F1開催1,000戦目のメモリアルとなる中国GPは2004年の初開催から数えて今シーズンで16回目となります。アジアを代表するGPの一つとしてだいぶ定着してきましたね。今回振り返るのは2007年の中国GPです。前日まで他の年で準備していましたが、同じ年を多く取り扱ってきたことと、内容がこちらの方が面白いので急遽変更しました。まだこの頃の中国GPはシーズン終盤の第16戦で行われており、日本GPと連ねた秋開催でした。
2007年シーズンも今まで複数回取り上げてきています。今や絶対王者の呼び名が定着するハミルトンのデビューイヤーかつ最年少チャンピオン獲得がかかるというミラクル、その上に前年チャンピオンのアロンソとゴチャついてコンストラクターズポイントを無効にされるというミラクルなシーズンです。トップチームであることはもちろんですが、近年際立つ若手のフェルスタッペンやルクレールが初年度から今のハミルトンといきなり混じってもみ合うようなものですから、いかに強烈なF1デビューだったか想像できますね。第15戦の富士での日本GPを終え、ランキングトップはその新人ハミルトンが107ポイント、2位はチャンピオンのアロンソで95ポイント、3位はハミルトンから17ポイント離されているライコネンの90ポイントとなっています。2位にも12ポイント引き離して余裕はありつつもハミルトンはしっかり歩いてコース下見と、F1初走行の予習に抜かりありません。
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ただGP開催前、そんなハミルトンにチャンピオン獲得までの不安要素が舞い込んできます。前戦の日本GPのセーフティカー先導中に混乱を招く走行をしたとレッドブルグループからクレームがあり、事情聴取を受けています。
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結果的にペナルティなどのおとがめ無しでハミルトンにとっては救われましたが、速いだけではなく「スタンドプレー」にも視線が注がれてしまう若い怪物。

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予選Q3開始時の隊列はハミルトンを先頭にアロンソ、ライコネンとランキング通りで入っていきます。
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マッサがライコネンの暫定トップを塗り替えると、下見バッチリのハミルトンがセクター2通過段階で0.4秒も削る高速ラップをこなしています。初中国走行でもポールポジションを獲得。
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ライコネンは最後のアタックでマッサを0.1秒上回って2番手、アロンソはフェラーリからも離された4番手に沈む。残り2戦となり、とにかく依然としてハミルトンが優位な展開が続きます。

《予選結果》
   1 L・ハミルトン(マクラーレン・M)
   2 K・ライコネン(フェラーリ・F)
   3 F・マッサ       (フェラーリ・F)
      ※タイヤはブリヂストンのワンメイク

決勝は台風の接近もあって雨と風がレースを演出します。4番手スタートのアロンソは思い切りアウトに車を振り、ターン1に進入していきます。
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ただココはライン採りが本当に難しい。アロンソとて濡れた路面でライバルに大苦戦
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マッサは捉えるも、イン側に切り替わるタイミングでライコネンに詰まる。
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当時のツートップ、マクラーレンとフェラーリには特徴的な違いがありました。こちらはセクター2終盤の左ターン10を抜けてストレートを走るハミルトン。
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ストレート中央付近は水しぶきがあがる左に一度膨らみ
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左のターン11進入を控えてトラックの右側に戻ります。一方で2位を走行中のライコネンは
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ストレートの入口から出口までずっと右側を直進します。こちらが王道の走行ラインであり、両者(両チーム)のマシン特性の違いがみられます。マクラーレンはタイヤへの入力が大きく、すぐに熱入れができます。ただ裏を返せば「タイヤには厳しい」でもあるため、このレースのようなちょい濡れのインターミディエイト(当時はスタンダードウェット)はすぐにダメになってしまいます。そこでマクラーレン陣営は水のある路面でクーリングしながら走行を続けているのです。以前振り返ったことのある2000年ベルギーGPのM・シューマッハも同様の対処をしていましたね。

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15周目にハミルトン、18周目にアロンソ、19周目にライコネンが1回目のピットを迎えますが、タイヤ交換は行なっていません。ちょっと見辛いですが、左右のフロントタイヤの減り方に差があります。左フロントはだいぶ減り、スリックタイヤのようになってますね。ライコネンがピットアウトしてもハミルトンが前のまま。オーバーカットならず。
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路面は徐々に乾きつつあります。ドライのソフトタイヤに履き替えたウィリアムズのヴルツがファステストラップを記録したのを見てマッサも2回目ピットを26周目に敢行、ソフトタイヤに切り替え。ハマればレース内容に大きな変化を生みます。

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トップランナーはボロボロのタイヤを履いたままバトル開始。タイヤに厳しいハミルトンに対して、タイヤに優しいライコネンが1周で2秒近いラップで追い立て始めました。
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最終コーナーではみ出す。こちらも見辛いですが、ハミルトンの右リヤタイヤにブリスターが現れています。キツい!
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コーナーのインに全くつけず、なす術無し。ライコネンにかわされる。ハミルトンの前にいるトヨタはタイヤに白いラインが入るソフトタイヤ。ハミルトンはトレッドに亀裂が入り、白いベルトが見えるインターミディエイトタイヤ。同じタイヤではありません。
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30周目には3位アロンソにも1周で7秒縮められています。ポールスタートのポイントリーダーの新人が大ピンチです。31周目に2回目ストップを決断、インレーンに吸い込まれるハミルトン。
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え?もしや曲がり切れなかった?!グラベルにハマる。
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「おーい、誰か助けてー!マシンを押して!」
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コースマーシャルが集まり一応押してみる。でもレース中にマシン触ったり押してよかったんだっけ?
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「ダメだ、止め止め!」
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「おいーっ。ちょっ、待てよ!」

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ハミルトンが消えれば翌周にもちろんこちらもタイヤがボロボロのライコネンはソフト、アロンソはハードに履き替え、チャンピオン争いを複雑化させます。そう簡単にF1のチャンピオンを獲られるわけにもいきませんもんね!
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《決勝結果》
   1 K・ライコネン(フェラーリ・F)
   2 F・アロンソ   (マクラーレン・M)
   3 F・マッサ       (フェラーリ・F)

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F1の神はこの怪物に試練を与える。ハミルトンはこの終盤に痛恨のノーポイント。最終戦ブラジルGPは三つ巴の展開に持ち込まれました。このリタイヤがハミルトンにとってのF1初リタイヤでした。デビューイヤーの全17戦で4勝、表彰台12回、入賞15回、完走16回か。本当にとんでもない新人だ。

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