F1 えきぞーすとのーと

よくあるニュースネタやこ難しいテクニカルな話ではなく、メインは予選や決勝のTV観戦したそのものを個人的観点から綴るF1ブログです。  また、懐かしのマシンやレースを振り返ったり、記録やデータからF1を分析。その他ミニカーやグッズ集めも好きなので、それらを絡めつつ広く深くアツくF1の面白さやすごさを発信し、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

タグ:ポールポジションタイム

日が短く肌寒い時期になると日本GPの到来を感じます。しかし残念ながら今年はお預け。ドイツのニュルブルクリンクで行われる「アイフェルGP」が急遽代理開催されます。今シーズンのGPウィーク直前にみてきた開催サーキットの歴代ポールポジションタイム推移ですが、ニュルブルクリンクについては先日のバクー市街地を取り扱った際に勢い余って一緒にやってしまっていました。だってまさかニュルブルクリンクでF1が行われると思わなかったんだもん。。
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IMG_3623(これはその際に作成、掲載したグラフの転記)
となればやっぱりこのタイミングでやるのが一番!日本GPが無いなら頭の中で妄想すればいい(笑)我らが鈴鹿サーキットの歴代ポールポジションをみていきましょうよ。

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《鈴鹿の基本情報》
    全長   :5.859km(1987〜90)
       5.864km(1991〜01)
       5.821km(2002)
       5.807km(2003〜)
 コーナー数:18箇所(2003〜)
   開催回数  :31回

日本GP、鈴鹿サーキットとなればmiyabikunよりも詳しい方は山程いらっしゃると思います。他のサーキットと同様に今回もチラッと概要を一応記しておくと、本田技研工業によって日本初となる本格的な舗装サーキットとして1962年に開設されたサーキットになります。世界のトップグレードのサーキットでも珍しい「8の字」を描くレイアウトで1987年から2年の空白期間を経つつ、現在まで日本GPの舞台を担っています。起伏に富んだ地形に高速、複合コーナー、そしてシケインを有す難易度の高さもあって、F1カレンダーの中でも「ドライバーズサーキット」の一つとしてファンのみならずドライバーや関係者からも人気のサーキットでもあります。ただ日本はヨーロッパからの遠隔地ということもあり、毎年9月末から10月頃の開催とシーズン終盤に設定されるため、時には台風の直撃、また時にはチャンピオン決定の舞台として、今までのF1に多くの試練と感動を与えてくれました。また空白期間となっている07,08年の2年はトヨタ系の富士スピードウェイでの日本GP開催により鈴鹿での連続開催が一旦途絶えています。
今のところ鈴鹿での日本GPは来年2021年までの契約となっていますので、何事も無ければ来シーズンは鈴鹿でF1は行われるはずです。しかしその先が怪しい雲行きになってきましたね。「あちらもこちらも揃って21年限り」とならなければいいのですが。「大阪万博」まではまだかなり時間があるし、もしそうなったらそちらを前倒しにしちゃいますか?!(笑)
サーキットレイアウトの変更は数回あるものの、基本の形は大きく変わりません。前に作図したもので確認しておきます。
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 ・1987〜90年 5.859km 水色(オリジナル)
 ・1991〜01年 5.864km 赤色(シケイン改良)
 ・2003〜現在 5.807km 黒色(130R改良)

91年に当時「カシオ・トライアングル」と呼ばれた速度抑制のシケイン形状が変わり、若干距離が伸びました。また近年03年に超高速左コーナー「130R」が改良され、今や130Rではない複合コーナーとなって現在に至ります。近年とはいいつつも、もう18年間同じレイアウトが保たれているということ。大きな変更が無いという時点で、オリジナルレイアウトは現代にも通用する完成度の高さであったといえますが、欲を言えば幅員の狭さやパッシングポイントが現代にはやや物足りないものになっています。

《鈴鹿の予選P.P.タイム変遷》
 87 5.859km 1分40秒042 ベルガー
 88 5.859km 1分41秒853 セナ
 89 5.859km 1分38秒041 セナ
 90 5.859km 1分36秒996 セナ
 91 5.864km 1分34秒700 ベルガー
 92 5.864km 1分37秒360 マンセル
 93 5.864km 1分37秒154 プロスト
 94 5.864km 1分37秒209 Mシューマッハ
 95 5.864km 1分38秒023 Mシューマッハ
 96 5.864km 1分38秒909 Jヴィルヌーブ
 97 5.864km 1分36秒071 Jヴィルヌーブ
 98 5.864km 1分36秒293 Mシューマッハ
 99 5.864km 1分37秒470 Mシューマッハ
 00 5.864km 1分35秒825 Mシューマッハ
 01 5.864km 1分32秒484 Mシューマッハ
 02 5.821km 1分31秒317 Mシューマッハ
 03 5.807km 1分31秒713 Rシューマッハ
 04 5.807km 1分33秒542 Mシューマッハ
 05 5.807km 1分46秒106 Rシューマッハ
 06 5.807km 1分29秒599 マッサ
 07
 08 
 09 5.807km 1分32秒160 ベッテル
 10 5.807km 1分30秒785 ベッテル
 11 5.807km 1分30秒466 ベッテル
 12 5.807km 1分30秒839 ベッテル
 13 5.807km 1分30秒915 ウェバー
 14 5.807km 1分32秒506 Nロズベルグ
 15 5.807km 1分32秒584 Nロズベルグ
 16 5.807km 1分30秒647 Nロズベルグ
 17 5.807km 1分27秒319 ハミルトン
 18 5.807km 1分27秒760 ハミルトン
 19 5.807km 1分27秒064 ベッテル

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まずはいつものポールポジションタイムをみていきましょう。当初は5.8kmで1分40秒を要していたラップタイムも30年で13秒削る1分30秒かからないところまでF1は進化しました。ポールポジションを獲得した面々をみてもチャンピオン級のビッグネームが多く、同じドライバーが複数回登場するなど「得意不得意」が表れています。
飛び出たタイムをみると、開催2年目、時はちょうど「マクラーレン、ホンダ、セナ」にわく88年はターボの過給圧が2.5バールに制限されて1.8秒の遅れがみられています。無敵を誇るマクラーレンMP4/4ではありますが、過給圧低下は起伏のある鈴鹿においては不利側に働きました。またグラフ中央付近にそびえる05年の1分46秒106は記憶にある方も多いと思います。鈴鹿泣かせの一つである「雨」でしたね。当時の予選方式は今とは異なり「前戦の成績の悪い順に1本だけ走る」というもので、予選が進めば進むほど雨足が強くなったため、シーズン上位のドライバーがこぞって後方スタートという、まるで「リバースグリッド」のような状態でした。それが決勝レースをいつも以上に盛り上げ、面白く演出したというのも皮肉な話です。この年のドライ環境では当時マクラーレンの代走デ・ラ・ロサがフリー走行1回目で1分30秒532で走破。また決勝の最終周で劇的勝利を手にしたライコネンはその最終周で前年のポールポジションを上回る1分31秒540というファステストラップを記録しています。そのタイムは昨年19年のハミルトンが塗り替えるまで14年に渡って最速を保持していました。これだけのマシンの性能をここまで低下させてしまう雨はF1にとって天敵であり、ライバルとイコールコンディションを生みます。
鈴鹿の最速ポールポジションタイムとして長らく定着していたのは91年にマクラーレンを駆るベルガーが記録した1分34秒700が有名でした。ホンダ3.5ℓV12のNAエンジンで打ち立てたその記録を初めて抜いたのが、10年後となる01年のM・シューマッハのフェラーリ3.0ℓV10エンジンで1分32秒484でした。さらにNAエンジンでの最速はその5年後の2.4ℓV8のマッサによる1分29秒599となります。排気量が小さくコンパクトなエンジンを高回転に回せた方が速いラップを刻めたということですね。もちろんエンジンだけの問題ではなく、ボディワークも洗練され、迅速なコーナリングができるようになったのも強力な後ろ盾になりました。ちなみに同じ06年のQ2でのM・シューマッハはマッサをも上回る1分28秒954で走破しています。
近年3年は鈴鹿においても例外無くタイム向上が著しく、台風により「日曜予選」となった19年の眉唾モノのベッテルによって記録された1分27秒064が現在の鈴鹿最速タイムとなります。今シーズンがもし健全に、ドライ環境で行われていれば1分26秒台も夢ではありませんでしたね。もちろん「黒いチーム」で。
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《鈴鹿の予選P.P.平均速度変遷》
 87 5.859km 210.8km/h 100%    ベルガー
 88 5.859km 207.1km/h   98.2% セナ
 89 5.859km 215.1km/h 102.0% セナ
 90 5.859km 217.5km/h 103.1% セナ
 91 5.864km 222.9km/h 105.7% ベルガー
 92 5.864km 216.8km/h 102.8% マンセル
 93 5.864km 217.3km/h 103.1% プロスト
 94 5.864km 217.2km/h 103.0% Mシューマッハ
 95 5.864km 215.4km/h 102.1% Mシューマッハ
 96 5.864km 213.4km/h 101.2% Jヴィルヌーブ
 97 5.864km 219.7km/h 104.2% Jヴィルヌーブ
 98 5.864km 219.2km/h 104.0% Mシューマッハ
 99 5.864km 216.6km/h 102.7% Mシューマッハ
 00 5.864km 220.3km/h 104.5% Mシューマッハ
 01 5.864km 228.3km/h 108.3% Mシューマッハ
 02 5.821km 229.5km/h 108.8% Mシューマッハ
 03 5.807km 227.9km/h 108.1% Rシューマッハ
 04 5.807km 223.5km/h 106.0% Mシューマッハ
 05 5.807km 197.0km/h   93.4% Rシューマッハ
 06 5.807km 233.3km/h 110.7% マッサ
 07
 08 
 09 5.807km 226.8km/h 107.6% ベッテル
 10 5.807km 230.3km/h 109.2% ベッテル
 11 5.807km 231.1km/h 109.6% ベッテル
 12 5.807km 230.1km/h 109.2% ベッテル
 13 5.807km 229.9km/h 109.1% ウェバー
 14 5.807km 226.0km/h 107.2% Nロズベルグ
 15 5.807km 225.8km/h 107.1% Nロズベルグ
 16 5.807km 230.6km/h 109.4% Nロズベルグ
 17 5.807km 239.4km/h 113.6% ハミルトン
 18 5.807km 238.2km/h 113.0% ハミルトン
 19 5.807km 240.1km/h 113.9% ベッテル

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平均速度変換するとこうなります。当初の鈴鹿の速度域は210km/hを超えるあたりと、当時でいうニュルブルクリンク(GPコース)やポールリカール(ショートコース)、現在のハンガロリンクに相当する中速域にありました。それが年々速度を上げ、02年のV10NA時代で230km/h弱、20,000回転近くまで回せる06年V8NA時代では230km/hを超えるところまで上昇し、一般的に高速の位置付けである当時のシルバーストンに匹敵するまでになりました。昨年が最速となるハイブリッドターボ時代の240km/hは現在のシルバーストンやスパ・フランコルシャンには及ばないものの、起伏があり、幅員やレコードラインが狭い中でこれだけの速度域となることを考えると、鈴鹿でのラップは容易なものでなく、世界屈指の難サーキットであることが想像できますね。

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皆さん、今週末は間違って鈴鹿に行かないようにして下さいね!Go ToもF1も残念ですが対象外ですよー(笑)

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2020年シーズンも駆け足に折り返しを過ぎ、色んな意味で荒れて後半戦に入ります。ヨーロッパ主体のGPを重ねて、今回は片足だけアジアなのかな、それともヨーロッパなのかな。そちはどう思っとるのじゃ?(笑)今までの流れを見て頂ければ想像がつくと思いますが、この企画、ソチだけでは到底成り立ちませんので、アチやコチなどのオマケも織り交ぜつつやっていきたいと思います。

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《ソチ・オリンピックパークの基本情報》
    全長   :5.848km(2014〜)
 コーナー数:19箇所 (2014〜)
   開催回数  :6回

現パワーユニットでF1が始まった2014年からロシア初のF1が開催され、このコロナ禍においても予定のスケジュールから全くズレることなくカレンダーに組み込まれていますね。その名の通り2014年2月に行われたソチ冬季オリンピックから遅れること半年後の10月に第1回大会が行われました。一応ヘルマン・ティルケが監修したオリンピック会場をぐるりと周回するレイアウトで路面もスムーズかつ高低差も1.9mと通常のクローズドサーキットと比べても「人工感」があり、決勝レースは個人的にはあまりエキサイティングにならない印象があります。皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか。

《ソチ・オリンピックパークの予選P.P.タイム変遷》
 14 5.848km 1分38秒513 100%    ハミルトン
 15 5.848km 1分37秒113   98.6% Nロズベルグ
 16 5.848km 1分35秒417   96.9% Nロズベルグ
 17 5.848km 1分33秒194   94.6% ベッテル
 18 5.848km 1分31秒387   92.8% ボッタス
 19 5.848km 1分31秒628   93.0% ルクレール

1周距離、コースレイアウトに変更が無いのはこのネタを行うにあたりmiyabikun大変助かります(笑)レイアウト変更を伴わないため、単純にタイムだけの比較ができます。割合は初年2014年を100とし、それを超える場合は遅く、下回れば短縮されていることを示します。image
ポールボションタイムを時系列で並べると、昨年2019年以外は年々1.5秒程度のタイム短縮がみられました。歴代でメルセデスないしフェラーリがポールポジションを獲得しており、昨年はウィングがワイド化、マシン重量も増加したこともあってか、タイムが若干遅くなっています。今シーズンのロシアGPは昨年まで使用できたエンジンモードに制約があるため、最速であった18年のタイムを上回れるか、上回ったとしたらどの程度速まるのかわかりません。ポールボションはおそらくハイダウンフォースでセクター3を強みとしそうな「紅色で無い方」が獲りにくるのかな。

と、こんな感じでソチはさっくり終わってしまいます。サンプル数が少ないと、比較に手応えがありません。こうなることを想定していましたので、続いてはオマケとして「本当ならばロシアGPの前に行う予定としていたGP」も続けてみておきましょう。シンガポールGPの舞台であるマリーナ・ベイ市街地サーキットです。

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《マリーナ・ベイ市街地の基本情報》
    全長   :5.067km(2008)
       5.073km(2009〜12)
       5.065km(2013〜17)
       5.063km(2018〜)
 コーナー数:23箇所 (2018〜)
   開催回数  :12回

きらびやかなナイトレースでお馴染みのベイエリアで行われる市街地サーキットです。一周全長は5kmと他と比べても長過ぎず短過ぎずの一般的な長さを有していますが、東京でいうところの「臨海副都心」のような街並みで直角コーナーが非常に多く、平均速度は低い部類です。したがって予選はまだしも、決勝レースはセーフティカーが発動したりすると、 2時間規程をオーバーしてしまうこともしばしば。セーフティカーのお世話になるのはランオフエリアに制約のある市街地サーキットならではですね。

《マリーナ・ベイ市街地の予選P.P.タイム変遷》
 08 5.067km 1分44秒801 マッサ
 09 5.073km 1分47秒891 ハミルトン
 10 5.073km 1分45秒390 アロンソ
 11 5.073km 1分44秒381 ベッテル
 12 5.073km 1分46秒362 ハミルトン
 13 5.065km 1分42秒841 ベッテル
 14 5.065km 1分45秒681 ハミルトン
 15 5.065km 1分43秒885 ベッテル
 16 5.065km 1分42秒584 Nロズベルグ
 17 5.065km 1分39秒491 ベッテル
 18 5.063km 1分36秒015 ハミルトン
 19 5.063km 1分36秒217 ルクレール

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タイムに上下はありつつも、開催の12年全てがドライコンディションの予選となります。刻々と変化するレギュレーションにまんまと影響されているようなタイム変化にもみえます。例えば09年は各種エアロパーツの禁止によるダウンフォースの低下でタイムが3秒遅くなっています。また12年はブロウン・ディフューザー(エキゾースト・ブローイング)の廃止により2秒遅れ。さらには14年はパワーユニット変更だけでなく、フロント、リヤともウィング幅が狭くなり、またダウンフォース量を削減されるなど、まさにマシン開発とレギュレーションの真っ向勝負がタイムに表れています。それを踏まえつつ近年は急激にタイムを短縮して18年の最速タイムは初年の08年と比較して10年間で8秒以上速くなりました。

《マリーナ・ベイ市街地の予選P.P.平均速度変遷》
 08 5.067km 174.1km/h 100%    マッサ
 09 5.073km 169.3km/h  97.3% ハミルトン
 10 5.073km 173.3km/h   99.6% アロンソ
 11 5.073km 175.0km/h 100.5% ベッテル
 12 5.073km 171.7km/h   98.6% ハミルトン
 13 5.065km 177.3km/h 101.9% ベッテル
 14 5.065km 172.5km/h   99.1% ハミルトン
 15 5.065km 175.5km/h 100.8% ベッテル
 16 5.065km 177.7km/h 102.1% Nロズベルグ
 17 5.065km 183.3km/h 105.3% ベッテル
 18 5.063km 189.8km/h 109.1% ハミルトン
 19 5.063km 189.4km/h 108.8% ルクレール

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サーキット側は3回の軽微な変更を経て、現在は5.063kmとなっています。たかが数mではありますが、1/1,000秒を争うF1ですから、その全長に合わせて平均速度を算出しています。全体的には170〜190km/hの間を推移しており、速度域はモナコのモンテカルロ市街地よりは高く、カナダのジル・ヴィルヌーブやメキシコのエルマノス・ロドリゲスよりは低いといった位置付けになってきます。ポールポジションタイムは10年で8秒強の短縮となりましたが、速度的には15km/hの増加となりました。マリーナ・ベイ市街地は他のサーキットに比べるとストレートはさほど長くなく、セクター後半はほぼ直角コーナーで構成されています。グリップ、またダウンフォース減少によりラップタイムを落としていることからも、ダウンフォースが非常に重要で、コーナー通過速度の向上が平均速度、ラップタイムに大きく影響が出ていることがわかりますね。

わかったところで、今シーズンはシンガポールでF1は行われないので、さらなるマシンの進化がみられないのが非常に残念です。日本からしたら時差があまり無い貴重なGPでもあるのに。。また冒頭のロシアと同様に、シンガポールもサンプル年が少ないので消化不良な感じ。というわけでさらにオマケとして、惜しまれつつも一年切り上げ撤退となったアジア圏の新興サーキットの一つ、マレーシアGPが行われたセパンサーキットでも同様の検証をしてみたいと思います。

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《セパン国際の基本情報》
    全長   :5.542km(1999)
       5.543km(2000〜17)
 コーナー数:23箇所 (2000〜)
   開催回数  :19回

セランゴール州のセパンにサーキットを新設、純アジア圏では日本GPに次ぎ中国GPよりも早い1999年から、ガチの赤道直下という熱帯地方で初のF1開催となりました。高温多湿で雨季もあるため、GP開催はシーズン終盤もしくは開幕直後に設定されていたものの、高温と突如訪れるスコールはドライバーやチーム、レース泣かせのレースが多くありました。当初は今から一昨年にあたる18年までの開催契約がありましたが、近年の開催コストの増加、その反面の観客動員数の減少と視聴率の低下もあって、予定より一年早めた17年シーズンをもって開催を終了しています。一見モータースポーツに縁遠そうな東南アジアのマレーシアで19回も行われて、現時点でアジア圏で2番目の開催回数となっています(1位は日本GPの35回、3位は中国GPの16回)
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サーキット監修はロシアのソチと同様のヘルマン・ティルケです。当時はまだ初期の頃でこれ以降F1はわんさか「ティルケワールド」に染まっていくこととなります。特徴的なのは回り込むコーナーや高速、中低速のコーナーを各所に盛り込む外周部と、中央付近に設置された2本のロングストレートで形成された「パックマン」のようなレイアウトです。中央のコントロールライン付近のスタンド屋根にも意匠的な工夫をこらし、安全性もバッチリな広めのランオフエリアも確保されています。賛否両論が聴かれるティルケサーキットではありますが、トルコのイスタンブールパークやアメリカのCOTAに並んで、このセパンも個人的には面白いテイストなんじゃないかなと思っています。シルエットだけは同じくティルケ監修の韓国国際サーキットもどことなく似ていますが、中身が全然違います。マレーシア国内でのモータースポーツ関心はもちろんのこと、ドライバーやレースの立場からみて暑さと急な雨が無ければ、なおよかったかもしれません。

《セパン国際の予選P.P.タイム変遷》
 99 5.542km 1分39秒688 100%   Mシューマッハ
 00 5.543km 1分37秒397   97.7% Mシューマッハ
 01 5.543km 1分35秒220   95.5% Mシューマッハ
 02 5.543km 1分35秒266   95.6% Mシューマッハ
 03 5.543km 1分37秒044   97.3% アロンソ
 04 5.543km 1分33秒074   93.4% Mシューマッハ
 05 5.543km 1分32秒582   92.9% アロンソ-1
 06 5.543km 1分33秒840   94.1% フィジケラ
 07 5.543km 1分35秒043   95.3% マッサ
 08 5.543km 1分35秒748   96.0% マッサ
 09 5.543km 1分35秒181   95.5% バトン
 10 5.543km 1分49秒327 109.7% ウェバー
 11 5.543km 1分34秒870   95.2% ベッテル
 12 5.543km 1分36秒219   96.5% ハミルトン
 13 5.543km 1分49秒674 110.0% ベッテル
 14 5.543km 1分59秒431 119.8% ハミルトン
 15 5.543km 1分49秒834 110.2% ハミルトン
 16 5.543km 1分32秒850  93.1% ハミルトン
 17 5.543km 1分30秒076   90.4% ハミルトン

 ※2005年はポールポジションタイムではありません

以前に取り扱ったオーストラリアのアルバートパークやバーレーン、中国の上海の時と同様に2005年は2回の一発タイムアタックによる合算でポールポジション決定でしたので、1回目に最速タイムを記録したアロンソのタイムを採用しています。ただこのサーキットは初年99年のみ5.542kmとたった1mだけ短い全長となっています。先程のシンガポールは短いながらそれに合わせた平均速度試算を行なったわけですが、今回のココはmiyabikunの手抜きで速度試算を行いませんでした。。言っていることが矛盾して申し訳ありません。グラフだけはちゃんと色分けしたので許して下さい(笑)開催当初はフェラーリのM・シューマッハが大得意としていたサーキットです。初年の99年は「過去のレース」でも振り返った怪我からの復帰後の名サポートが思い出されます。03年はルノーの若手アロンソの初ポール獲得の地でもありますし、その決勝レースはマクラーレンの若手ライコネンの初優勝と、現在ギリギリで現役のベテランドライバーのメモリアルレースが繰り広げられました。image
99年から最終年の17年までグラフにおこしてみると、様々なマシンレギュレーションを経ても他のサーキットのような右肩下がりのグラフになりませんでした。近年2年こそタイムがガンと下がっていますが、大体1分33秒から35秒付近を上下していますね。セパンは他に比べてタイム変化の少ないサーキットなのか?!面白い結果ですね。グラフが飛び出ているいくつかは当然ながら雨による影響です。参考までにドライ環境のタイムを記しておくと、10年はフリー走行3回目でレッドブルのウェバーが1分33秒542で走破。13年はドライ環境であったQ2でメルセデスのN・ロズベルグが1分36秒190。14年もロズベルグがフリー走行3回目で1分39秒008を記録。翌15年はハミルトンがQ1で1分39秒269となっています。それらと比較すると、ウェットはドライの約10秒から15秒落ち程度ということになるでしょうか。それにしても14年が一際遅いですね。この年は予選直前でスコールに遭い、開始時間が予定の50分も遅れ、その後も赤旗中断を挟むという大荒れの日。その上マシンはウィングが狭小化されましたから、走行するのがやっとのところでした。技術とお金の塊であるF1マシンでも自然の力には到底敵いませんね。
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最後のセパンは意外な結果に終わり、大した検証にならず幾分締まりが悪いですが、以上、色々かさ増し3つのサーキットのポールポジションタイム推移でした。

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今週末はF1では有名、でも本戦では未開催となるムジェロでのトスカーナGPです。しかし未開催ということはいつものコレができないわけで、となれば「本来は行われるはずであったサーキット」に代わりを頼むしかありません。今回は9月初頭には馴染みがないブラジルGPの舞台であるホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス)の歴代ポールポジションタイムをみていきます。開催されないってのにどうにか隙間みて差し込むなんて、miyabikunは頑なよね(笑)だって可哀想じゃないですか、一時期はF1大国といわれたブラジルは今や現役ドライバー0人。おまけにココだっていつまで開催されるか分からなくなってきたし。ここが終われば、今シーズン予定だったアメリカ大陸系のGPは終わり、対象もだいぶ減ってきます。

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《ホセ・カルロス・パーチェの基本情報》
    全長   :7.960km(1973〜77)
       7.874km(1979,80)
       4.325km(1990〜96)
       4.292km(1997,99)
       4.309km(2000〜)
 コーナー数:15箇所(2000〜)
   開催回数  :37回

サンパウロの近く、東西を湖で挟まれた間にあるサーキットです。サーキット自体は1936年開業と非常に古く、F1が初めて開催されたのはそのだいぶ後、73年からになります。当初は「湖の間」という意味のインテルラゴスという名称で呼ばれていましたが、開催3年目の75年にここで優勝を挙げ、のちに飛行機事故で命を落とした英雄、カルロス・パーチェの名前に改称され今に至ります。メキシコGPが行われるエルマノス・ロドリゲスの存在により、さほど目立たなくなってしまいましたが、標高800mの土地にあるため、他のサーキットに比べると空気が薄いといわれる時代もありました。
レイアウトは数回の変更を経ていますが、大きく分けると2種類に分類されます。
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 ・1973〜77年 7.960km 赤色(オリジナル)
 ・1979,80年    7.874km
 ・1990〜96年 4.325km(ショートレイアウト)
 ・1997,99年    4.292km
 ・2000〜現在  4.309km 黒色

miyabikun横着して、前に描いた2つのままです。ごめんなさい。でも凡そこの2つを押さえておけば説明できます。右側の黒が現レイアウトの馴染みがあるもの。左側の赤が旧レイアウトです。似ているけど、赤がとても複雑にみえます。重ねてみると、違いがよくわかります。
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現サーキットが一回り内側にありますね。ちょうどターン2,3に位置する「エス・ド・セナ」で内側にシフトし、旧レイアウトを逆走するような形になります。そしてサーキット後半にあたる低速のインフィールド区間手前で再び旧レイアウトに戻っていきます。
旧レイアウトと現レイアウトの間に9年の空白期間があります。78年の1年を含めた10シーズンはリオ・デ・ジャネイロにあるネルソン・ピケ(旧 ジャカレパグア)サーキットにブラジルGPが移されたためです。また、こちらも今でこそ珍しくなくなりましたが、かつてはGPサーキット少数派となる「反時計回り(左回り)」のサーキットとしても有名でしたね。開催は開幕に近い夏から秋の1月〜4月、2003年からは閉幕に近い春にあたる10月や11月に行われています。今のような9月はまだ冬。南半球ですから日本と季節も逆。

《ホセ・カルロス・パーチェの予選P.P.タイム変遷》
 73 7.960km 2分30秒500 ピーターソン
 74 7.960km 2分32秒970 Eフィッティパルディ
 75 7.960km 2分29秒880 ジャリエ
 76 7.960km 2分32秒500 ハント
 77 7.960km 2分30秒110 ハント
 78 
 79 7.874km 1分23秒070 ラフィ
 80 7.874km 1分21秒400 ジャブイユ

 90 4.325km 1分17秒277 セナ
 91 4.325km 1分16秒392 セナ
 92 4.325km 1分15秒703 マンセル
 93 4.325km 1分15秒866 プロスト
 94 4.325km 1分15秒962 セナ
 95 4.325km 1分20秒081 Dヒル
 96 4.325km 1分18秒111 Dヒル
 97 4.292km 1分16秒004 Jヴィルヌーブ
 98 4.292km 1分17秒092 ハッキネン
 99 4.292km 1分16秒568 ハッキネン
 00 4.309km 1分14秒111 ハッキネン
 01 4.309km 1分13秒780 Mシューマッハ
 02 4.309km 1分13秒114 モントーヤ
 03 4.309km 1分13秒807 バリチェロ
 04 4.309km 1分10秒646 バリチェロ
 05 4.309km 1分11秒988 アロンソ
 06 4.309km 1分10秒680 マッサ
 07 4.309km 1分11秒931 マッサ
 08 4.309km 1分12秒368 マッサ
 09 4.309km 1分19秒576 バリチェロ
 10 4.309km 1分14秒470 ヒュルケンベルグ
 11 4.309km 1分11秒918 ベッテル
 12 4.309km 1分12秒458 ハミルトン
 13 4.309km 1分26秒479 ベッテル
 14 4.309km 1分10秒023 Nロズベルグ
 15 4.309km 1分11秒282 Nロズベルグ
 16 4.309km 1分10秒736 ハミルトン
 17 4.309km 1分08秒322 ボッタス
 18 4.309km 1分07秒281 ハミルトン
 19 4.309km 1分07秒508 Mフェルスタッペン

空白期間の81〜89年は省略しました。そのタイミングでサーキットも大幅改良されていますのでちょうどいいですね。
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旧レイアウト時代は8km弱を2分30秒かけて走破していました。ドイツやベルギーなどと同様にオールドサーキットは一周距離が長いため、現代の1分台で走破する時代からみるとだいぶ長く感じます。グラフをみても大人と子供の差のようで全く比較になりません。
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そこでいつものように近代サーキットのみを抜粋して再作図しました。これでだいぶ見易くなります。ざっと見る限り、時代変化とともに少しずつ綺麗にタイム低下しているようですね。3.0ℓV10末期の2004年あたりまで順調にタイムを削り、2.4ℓV8になると一度タイムが遅れ、現パワーユニットになり急激に速くなっています。
以前に「過去のレース」で振り返ったこともある95年、ウィリアムズのヒルが記録した1分20秒081は前年のセナの記録から4秒近く遅れています。これは雨絡みではあるものの、ハーフウェットコンディションによるタイムではあるものの、このレース自体のタイムが低調でした。これは前年の「重大事故」以降のマシンレギュレーション変更により、ダウンフォースが削られたためです。
続いて2.4ℓV8時代に着目すると、中間期にあたる09年や10年が遅めとなっています。これは言うまでもなくウェット路面による影響になります。さらにいうと、09年シーズンは前年まで続いた「ウィング類の排除」に伴い、再びダウンフォースの大幅な低下を余儀無くされました。外周の高速区間はともかく、インフィールド区間でのダウンフォース低下はタイムに大きく影響します。ちなみに09年はフリー走行2回目が最も速く、当時フェラーリのアロンソが1分12秒314で走破。翌10年のフリー走行2回目はレッドブルのベッテルが1分11秒968となっていますが、それを前後のドライ予選に当て込んでも横ばいな感じですね。13年の振り切れているグラフも雨です。ブラジルは雨が絡むと決勝は非常に危険なレースとなります。
グラフでいうオレンジの帯、現在使用される一周全長4.309kmレイアウトは2000年から20年に渡って変更されていません。ということは、大きく3種類の異なるパワーユニットの比較ができるということ。タイム編の〆は3.0ℓV10、2.4ℓV8、そして現在の1.6ℓV6ハイブリッドターボのセクター別最速タイム比較をしてみたいと思います。

・ブラインドコーナーを流れるようにセクター1
 04バリチェロ  06マッサ  18ハミルトン
    17秒883      18秒014       17秒454
・クネクネと上り下りイライラのセクター2
 04バリチェロ  06マッサ  18ハミルトン
    36秒071      35秒375      34秒122
・左へ左へ、とにかく踏め踏めセクター3
 04バリチェロ  06マッサ  18ハミルトン
    16秒692       17秒139      15秒601
● 1周ポールポジションタイム※
 04バリチェロ  06マッサ  18ハミルトン
 1分10秒646  1分10秒680  1分07秒281

※セクター最速タイムを記載しているため、
 各セクター合算とポールタイムに差があります

三者比較するとハミルトンが記録した18年の歴代最速タイムが一際目立ちますね。マシンはそこそこ重たいはずなのに、全セクターで頭一つ速いです。僅差となる04年の「二代目」バリチェロと06年の「三代目」マッサの違いとしては、ストレート基調のセクター1や3の部分の遅れをクネクネなセクター2で帳消しにしている点。 2年の違いでパワーはかなり低下しましたが、回転数を20,000回転近くまで回し、空力的にも向上させました。どんなサーキットでもパワーがあるに越したことはありませんが、先程も書いたように、このサーキットはセクター2のインフィールド区間で如何にしてロスしないか、これが重要だと思います。
IMG_5889

《ホセ・カルロス・パーチェの予選P.P.平均速度変遷》
 73 7.960km 190.4km/h 100%    ピーターソン
 74 7.960km 187.3km/h   98.4% Eフィッティパルディ
 75 7.960km 191.2km/h 100.4% ジャリエ
 76 7.960km 187.9km/h   98.7% ハント
 77 7.960km 190.9km/h 100.3% ハント
 78 
 79 7.874km 198.1km/h 104.1% ラフィ
 80 7.874km 200.5km/h 105.3% ジャブイユ

 90 4.325km 201.5km/h 105.8% セナ
 91 4.325km 203.8km/h 107.0% セナ
 92 4.325km 205.7km/h 108.0% マンセル
 93 4.325km 205.2km/h 107.8% プロスト
 94 4.325km 205.0km/h 107.6% セナ
 95 4.325km 194.4km/h 102.1% Dヒル
 96 4.325km 199.3km/h 104.7% Dヒル
 97 4.292km 203.3km/h 106.8% Jヴィルヌーブ
 98 4.292km 200.4km/h 105.3% ハッキネン
 99 4.292km 201.8km/h 106.0% ハッキネン
 00 4.309km 209.3km/h 109.9% ハッキネン
 01 4.309km 210.3km/h 110.4% Mシューマッハ
 02 4.309km 212.2km/h 111.4% モントーヤ
 03 4.309km 210.2km/h 110.4% バリチェロ
 04 4.309km 219.6km/h 115.3% バリチェロ
 05 4.309km 215.5km/h 113.2% アロンソ
 06 4.309km 219.5km/h 115.3% マッサ
 07 4.309km 215.7km/h 113.3% マッサ
 08 4.309km 214.4km/h 112.6% マッサ
 09 4.309km 194.9km/h 102.4% バリチェロ
 10 4.309km 208.3km/h 109.4% ヒュルケンベルグ
 11 4.309km 215.7km/h 113.3% ベッテル
 12 4.309km 214.1km/h 112.4% ハミルトン
 13 4.309km 179.4km/h   94.2% ベッテル
 14 4.309km 221.5km/h 116.3% Nロズベルグ
 15 4.309km 217.6km/h 114.3% Nロズベルグ
 16 4.309km 219.3km/h 115.2% ハミルトン
 17 4.309km 227.0km/h 119.2% ボッタス
 18 4.309km 230.6km/h 121.1% ハミルトン
 19 4.309km 229.8km/h 120.7% Mフェルスタッペン

image
平均速度での比較です。旧レイアウト込みのグラフになりますが、先程のタイムグラフのような「突き抜け」に対し、速度変換をするとさほど違和感なく右肩上がりの速度向上に落ち着きます。ただ70年代のマシンとなると、初代となる紫帯の7.960km時代最速が191.2km/h、次の水色帯7.874km時代の最速は200.5km/hと200km/hがやっとな感じでした。レイアウトを見てわかるように、当時を知らない者からするとちょっとクネクネし過ぎているんですよね。同じような景色を度々見て、パッとオンボード画像を見せられても、どこにいるんだか分かり辛そう。助手席に乗せられたら確実に車酔いしちゃうだろうな。
image
こちらも90年以降を抽出しています。マシンレギュレーションに翻弄される開幕戦となった95年、そして雨に翻弄された09年が200km/h以下となり、旧レイアウト相当の落ち込みとなりましたが、他は年々順調に速度を上げ、18年は230km/hを超えるまでになりました。今までみてきたサーキットでも同様なことを書いていますが、近年はマシン時代の最高速度自体は一時期に比べれば上昇を止めています。しかしタイムは特にこの2、3年で急激に向上しています。ということは「ストレートで速いだけではなく、コーナー通過も速い」ことでタイムが向上していることが明らかです。コーナーがコーナーでないような扱いになっているということになります。ここのインフィールド区間はまだブレーキングを必要とする中低速、中速クラスの半径が続くものの、それらを速く通過できるようになったからこそ、このようなゲインがみられます。タイムや速度とは関係ない余談ですが、ポールシッターの面々をみていると、何かに気付きませんか?!フィッティパルディにはじまり、セナ、バリチェロ、マッサと地元ブラジル人ドライバーが多く、それも複数回ポールポジションを獲得していますね。やっぱり母国は他には無い力が生まれてくるのでしょうか。とは言いつつ、有名なブラジル人チャンピオンの名が珍しく見当たらないけど(笑)

一昔前のこのサーキットはどちらかといえば中低速のサーキットという印象が強くありました。ところがマシンが進化するにつれ、速度も徐々に上がり、タイム向上だけでなくドライバーへの体力的負荷も確実に大きくなっていきます。今シーズンは残念ながら開催しませんから、その進化具合を目の当たりにはできません。次回開催されることになったら、またどれだけタイムが向上してくるのか、またどこが限界点なのか興味深いところですね。また冒頭にも書いた通り、ブラジルGPの移転開催の噂もチラホラ耳にします。危険だとか治安が悪いとか、悪名も聞かれるサーキットではありますが、長いこと行われてきたサーキットが使われなくなるのもどこか寂しさを感じます。

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イギリスのシルバーストン、モナコのモンテカルロ市街地、ベルギーのスパ・フランコルシャンと並ぶF1を代表するサーキット。イタリアのモンツァサーキットですね。紅一色に染まるフェラーリの聖地、いやF1の聖地の変遷をみていきましょう。
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《モンツァの基本情報》
    全長   :  6.300km(1950〜54)
       10.000km(1955,56,60,61)
         5.750km(1957〜59,62〜71)
         5.775km(1972,73)
         5.780km(1974,75)
         5.800km(1976〜94)
         5.770km(1995〜99)
         5.793km(2000〜)
 コーナー数:11箇所(2000〜)
   開催回数  :69回

イタリアを代表する大都市ミラノからほど近いモンツァの緑豊かな国立公園の中にサーキットがあります。シルバーストンやモンテカルロ、先日のスパ・フランコルシャンと同様に、古さの数だけ歴史と変化があります。それらよりも頭一つ出ている点の一つに「F1開催回数」があります。F1は今年で70周年を迎えましたが、フルで行われると71回のGPになる計算です。ところがモンツァで今まで開催されたのは69回。今週末無事に開催されれば70回目です。多いと思われがちなモンテカルロ市街地は66回、シルバーストンは今シーズンの2回を含めても55回、そしてスパ・フランコルシャンが53回ですので、モンツァは1980年シーズンを除いた全てでイタリアGPを行ってきた「キング・オブ・F1サーキット」なのです。大きな変更はなくとも、いくつもの大きな事故が起き、その度に軽微な改良を経て現在に至ります。過去に作図したサーキットレイアウトを使って、手短にみていきます。image
・1950〜54年             6.300km 灰色(オリジナル)
・1955,56,60,61年    10.000km 赤色(オーバル使用)
・1957〜59,62〜71年 5.750km 黄緑(オーバル廃止)image
・1972,73年   5.775km 紫色(シケイン追加)
・1974,75年   5.780km 土色(シケイン変更)
・1976〜94年 5.800km 水色(シケイン追加)
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・1995〜99年 5.770km 桃色(グランデ改良)
・2000〜現在 5.793km 黒色(シケイン変更)

以前も3つのグループに分けて描きました。一つ目のグループは1950年から70年台初頭まで使用されたレイアウトになります。今でこそ丸みを帯びた「靴下」のような線形をなしていますが、F1制定当初はシケインも無く最終セクションは角張ったコーナーでした。またF1で唯一綺麗なオーバルを組み合わせたレイアウトを採用し「メインスタンドを2回通過する」という唯一無二のサーキットだった時代もありました。
二つ目は70年台から90年台中盤までに使用されたグループになります。死亡事故が起きる度にシケインを増やし、また位置を変え、この高速サーキットにも「速度抑制」を取り入れることとなりました。
現在のレイアウトは2000年から使用されています。2000年と聞くとまだまだ最近の出来事のように感じますが、もうかれこれ今年で20年経ちます。カレンダーに並ぶ各サーキットの中でも、これだけ長い期間に渡って使用されているのはオーストラリアGPで使用されるアルバートパークとこのモンツァくらいではないでしょうか。アルバートパークの方は近々レイアウト変更が予定されていますね。一時期はサンマリノGPで使用されたエンツォ・ディノ・フェラーリ(イモラ)サーキットへ「イタリアGP移設案」の噂に挙がりつつも、今のところは2025年までこのモンツァで継続開催されることが発表されました。果たしていつまでこのレイアウトで行われるのか、個人的にかなり興味深いです。

《モンツァの予選P.P.タイム変遷》
まずはいつものポールタイムがずらっと並びます。先程も書いた通り、F1最多の69回ですからね。覚悟はよろしいですか?!とても付き合いきれないよという方は、グラフまでどうぞひとっ飛びしちゃって下さい。一応miyabikunめげずに一生懸命書きましたからね(笑)

 50   6.300km 1分58秒300 ファンジオ
 51   6.300km 1分52秒300 ファンジオ
 52   6.300km 2分05秒700 アスカリ
 53   6.300km 2分02秒700 アスカリ
 54   6.300km 1分59秒000 ファンジオ
 55 10.000km 2分46秒500 ファンジオ
 56 10.000km 2分42秒600 ファンジオ
 57   5.750km 1分42秒400 Lエバンス
 58   5.750km 1分40秒500 モス
 59   5.750km 1分39秒700 モス
 60 10.000km 2分41秒400 Pヒル
 61 10.000km 2分46秒300 Vトリップス
 62   5.750km 1分40秒350 クラーク
 63   5.750km 1分37秒300 サーティース
 64   5.750km 1分37秒400 サーティース
 65   5.750km 1分35秒900 クラーク
 66   5.750km 1分31秒300 パークス
 67   5.750km 1分28秒500 クラーク
 68   5.750km 1分26秒070 サーティース
 69   5.750km 1分25秒480 リント
 70   5.750km 1分24秒140 イクス
 71   5.750km 1分22秒400 エイモン
 72   5.775km 1分35秒650 イクス
 73   5.775km 1分34秒800 ピーターソン
 74   5.780km 1分33秒160 ラウダ
 75   5.780km 1分32秒240 ラウダ
 76   5.800km 1分41秒350 ラフィ
 77   5.800km 1分38秒080 ハント
 78   5.800km 1分37秒520 アンドレッティ
 79   5.800km 1分34秒580 ジャブイユ
 80 
 81   5.800km 1分33秒467 アルヌー
 82   5.800km 1分28秒473 アンドレッティ
 83   5.800km 1分29秒122 パトレーゼ
 84   5.800km 1分26秒584 ピケ
 85   5.800km 1分25秒084 セナ
 86   5.800km 1分24秒078 Tファビ
 87   5.800km 1分23秒460 ピケ
 88   5.800km 1分25秒974 セナ
 89   5.800km 1分23秒720 セナ
 90   5.800km 1分22秒533 セナ
 91   5.800km 1分21秒114 セナ
 92   5.800km 1分22秒221 マンセル
 93   5.800km 1分21秒179 プロスト
 94   5.800km 1分23秒844 アレジ
 95   5.770km 1分24秒462 クルサード
 96   5.770km 1分24秒204 Dヒル
 97   5.770km 1分22秒990 アレジ
 98   5.770km 1分25秒289 Mシューマッハ
 99   5.770km 1分22秒432 ハッキネン
 00   5.793km 1分23秒770 Mシューマッハ
 01   5.793km 1分22秒216 モントーヤ
 02   5.793km 1分20秒264 モントーヤ
 03   5.793km 1分20秒963 Mシューマッハ
 04   5.793km 1分20秒089 バリチェロ
 05   5.793km 1分21秒054 モントーヤ
 06   5.793km 1分21秒484 ライコネン
 07   5.793km 1分21秒997 アロンソ
 08   5.793km 1分37秒555 ベッテル
 09   5.793km 1分25秒066 ハミルトン
 10   5.793km 1分21秒962 アロンソ
 11   5.793km 1分22秒275 ベッテル
 12   5.793km 1分24秒010 ハミルトン
 13   5.793km 1分23秒755 ベッテル
 14   5.793km 1分24秒109 ハミルトン
 15   5.793km 1分23秒397 ハミルトン
 16   5.793km 1分21秒135 ハミルトン
 17   5.793km 1分35秒554 ハミルトン
 18   5.793km 1分19秒119 ライコネン
 19   5.793km 1分19秒307 ルクレール


長かったですね。書いた後、毎回一応ちゃんと確認はしているのですが、1秒や0.001秒間違えているかもしれません。もし誤りに気付かれた方がいましたらおっしゃってください。これらをグラフにおこしてみましょう。
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色の塗られているエリアより、塗られていないエリアが多いという、グラフとしてかなりもったいない形になりました。こうなっちゃった理由はただ一つ、薄いグレーで描かれたいつもの倍近い10kmの全長となる「オーバル追加期間」があるためです。この前のエルマノス・ロドリゲスにもあった「ぴったり」10kmって本当なのだろうか。グラウンドとかで距離を測るあの「コロコロ」がちょっと弾んだりしたら多少の誤差は生まれそうだけど、、先人を信じましょう!4本のオーバル期間グラフのおかげで、他の時代の細かなタイム差が打ち消されてしまっていますね。オーバルとトリップスさんには申し訳ないですが、この区間を除外して再作図してみました。image
これで少しはメリハリが出たでしょうか。いつもの通り、レイアウトの色とグラフの色は統一していません。ごめんなさい。同じモンツァとはいえ、初代の黒帯と現代のオレンジ帯の差が大きいですね。ただ今までのサーキットにもあったように、タイムが徐々に短縮された頃にレイアウト変更を伴ってタイムが落ち、またそれを短縮して、を繰り返しています。レイアウトで第一グループとくくった最終年71年にマトラのエイモンが5.750kmを1分22秒400で走破しています。シケインがあるにせよ、現代の5.793kmとさほど変わらない距離なのにタイムが近いというのはすごいです。この後の平均速度比較が楽しみです。やはりこのグラフでもまだ見辛いため、ちょうど非開催、miyabikunの生まれ年でもある1980年の切れ目を利用して、近代のみを抜き出してみます。image
これでもまだ物足りなさはありますが、タイム編のグラフはこの辺で折り合いを付けたい思います。ターボエンジンが活性化する1982年あたりから年々タイムを削り、比較的滑らかな頂点で波を打っているようにみえます。タイム的には1分20秒台を行ったり来たりしていますね。先日のスパ・フランコルシャンの時もそうでしたが、80年台のターボエンジンが90年台にNAエンジンに切り替わったところでタイムが落ち込むどころか93年までは順調に短縮の一途を辿っていたようです。徐々にターボエンジンのレギュレーションを厳しくし、うまくNAエンジンに移行できた表れなのでしょうか。空力やダウンフォース云々よりスピードがウリのモンツァであっても、馬力が高いだけが速いわけではないということを証明してくれているかのようです。08年と17年のグラフが特にビヨーンと飛び出しています。例の如く雨絡みです。まだ記憶にも新しい08年を覚えていますか?!以前にも「過去のレース」でも振り返ったことのある、若かりしベッテルちゃんがトロ・ロッソで雨のポールトゥウィンを決めた年です。まさかトロ・ロッソがチャンピオン候補であるマクラーレンやフェラーリを抑え切ると思いませんでしたよね。それも当時最年少ポールと最年少優勝の2つを更新してしまうというミラクルが起きました。今ではだいぶふて腐れてしまったベッテルにもこんなキラキラ輝いていた時代があったんだなぁ。優勝の方はのちにM・フェルスタッペンによって大幅更新されていますが、未だにポールポジションの最年少記録はベッテルが保持しています。モンツァ最速タイムは一昨年18年のラストフェラーリで記録したライコネンの1分19秒119です。スリップストリームをうまく使い、最後の最後でトップに立ちましたね。今の時点でこれがライコネン最終のポールポジションとなっています。まだ現役ドライバーだから今の時点で「これが最後の」なんていうと怒られちゃうけど、仮に来年も引き続きF1をドライブするなんてことになったとしても、おそらくポールポジションは、、難しいでしょうな。
FullSizeRender

《モンツァの予選P.P.平均速度変遷》
 50   6.300km 191.7km/h 100%    ファンジオ
 51   6.300km 202.0km/h 105.3% ファンジオ
 52   6.300km 180.4km/h   94.1% アスカリ
 53   6.300km 184.8km/h   97.4% アスカリ
 54   6.300km 190.6km/h   99.4% ファンジオ
 55 10.000km 216.2km/h 112.8% ファンジオ
 56 10.000km 221.4km/h 115.5% ファンジオ
 57   5.750km 202.1km/h 105.4% Lエバンス
 58   5.750km 206.0km/h 107.4% モス
 59   5.750km 207.6km/h 108.3% モス
 60 10.000km 223.0km/h 116.3% Pヒル
 61 10.000km 216.5km/h 112.9% Vトリップス
 62   5.750km 206.3km/h 107.6% クラーク
 63   5.750km 212.7km/h 111.0% サーティース
 64   5.750km 212.5km/h 110.9% サーティース
 65   5.750km 215.8km/h 112.6% クラーク
 66   5.750km 226.7km/h 118.3% パークス
 67   5.750km 233.9km/h 122.0% クラーク
 68   5.750km 240.5km/h 125.4% サーティース
 69   5.750km 242.2km/h 126.3% リント
 70   5.750km 246.0km/h 128.3% イクス
 71   5.750km 251.5km/h 131.0% エイモン
 72   5.775km 217.4km/h 113.4% イクス
 73   5.775km 219.3km/h 114.4% ピーターソン
 74   5.780km 223.4km/h 116.5% ラウダ
 75   5.780km 225.6km/h 117.7% ラウダ
 76   5.800km 206.0km/h 107.5% ラフィ
 77   5.800km 212.9km/h 111.0% ハント
 78   5.800km 214.1km/h 111.7% アンドレッティ
 79   5.800km 220.8km/h 115.2% ジャブイユ
 80 
 81   5.800km 223.4km/h 116.5% アルヌー
 82   5.800km 236.0km/h 123.1% アンドレッティ
 83   5.800km 234.3km/h 122.2% パトレーゼ
 84   5.800km 241.2km/h 125.8% ピケ
 85   5.800km 245.4km/h 128.0% セナ
 86   5.800km 248.3km/h 129.5% Tファビ
 87   5.800km 250.2km/h 130.5% ピケ
 88   5.800km 242.9km/h 126.7% セナ
 89   5.800km 249.4km/h 130.1% セナ
 90   5.800km 253.0km/h 132.0% セナ
 91   5.800km 257.4km/h 134.3% セナ
 92   5.800km 253.9km/h 132.5% マンセル
 93   5.800km 257.2km/h 134.2% プロスト
 94   5.800km 249.0km/h 129.9% アレジ
 95   5.770km 245.9km/h 128.3% クルサード
 96   5.770km 246.7km/h 128.7% Dヒル
 97   5.770km 250.3km/h 130.6% アレジ
 98   5.770km 243.5km/h 127.0% Mシューマッハ
 99   5.770km 252.0km/h 131.4% ハッキネン
 00   5.793km 249.0km/h 129.9% Mシューマッハ
 01   5.793km 253.7km/h 132.3% モントーヤ
 02   5.793km 259.8km/h 135.5% モントーヤ
 03   5.793km 257.6km/h 134.4% Mシューマッハ
 04   5.793km 260.4km/h 135.8% バリチェロ
 05   5.793km 257.3km/h 134.2% モントーヤ
 06   5.793km 255.9km/h 133.5% ライコネン
 07   5.793km 254.3km/h 132.7% アロンソ
 08   5.793km 213.8km/h 111.5% ベッテル
 09   5.793km 248.1km/h 129.4% ハミルトン
 10   5.793km 254.4km/h 132.7% アロンソ
 11   5.793km 253.5km/h 132.2% ベッテル
 12   5.793km 248.2km/h 129.5% ハミルトン
 13   5.793km 249.0km/h 129.9% ベッテル
 14   5.793km 247.9km/h 129.3% ハミルトン
 15   5.793km 250.1km/h 130.4% ハミルトン
 16   5.793km 257.0km/h 134.1% ハミルトン
 17   5.793km 218.3km/h 113.8% ハミルトン
 18   5.793km 263.6km/h 137.5% ライコネン
 19   5.793km 263.0km/h 137.2% ルクレール

平均速度に換算してみます。スピード自慢のモンツァはタイムでみるより、速度でみた方が面白いかもしれません。
image
各レイアウトの最速をピックアップしてグラフ頂部に示しています。薄いグレーのオーバル期間も速いには速いけど、やはり先程話題に出した71年は平均251.5km/hと高速サーキットの部類に属する現代のスパ・フランコルシャンよりも高速度となっています。さすがモンツァ。初年50年から20年間で31%も向上していますね。この平均速度は90年のマクラーレン・ホンダでセナが記録した253.0km/hまで20年近く最速を保持していました。
image
タイム編と同じ81年以降を拡大してみます。緑色のグラフ、一周全長5.800km時代は91年のセナが257.4km/hで最速。黄色の5.770km時代を飛ばして、現代のオレンジ色5.793km時代に入ると04年にフェラーリのバリチェロが260km/h台に突入。そしてさらに14年後の18年に同じくフェラーリのライコネンが歴代最高平均速度の263.6km/hに達しました。たまたまだと思いますが、マシンレギュレーションはそれぞれ異なり、また年々変わっていくのに 13〜14年周期で速度のピークが訪れているのが何とも不思議。何回か260km/h台を超えようとしては断念を繰り返して、ようやく近年突破できたかのような変遷となっています。
平均速度260km/h超えという時点で言うまでもなく他には類をみないハイスピードサーキットであることは間違いありません。平均速度はご存知の通りスピードに乗り切ったストレート終端付近や高速コーナーの通過速度だけではなく、各所にあるシケイン進入のための減速、最終コーナー「パラボリカ」のための減速を均して割り出しているため「瞬間最高速度」(スピードトラップでの速度ではない)となると、もっと高速度が出ていることになります。このブログで何回か取り上げているF1瞬間最高速度については15年まではこのモンツァで05年予選にマクラーレンのモントーヤによって372.6km/hがマークされていました。しかし平均速度にするとそれは257.3km/hにまで落ち込み、タイムは1分21秒054と18年のライコネンと比べても7.3km/h、1秒935も下回っています。いくら瞬間最高速度が速くても、直線でないコーナー区間、またコーナー進入ギリギリまでブレーキングポイントを遅らせて突っ込むなど「限界まで速度を落とさず走れる」マシンの方が一周トータルでは速いということがよくわかります。これが現代のマシンが速いといわれる最も特徴的な部分です。

近年は安全対策万全の新興サーキットや収益の期待できる市街地サーキットが増えました。よく言えば世界各地でF1を楽しむことができるようになり、悪く言えばどこも似たり寄ったりなサーキットが増えたようにも感じます。でもココは違う。例え古臭かろうがパワーとスピード一辺倒であろうが、昔も今も「F1の真骨頂」がみられる貴重なサーキットの一つです。

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スパ・フランコルシャンのレースと聞くと「夏の終わり」を感じます。今シーズンも夏の終わりには違いありませんが、2020年シーズンにおいてはまだ前半戦なんですよね。ファンのみならずドライバーや関係者からの絶大な支持を受ける人気サーキットのポール変遷をみていきましょう。

IMG_5049
《スパ・フランコルシャンの基本情報》
    全長  :14.120km(1950〜70)
        6.940km(1983〜91)
        6.974km(1992,93,95)
        7.001km(1994)
        6.968km(1996〜01)
        6.976km(2002,04,05)
        7.004km(2007〜)
 コーナー数:19箇所(2007〜)
   開催回数  :52回

「温泉リゾート」の代名詞でも使われるスパとフランコルシャンの2つの街にまたがる形で設営され、F1制定初年の1950年から山奥で行われるザ・パーマネントサーキットです。ただ面白いのは「半市街地サーキット」であること。14kmに及ぶ旧レイアウトのほとんどが日常的に一般車が往来する公道で構成されていました。一昔前の鋭角右コーナー「ラ・ソース」の日常はこんな感じ。
IMG_5048
F1ファンでは超有名なサーキットでも、日常を知らない異国の我々からしたら違和感を覚えますよね。今ではこの区間も別線が敷かれて一般車は通れないとのことです。これまでのサーキットレイアウト変更を以下に示します。
image
 ・1950〜70年 14.120km 黒色(オリジナル)
image
 ・1983〜91年    6.940km 紫色(シケイン設置)
 ・1992,93,95年 6.974km
 ・1994年            7.001km 青色(仮シケイン設置)
 ・1996〜01年    6.968km
 ・2002,04,05年 6.976km 緑色(シケイン改良)
 ・2007〜現在     7.004km 黒色(シケイン廃止)

上の図がF1におけるオリジナルレイアウトです。黒と赤の実線で構成される「黒」の部分が現在使用されていないものになります。ただし、先程も書いた通り「公道」ですので道路自体は現存し、生活道路として使用されています。線形からも察することができますが、速度が高く危険とされ、1970年台はニヴェルやゾルダーなどにベルギーGPの座を奪われることとなります。
下の図は皆さんもよくご存知の現レイアウトです。1983年よりオリジナルのちょうど半分となったこのショートレイアウト(とはいえ現F1サーキット最長の7km)に切り替わっています。実はこれ以外にも細かな変更を経てはいますが割愛しました。代表的なところを挙げると、94年は「F1で発生した久々の死亡事故」により、他のサーキットと同じく仮設のシケインが設けられました。ほか、同じくこのサーキットにおいてシンボリックな存在となった「バスストップ」を改良、のちの廃止と軽微ながら幾多の変更と開催休止を経て現在に至ります。山間にあるため起伏も大きく「スパウェザー」と称されるお決まりの不安定な天候がさらに難易度を上げてきます。高速かつ危険でも人気が止まないのはそれだけ「見応えと攻略しがいのあるサーキット」だからではないでしょうか。

《スパ・フランコルシャンの予選P.P.タイム変遷》
 50 14.120km 4分37秒000 ファリーナ
 51 14.120km 4分25秒000 ファンジオ
 52 14.120km 4分37秒000 アスカリ
 53 14.120km 4分30秒000 ファンジオ
 54 14.120km 4分22秒100 ファンジオ
 55 14.120km 4分18秒100 カステロッティ
 56 14.120km 4分09秒800 ファンジオ
 57
 58 14.120km 3分57秒100 ホーソーン
 59
 60 14.120km 3分50秒000 Jブラバム
 61 14.120km 3分59秒300 Pヒル
 62 14.120km 3分57秒000 Gヒル
 63 14.120km 3分54秒100 Gヒル
 64 14.120km 3分50秒900 ガーニー
 65 14.120km 3分45秒400 Gヒル
 66 14.120km 3分38秒000 サーティース
 67 14.120km 3分28秒100 クラーク
 68 14.120km 3分28秒600 エイモン
 69 
 70 14.120km 3分28秒100 スチュワート

 83   6.940km 2分04秒615 プロスト
 84 
 85   6.940km 1分55秒306 プロスト
 86   6.940km 1分54秒331 ピケ
 87   6.940km 1分52秒026 マンセル
 88   6.940km 1分53秒718 セナ
 89   6.940km 1分50秒867 セナ
 90   6.940km 1分50秒365 セナ
 91   6.940km 1分47秒811 セナ
 92   6.974km 1分50秒545 マンセル
 93   6.974km 1分47秒571 プロスト
 94   7.001km 2分21秒163 バリチェロ
 95   6.974km 1分54秒392 ベルガー
 96   6.968km 1分50秒574 Jヴィルヌーブ
 97   6.968km 1分49秒450 Jヴィルヌーブ
 98   6.968km 1分48秒682 ハッキネン
 99   6.968km 1分50秒329 ハッキネン
 00   6.968km 1分50秒646 ハッキネン
 01   6.968km 1分52秒072 モントーヤ
 02   6.976km 1分43秒726 Mシューマッハ
 03 
 04   6.976km 1分56秒233 トゥルーリ
 05   6.976km 1分46秒391 モントーヤ
 06
 07   7.004km 1分45秒994 ライコネン
 08   7.004km 1分47秒338 ハミルトン
 09   7.004km 1分46秒308 フィジケラ
 10   7.004km 1分45秒778 ウェバー
 11   7.004km 1分48秒298 ベッテル
 12   7.004km 1分47秒573 バトン
 13   7.004km 2分01秒012 ハミルトン
 14   7.004km 2分05秒591 Nロズベルグ
 15   7.004km 1分47秒197 ハミルトン
 16   7.004km 1分46秒744 Nロズベルグ
 17   7.004km 1分42秒553 ハミルトン
 18   7.004km 1分58秒179 ハミルトン
 19   7.004km 1分42秒519 ルクレール

先程のレイアウトからもわかるように、スパ・フランコルシャンは大きく2つの期間に分けられます。距離も倍半分異なるため当然並列比較はできません。IMG_5023
前半20年の14km時代は当初一周に4分37秒もかかっていたのに、末年の1970年には3分28秒と1分近く短縮しています。全く異なるマシンレギュレーションとはいえ、割合にして75.1%と同じカテゴリーとは思えない短縮っぷりです。この後出てきますが、これを速度換算すると、さらにその差が顕著に伝わってきます。
IMG_5021
現レイアウトとなる1983年以降にフォーカスを当てると、波はあれど1分40秒台から50秒台の間を推移しています。劇的な短縮や向上がみられません。飛び出たものに着目していくと、まず水色帯の1994年に記録した2分21秒163が一際目立ちます。仮シケイン設置と「悲しみの雨」によってダブルで思い切りタイムが落ちています。これがセナやラッツェンバーガーの怨念とでもいうべきか。ほか、2002年のM・シューマッハが8秒以上縮めたのちの2004年、ルノーのトゥルーリ2回目ポールは1分56秒233に落ち込んで、また逆戻りしているかのよう。でもご安心下さい、これも雨による影響です。フリー走行2回目にマクラーレンのライコネンがしっかり1分44秒701で走破しているため、誤差範囲とみてよいもの。2013年と15年、あとまだ記憶に新しい18年も2分近いラップタイムですが、これもウェットコンディションによるもの。そう、スパは予選や決勝に関わらず、容赦無く雨を降らせ、ドライバーに試練を与えるサーキットなのです。現状の歴代最速は昨年2019年の「眉唾」ルクレールが叩き出した1分42秒519となりますが、前年18年の雨が降り出す直前のQ2でフェラーリのベッテルが1分41秒501でトップ通過しています。全データを観返して確認はできていませんが、おそらくスパ最速はこちらになるでしょう。この頃のフェラーリが近年のフェラーリで最もキレのある走りをしていた記憶です。IMG_5025

《スパ・フランコルシャンの予選P.P.平均速度変遷》
 50 14.120km 183.5km/h 100%   ファリーナ
 51 14.120km 191.8km/h 104.5% ファンジオ
 52 14.120km 183.5km/h 100.0% アスカリ
 53 14.120km 188.3km/h 102.6% ファンジオ
 54 14.120km 193.9km/h 105.7% ファンジオ
 55 14.120km 196.9km/h 107.3% カステロッティ
 56 14.120km 203.5km/h 110.9% ファンジオ
 57
 58 14.120km 214.4km/h 116.8% ホーソーン
 59
 60 14.120km 221.0km/h 120.4% Jブラバム
 61 14.120km 212.4km/h 115.8% Pヒル
 62 14.120km 214.5km/h 116.9% Gヒル
 63 14.120km 217.1km/h 118.3% Gヒル
 64 14.120km 220.1km/h 120.0% ガーニー
 65 14.120km 225.5km/h 122.9% Gヒル
 66 14.120km 233.2km/h 127.1% サーティース
 67 14.120km 244.3km/h 133.1% クラーク
 68 14.120km 243.7km/h 132.8% エイモン
 69 
 70 14.120km 244.4km/h 133.2% スチュワート

 83   6.940km 200.7km/h 109.4% プロスト
 84 
 85   6.940km 216.7km/h 118.1% プロスト
 86   6.940km 218.8km/h 119.2% ピケ
 87   6.940km 223.3km/h 121.7% マンセル
 88   6.940km 220.0km/h 119.9% セナ
 89   6.940km 225.6km/h 123.0% セナ
 90   6.940km 226.7km/h 123.5% セナ
 91   6.940km 232.0km/h 126.4% セナ
 92   6.974km 227.1km/h 123.8% マンセル
 93   6.974km 233.4km/h 127.2% プロスト
 94   7.001km 178.5km/h    97.3% バリチェロ
 95   6.974km 219.5km/h 119.6% ベルガー
 96   6.968km 226.9km/h 123.6% Jヴィルヌーブ
 97   6.968km 229.2km/h 124.9% Jヴィルヌーブ
 98   6.968km 230.8km/h 125.8% ハッキネン
 99   6.968km 227.4km/h 123.6% ハッキネン
 00   6.968km 226.7km/h 123.5% ハッキネン
 01   6.968km 223.8km/h 122.0% モントーヤ
 02   6.976km 241.2km/h 131.9% Mシューマッハ
 03 
 04   6.976km 216.1km/h 117.7% トゥルーリ
 05   6.976km 236.1km/h 128.6% モントーヤ
 06
 07   7.004km 237.9km/h 129.6% ライコネン
 08   7.004km 234.9km/h 128.0% ハミルトン
 09   7.004km 237.2km/h 129.2% フィジケラ
 10   7.004km 238.4km/h 129.9% ウェバー
 11   7.004km 232.8km/h 126.9% ベッテル
 12   7.004km 234.4km/h 127.7% バトン
 13   7.004km 208.4km/h 113.5% ハミルトン
 14   7.004km 200.8km/h 109.4% Nロズベルグ
 15   7.004km 235.2km/h 128.2% ハミルトン
 16   7.004km 236.2km/h 128.7% Nロズベルグ
 17   7.004km 245.9km/h 134.0% ハミルトン
 18   7.004km 213.4km/h 116.3% ハミルトン
 19   7.004km 245.9km/h 134.0% ルクレール

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速度変換してひとまず全時代をみてみましょう。14km時代最終年の1970年の平均速度は驚くことに244.4km/hに達しています。もちろん現代とは異なりテクニカルな高速下りコーナーではなく緩やかなストレートが続くことで速度が高めに算出されることに尽きますが、第二期のショートレイアウトにも引けを取らない速度であることからも「危険」と言われた所以が想像できますね。ここはシルバーストンやモンツァといった平坦なクローズドサーキットではなく「山岳半市街地」のサーキットですから。
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慣れ親しむ近代の第二期を再びクローズアップしてみます。標高も高低差もあるサーキットならターボエンジンが有利なんじゃないかと思うのですが、80年台中盤のターボ時代よりもむしろ90年台の方がよっぽど高い速度となっています。パワーがあるに越したことはないのですが、スパは上り坂だけでなく下りながらの高速コーナーが続きます。やはり電子制御で最適な調整を施した方が安定したコーナリングができるのでしょうか。タイムと同様に速度も雨を除けば220km/h〜240km/h付近を上下しています。ドライバーやマシンは進化しても、スパの限界値はこのあたりが精一杯なのでしょうか。最速は2017年と19年が245.9km/hのタイ記録となります(厳密には19年が245.949km/hで最々速)しかし、先程18年のベッテルQ2はもっと速いタイムを出していましたね。「ポールタイム」という観点からは外れてしまいますが、参考までに計算すると248.4km/hとなります。決して広くない幅員に加え、鋭角なラ・ソースあり、度胸試しの上りとなるオー・ルージュ〜ラディオンあり、オマケに強い横Gに耐える必要があるプーオンやブランシモンありでこの速度。やはり並大抵のドライバーでは1ラップをキメるのは至難の業。F1ドライバーでもないmiyabikunが想像で語るのもおこがましいですが、数多くあるF1サーキットでも攻略に手を焼く最有力候補ではないかと、常々思っています。

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