F1 えきぞーすとのーと

よくあるニュースネタやこ難しいテクニカルな話ではなく、メインは予選や決勝のTV観戦したそのものを個人的観点から綴るF1ブログです。  また、懐かしのマシンやレースを振り返ったり、記録やデータからF1を分析。その他ミニカーやグッズ集めも好きなので、それらを絡めつつ広く深くアツくF1の面白さやすごさを発信し、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

タグ:失格

今シーズン初となるレース前の「過去のレース」です。近年はエンジンの排気量を小さくし、ターボと電気エネルギーを使ったハイブリッドのF1が定着しています。今まではここまで小さく、また複雑なパワーユニットを使ってきませんでしたが、この状態に至るまで様々なレギュレーション変更と技術のせめぎ合いがありました。今回はパワーとしてはイケイケどんどんの時代、1985年第3戦サンマリノGPをみていきます。1985年のレースは3戦目、サンマリノGPのレースは4回目です。サンマリノGPとはいえ、イタリア国内でフェラーリのファクトリーから近いため、サーキットには赤い旗が各所でたなびいています。
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ルノーワークスが初めてターボチャージャーを導入してから、F1界では瞬く間に流行り、各チームが追従していきました。エンジンの排気量を大きくせず、大出力を生み出せることが特徴のターボは一見いいことづくめのパーツのようですが、もちろんデメリットもあります。このレースはそんなデメリットが露呈したわかりやすい例だと思います。この時代は現代と同じく、レース中の再給油は禁止です。さらに前年84年に規定された「ターボエンジン搭載車の燃料は最大で220ℓまで」とされていました。ターボエンジンはNAエンジンよりも高出力を得られますが、その分燃料の使用量も多くなります。再給油無しで悪燃費、最大搭載量にも制限があるため、むやみにフル稼働させるとレースを完走できないということに繋がってしまいます。
このシーズンは第3戦までにマクラーレンを駆るプロストが開幕戦ブラジルGPを制し、第2戦はロータスの若手セナが優勝を挙げて1勝ずつとなっています。しかし、両者ともリタイヤが一つずつあり、2戦連続で2位を獲得するフェラーリのアルボレートにとってもいい流れで地元レースを迎えています。

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ポールポジションは第2戦ポルトガルGPでポールトゥウィンを果たして波に乗るセナが獲得。2番手はウィリアムズ・ホンダのロズベルグ、3番手にはセナの相方であるデ・アンジェリスがつけました。フェラーリの期待を背負うアルボレートは4番手、前年は0.5ポイントに泣いたプロストは6番手となっています。

《予選結果》
 1 A・セナ      (ロータス・R・GY)
 2 K・ロズベルグ   (ウィリアムズ・H・GY)
 3 E・デ・アンジェリス(ロータス・R・GY)
 ※GYはグッドイヤー

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2番手ロズベルグはスタートで失敗。ロータスのイケメンコンビがワンツー体制を築いていきます。
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ただ10周目に2位走行のアンジェリスはターボ不調によりペースを保ち続けることができず、アルボレート、プロストに先行を許す形となります。

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23周目に入ると、地元期待のこれまた2位走行のアルボレートが電気系トラブルにより緊急ピットインし、そのままリタイヤ。ティフォシが一瞬凍りつく。
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アルボレートが脱落しても、チームメイトのヨハンソンが予選15番手からアンジェリス、プロストを捕まえて2位に浮上。ティフォシ目が再び輝き始めます。
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セナとヨハンソンの一騎打ち。逃げ逃げポールトゥウィンを思わせたセナですが、思わぬ刺客に追われる形となっています。
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セナが残り4周でガス欠を懸念してペースダウン。ヨハンソンがいよいよトップへ!このレースはこれでは済みませんでした。下位スタートからハイペースで追ったヨハンソンもガス欠が予想されてペースを落とさざるを得ない。
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最後の最後で予めペースダウン走行をしていたプロストが逆転。F1とは要は決勝で「勝ちゃあいい」
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3位のアロウズのブーツェンはフィニッシュ直前でガス欠。手押しでチェッカーを受けました。
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そんなプロストもウィニングランでとうとうガス欠。パルクフェルメまでマシンを戻すことができていません。ガス欠&低燃費走行が思わぬドラマをいくつも生み出しています。

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《決勝結果》
 1 A・プロスト    (マクラーレン・TP・GY)
 2 E・デ・アンジェリス(ロータス・R・GY)
 3 T・ブーツェン   (アロウズ・B・GY)

 ※TPはタグポルシェ、BはBMW

賢いプロストが最後の最後で真っ先にチェッカーフラッグをうけて表彰式となりましたが、最後にオチがありました。何とプロストのマシンはレース後の車検で最低重量を2kg下回っていたことが判明。軽ければ当然燃費にも関係していますし、レギュレーション違反ということで失格。2位表彰台のアンジェリスが繰り上げ優勝、さらに4位で終えたルノーのタンベイが3位繰り上げで幕が下りました。将来の期待も高かったアンジェリスはこのシーズン限りでロータスと決別、名門ブラバムに移籍を果たしますが、このレースから一年後の86年5月のポールリカール合同テストでのクラッシュが起因してこの世を去ったため、これが最終優勝ということになります。

《最終結果》
失格 A・プロスト    (マクラーレン・TP・GY)
   1 E・デ・アンジェリス(ロータス・R・GY)
   2 T・ブーツェン   (アロウズ・B・GY)
   3 P・タンベイ    (ルノー・R・GY)

低燃費走行は再給油禁止である今日にも相通ずるものがあります。確かに出力の面ではこの当時の方が高く、ドライビングもマニュアルでありあたかも「F1という生き物と対話しながら操る」といった印象が色濃く出ていました。驚くのはこの当時と同じレーストータルで300km超を約半分の110kgの燃料使用量でこなし、さらにはラップタイムはだいぶ速いこと。それもこれも技術の進化であり、緻密な戦略の賜物といえます。

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先日あれだけホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス)でのブラジルGP予選をみてきたっていうのに、今回振り返るのは1982年第2戦ジャカレパグア(のちのネルソン・ピケ)で行われたブラジルGPです。ブラジルGPには間違いないけど、繋がってなーい(笑)今シーズンはブラジルGPも無いことだし、何でもアリ。
1982年は先日オランダGPで初めて取り扱いました。今回は2回目で「過去のレース」シリーズで現時点での最古のレース更新となります。キャラミでの開幕戦南アフリカGPは前年チャンピオンのピケがリタイヤする一方、ターボが自慢のルノーがポールトゥウィンを飾ってこの第2戦を迎えています。シーズンはまだ始まったばかり。当時はマシンに「グラウンド・エフェクト」いわゆる地面効果に依ったマシンが主流となっていました。マシンフロアに飛行機の翼をひっくり返したような形状を採り、飛行機とは逆に地面に押さえつけるような原理でダウンフォースを得るという画期的な技術ではありましたが、マシンがひとたび挙動を乱したりすると、一気にリセットされて浮き上がってしまうというリスクと紙一重の特性もありました。

予選は開幕戦に続いてルノーのプロストがポールポジションを獲得。2番手もターボエンジンを積むフェラーリのG・ヴィルヌーブが獲り、ターボ車がフロントロウを占めています。ノンターボ(NA)車の最上位はウィリアムズで3番手のK・ロズベルグ、続いてマクラーレンのラウダが4番手となっています。キャラミよりは低速基調のジャカレパグアでもターボ勢が猛威を振るうのか?!

《予選結果》
 1 A・プロスト  (ルノー・R・MI)
 2 G・ヴィルヌーブ(フェラーリ・F・GY)
 3 K・ロズベルグ (ウィリアムズ・Fo・GY)
 ※MIはミシュラン、GYはグッドイヤー
  Foはフォード

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決勝のスタート!画像があまり良くないので、見辛いかもしれませんが、とにかく路面が酷いです。4回に分けて舗装したかのような継目が遠目のカメラでもはっきり見て取れます。一般道であれば車線毎に打ち継ぐのはよくあることですが、ここはサーキットですからね。規格が非常に良くない。スタートでモタつく黄色いプロストに代わって、フェラーリのエースとして名高いヴィルヌーブがトップに立ちます。
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ロズベルグの攻撃も何のその。
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プロストからの攻めも怖くない!さすがフェラーリのチャンピオン獲得を託された男です。

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レースが進行するにつれ、予選7番手に甘んじたチャンピオン、ピケのペースが上がっていきます。ココは俺の地元だよ、と。ノンターボのブラバムでターボのルノーをあおる。
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次なる標的はいよいよトップをひた走るヴィルヌーブです。
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NP「おい。兄ちゃんもターボだよな。見てな」
ロズベルグも復調をみせ、ピケとセットでヴィルヌーブ狩りに向かいます。
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スーッと近付いて
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インに追いやる。ヴィルヌーブは左側を脱輪して制御できず
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スピンしながら外側へ。
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NP「ふん、あいつビビってやんの。可愛いな」
ピケとヴィルヌーブのマシンは触れ合っていません。ピケの巧み勝ち。今でこそこのような「プレッシャーによるバトル」はだいぶ減ってしまいましたが、昔はこうした駆け引きや揺さ振りでライバルを追い込んでいく手段は定石でした。

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こちらは同じブラバムでも、ピケの相方パトレーゼの方です。マシンを半分グリーンに落として、何やら様子がおかしいです。
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あー回っちゃうー
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ほぼトラックを横断する形のスピン。リオ・デ・ジャネイロの暑さとこの酷い路面により、意識朦朧になってしまいました。トラック復帰しようと試みるもimage
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あらら真っ直ぐに走れず、また同じようにくるくるしちゃっています。よくこの状態で自力帰還できたなぁ。コクピット内でほぼ死んでいる。。image

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ヴィルヌーブをかわした後、順調にラップを重ねるピケは初の母国優勝がみえてきました。1975年のC・パーチェ以来の快挙で観客も大賑わい。image
あーあ、トラックにまでこんなに飛び出しちゃって。喜ばしいことだけど、後続も来るんだし危ないよ!
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《決勝結果》
 1 N・ピケ   (ブラバム・Fo・GY)
 2 K・ロズベルグ(ウィリアムズ・Fo・GY)
 3 A・プロスト (ルノー・R・MI)

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表彰式はピケ嬉しい嬉しいシーズン初優勝、母国初優勝のはずなのに、こちらも様子がおかしいですね。2位のロズベルグ、3位のプロストも異変を感じる。image
おっとっと、、、
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喜ぶどころか、立っていられずグニャリと力尽きる。パトレーゼ同様にさすがのピケも限界だったんですね。出走26台中、完走は12台とかなりサバイバルなブラジルGPとなりました。
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しかし、このレースはこれで終わりではありませんでした。トップ2台はフィニッシュ後にブレーキ冷却水を足して、最低車体重量をクリアしたとのタレコミがあり審議。後日裁定が下りました。

《後日最終結果》
  失格 N・ピケ   (ブラバム・Fo・GY)
  失格 K・ロズベルグ(ウィリアムズ・Fo・GY)
  1 A・プロスト (ルノー・R・MI)
  2 J・ワトソン (マクラーレン・Fo・MI)
  3 N・マンセル (ロータス・Fo・GY)

優勝のピケと2位ロズベルグが失格。3位以下が繰り上がりとなりました。これを不服としたFOCA(Formula One Constructors Association の略で現在でいうFOTAに相当)系に属するチームが第4戦サンマリノGPの出走を辞退し、26台中14台の参戦、完走はたった5台という非常にシラけたレースを行うまでに発展してしまいました。1982年シーズンはご存知の通りK・ロズベルグによるフィンランド人初、わずかシーズン1勝でのチャンピオン獲得となりましたが、もしこのブラジルGPの失格やサンマリノGPの不参加が無ければ、チャンピオン争いも異なる結果になっていたかもしれません。

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2017年シーズンは第8戦を終えてベッテルが3勝6表彰台の153ポイントでランキングトップ。ハミルトンが3勝5表彰台の139ポイントでランキング2位。ボッタスが1勝5表彰台のランキング3位、リカルドは1勝4連続表彰台のランキング4位と続いています。前戦のアゼルバイジャンGPではポールポジションから逃げ切ると思われたハミルトンがアクシデントとインシデントの両方に見舞われて頭一つベッテル優位でチャンピオン争いが進行していますね。
これから本格的なヨーロッパ連戦を控えるにあたり、今後のシーズン展開と予想される懸念事項をまとめてみました。

こちらが先程書いた2017年シーズンの上位三強、6人のポイントグラフです。ベッテルとハミルトン共に無得点に終えたレースはなく高得点をコンスタントに積み重ねています。またライコネンとフェルスタッペンはこの2,3戦はポイントを稼ぐことができず、一方でリカルドが連戦表彰台から二強の合間をつく優勝と復調がみられます。

チャンピオン争いについて、全戦ポイント付与となった近年20年をみると、前にも何回か書いたように1994,03,07,08,10,12,16年では最終戦まで僅差でチャンピオン争いが続きました。
昔は今のようなレース数もなく、シーズンの半ば。第8戦終了後にひっくり返るケースもいくつかあり、今シーズンの場合、残り12戦もありますから現時点で既にチャンピオン争いが2人に絞られたと断言できるタイミングではありません。グラフの軌跡だけみていくと2016年みたいな感じになりそうでしょうか。流れや勢いから考えると、チャンピオン争いに関われるのは現時点の上位4人ではないかなと考えます。混戦模様でそれもチームの垣根を越えた争いとなれば、一層盛り上がりますよね!こんなシーズンを待ってました!

皆さんご存知の通り、アゼルバイジャンGPのセーフティカーランの最中にベッテルがハミルトンに追突し、その後ベッテルが暴挙に出る事件が起きました。ベッテルにはレース中の10秒ピットストップペナルティと、ペナルティポイント3が与えられました。現在9ポイントで12ポイントになると翌戦に出場停止になります。次のオーストリアGPで加算がなければ昨シーズンのオーストリアGPで加算された2ポイント分は消滅し7ポイントになるものの、ベッテルにとっては今後アグレッシブな攻めに躊躇してしまいそうです。
さらにFIAはこの件について審議を行なっており、ベッテル30歳の誕生日である今日7月3日に聴聞があります。最悪、2017年シーズンのポイント剥奪や数戦の出場停止がペナルティポイントと関係なく下される可能性もあります。やっとメルセデスと対等に近い戦闘力を持つマシンを手にし、ランキングトップで突き進む中の二重苦、三重苦になりそうです。

過去に出場停止で危機的な立場になったケースがいくつかありました。近年ではこのブログでも何回か話題にしている1994年もそうでした。セナに代わってウィリアムズを背負って立つD・ヒルは序盤でなかなか奮わず、若手のM・シューマッハがベネトンB194と共にシーズンを牽引していきます。その優位さに水を差したのはシューマッハ自身でした。
第8戦イギリスGPではフォーメーションラップ中にポールポジションのヒルをかわして黒旗提示され、それを無視する悪態に対して第12戦イタリアGPと第13戦ポルトガルGPの出場停止が後日下されました。第11戦ベルギーGPではマシン底部のスキッドブロック規定違反で大事なヨーロッパラウンドを4戦も棒に振ることになりました。チャンピオン争いは最終戦までもつれながらも結果的にはチャンピオンをモノにしたシューマッハ。それまでの貯金と停止明けの走りが功を奏しました。仮にそれらがなければ、シューマッハが単に独走の退屈なシーズンだったかもしれません。

もし即日ペナルティを消化したベッテルにこのような厳しい裁定が下っても、この時のシューマッハのような余地はありません。背後にしっかりとハミルトンがついています。


さらに誕生日を迎えるベッテルに追い打ちをかける悪い話をすると、現在のレギュレーションに組み込まれる「パワーユニット交換ペナルティ」の心配がライバルより早く訪れる可能性も残っています。
これは第8戦終了時のエンジンユーザー別個人パワーユニット交換数になります。トークンによる改良制限は無くなりましたが、エンジンそのものをはじめ、周辺機器5種類のいずれかが5基目となるとスタートグリッド降格ペナルティがあります。全20戦を4基でこなすには5レースに1基使用するのが理想的となり、多くはどのコンポーネントも2基目に留まり、セオリー通りこなしている様子が伺えます。
エンジンユーザー別にみると、ターゲットとなるハミルトンを含めたメルセデス勢はパワーで勝る上に故障や交換が少なめです。フェラーリ勢はルノー勢に比べて少ないですが、この話題が尽きない某エンジンメーカー2人は別として、ベッテルのエンジンは既に4基目です。次にエンジンを交換したら、予選10グリッド降格となります。これからは暑い夏、そしてオーストリア、イギリス、ベルギー、イタリアとハイスピードのパワーサーキットが続きます。どうするベッテル?!

ハミルトンが普通にチャンピオンではつまらない、誕生日を前に順調にチャンピオンシップを牽引するベッテルを贔屓してあげたいところですが、ここにきて大ピンチです。この記事を書いた時点ではFIAからの裁定は下っていませんが、いい誕生日、そして三十代初年を迎えられるかどうか、偉大な同郷の先輩と同じような難題を抜け出せるかは今日の聴聞と今後の走りにかかっています。

だから、そういうのするんじゃない!!(笑)

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前回の3戦後にあたる1994年の第11戦ベルギーGPです。この年のスパ・フランコルシャンで注目したい点は
何じゃこりゃ?!名物オー・ルージュの先の登りが左に屈曲してシケインがある!ラッツェンバーガーとセナの死による安全対策の一つです。
また今でこそチタン製に変わって火花を散らすマシン底面のスキッドブロックに第9戦ドイツGPから木の板を使用し始めます。路面を擦れば黄色い木粉を飛ばし、ダウンフォースを減らすという「安全対策」の一つ。板の厚さは10mm以上必要です。レース前にノギスを当ててしっかり計測します。今回は導入まもないこのスキッドブロックが問題になりますので気に留めておいて下さい。

イギリスで2勝目をあげたヒルはその後のドイツとハンガリーでは勝てずやっぱりパッとしない。逆にお叱りを受けたシューマッハは前戦ハンガリーで優勝して7勝。若いシューマッハと「疑惑漂う」B194は手強いです。
予選は濡れた路面から始まり、ジョーダンの若手、バリチェロは果敢にドライタイヤで臨みトップタイム。亡き先輩セナのロゴマークに守られて逃げ切り、ジョーダンチーム初、22歳で当時最年少ポールポジションを獲得します。

《予選結果》
1 R・バリチェロ(ジョーダン・Ha)
2 M・シューマッハ(ベネトン・Fo)
3 D・ヒル(ウィリアムズ・R)
   ※Foはフォード、Haはハートエンジン


スパが得意なセナの指定席には「SENNA THE BEST」の文字が。バリチェロはそのグリッドを誇らしげに踏みしめ、エディ・ジョーダンも記念すべき初ポールスタートを見守ります。
スタートと変なオー・ルージュはバリチェロが死守。でもやっぱりケメル・ストレートではベネトンに敵わずシューマッハに先行されてしまいます。バスストップシケインで3番手ヒルにさされてバリチェロは1周で3位に。仕方なし!

デビューもこのベルギー、初優勝もベルギーでドイツの実家にも近いシューマッハはスパが得意で縁あるサーキット。快調にトップを快走中に珍しく縁石を乗り上げてスピン
順位もそのままに、一見何もなかったようにトラックに戻りますが、この些細なミスが後に物議となります。

シューマッハが快調となると、もうおひと方は?!
セナの空いた席に座る若いクルサードに堰き止められてしまっています。それもクルサードはリヤウィングをグラつかせてペースもイマイチ。
クルサードはピットでP・ヘッド直々のチェックが入り、結局グラついたままピットアウト。これでやっとヒルが前に。うーん、ヒル、パッとしないなり。。となれば優勝はこの人になるわけで。

《決勝暫定順位》
1 M・シューマッハ(ベネトン・Fo)
2 D・ヒル(ウィリアムズ・R)
3 M・ハッキネン(マクラーレン・P)
   ※Pはプジョーエンジン

冒頭に書いたスキッドブロック。レギュレーションで厚みは定められています。表彰式は終わるも、レース後の車検でまたベネトンがザワザワして最終結果が発表されません。どうやらシューマッハのB194のスキッドブロックの厚みが7mmとなっており、規定の10mmありませんでした。
結果、また失格。。

《最終結果》
1 D・ヒル(ウィリアムズ・R)
2 M・ハッキネン(マクラーレン・P)
3 J・フェルスタッペン(ベネトン・Fo)

チームはレース中のコースアウトによってスキッドブロックが削れたと異議。しかし通らず。シューマッハはイギリスGPでの暴走で翌第12戦イタリアGPと第13戦ポルトガルGPの欠場が決まっています。チャンピオンシップ争いを考えたら一般的に2欠場2失格はイタいところ。
うーん、なぜ俺ばかりが〜!
さすがに頭を抱えるシューマッハ。スキッドブロックが薄くなったのはコースアウトによるものかは実際はわかりません。今回はシューマッハ1人に非があるとも決めつけられない。出る杭は打たれる。しかしシューマッハはそれらの苦難がありつつも僅差で1994年シーズンのチャンピオンを獲得してしまいます。マシン自体もあとから物議にはなりましたが、チャンピオンを獲得してしまう若きシューマッハはすごい!裏を返せば、ウィリアムズとヒルはそれらがありつつも敗れました。1995年はベネトンもルノーV10へ換装し、シューマッハVSヒルのガチンコ勝負に。セナ無き時代の主役としてヒルは「本当の意味での真価」が問われるシーズンを迎えることとなります。 
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M・シューマッハ。長い期間F1ドライバーとして在籍し、チャンピオン7回、優勝回数91回は誰もが及ばない領域の記録となっています。そのシューマッハが猛威を振るい始めたのはセナを失った1994年頃から。デビュー4年目で25歳の年からです。シューマッハのすごいところは今のドライバーにはない「飽くなき勝ちへのこだわり」だと思います。0.001秒でも早く、時にはチームメイトに犠牲(支援)を伴っても勝つ。チームもそれをよしとする、そうさせてでも優勝やチャンピオンを獲得するんだ!という「惹きつける力」を兼ね備えていたこと。またピット給油を上手く利用し「戦略的に勝つ」という術も確実に実現させ、今の時代には減った「オーバーカット」はロス・ブラウンの後ろ盾があったことも彼の大成に欠かせません。そんなシューマッハの初期に雌雄を決していた1人がウィリアムズが生んだ二世、D・ヒルでした。セナの真横から後任を授かり、シューマッハとは違うプロセスで成功した人物です。今回はその2人がF1界を背負う1994年の第8戦イギリスGPを取り上げます。

先日書いたスペインGPを経て、ランキングトップはシューマッハの6勝。2位はヒルの1勝で2位止まりが続いていました。セナを失い、ウィリアムズのエースとなりルノーV10を駆るも、若手シューマッハのフォードV8に大きく水を開けられ、地元イギリスでヒルの資質を疑う声も多くあがりました。
予選を迎え、ライバルのシューマッハよりも先に暫定ポールを獲得し、ベネトンの結果を待ちます。
シューマッハは途中セクターでヒルを上回るタイム。うわぁ、またそのオチ?!コントロールライン通過までハラハラ。
結果、その後シューマッハは0.003秒差を上回れずヒルがポールポジション。ウィリアムズの地元、ヒルの地元での面目は保てました。


《予選結果》
1 D・ヒル(ウィリアムズ・R)
2 M・シューマッハ(ベネトン・Fo)
3 G・ベルガー(フェラーリ・F)
   ※タイヤはグッドイヤーのワンメイク

決勝前のフォーメーションラップ。先頭は確かヒルのはずですが、、水色のベネトン?!
2番手シューマッハはフォーメーションラップで2回、先頭のヒルを追い抜き、マイペースにタイヤを温めています。この若造、本当に尖ってるなぁ(笑)

スタートはヒルがしっかりシューマッハの前。観戦に来たダイアナ妃を前に恥は晒せません。後方ではプジョーエンジンで暗黒期のマクラーレン、ブランドルが見た目通りのロケットスタート!即リタイヤ。

レースはヒルにシューマッハ、ベルガーとトップが度々入れ替わり進行します。ただベネトン陣営がザワつき始めます。スタート前のシューマッハの暴走はレーススチュワードが目を光らせた。フォーメーションラップのヒル追い抜きは5秒ストップペナルティ。
当時は発令後3周以内に罰則を受けなければならない規則がありましたが、シューマッハは無視。とうとう黒旗が掲示され、渋々ペナルティを受けてトラックに戻ります。
シューマッハが2位に後退することでヒルは地元初、チャンピオンの父も成し得なかったイギリスGP優勝を手にします。表彰式ではダイアナ妃から祝福され、感無量。

《決勝暫定順位》
1 D・ヒル(ウィリアムズ・R)
2 M・シューマッハ(ベネトン・Fo)
3 J・アレジ(フェラーリ・F)
   ※表彰式の順位

ペナルティを消化した表彰式後までシューマッハ暴走については審議となり、結局2番手シューマッハは失格処分が下りました。叱るF・ブリアトーレ
叱られるも反抗的な目つきのシューマッハ

《最終結果》
1 D・ヒル(ウィリアムズ・R)
2 J・アレジ(フェラーリ・F)
3 M・ハッキネン(マクラーレン・P)
   ※Pはプジョーエンジン

後日ブリアトーレとシューマッハはパリにあるFIA本部に呼び出しです。神妙な面持ちの担任の先生と校長室に入る前にシューマッハは笑ってます。この問題児が!(笑)

FIA会長のM・モズレーより「イギリスGPの正式失格と第12戦イタリアGPと第13戦ポルトガルGPの出走停止」を命ぜられます。近代にはなかなかない重い処罰。さすがのシューマッハもフォーメーションラップの出過ぎたマネと反省はしていましたが、偉大な記録をもつシューマッハも若い頃はセナに叱られ、この後にヴィルヌーブに追突するなど多くの物議を醸しました。勝者より目立つシューマッハはまた強者。

最近では挑戦的で果敢な若手M・フェルスタッペンが誕生しました。小生意気にみえてもシューマッハよりも若く、ぶつけないし冷静で賢い。正常進化をすれば、シューマッハより恐ろしい怪物になるのかもしれない。 
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