでシューマッハはわかりやすいまでのハッキネンのけん制に出てイン側へ思い切り寄せていきます。ハッキネンは動じることなく1コーナーまでに前に出て、このレースでのチャンピオン決定を自らの手で阻止します。この画もどこかで見た展開だ。

1回目のピットはトップのハッキネンが先に終え、シューマッハが即座に反応するも順位変動はなし。ハッキネンが前。
ここでさっき話に出した雨が降り始めます。鈴鹿も秋とはいえ、雨のGPになることが過去にもありましたよね。路面はちょい濡れでも2回目ピットではドライタイヤで出るハッキネン。ただ戻ったトラックがよくなく、アロウズのデ・ラ・ロサに付き合うことになります。
ちょい濡れ路面はハッキネンよりシューマッハが上手です。高速ラップを連発してピットも迅速に済ませて戻るとハッキネンの前に戻ります。オーバーカット成立です。
最終周までハッキネンはシューマッハを追いますが、少し足らず。シューマッハが逆転優勝&最終戦に持ち込むことなく3回目のチャンピオン獲得となりました。


《決勝結果》
   1 M・シューマッハ(フェラーリ・F)
   2 M・ハッキネン(マクラーレン・M)
   3 D・クルサード(マクラーレン・M)

結局予選と全く変わらない順列のままの表彰台。ハッキネン3連覇を目の前で奪われて、帰り道は雨に打たれてレインコートの中までびっしょりで辛かったです。シューマッハとハッキネンの差は同じファインダーに入る1.8秒差でしたが、こちらも3位クルサードとなるとハッキネンの1分10秒も後方になります。順位だけではわからない、タイムまでみるといかにこの2人がこの時代で抜け出ていたかわかりやすい予選と決勝でした。

在籍5年かけて初めてフェラーリでの初戴冠となったシューマッハはここからご存知の通り5年連続でチャンピオンを獲得する「伝説の領域」に入っていきます。一方でハッキネンは翌2001年もマクラーレンに在籍するも、マシンの信頼性のさらなる低下とそれに伴うモチベーション低下で2勝するに留まり、休養宣言後の2001年日本GPは4位フィニッシュと話になりませんでした。
何回か書いてますが、無敵王者シューマッハを引退に追い込んだのは今も現役のアロンソでした。ただ勝ちグセや肉体的年齢的老化、タイヤとのマッチングなどを無視した「脂が乗り切った」バキバキのシューマッハと唯一複数年やり合ってきたのはハッキネンであり、それはシューマッハ自身も「最大のライバルであった」ことを常々語っています。四天王がいなくてもその時代とは違う、 り合っても揉め事や因縁にはならない、クリーンで安心したバトルを別チームで観れていた古き良き時代でした。
先日から3回続けて日本絡みの「四天王の終焉と続く世代」として振り返ってきました。今まさしくチャンピオン争いを演じるハミルトンとベッテルも歴代の上位に連ねるドライバーとなりました。キャリアもマシンも他の追従を許さない現役の二強です。ここにきてメルセデスとハミルトンが優位に立ち始めました。ベッテルにも食らいついてもらい、どうにか最終戦まで楽しませてもらえるバトルと「クリーンなライバル関係」で今後もF1界を牽引していってほしいと願っています。