ウィリアムズを代表するドライバーといえばマンセルです。先日ポイント換算した時も歴代1位になっていました。ホンダとタッグを組んでいた80年代中頃の第1期はいいところまでいくも2年連続のランキング2位。そしてルノーと組む第2期は「今回こそ信じていいのかな」という走りを見せてくれました。当然目立つ人がいれば、地味になる人もいます。マンセルと組むのも2度目「今回こそ完敗してしまうんだろうな」の甘いマスクの鉄人パトレーゼ。
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ただ、今回振り返るレースはそんなパトレーゼが主役!1991年メキシコGPです。地元の現役ペレスは前年90年生まれなので、F1の「え」の字も無いまだ1歳の頃。

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第4戦モナコGPまで4連勝し、ランキングはトップを独走しているセナですが、高地メキシコはどうもスピード不足。ダウンフォースを削り最高速重視のセッティングを採ったことでコーナーでバランスを崩し
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完全にひっくり返る。フロアパネル丸見えですね。
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セナの身体は無事で何よりですが、セッテイングがあまり無事ではない様子。こういうシーンでは現代のハロが有用ですね。

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ポールポジションはそのセナでもマンセルでもありませんでした。メキシコに入ってから水あたりで不調でも走りは絶好調のパトレーゼがマンセルを0.3秒近く引き離しています。

《予選結果》
   1 R・パトレーゼ(ウィリアムズ・R・GY)
   2 N・マンセル   (ウィリアムズ・R・GY)
   3 A・セナ           (マクラーレン・H・GY)
   ※GYはグッドイヤータイヤ

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スタート直前に後方で黄旗が振られています。これはレートのマシンから白煙をみて、周りが反射的に振ったものということでグリッド降格無しで再スタートとなりました。ちなみにこの真紅にマールボロとアジップのロゴが入るマシンはフェラーリではありません。ダラーラです。非常に紛らわしい。
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再スタートでまた黄旗。
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こちらはフォンドメタルのグルイヤールが前方のマシンから手が上がったのをみて指摘したということで、これもマシントラブルとかではありませんが、こちらは不運にも最後尾に追いやられてしまいました。もらいトラブル。
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赤旗が振られて再々スタートとなるわけですが、度々の誤審にチーム関係者も不満を募らせて混乱。観客も「早くやろうぜ!」とヒートアップ!
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ただ一方で最後尾26番手フットワークのアルボレートはエンジンストールで再フォーメーションラップに出発できず。高地メキシコはやっぱり通常では想定されないトラブルを生み出します。

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再々スタートでポールのパトレーゼはズルズルと4位まで交代してマンセルが前。せっかくのチャンスでいつもの構図となっています。4番手フェラーリのアレジが2位、3番手のセナは3位のまま。

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2周目のメインストレートエンドでセナがアレジをキャッチして2位へ。さすがにダウンフォースを削れば、イマイチなフェラーリエンジンを簡単に凌駕しています。そしてすぐさまパトレーゼにも簡単に捕まえる。スタートの失敗をルノーのエンジンパワーで即挽回。
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セナに遅れをとったマクラーレンのベルガーはこちらもメキシコで警戒すべき水温上昇にさいなまれ、今はなき最終ペラルターダでド派手に水蒸気を吐きジ・エンド。続いてセナは簡単にパトレーゼにもかわされてウィリアムズがようやくワンツー体制に戻りました。この時代のエンジン完成度、メキシコGPの適応力は
        ルノー>ホンダ>フェラーリ
といった具合でしょうか。近年とはまるで逆ですね。パワーと信頼性がウリのルノーです。

徐々に逃げを打つマンセルに対してパトレーゼは15周目にいよいよ接近します。
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NM「なに、レッド5のオレ様に並ぶつもりか?!」
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RP「お腹は不調だけど、今回は攻めさせてもらうよ」
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パトレーゼが前に。契約上も実力もマンセルが上かもしれませんが、フランク・ウィリアムズは勝てるチーム、マシンであればいいのです。静観。

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予選13番手だったティレル・ホンダの中嶋悟はエンジンではなくリヤタイヤのブリスターに悩まされ早めのタイヤ交換を強いられています。
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内側に教科書通り気泡状にポツポツとブリスターがみられます。そういえばP ZEROって名前、どこかでみたことがありますね。香ばしそうな名前だけど、決して「ブリスター屋さん」というわけではありませんのでご注意を。

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中盤に入り、予備予選突破から11番手スタートとなったジョーダンの壊し屋チェザリスが晩年のピケ王をパス。美しさだけではない、壊さなければそこそこ走ってくれるジョーダン191です。

メキシコは燃料供給にも神経を使います。アレジがスピンして後退すると、モタモタしているマンセルの背後にセナが近付いてきました。
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NM「リカルドは見逃すが、ヤツには抜かれん」
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マンセルはセナをまき、燃料モードを変更して一度逃したパトレーゼをファステストラップ連発で追いかけますが、時既に遅し。セカンドを仰せつかるパトレーゼが体調不良を蹴散らして、この日は紛れもないヒーローを演じ切りました。

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《決勝結果》
   1 R・パトレーゼ(ウィリアムズ・R・GY)
   2 N・マンセル   (ウィリアムズ・R・GY)
   3 A・セナ          (マクラーレン・H・GY)

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順位変動はあったものの、結果的にはスタート順位のままのラインナップでした。先日の久々ライコネンと同様にセカンドだ、ナンバー2だ言われても、勝てる時にはしっかり勝っておきたいですね。例えセカンドであっても、世界で一握りしかなれないF1ドライバー、優勝することは決して簡単なことではありませんし、とても名誉あることです。
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また近年のマシンは非常に信頼性も向上して、マシントラブルは減りました。一昔前のメキシコはこのように多くのトラブルに打ち勝つ必要があったんですね。