F1 えきぞーすとのーと

よくあるニュースネタやこ難しいテクニカルな話ではなく、メインは予選や決勝のTV観戦したそのものを個人的観点から綴るF1ブログです。  また、懐かしのマシンやレースを振り返ったり、記録やデータからF1を分析。その他ミニカーやグッズ集めも好きなので、それらを絡めつつ広く深くアツくF1の面白さやすごさを発信し、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

タグ:ポールポジションタイム

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以前に昨シーズン調べていた「ポールタイムの変遷、推移」について、速度変換して時代別ににみてきました。覚えていますか?!(笑)今回はシーズン開幕前の大切な時期ではありますが、その続き「サーキット別」のデータを着目していきます。
簡単におさらいをしておくと、毎レース前に行われる予選でポールポジションを獲得したマシンについて、サーキット全長から平均順位を算出、そこから時代やレギュレーションによる変化や最も速い年やサーキットを割り出すというものです。前回は71年の歴史を持つF1においてどのような速度変位があるか、どの年が一番速いのかを割り出しました。今回はサーキット単位でみていくこととし、まずF1制定初年から昨年2020年までの対象サーキットの抽出数と平均速度の平均を列挙します。

《サーキット別抽出数と平均速度》
 アルバートパーク    24回 平均220.0km/h
 バーレーン国際     16回 平均213.6km/h ◯※
 上海国際        16回 平均204.7km/h
 ヴァレンシア市街地     5回 平均198.6km/h
 バクー市街地        4回 平均213.3km/h
 カタロニア       30回 平均212.6km/h ◯
 モンテカルロ市街地   66回 平均142.7km/h
 ジル・ヴィルヌーブ   40回 平均199.6km/h
 ポール・リカール    16回 平均209.4km/h
 レッドブルリンク    32回 平均229.8km/h ◯※
 シルバーストン     54回 平均218.9km/h ◯※
 ホッケンハイムリンク  37回 平均229.0km/h
 ハンガロリンク     35回 平均190.0km/h ◯
 スパ・フランコルシャン 53回 平均222.0km/h ◯
 モンツァ        70回 平均234.7km/h ◯
 マリーナ・ベイ市街地  12回 平均177.4km/h
 ソチ            7回 平均224.0km/h ◯
 鈴鹿          31回 平均223.1km/h
 COTA          8回 平均206.5km/h
 エルマノス・ロドリゲス 20回 平均187.9km/h
 カルロス・パーチェ   37回 平均206.8km/h
 ヤス・マリーナ     12回 平均203.5km/h ◯
 ニュルブルクリンク   41回 平均184.1km/h ◯
 マニ・クール      18回 平均204.4km/h
 エンツォ・フェラーリ  28回 平均211.9km/h ◯
 インディアナポリス     8回 平均210.6km/h
 セパン国際       19回 平均203.6km/h
 イスタンブールパーク    8回 平均215.8km/h ◯

 28/74サーキット 37.8%
 747/1,035戦 72.2%
 抽出サーキット全平均 207.1km/h
 ◯は2020年に開催、追加したデータを含む
 ※二開催サーキットは速い方のデータを抽出

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濃い色の棒グラフは今シーズン2021年に開催予定されているサーキット(上海国際は開催不透明のため、こちらに属する)で薄い色は既に現役から外れているサーキットとなります。上の一覧の◯マークとは異なりますのでご注意下さい。全74ある開催サーキットのうちの対象は28に止まりますが、ポイント対象となる1,035レースのうち747レースがこのグラフに入ってきます。近年まで続くサーキットから抽出していることもあって、グラフの大半は濃い色で示されます。上の一覧は各サーキットの平均速度を例に挙げていますが、これを年毎にグラフ化すると、こんな感じになります。IMG_8336
前回のまとめでも出てきたやつですね。訳がわからないくらいぐちゃぐちゃしてしまいます。さすがにこれでは何が何だかわからないため、1986年と87年の間を境目とし、2つに分けてみていくことにします。

《1986年までのサーキット別抽出数と平均速度》
 アルバートパーク      0回
 バーレーン国際       0回
 上海国際          0回
 ヴァレンシア市街地     0回
 バクー市街地        0回
 カタロニア         0回
 モンテカルロ市街地   33回 平均128.8km/h
 ジル・ヴィルヌーブ     9回 平均180.5km/h
 ポール・リカール    10回 平均205.2km/h
 エステルライヒリンク  17回 平均230.5km/h
 シルバーストン     20回 平均196.4km/h
 ホッケンハイムリンク  10回 平均224.2km/h
 ハンガロリンク       1回 平均161.5km/h
 スパ・フランコルシャン 21回 平均212.8km/h
 モンツァ        36回 平均219.4km/h
 マリーナ・ベイ市街地    0回
 ソチ            0回
 鈴鹿            0回
 COTA          0回
 エルマノス・ロドリゲス   9回 平均168.4km/h
 カルロス・パーチェ     7回 平均192.3km/h
 ヤス・マリーナ       0回
 ニュルブルクリンク   24回 平均167.0km/h
 マニ・クール        0回
 エンツォ・フェラーリ    7回 平均201.5km/h
 インディアナポリス     0回
 セパン国際         0回
 イスタンブールパーク    0回

 13/74サーキット 17.6%
 204/1,035戦 19.3%
 抽出サーキット平均 191.4km/h

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こちらが1986年以前の抽出したサーキットのデータ数と平均速度の平均になります。対象はガクンと減り204になっています。71年の歴史のほぼ半分にあたるこの時代は1シーズンのレース開催数が少ないこともありますが、今回の抽出対象外としているGPやサーキットも多くあるため、精度としては後半のグループよりも悪くなります。「平均速度の平均」は191.4km/hと200km/hに達しません。F1には違いないんだけど、今の時代のF1とは感じが違うように感じますよね。内訳をグラフ化したものを見てみましょう。
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対象は13サーキットということで、先程のぐちゃぐちゃグラフよりはだいぶ見易くなりました。サーキット毎に色の塗り分けをしていますので、この量なら追い切れると思います。全体的に右肩上がりのグラフになっています。グラフの下を一人這うのは茶色のモンテカルロ市街地です。非常にわかりやすい。ただ常に最低速サーキットに君臨し、幾度となくレイアウトを変えつつも様々なマシンレギュレーションに左右されず右肩上がりに速度向上している様は「マシンの性能向上の賜物」と言っていいでしょう。
速度上位のサーキットをみてみると、黄色のモンツァがF1創成期から高速の部類に位置しているものの、それに沿う形で薄いグレーも続いています。当時市街地サーキットに位置付けられたスパです。今の第2セクターのようなサーキット専用区間を走らず、南部の市街地を駆け抜けていた頃はバンピーながら線形がよかったため、平均速度は高めとなっています。スパの旧レイアウトが廃止され、さらにはモンツァにシケインが設けられた1970年代に入ると、それに代わって緑色のシルバーストンや紺色のエステルライヒリンク(現 レッドブルリンク)、水色のホッケンハイムリンクが高速サーキットとして名乗りを上げてきました。時期はちょうどF1での死亡事故が取り沙汰され、徐々に安全への配慮が始まった頃と重なります。ただ、危険サーキットの廃止やシケインなどで安全への配慮をしながらも、速さを求める技術向上も相まって、1980年代に入る頃は一度失った速度を戻すような「いたちごっこ」が始まることとなりました。ルノーに端を発するターボエンジンを搭載する80年代前半までにはシルバーストンやエステルライヒリンクにおいて平均速度は260km/h近くに達しています。
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サーキット単位で平均速度をグラフ化しました。この時代はエステルライヒリンクが平均230.5km/hで最も速い値となり、2番目はホッケンハイムリンクの平均224.2km/h、3番目がモンツァの平均219.4km/hとなり、ほかスパ、ポール・リカール、エンツォ・フェラーリ(イモラ)までが平均200km/hオーバーという結果でした。起伏がある上に速いエステルライヒリンクが危険とされた理由がよくわかります。また最近復活したポール・リカールもミストラルストレートにシケインの無かった時代で平均速度は高めに出ています。なお、この時代の抽出サーキットの平均速度は191.4km/hとなっています。

《1987年以降の平均速度変遷》
ここからは日本でも全戦F1中継が始まった比較的近代の1987年以降をみていく訳ですが、まずは正直ベースのグラフをご覧下さい。
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ここからシーズンのレース数も数を増し、対象(抽出した)サーキット数が増えるため、パワーユニットが切り替わる2005年と06年に境目を入れて表現しましたが、、ぐちゃぐちゃ過ぎて訳がわかりません。数以上に悪さをしているのは「ウェットによる平均速度の落ち込み」です。これじゃあ知りたいことが何も入ってこないため、1987年以降のわかる範囲でウェット路面の予選も対象から外すようにしました。

《ウェットを除く1987年以降の抽出数と平均速度》
 アルバートパーク    23回 平均221.7km/h
 バーレーン国際     16回 平均213.6km/h
 上海国際        14回 平均208.2km/h
 ヴァレンシア市街地     5回 平均198.6km/h
 バクー市街地        4回 平均213.3km/h
 カタロニア       30回 平均212.6km/h
 モンテカルロ市街地   33回 平均156.6km/h
 ジル・ヴィルヌーブ   30回 平均205.9km/h
 ポール・リカール      6回 平均216.5km/h
 レッドブルリンク    14回 平均232.9km/h
 シルバーストン     33回 平均233.4km/h
 ホッケンハイムリンク  26回 平均233.3km/h
 ハンガロリンク     33回 平均191.7km/h
 スパ・フランコルシャン 28回 平均231.9km/h
 モンツァ        32回 平均253.1km/h
 マリーナ・ベイ市街地  12回 平均177.4km/h
 ソチ            7回 平均224.0km/h
 鈴鹿          30回 平均224.0km/h
 COTA         7回 平均210.4km/h
 エルマノス・ロドリゲス 11回 平均203.9km/h
 カルロス・パーチェ   28回 平均211.8km/h
 ヤス・マリーナ     12回 平均203.5km/h
 ニュルブルクリンク   17回 平均208.2km/h
 マニ・クール      17回 平均207.3km/h
 エンツォ・フェラーリ  21回 平均215.4km/h
 インディアナポリス     8回 平均210.6km/h
 セパン国際       15回 平均203.6km/h
 イスタンブールパーク    7回 平均221.2km/h

 28/74サーキット 37.8%
 519/1,035戦 50.1%
 抽出サーキット平均 212.5km/h

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全抽出747戦中、1986年以前が204、さらにウェット路面の予選(と思われる)24を差し引いて、519戦が対象で残りました。ウェットの予選が本当にたったの24しかなかったか、一応ビデオと書籍で確認したのですが、怪しい気がする(笑)IMG_8658
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こちらでグラフを再作図すると、なかなか見易い見栄えとなりました。全てのグラフの変化までは追い切れませんが、目立つところをいくつかみていくと、1986年以前までは高速の部類に属していたシルバーストンが1991年にガクンと速度低下しています。これはマシンの性能低下でなく、皆さんお馴染みのマゴッツ、べケッツ、チャペルのS字化やブルックランズ、ルフィールドといったかぎ型のインフィールドセクション設置など、レイアウトの大幅変更によるものです。また逆にモンテカルロ市街地に次ぐ低速サーキットのイメージが色濃いハンガロリンクはNAエンジン統一元年の1989年に飛躍的に速度が増しています。これもレイアウト変更によるもので、速度低下ならぬ「速度向上」を目的としてシケインを廃止したことによります。ほか目立つところとしては先日も書いたように1994年の死亡事故に伴い、マシン側のみならずサーキット側の安全対策が強化されたこともあって、ここで一度各サーキットにおいてガクンと速度が低下されました。死亡事故はレギュレーション変更以上に大きな影響として表れています。
近代の2006年以降は多少の上下はありつつも各サーキットの「位置付け」が比較的明確に表れているようにみえますね。一時期は最速の名を奪われたモンツァは一つ異次元の平均250km/hオーバーの領域でF1最速サーキットに君臨しています。次の250km/h〜200km/hの速度域は層が厚く、緑のシルバーストンやグレーのスパを筆頭にハンガロリンクまでも現在はこのグループに属します。様々なレギュレーション変更や勢力図の移行がありながらも、各サーキットが同じように上昇や降下をする様子はまさしく技術力の対抗というべきでしょうか。現パワーユニットになってからも各サーキットが一様に速度向上をみせているところも興味深いです。
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1987年以降の平均速度も同様の棒グラフにしてみました。抽出サーキットが増えたことに併せて86年以前はそう多くなかった平均速度200km/h超えが非常に増えました。平均速度は212.5km/hとなっています。200km/hに満たないのは28サーキット中、モンテカルロ市街地、マリーナ・ベイ市街地、ハンガロリンク、ヴァレンシア市街地の4箇所でした。

《サーキット別平均最高速度ベスト&ワースト10》
   1 264.4km/h モンツァ                          2020年
   2 259.0km/h シルバーストン               1985年
   3 256.6km/h エステルライヒリンク    1987年
   4 252.2km/h ホッケンハイムリンク    1991年
   5 249.0km/h スパ・フランコルシャン 2020年
   6 240.1km/h 鈴鹿                                  2019年
      240.1km/h エンツォ・フェラーリ     2020年
   8 238.1km/h ポール・リカール            2019年
   9 237.2km/h アルバートパーク            2019年
 10 230.6km/h ソチ                                  2020年
      230.6km/h カルロス・パーチェ         2018年
 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
 19 215.5km/h マニ・クール                    2004年
 20 215.4km/h 上海国際                           2019年
 21 215.0km/h バクー市街地                    2018年
 22 214.9km/h インディアナポリス         2004年
 23 214.7km/h ハンガロリンク                2020年
 24 211.0km/h ヤス・マリーナ                 2019年
 25 208.5km/h エルマノス・ロドリゲス  1992年
 26 201.2km/h ヴァレンシア市街地         2011年
 27 189.8km/h マリーナ・ベイ市街地     2018年
 28 171.4km/h モンテカルロ市街地         2019年

サーキット別平均速度の最高値の上位と下位の10傑とそのシーズンに着目しました。最速のサーキットとシーズンは先日の「年代別」のまとめで書いたように、昨年のモンツァが歴代のF1の最速ラップとなりました。ただ驚きなのはラップレコードを多く塗り替える中、歴代2番目に1985年のシルバーストン、3番目はエステルライヒリンク最終年の1987年が入っています。どちらも今みるそれらサーキットよりも単純かつ滑らかなコーナーで構成され、さらには今よりもハイパワーなマシンが採用されていた時代です。今では性質がかなり変わりましたが、低ドラッグで森を駆け抜けていた頃のホッケンハイムリンクも上位に来ています。テクニカルなイメージの強い我らの鈴鹿も2019年にサーキット単位でみれば、歴代6番目タイの240.1km/hとなります。幅員が狭くテクニカルで高速となれば、繊細で攻略には難しいサーキットに数えられます。
一方で「遅い方の最速」はやはり市街地サーキットが名を連ねてきます。意外なものとしては2016年にF1の予選瞬間最高速度386km/hを記録したバクー市街地が、一周トータルで評価するとだいぶ下のランクとなりました。予選として結果的に8番手と瞬間的に速いこととポールポジションはまるで異なるものであることを体現しているかのようです。

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最後は参考までに各サーキットの平均最高速度と平均最遅速度の速度域をグラフにしてみました。当然といえばそれまでですが、グラフの帯の長いところは多くの時代でさらに様々なレイアウトで行われているため幅の広い速度域を示し、開催回数が少ない程対象も少ないため大きくブレないという結果になりました。シルバーストンは最速259.0km/hに対して最遅が151.1km/hとその差は107.9km/hでした。同じシルバーストンでも全く性質が異なるサーキットにみえてきます。モンテカルロ市街地の速度はある意味F1において規格外です。華やかさや伝統も他のサーキットと比べて規格外か。

《今回の「サーキット単位」の検証の結論》
・モンツァ最速は変わりないが異なる時期もある
・速さの決め手は直線長さより滑らかなコーナー
・レギュレーションのみならずレイアウト変更の影響も大
・鈴鹿も世界的には速いサーキットの部類

「ポールタイムでみる」と題した割には結局速度変換した比較となりました。こうしないと、時代もサーキットも異なる予選を一様に評価できませんでした。もっとあらゆる角度でみればまだまだ違いや特徴は出てきそうですが、取り留めないのも結論に困ってしまいますので、ひとまずこの辺で整理と検証を止めたいと思います(笑)

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ひとえに予選の1ラップとはいえど、速さを追求するその中に多くの技術や努力、経験が凝縮されています。また近年は特にスタート位置を決めるこの予選の速さや順位はF1を制する上でとても重要なファクターとなっています。今後も新たなサーキットが生まれ、レイアウト変更され、レギュレーションも変わり、これらの歴史は上書きされていくことと思いますが、新たな記録や感動が生まれることもまた楽しみであり、今後の予選の見方が少し変わったように感じます。

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昨年のレースウィーク直前に「ポールポジションタイムの変遷、推移」について書いてきました。これらのデータを蓄積することにより、歴代のマシンレギュレーション変更に対してどのような変化をもたらしたのか、どのシーズンのマシンが速かったのかということが割り出せないかなと考え、今回はそれらのまとめと考察について書いていきたいと思います。新しいシーズンが始まるとなかなかそんな時間はありませんし、やる気も萎んでしまいますもんね。ちょっと退屈な話題かもしれませんが、miyabikunの20年度の研究発表にお付き合い下さい。

いつもながら自ら課したことなのに、抽出や集計にだいぶ時間を要してしまいました。まず本編に入る前にサーキット単位で集めてきたインプットを整理しておきたいと思います。

《年別GP開催数とサンプル抽出数》
  50年   4/7戦   抽出率57.1%
  51年   4/8戦   抽出率50.0%
  52年   4/8戦   抽出率50.0%
  53年   4/9戦   抽出率44.4%
  54年   4/9戦   抽出率44.4%
  55年   3/7戦   抽出率42.9%
  56年   5/8戦   抽出率62.5%
  57年   3/8戦   抽出率37.5%
  58年   5/11戦 抽出率45.5%
  59年   2/9戦   抽出率22.2%
  60年   4/10戦 抽出率40.0%
  61年   4/8戦   抽出率50.0%
  62年   4/9戦   抽出率44.4%
  63年   6/10戦 抽出率60.0%
  64年   5/10戦 抽出率50.0%
  65年   6/10戦 抽出率60.0%
  66年   5/9戦   抽出率55.6%
  67年   6/11戦 抽出率54.5%
  68年   5/12戦 抽出率41.7%
  69年   5/11戦 抽出率45.5%
  70年   6/13戦 抽出率46.2%
  71年   6/11戦 抽出率54.5%
  72年   4/12戦 抽出率33.3%
  73年   7/15戦 抽出率46.7%
  74年   5/15戦 抽出率33.3%
  75年   7/14戦 抽出率50.0%
  76年   6/16戦 抽出率37.5%
  77年   6/17戦 抽出率35.3%
  78年   6/16戦 抽出率37.5%
  79年   7/15戦 抽出率46.7%
  80年   7/14戦 抽出率50.0%
  81年   7/15戦 抽出率46.7%
  82年   7/16戦 抽出率43.8%
  83年   9/15戦 抽出率60.0%
  84年   7/16戦 抽出率43.8%
  85年   9/16戦 抽出率56.3%
  86年 10/16戦 抽出率62.5%
  87年 11/16戦 抽出率68.8%
  88年 11/16戦 抽出率68.8%
  89年 11/16戦 抽出率68.8%
  90年 12/16戦 抽出率75.0%
  91年 13/16戦 抽出率81.3%
  92年 13/16戦 抽出率81.3%
  93年 12/16戦 抽出率75.0%
  94年 12/16戦 抽出率75.0%
  95年 13/17戦 抽出率76.5%
  96年 14/16戦 抽出率87.5%
  97年 15/17戦 抽出率88.2%
  98年 15/16戦 抽出率93.8%
  99年 16/16戦 抽出率100%
  00年 17/17戦 抽出率100%
  01年 17/17戦 抽出率100%
  02年 17/17戦 抽出率100%
  03年 16/16戦 抽出率100%
  04年 18/18戦 抽出率100%
  05年 19/19戦 抽出率100%
  06年 18/18戦 抽出率100%
  07年 16/17戦 抽出率94.1%
  08年 17/18戦 抽出率94.4%
  09年 17/17戦 抽出率100%
  10年 18/19戦 抽出率94.7%
  11年 17/19戦 抽出率89.5%
  12年 18/20戦 抽出率90.0%
  13年 17/19戦 抽出率89.5%
  14年 19/19戦 抽出率100%
  15年 19/19戦 抽出率100%
  16年 21/21戦 抽出率100%
  17年 20/20戦 抽出率100%
  18年 21/21戦 抽出率100%
  19年 21/21戦 抽出率100%
  20年 12/17戦 抽出率70.6% ※

 747/1,035戦 72.2%
 ※20年の開催サーキットとしては14箇所
  うち1箇所は別レイアウト、2箇所が新規開催

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こちらがシーズン単位の予選データ抽出数になります。今までに「チャンピオンシップに有効なレース」は1,035戦ありました。昨年盛り込めなかった20年シーズンの予選データも追加すると、対象となる予選回数は747戦、全体の72.2%にあたります。本当は1,035戦全てを対象にしないと、精度の高い検証はできませんが、選定の条件に「現役のサーキット」「比較的近年まで開催されたサーキット」「複数回のGPが行われたサーキット」に的を絞って厳選しました。こう言っては何ですが、すごーく昔の特異なレイアウトのサーキットの情報を盛り込んでも、miyabikun観たことがないので意見し辛いですしね。ご理解頂ければと思います。
現役、近年開催のサーキットは概ね盛り込んだため、1999年以降にちらほらシーズン全GPが対象となるものがあります。近年でポツポツと抜けているものは富士での日本GP(2年)や開催回数がさほど多くない韓国GPやインドGPが外れています。また、昨年20年は初開催サーキットや同一二週連続開催のGPがあり、それらを除外した関係で全17戦中12戦分と少ない抽出数となっています。主要どころはカバーしているし、全レースの7割には達しているので、これだけ集めれば大丈夫かな。

《抽出サーキット一覧》(順不同)
 アルバートパーク(オーストラリアGP)24回
 バーレーン国際(バーレーンGP)16回 ◯※
 上海国際(中国GP)16回
 ヴァレンシア市街地(ヨーロッパGP)5回
 バクー市街地(アゼルバイジャンGPほか) 4回
 カタロニア(スペインGP)30回 ◯
 モンテカルロ市街地(モナコGP)66回
 ジル・ヴィルヌーブ(カナダGP)40回
 ポール・リカール(フランスGP)16回
 レッドブルリンク(オーストリアGP)32回 ◯※
 シルバーストン(イギリスGP)54回 ◯※
 ホッケンハイムリンク(ドイツGP)37回
 ハンガロリンク(ハンガリーGP)35回 ◯
 スパ・フランコルシャン(ベルギーGP)53回 ◯
 モンツァ(イタリアGP)70回 ◯
 マリーナ・ベイ市街地(シンガポールGP)12回
 ソチ・オリンピックパーク(ロシアGP)7回 ◯
 鈴鹿(日本GP)31回
 サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(アメリカGP)8回
 エルマノス・ロドリゲス(メキシコGP)20回
 ホセ・カルロス・パーチェ(ブラジルGP)37回
 ヤス・マリーナ(アブダビGP)12回 ◯
 ニュルブルクリンク(ドイツGPほか)41回 ◯
 マニ・クール(フランスGP)18回
 エンツォ・エ・ディノ・フェラーリ(サンマリノGPほか)28回 ◯
 インディアナポリス(アメリカGP)8回
 セパン国際(マレーシアGP)19回
 イスタンブールパーク(トルコGP)8回 ◯

 28/74サーキット 37.8%
 ◯は2020年に開催、追加したデータを含む
 ※二開催サーキットは速い方のデータを抽出

次にサーキット単位で数を集計しておきます。F1は71年の歴史において場所を変え改良を重ね、74のサーキットで行われてきました。同じサーキットでも軽微変更から特性まで様変わりしてしまったところ様々ありますね。あくまでサーキットの単位でみるとそのうちの28サーキットが対象なります。全体の37.8%は一見足りないようにも感じますが、先程も書いたようにこれでも全予選の72.2%はカバーしていますから、大丈夫でしょう。
お馴染みのサーキットから少し懐かしいサーキットがありますね。当然ながら歴史があり最近まで開催されるサーキットは数が多くなり、最多は「非開催はたったの1回」モンツァの70回分、次いでF1の「ザ・市街地」モンテカルロ市街地が66回、F1発祥の地であるシルバーストンが54回(ただし昨シーズンは遅かった方の1回を除く)、そして「悠久の峠の走り屋決定戦」スパ・フランコルシャンの53回と続きます。
以上、これらのデータを使って今回の検証に入っていきます。

《シーズン平均速度と1950年との対比》
サーキットはご存知の通り時代によって様々な変更を経て、それもタイミングはサーキット毎に異なります。それを横並びにするのは困難であり、単純比較はできません。そこで各サーキット各レイアウトを横並びに評価できるよう、いささか乱暴ではありますが、ポールポジションタイムと一周距離から「予選平均速度」を算出しようと思います。高速や低速、ストレートの長さなど、細かな要素はみれなくなるものの、一つの物差しとして大枠は掴めます。
対象となる予選の平均速度を割り出し、年別サーキット別の推移をグラフにしました。みて驚かないで下さいね(笑)
IMG_8336
ほらmiyabikunお得意のグチャグチャのチカチカです。デタラメでなくちゃんと計算してプロットしていますからね(笑)色毎にサーキット別を表現していますが、今回は敢えて凡例は付けません。ざっと雰囲気だけでも掴んで頂けたらと思います。上下に行ったり来たりはしつつも、速度域が高めな上限値と速度域が低い下限値のグラフの色はある程度揃ったものとなっています。細かくは改めてみていきますが、平均速度を割り出すと自ずとサーキット特性が表れ、様々な時代においても同じサーキットが選ばれつつあります。勘のいい方ならば、それらのサーキットがどこであるか、薄々想像できると思います。さすがにこれではラチが明かないので、以下で少し整理したいと思います。
IMG_8337
年単位で平均速度が最高値を示したものを赤線、最低値を示したものを青線で結び、年毎の「平均速度の平均値」を黒の折れ線グラフで示してみました。さらにアバウトな評価にはなりますが、それらシーズンでどのあたりの速度域にあるかは読み取れます。各年の平均速度と「F1初年の1950年との対比」をズラズラと並べてみます。

  50年 平均157.5km/h
  51年 平均173.4km/h 対50年比110.0%
  52年 平均163.5km/h 対50年比103.8%
  53年 平均166.8km/h 対50年比105.9%
  54年 平均171.3km/h 対50年比108.7%
  55年 平均175.1km/h 対50年比111.1%
  56年 平均168.1km/h 対50年比106.7%
  57年 平均152.5km/h 対50年比96.8%
  58年 平均170.5km/h 対50年比108.2%
  59年 平均160.6km/h 対50年比102.0%
  60年 平均185.2km/h 対50年比117.6%
  61年 平均174.1km/h 対50年比110.5%
  62年 平均173.8km/h 対50年比110.3%
  63年 平均172.9km/h 対50年比109.7%
  64年 平均173.0km/h 対50年比109.8%
  65年 平均178.1km/h 対50年比113.1%
  66年 平均182.1km/h 対50年比115.6%
  67年 平均190.6km/h 対50年比121.0%
  68年 平均186.9km/h 対50年比118.7%
  69年 平均187.7km/h 対50年比119.2%
  70年 平均203.5km/h 対50年比129.2%
  71年 平均199.8km/h 対50年比126.8%
  72年 平均192.7km/h 対50年比122.3%
  73年 平均196.6km/h 対50年比124.8%
  74年 平均193.2km/h 対50年比122.6%
  75年 平均197.5km/h 対50年比125.3%
  76年 平均189.6km/h 対50年比120.3%
  77年 平均197.4km/h 対50年比125.3%
  78年 平均192.2km/h 対50年比121.9%
  79年 平均203.2km/h 対50年比129.0%
  80年 平均199.1km/h 対50年比126.4%
  81年 平均204.5km/h 対50年比129.8%
  82年 平均207.9km/h 対50年比131.9%
  83年 平均208.5km/h 対50年比132.3%
  84年 平均208.6km/h 対50年比132.4%
  85年 平均216.9km/h 対50年比137.7%
  86年 平均208.5km/h 対50年比132.3%
  87年 平均215.0km/h 対50年比136.5%
  88年 平均206.1km/h 対50年比130.8%
  89年 平均210.7km/h 対50年比133.7%
  90年 平均213.5km/h 対50年比135.5%
  91年 平均214.6km/h 対50年比136.2%
  92年 平均214.0km/h 対50年比135.9%
  93年 平均215.7km/h 対50年比136.9%
  94年 平均204.4km/h 対50年比129.7%
  95年 平均203.7km/h 対50年比129.3%
  96年 平均206.7km/h 対50年比131.2%
  97年 平均214.0km/h 対50年比135.8%
  98年 平均207.7km/h 対50年比131.8%
  99年 平均205.8km/h 対50年比130.6%
  00年 平均209.9km/h 対50年比133.2%
  01年 平均216.5km/h 対50年比137.4%
  02年 平均217.6km/h 対50年比138.1%
  03年 平均213.3km/h 対50年比135.4%
  04年 平均217.2km/h 対50年比137.9%
  05年 平均215.0km/h 対50年比136.5%
  06年 平均214.3km/h 対50年比136.1%
  07年 平均212.4km/h 対50年比134.8%
  08年 平均206.4km/h 対50年比131.0%
  09年 平均207.5km/h 対50年比131.7%
  10年 平均210.3km/h 対50年比133.5%
  11年 平均212.3km/h 対50年比134.8%
  12年 平均204.4km/h 対50年比129.7%
  13年 平均203.9km/h 対50年比129.4%
  14年 平均202.0km/h 対50年比128.2%
  15年 平均206.9km/h 対50年比131.3%
  16年 平均214.0km/h 対50年比135.9%
  17年 平均217.9km/h 対50年比138.3%
  18年 平均219.9km/h 対50年比139.6%
  19年 平均224.4km/h 対50年比142.4%
  20年 平均229.0km/h 対50年比145.4%

多少の上下はありつつも平均値は赤線を示す最高値(最速値)と青線の最低値(最遅値)の間を走ります。平均値がやや最速値に寄りつつある年は「抽出したサーキットが高速によっている」ためと思われます。傾向としてはF1初期から中期にかけての80年代までにみられます。冒頭に挙げたように、古い時代は特に全予選をカバーできず、現在まで続く古参サーキットからの算定になります。シルバーストンにスパ、モンツァとくれば、低速で有名なモンテカルロ市街地は引っ張られてしまいますよね。
グラフをマクロ的に眺めていくと、青の最低値(最遅値)が1951年から54年の4年間を除いて、時系列と共に右肩上がりになっています。先程のサーキット別のグラフと照らし合わせると、茶色の折れ線グラフと重なるわけですが、ほぼほぼ同一サーキットの値です。これは先に答えを言ってしまうとモンテカルロ市街地の平均速度になります。最遅値とはいえ、これはポールポジションのタイムから割り出した平均速度であり、いかにモンテカルロ市街地が他のサーキットより遅く、かつ微妙なレイアウト変更やマシンレギュレーション変更があっても、時代と共にある一定の向上をしているかがわかります。でもそうなると、あの30km/hほど突出した1951年から54年の4年間は何なんだという話になるわけですが、これに限ってはモンテカルロ市街地ではなく(モナコGPが開催されていない)ドイツのニュルブルクリンク(北コース)の値となるためです。モンテカルロ市街地よりは30km/hほど速くなりますが、他のシルバーストンやスパ、モンツァと比べるとあのウネウネ、グニグニのレイアウトですから低速度です。
赤い最速値の方に目をやると、最遅値や平均値よりも上下動が激しくみえます。これこそがF1の真骨頂といえますが、マシン性能とレギュレーションがせめぎ合っているために発生します。例えば1979年の最速値はルノーのジャブイユによるモンツァのデータであり、前年よりも3秒短縮、15km/hの向上を示しています。これはかねて導入していたグラウンドエフェクトに加え、ライバルに先立ち使用していたターボをツインターボにしたことによる性能向上によってもたらされています。また259.0km/hを記録した85年はパワーターボ全盛期でポールポジションを獲得したセナの駆るロータス97Tは予選専用エンジンで最高出力1,500馬力近くといわれ、過給圧(ブースト圧)に段階的に制限を設けた87年、88年はその影響を受けて速度低下がみられます。93年から94年の速度低下はアクティブサスペンションの禁止や94年に発生したラッツェンバーガーとセナの事故死に伴うレギュレーション変更の影響が表れました。さらにはサーキットレイアウト変更も速度低下に多くの影響を与えており、71年から72年の30km/hに及ぶ落差はモンツァサーキットに2つのシケインが設置されたことによります。

古い時代をみてもグラフにおこせば顕著に表れる速度変遷ではありますが、やはりサンプル数が少ないため、近代シーズンと比較すると平準化、精度に欠けます。よって、多くのサンプルを抽出できている近代を引き抜いて拡大してみたいと思います。その引き抜く境目は先程の抽出率で7割近くにあたる1987年以降を対象にしました。F1の歴史は71年、ちょうど半分は35年ですし、87年といえば鈴鹿で日本GPが開催された年ですから、我々にも親しみがあってちょうどいいかな。

《87年以降の平均速度とその対比》
  87年 平均215.0km/h
  88年 平均206.1km/h 対87年比95.8%
  89年 平均210.7km/h 対87年比98.0%
  90年 平均213.5km/h 対87年比99.3%
  91年 平均214.6km/h 対87年比99.8%
  92年 平均214.0km/h 対87年比99.5%
  93年 平均215.7km/h 対87年比100.3%
  94年 平均204.4km/h 対87年比95.1%
  95年 平均203.7km/h 対87年比94.7%
  96年 平均206.7km/h 対87年比96.1%
  97年 平均214.0km/h 対87年比99.5%
  98年 平均207.7km/h 対87年比96.6%
  99年 平均205.8km/h 対87年比95.7%
  00年 平均209.9km/h 対87年比97.6%
  01年 平均216.5km/h 対87年比100.7%
  02年 平均217.6km/h 対87年比101.2%
  03年 平均213.3km/h 対87年比99.2%
  04年 平均217.2km/h 対87年比101.0%
  05年 平均215.0km/h 対87年比100.0%
  06年 平均214.3km/h 対87年比99.7%
  07年 平均212.4km/h 対87年比98.8%
  08年 平均206.4km/h 対87年比96.0%
  09年 平均207.5km/h 対87年比96.5%
  10年 平均210.3km/h 対87年比97.8%
  11年 平均212.3km/h 対87年比98.8%
  12年 平均204.4km/h 対87年比95.1%
  13年 平均203.9km/h 対87年比94.8%
  14年 平均202.0km/h 対87年比93.9%
  15年 平均206.9km/h 対87年比96.2%
  16年 平均214.0km/h 対87年比99.6%
  17年 平均217.9km/h 対87年比101.3%
  18年 平均219.9km/h 対87年比102.3%
  19年 平均224.4km/h 対87年比104.3%
  20年 平均229.0km/h 対87年比106.5%

今から34年前にあたる1987年を基点とし、以降の速度と対比させ、同様の色遣いでグラフを拡大表示してみました。
IMG_8339
ピックアップすると、最遅値こそ実直なモンテカルロ市街地により右肩上がりになっていますが、平均値、最速値は意外にも単純な右肩上がりとはいかず、似たような水準を行き来しているようにみえます。特に2017年以降の近年3年は平均値の向上はあるものの、260km/h前半で頭打ちしているように感じます。平均値はシーズンのサーキットの平均ですから、まだ伸び代のあるサーキットを含んでいるわけですが、最速値(事実上、モンツァ)に関しては「現代におけるサーキットレイアウトにて速く走る限界」に近づいているように思います。仮に馬力向上やレスダウンフォースのセッティングで最高速は伸びても、コーナー半径が変わらなければ曲がり切れる限界の速度までの減速は必要になりますので、一周の平均速度を上げるためにはストレートでの速度向上よりは「いかにコーナーを『コーナー扱い』せずに走れるか」にかかってきます。パワーよりもダウンフォースに関するレギュレーションをより追求しないと難しくなりそうです。
先程も書いた87年から88年のターボ終焉の落ち込みや94年のセナショック、さらには98年のナローサイズ化およびグルーブドタイヤ導入による落ち込みがみられます。08年にある最速値に極端な落ち込みについては、最速値大半を占めるモンツァからの抽出ではなく、この年に限ってはスパ・フランコルシャンでのデータによるものです。この年のイタリアGP予選は雨に見舞われ、当時トロ・ロッソの若手であったベッテルの最年少初ポール(からの最年少初優勝)がありました。そのため、次点234.9km/hのスパが選ばれています。ちなみに前年07年のスパは平均237.9km/h、翌年10年の平均は237.2km/hであったため、若干の落ち込みはありました。

《87年以降の平均速度ベスト&ワースト10》
87年以降の平均速度のベストとワースト(という表現も語弊がありますが)を並べてみました。

 1 20年 平均229.0km/h 対87年比106.5%
 2 19年 平均224.4km/h 対87年比104.3%
 3 18年 平均219.9km/h 対87年比102.3%
 4 17年 平均217.9km/h 対87年比101.3%
 5 02年 平均217.6km/h 対87年比101.2%
 6 04年 平均217.2km/h 対87年比101.0%
 7 01年 平均216.5km/h 対87年比100.7%
 8 93年 平均215.7km/h 対87年比100.3%
 9 87年 平均215.0km/h
    05年 平均215.0km/h 対87年比100.0%
  - - - - - - - - - - - - -
  24 09年 平均207.5km/h 対87年比96.5%
  25 15年 平均206.9km/h 対87年比96.2%
  26 96年 平均206.7km/h 対87年比96.1%
  27 08年 平均206.4km/h 対87年比96.0%
  28 88年 平均206.1km/h 対87年比95.8%
  29 99年 平均205.8km/h 対87年比95.7%
  30 94年 平均204.4km/h 対87年比95.1%
       12年 平均204.4km/h 対87年比95.1%
  32 13年 平均203.9km/h 対87年比94.8%
  33 95年 平均203.7km/h 対87年比94.7%
  34 14年 平均202.0km/h 対87年比93.9%

ベースとなる1987年が215.0km/hと比較的高いため、それを上回るシーズンが8シーズンしかありませんでした。2017年の平均217.9km/hにはじまり、そのまま近年の4年でトントン拍子に速くなっており、最速は昨年の平均229.0km/h、対87年比較では6.5%も向上しました。ほか、2003年を除く01年から05年までの3.0ℓV10時代末期が上位にきています。8番目に入った93年はガチガチの電子制御デバイスを盛り込んだ最終年となっています。
相対して下位に入ってくるのは現パワーユニット元年の2014年を筆頭に、変革を求められた94年や95年、細かなエアロパーツを削がれた09年などの結果からわかるように「レギュレーション変更直前の時期」が上位に名を連ね、翌年の変更に伴い、蓄積されたノウハウや勢力図がリセットされ、平均速度が落ち込む、という流れを繰り返しています。

《87年以降の平均最高速度ベスト&ワースト10》
最後は最速値のベスト、ワーストの10位を挙げます。こちらは平均値と異なり「どの年のどのサーキットか」までが明確になるため、サーキットまでを表記しています。

 1 20年 平均最速264.4km/h モンツァ
 2 18年 平均最速263.6km/h モンツァ
 3 19年 平均最速263.0km/h モンツァ
 4 04年 平均最速260.4km/h モンツァ
 5 02年 平均最速259.8km/h モンツァ
 6 03年 平均最速257.6km/h モンツァ
 7 91年 平均最速257.4km/h モンツァ
 8 05年 平均最速257.3km/h モンツァ
 9 93年 平均最速257.2km/h モンツァ
  10 16年 平均最速257.0km/h モンツァ
  - - - - - - - - - - - - -
  23 94年 平均最速249.0km/h モンツァ
       00年 平均最速249.0km/h モンツァ
       13年 平均最速249.0km/h モンツァ
  26 12年 平均最速248.2km/h モンツァ
  27 09年 平均最速248.1km/h モンツァ
  28 14年 平均最速247.9km/h モンツァ
  29 96年 平均最速246.7km/h モンツァ
  30 95年 平均最速245.9km/h モンツァ
       17年 平均最速245.9km/h スパ・フランコルシャン
  32 88年 平均最速245.3km/h シルバーストン
  33 98年 平均最速243.5km/h モンツァ
  34 08年 平均最速234.9km/h スパ・フランコルシャン

28サーキットのうち、年間最速を記録したサーキットはたったの3箇所。それも34年の中でモンツァがベスト10を含む19回(86.4%)、スパが2回、シルバーストンが1回という内訳となりました。開催回数も70回で最多、平均最高速度もダントツのトップと「キング・オブ・F1サーキット」であることが明らかです。スパやシルバーストンも昔から高速サーキットの位置付けで名が通っています。速いだけがF1ではありませんが、やはりスピード感が溢れるサーキットやGPに人気が集まるのには納得できますよね。

《今回の「年単位」の検証の結論》
今回は歴代ポールポジションタイムを速度変換し、年単位で整理、比較してみました。冒頭にも書きましたが、サンプル数の不足や整理の粗さもあり、断言するには説得力が欠けますが、いくつかの結論が明らかになりました。

・F1の歴代最速シーズンは「2020年シーズン」
・近年は様々な要因で「速い遅い」を繰り返す
・最遅値(ほぼモナコ)はレギュレーションに

 影響され難い
・最速値(ほぼモンツァ)はレギュレーションの
 変更をモロに受ける

次は別の視点で掘り下げてみたいと思います。

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時代と共にポールポジションのタイムの変化をみるこの企画もこのヤス・マリーナにて最終回となります。律儀に中止GPのデータやおまけのサーキットを加えて行ってきたため、かなりの数をこなせたと思います。アブダビGP自体はまだ歴史が浅いから、データ採りとしては少し弱いでしょうか。みていきましょう。

IMG_7588
《ヤス・マリーナの基本情報》
    全長   :5.554km(2009〜)
 コーナー数:21箇所(2009〜)
   開催回数  :11回

ヤス島と呼ばれる島の南側に縦長で新設されたクローズドサーキットです。マリーナという名の通り、モナコのようなヨットハーバー、フェラーリ直営の遊園地に高級ホテルと観光名所になっていますが、島自体はまだ未開発の土地も多く、周辺は正直殺風景です。他のサーキットとの大きな違いとしては、サーキットの目と鼻の先に国際空港があるため、トランスポートや来場が楽な点でしょうか。逆方向に向かうと砂漠の中をさまようことになります。
開催初年の2009年から決勝レースは夕方にスタートし、終了は完全に夜という「ナイト(トワイライト)レース」が行われてきました。ご近所のバーレーンGPと同じですね。トラックは多くの投光器やイルミネーションに囲まれて、レース終了と共に花火が打ち上がる演出は中東レースのお決まりとなっています。サーキットレイアウトはココもヘルマン・ティルケが監修。長いストレートと中高速、直角コーナーからなり、コーナーは一部バンク角が逆に設置されていたり、立地の都合上ピットアウトレーンが本線トラックをアンダーパスするのも特徴的です。

《ヤス・マリーナの予選P.P.タイム変遷》
 09 5.554km 1分40秒948 100% ハミルトン
 10 5.554km 1分39秒394   98.5% ベッテル
 11 5.554km 1分38秒481   97.6% ベッテル
 12 5.554km 1分40秒630   99.7% ハミルトン
 13 5.554km 1分39秒957   99.0% ウェバー
 14 5.554km 1分40秒480   99.5% Nロズベルグ
 15 5.554km 1分40秒237   99.3% Nロズベルグ
 16 5.554km 1分38秒755   97.8% ハミルトン
 17 5.554km 1分36秒231   95.3% ボッタス
 18 5.554km 1分34秒794   93.9% ハミルトン
 19 5.554km 1分34秒779   93.9% ハミルトン

IMG_7583
09年から昨年19年の11年間ですので時代も新しく、記憶にあるものがほとんどですね。中間くらいの位置に大型レギュレーション変更の2014年を挟んでいるわけですが、これが意外にもあまり違和感無く1分40秒台を推移していますね。ポールポジションを獲得した所属チームをみていくと、初年09年はブラウンGPが薄れかけた頃のマクラーレン、10年から13年の4年間は一部ハミルトンが獲得するもののベッテルとウェバーのレッドブル最強時代、現パワーユニットに切り替わった14年からはロズベルグ、ハミルトン、ボッタスのお馴染みメルセデス組と「その時代の最速マシン」が獲得しています。シーズン終盤、最終戦ということもあり、ある程度成熟したマシンがヤス・マリーナを制しているという事になるのでしょうか。
もう少しタイムを掘り下げていくと、09年にハミルトンが記録した1分40秒948から2年連続で更新され、11年のベッテルは1分38秒481で2.5秒短縮しています。ところが翌12年にブロウン・ディフューザーが禁止されるとタイムが再び1分40秒630と2.2秒近く遅くなってしまっています。コーナリング時に大きなダウンフォースを得られるといわれたブロウン・ディフューザーの有無は大きな損失だったことがうかがえます。現パワーユニットに切り替わっても先程書いたようにタイム的には大きな差は無く推移していますが、16年は11年の最速タイムに接近し、17年にタイヤとウィングの幅広化がされるとタイムは急激に短縮に向かい、17年は対09年比較で4.7秒、最速となる昨年19年は6.1秒も速くなっています。11年と12年、最速の19年のセクター毎のタイムを比較してみます。

・広いトラックを流れるように走るセクター1
 11ベッテル  12ハミルトン 19ハミルトン
  17秒408   17秒627   16秒903
・長いストレート2本のセクター2
 11ベッテル  12ハミルトン 19ハミルトン
  41秒857   42秒620   40秒561
・ヨットを横目にカクカクのセクター3
 11ベッテル  12ハミルトン 19ハミルトン
  38秒933   40秒349   37秒235
● 1周ポールポジションタイム※
 11ベッテル  12ハミルトン 19ハミルトン
  1分38秒481  1分40秒630 1分34秒779

※セクター最速タイムを記載しているため、
 各セクターの合算とポールタイムに差があります

12年と19年を比較すると、全セクターで19年が速くなっており、中でもセクター3で3秒以上速いことに驚かされますね。ダウンフォースを単に削られた時代はタイムが遅くなり、タイヤやウィングを大きくしてグリップやダウンフォースを大きく受けられるようになるとタイムが速くなるという実に「素直な結果」となっていることがわかります。IMG_7586

ヤス・マリーナも開催された11年でサーキット全長に変更がありませんので、単純なタイム比較が可能です。これでタイム向上の様子は完結できるのですが、まだ尺が足りないので今回も一応平均速度換算を行ってみました。

《ヤス・マリーナの予選P.P.平均速度変遷》
 09 5.554km 198.1km/h 100% ハミルトン
 10 5.554km 201.2km/h 101.6% ベッテル
 11 5.554km 203.0km/h 102.5% ベッテル
 12 5.554km 198.7km/h 100.3% ハミルトン
 13 5.554km 200.0km/h 101.0% ウェバー
 14 5.554km 199.0km/h 100.5% Nロズベルグ
 15 5.554km 199.5km/h 100.7% Nロズベルグ
 16 5.554km 202.5km/h 102.2% ハミルトン
 17 5.554km 207.8km/h 104.9% ボッタス
 18 5.554km 210.9km/h 106.5% ハミルトン
 19 5.554km 211.0km/h 106.5% ハミルトン

IMG_7582
割合はタイムと相反する形となるため実に単純です。ヤス・マリーナ一周の平均速度は200km/h台から近年10km/h以上向上しています。平均としてみれば意外にもハンガロリンクと近いような速度域に相当します。長いストレートで速度を稼ぎつつもやはり最終セクター3に続く中低速コーナーによってその速度は打ち消されてしまうんですね。起伏も比較的小さく一見市街地サーキットのような雰囲気にみえて、完全なクローズドであり煌びやかな演出が映える近代サーキットのヤス・マリーナ。近年はチャンピオン争いが決定後に行われることもあり、どちらかといえば肩の力を抜きながら見過ごしてしまうレースっぽいイメージが強いですが、サーキット単体でみれば、まあまあバランスの取れたレイアウトなっているのではないかなと思います。


これまで現役サーキットをはじめ、非開催でもどうにかこじつけて多くのサーキットのポールポジションタイムを比較検証してきました。今後はこれらデータを使い「予選でみるF1最速シーズン」みたいな検証に繋げられたらいいなと考えています。今年はもう残り少なく、あまり時間も無いため、年明けシーズン前の暇そうな時間にでもまとめた結果をお伝えできたらと思います。

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久し振りにトルコのF1が観られるぞー!miyabikun個人的に今からとてもテンションが上がっております(笑)数多くある「ティルケ作品」でも秀逸な作品と評されるイスタンブールパークサーキットと現代F1のコラボレーションで、果たしてどんなタイムが出ちゃうのか、「ターン8」を張り付くように旋回しちゃうのか、興味とその興奮ばかりが高なります。そんなレースの前に今まで7回行われた一昔前のポールポジションタイムをおさらいしておきましょう。

IMG_6889
《サーキットの基本情報》
 イスタンブールパークサーキット
    全長   :5.338km(2005〜)
 コーナー数:14箇所(2005〜)
   開催回数  :7回

ニュルブルクリンクやイモラと比べると、初開催はさほど古くない2005年です。それまではトルコ=F1って正直ピンと来ない国の一つでしたが、2011年までの7シーズンにわたりF1カレンダーを担っていました。7年のうち、初めの3年は8月の夏開催、残る4年は5月〜6月の初夏に行われており、11月中盤の冬に差し掛かる時期は初になります。IMG_2046
平面で見れば「葉の上で背伸びするイモムシ」のような可愛らしく、単純なレイアウトに見えます。これに「高低差」という要素を加えると、これがなかなか複雑で高難易度のサーキットに仕立て上げられます。また、最近この言葉ばかり言っている気がしないでもないですが、このサーキットもイモラと同様の左回り(反時計回り)です。
ターン1は同じ左回りのブラジルのホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス)を彷彿とさせる下りブラインド複合コーナーが立ちはだかります。IMG_1261
こちらがちょっと引きで見たホセ・カルロス・パーチェIMG_2240
そしてこれがイスタンブールパーク。まあまあ似ているでしょう。違いは「セナがいるかいないか」と、ピットアウトレーンの取り付き方。ブレーキングで頑張り過ぎると、タイヤが白い煙を吐きながら悲鳴を上げます。
IMG_6887
その後は最近増えつつあるジグザグコーナーをリズミカルに抜けると、このサーキット最難関と呼ばれ、こちらも下りながら進入していく複合コーナー「ターン8」がドライバー達に度胸と的確なライン採りを試す。
IMG_6888
コーナー数が14って、近代のサーキットの中では少なめですよね。この4つの左コーナーを一つずつ数えれば、このサーキットのコーナー数は17なので多過ぎず、少な過ぎずでちょうどいい。ココの強烈な横Gに耐え抜いた者だけが「サーキット攻略」の合格印を受け取れます。
トラック終盤は右に屈曲するストレートの先にある鋭角なターン12。レースではターン1の飛び込みとココが格好のパッシングポイントになるのではないでしょうか。

《イスタンブールパークの予選P.P.タイム変遷》
 05 5.338km 1分26秒797 100%   ライコネン
 06 5.338km 1分26秒907 100.1% マッサ
 07 5.338km 1分27秒329 100.6% マッサ
 08 5.338km 1分27秒617 100.9% マッサ
 09 5.338km 1分28秒316 101.8% ベッテル
 10 5.338km 1分26秒295   99.4% ウェバー
 11 5.338km 1分25秒049   98.0% ベッテル

サンプル数は7回と少ないものの、サーキット全長は変わらずの5.338kmと比較しやすく、その中でも多少なりの差が表れています。
IMG_6852
以前にレースを振り返ったこともある開催初年05年は当時マクラーレンに所属したライコネンがサーキット初ポールとなる1分26秒797をマークし、以降しばらくはこのタイムを上回る者が現れませんでした。05年は3.0ℓV10エンジン最終年であり、翌年06年から2.4ℓV8エンジンに小型化されています。出力や排気量はダウンしたものの、回転数を高くし、さらには空力付加物(各種ウィング等)でダウンフォースを補う形にシフトしたわけですが、段階的な速度低下の措置に阻まれて、このイスタンブールパークにおいてはタイム向上に繋がりませんでした。ウィング類を「素っ裸」にされてダウンフォースを一気に削られた09年は初年05年比102%のタイムにまで落ち込んでいます。
開催6回目にあたる2010年は空力に長けたレッドブルが台頭し、前年09年と同じチームであるにもかかわらず、ウェバーが2秒も短縮する1分26秒295で走破。そして最終年12年に同じレッドブルのベッテルがウェバーからさらに1.2秒も速い1分25秒049でポールポジションを獲得。これが現時点でのイスタンブールパーク最速ポールとなっています。
IMG_6890

全長に変更の無いサーキットは今まで平均速度比較を止めてきたのですが、インテルラゴスのネタまで絡めて盛った割に、やはり物足りないですね。今回はせっかくの復活開催ですから、参考までに平均速度比較も載せることにしました。

《イスタンブールパークの予選P.P.平均速度変遷》
 05 5.338km 221.4km/h 100%   ライコネン
 06 5.338km 221.1km/h   99.9% マッサ
 07 5.338km 220.1km/h   99.4% マッサ
 08 5.338km 219.3km/h   99.1% マッサ
 09 5.338km 217.6km/h   98.3% ベッテル
 10 5.338km 222.7km/h 100.6% ウェバー
 11 5.338km 225.9km/h 102.1% ベッテル
IMG_6854
タイム差グラフは短い方が速いことを示しますが、速度グラフは長い方が速い。距離が同じなので、先程のタイム差で出た割合の単純に裏返しとなります。最速は最終年11年の225.9km/h、最遅は09年の217.6km/hでどちらもレッドブルのベッテルによるポールポジションです。2年間で4%、8.3km/hの増加ということで、F1はいつもながら著しいマシン向上がなされていることを実感しますね。9年の時を経て、重量は増えどハイブリッドパワーユニットを搭載した現代のF1マシンは果たしてどれだけの進化向上をみせてくるのでしょうか。

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予定外のイタリア3発目、懐かしのイモラにF1が戻ってきますね。今回はイタリアGPでもサンマリノGPでもなく「エミリア・ロマーニャGP」の名前で限定復活です。

IMG_6677
《サーキットの基本情報》
 エンツォ・エ・ディノ・フェラーリ(イモラ)
    全長   :5.000km(1980)
       5.040km(1981〜94)
       4.895km(1995,96)
       4.930km(1997〜99)
       4.933km(2000〜06)
       4.909km(2020)
 コーナー数:17箇所(2007〜)
   開催回数  :27回

サーキットのある地名である「イモラ」で定着していますが、正式にはエンツォ・エ・ディノ・フェラーリ。フェラーリの創始者の名前そのままになります。先日初めて行われたムジェロサーキットとも近く、80年台から2000年台前半までサンマリノGPの舞台としてカレンダーに組み込まれていました。若いF1ファンなら「セナが没した地」として有名かと思いますが、当時は少数派の左周り(反時計回り)高速サーキットとされ、危険かつ歴代で大きな事故が多発したサーキットでもあります。
IMG_2535
 ・1980年         5.000km (オリジナル)
 ・1981〜94年 5.040km 青色(シケイン追加)
 ・1995,96年    4.895km 赤色(コーナー低速化)
 ・1997〜99年  4.930km
 ・2000〜06年 4.933km
 ・2007〜現在  4.909km 下図(最終シケイン廃止)
IMG_4346
上の図がイタリアGP、サンマリノGPで行われていた時代のもの、そして今回のエミリア・ロマーニャGPに際してまた新たなレイアウト変更があります。いずれも「水辺に浮かぶカルガモ」のような形が特徴的ですね(北上で表現すると、上下逆さまになってしまいますが)軽微ながら数回のレイアウト変更を経て現在に至ります。
81年にレイアウト中間部にある右コーナー「アクア・ミネラーニ」にシケインを設置した1周約5kmのレイアウトが90年台前半まで使用されました。その後94年に発生した死亡事故により、その現場となったタンブレロ、ヴィルヌーブの2つの高速コーナーに速度抑制のシケインを設置する変更を受けています。06年を最後に長年続いた「イタリアでの二開催」の歴史に幕を閉じF1カレンダーから外れたわけですが、翌07年にピットおよび最終シケイン「ヴァリアンテ・バッサ」を改修、廃止。緩やかなストレートに変貌を遂げました。久々となるF1本戦走行、果たしてどんなタイムになるか、期待と興味を募らせますね。

《予選P.P.タイム変遷》
 80 5.000km 1分33秒988 アルヌー
 81 5.040km 1分34秒523 Gヴィルヌーブ
 82 5.040km 1分29秒765 アルヌー
 83 5.040km 1分31秒238 アルヌー
 84 5.040km 1分28秒517 ピケ
 85 5.040km 1分27秒327 セナ
 86 5.040km 1分25秒050 セナ
 87 5.040km 1分25秒826 セナ
 88 5.040km 1分27秒148 セナ
 89 5.040km 1分26秒010 セナ
 90 5.040km 1分23秒220 セナ
 91 5.040km 1分21秒877 セナ
 92 5.040km 1分21秒842 マンセル
 93 5.040km 1分22秒070 プロスト
 94 5.040km 1分21秒548 セナ
 95 4.895km 1分27秒274 Mシューマッハ
 96 4.895km 1分26秒890 Mシューマッハ
 97 4.930km 1分23秒303 Jヴィルヌーブ
 98 4.930km 1分25秒973 クルサード
 99 4.930km 1分26秒362 ハッキネン
 00 4.933km 1分24秒714 ハッキネン
 01 4.933km 1分23秒054 クルサード
 02 4.933km 1分21秒091 Mシューマッハ
 03 4.933km 1分22秒327 Mシューマッハ
 04 4.933km 1分19秒753 バトン
 05 4.933km 1分19秒886 ライコネン-1 ※
 06 4.933km 1分22秒795 Mシューマッハ

※2005年はポールポジションタイムではありません

純粋なタイムの変遷です。80年はサンマリノGPではなく「イタリアGP」として9月の秋開催となりますが、グラフでちょこっとした表現差を付けただけで一様に並べました。唯一モンツァサーキットを使わなかったレア年ですね。また今までも数回あったように、05年第4戦サンマリノGPは2回の予選の合算であったため、1回目に速いタイムを記録したマクラーレンのライコネンによるトップタイムを採用しています。
IMG_6648
数字だけの羅列を見ていても気付き辛いですが、グラフにするとまあまあ素直に高低がついたのかなというのが第一印象です。時代はちょうどグラウンド・エフェクトカーが流行りだした80年台初頭、トラックにはシケインが追加されたにも関わらずタイムを縮め、最終年の82年にルノーを駆るアルヌーによる1分29秒765をマークします。当時のルノーはターボエンジン搭載車の先駆けとして、予選でライバルが一目置く存在にありました。グラウンド・エフェクトカーが禁止される83年はフェラーリに移籍したアルヌーでもタイムは一度落ち込み、ここから各車「パワーターボ」が猛威を振るい始めました。83年からターボが禁止される88年までは全てターボエンジン搭載車によるポールポジションであり、最終年の88年は過給圧2.5バールに制限を受けたことにより、タイムがセオリー通り落ち込みました。
NAエンジンの時代に入るとタイムは年々短縮され、94年にウィリアムズをドライブするセナによって1分21秒548が記録されました。しかしその翌日の決勝レースでの「例の大事故」により、このサーキットのみならず全世界のあらゆるサーキットが一時的な改良、そしてマシンレギュレーション変更を余儀なくされました。その結果、翌95年は2箇所のシケイン追加のために5.7秒もタイムが延びてしまいました。
その後もNAエンジンのまま「マシンの進化とレギュレーションによるダウンフォース低下」がせめぎ合いつつもタイムを少しずつ削り、3.0ℓV10エンジン末期の2004年に当時BAR・ホンダのエースであるバトンがマークした1分19秒753が現状の最速ポールポジションタイムとなっています。レギュレーション変更を当てていくと、実にわかりやすくタイムに反映されていますよね。IMG_6678

《予選P.P.平均速度変遷》
 80 5.000km 191.5km/h 100%    アルヌー
 81 5.040km 192.0km/h 100.2% Gヴィルヌーブ
 82 5.040km 202.1km/h 105.5% アルヌー
 83 5.040km 198.9km/h 103.8% アルヌー
 84 5.040km 205.0km/h 107.0% ピケ
 85 5.040km 207.8km/h 108.5% セナ
 86 5.040km 213.3km/h 111.4% セナ
 87 5.040km 211.4km/h 110.4% セナ
 88 5.040km 208.2km/h 108.7% セナ
 89 5.040km 211.0km/h 110.1% セナ
 90 5.040km 218.0km/h 113.8% セナ
 91 5.040km 221.6km/h 115.7% セナ
 92 5.040km 221.7km/h 115.8% マンセル
 93 5.040km 221.1km/h 115.4% プロスト
 94 5.040km 222.5km/h 116.2% セナ
 95 4.895km 201.9km/h 105.4% Mシューマッハ
 96 4.895km 202.8km/h 105.9% Mシューマッハ
 97 4.930km 213.1km/h 111.2% Jヴィルヌーブ
 98 4.930km 206.4km/h 107.8% クルサード
 99 4.930km 205.5km/h 107.3% ハッキネン
 00 4.933km 209.6km/h 109.5% ハッキネン
 01 4.933km 213.8km/h 111.6% クルサード
 02 4.933km 219.0km/h 114.4% Mシューマッハ
 03 4.933km 215.7km/h 112.6% Mシューマッハ
 04 4.933km 222.7km/h 116.3% バトン
 05 4.933km 222.3km/h 116.1% ライコネン-1
 06 4.933km 214.5km/h 112.0% Mシューマッハ

IMG_6647
平均速度を割り出した結果はこうなります。ど真っ直ぐなストレートこそ無いものの、かつては高速コーナーと鋭角コーナーで構成されたストップアンドゴーのレイアウトのイモラですが、平均速度にしてしまうと、トサやリバッツァなどの中低速コーナーがサーキット両端にあるためさほど速くなく、ハンガロリンクやマニ・クール、ジル・ヴィルヌーブや先日のニュルブルクリンク(GPコース)と同程度となります。最速はタイムと同様に04年の222.7km/h、94年の222.5km/h、そして05年の222.3km/hと続いています。こうしてみると、04年や05年など近年はともかく、セナが人生最後に叩き出した94年は「行き着くところまで行き着いたマシンでの渾身の一本」であったことが想像できます。予選最速にこだわり、もちろんレースも勝つ気で取り組んだ予選。残念ながらその速さは「マシンの向上の裏返しの危険」を身を持って表し、以降のF1界に大きな影響力を生んでしまいました。セナがこのイモラで散ることがなければ、マシンはどこまで進化したのでしょう。今とはまた違う世界を生み出していたことに間違いは無さそうです。
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