前回のトロ・ロッソに続いてみていくのは、現存する2つ目「ザウバー」です。最近は若手発掘のイメージよりは「財政難の中、ギリギリ参戦にこぎつけている」方が強いですが、ココから輩出したF1ドライバーも多くいます。

《ザウバー》
F1だけでみた初参戦は1993年。何気に歴史も古いですよね。2016年現在、名前だけのキャリアでみたらフェラーリ、マクラーレン、ウィリアムズに続く4番目に古い参戦チーム。チーム自体の設立はF1よりも前、1970年の耐久レースまで遡ります。
創設者ペーター・ザウバーも元々はアマチュアでドライバーをしており、少しずつスタッフや資金を集めてチームを形成し、ル・マン24時間レースに参戦するなど、いわば苦労人です。多くの若き才能を見つけて採用し、開花させるスタイルとどこか被るところを感じます。
古いモータースポーツファンの方なら「ザウバー・メルセデス」なんてフレーズが頭をよぎるかもしれません。F1参戦におけるザウバーの面白いなと思うところは「時代時代でワークス(自動車メーカー)と上手く付き合い渡り合っている」点だと思います。F1参戦前からメルセデスと良好な関係にあり、1990年代初頭は紆余曲折がありながらも古豪メルセデスのF1復帰に絡みました。その後はフォード、名前貸しのBMW、そして今日まで長くフェラーリのエンジンを積む関係を築いています。たまたまなのか理由はわかりませんが、有名どころだとルノーがないのがまた興味深いところではあります。

《主な輩出ドライバー》
   成績はザウバー時代のもの
   ◎は2016年現役ドライバー
    ※は他チームF1ドライバーとして移籍
   ★はチャンピオン獲得者
H・H・フレンツェン※
    1994年~1996年 優勝0回 入賞15回
   →1997年からウィリアムズへ
J・C・ブイヨン(元はウィリアムズ所属)
   1995年                 優勝0回 入賞2回
   →1995年途中でF1シート喪失
K・ライコネン★◎※
   2001年                 優勝0回 入賞4回
   →2002年からマクラーレンへ
F・マッサ◎※
   2002年,04〜05年 優勝0回 入賞12回
   →2006年からフェラーリへ
R・クビカ※(BMWザウバー期)
   2006年〜2009年 優勝1回 入賞31回
   →2010年からルノーへ
小林可夢偉※(デビューはトヨタ)
   2010年~2012年 優勝0回 入賞26回
   →2012年で一度F1シート喪失
S・ペレス◎※
   2011年~2012年 優勝0回 入賞12回
   →2013年からマクラーレンへ
E・グティエレス◎※
   2013年~2014年 優勝0回 入賞1回
   →2014年で一度F1シート喪失
F・ナッセ◎(元はウィリアムズ所属)
    2015年〜現在    優勝0回 入賞6回
    →現在もザウバー所属


ザウバーはF1の2つあるシートを「1つはベテラン、1つは若手」のような形態を採ることも多く、若手をドライブさせる傍、かなり年季の入ったベテランをそのままフェードアウトさせる役割っぽいのも特徴的です。初キャリアがザウバーというドライバーもいれば、最終キャリアがザウバーというドライバーも以前は多くいました。OJTはしっかりしている企業って感じです(笑)

ザウバー出身の成功者はライコネンが筆頭でしょうか。フォーミュラレースの経験が非常に少なく、周囲から危惧されている中お試し採用し、成績以上のタイミングの良さもあって上手くトップチームのマクラーレンに送り込み、後にチャンピオンを獲得できる逸材でした。
逆に、同じマクラーレンへのステップアップとなったペレスは、ザウバーで小林可夢偉を上回る表彰台も買われて移籍したものの、時期早々という結果になってしまいました。ペレスは以降経験を重ねて本当に賢さと丸みを兼ね備えた、安定感あるドライバーに成長しましたよね。
初期はメルセデス、近年はフェラーリとの関係性もあってか、マッサやグティエレスなどフェラーリお墨付きドライバーの「一時雇い」的な役割もこなしてきたザウバー。今は新興のハースが参戦していることもあって、その色は薄くなるでしょう。

創設者のザウバーは2010年から2012年にかけて徐々にF1初女性チーム代表となるモニシャ・カルテンボーンを後任として引導を渡して今に至ります。マシン開発や資金面がより厳しいものであることが先行しているのが現状です。彼女だけが悪いわけではないのですが、最近は若手発掘・育成というイメージよりは「F1のシートを空けておくから、チーム存続に『貢献』できるドライバー募集!」みたいになってしまっているのが残念です。裁判沙汰やトリプルブッキングなど伝統、歴史、若手発掘の前に「F1参戦に大事なこと」があると痛切に感じさせてくれています。
「う〜ん。もう少し辛抱すれば、もう1人女性代表が増えるかもしれないワ」

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