F1 えきぞーすとのーと

よくあるニュースネタやこ難しいテクニカルな話ではなく、メインは予選や決勝のTV観戦したそのものを個人的観点から綴るF1ブログです。  また、懐かしのマシンやレースを振り返ったり、記録やデータからF1を分析。その他ミニカーやグッズ集めも好きなので、それらを絡めつつ広く深くアツくF1の面白さやすごさを発信し、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

タグ:ベッテル

昨年は4人のドライバーがF1から去りました。まだ年齢的に若い者もいれば、一度頭の中を整理して再戦しようと目論む者など様々。ただやはり今シーズンのシート争奪戦のきっかけとなったベッテルの「引退」は衝撃的なニュースでしたね。ベッテルは一昨年のライコネンと同様に、長きに渡りF1に携わり、一時代を築いたレジェンドドライバーの一人。他の3人はまだF1に復帰するチャンスが無くもないですが、ベッテルはまずドライバーとして戻ることは無いでしょう。今回は遅れ馳せながらベッテルの16年に及ぶF1での戦績を振り返りながらはなむけしたいと思います。昨年のライコネン並みかそれ以上のボリュームになりましたので、途中リタイヤすること無く最後まで心してお付き合い下さい(笑)

IMG_6732
セバスチャン・ベッテル
 1987年7月3日生まれ
 2007年 BMWザウバーからデビュー
 16年在籍(2007年はスポット参戦)
 優勝53回 歴代3位
 表彰台122回 歴代3位
 参戦数300戦 歴代7位
 ポール獲得57回 歴代4位
 ファステスト獲得38回 歴代5位
 チャンピオン4回 (2010,11,12,13年)
 ※記録、歴代順位は2023年第3戦終了時点

各種獲得数、F1歴代順位にチャンピオン獲得回数などなど、全てにおいて極めて高いランクにあるドライバーであったことは言うまでもありません。歴代3位の優勝、表彰台登壇回数のさらに上位2人はご存じの通り同じ方。ハミルトンとM・シューマッハの2人であり、ポールポジションはその2人にセナを加えた3人。ファステストラップは先程のセナに代わり、ライコネンとプロストに代えた4人がベッテルの上位にいるのみとなっています。今シーズンの現役ではハミルトンに全てで上回れなかったものの、アロンソに対しては参戦数以外で上回っていると考えれば、ベッテルの戦績の高さがよくわかります。

《ベッテルの略歴》
いつも通り、ベッテルのこれまでの経歴を簡単に振り返っておきたいと思います。この後本当に長丁場になりますので、マジで簡単に、、。
ベッテルはドイツの中でもフランス寄りに位置する旧西ドイツのヘッセン州ベルクシュトラーセ郡へッペンハイムという人口3万人弱の街に生まれました。FullSizeRender
幼い頃からカートに勤しみ、ドイツジュニアカート選手権、ヨーロッパジュニアカート選手権でチャンピオンを獲得。1998年(11歳)にレッドブルの育成プログラムに参加するようになります。その後、F3ユーロシリーズに舞台を移し、若かりしハミルトンらと戦うようになります。また地元ドイツのBMWからも注目を浴び、2005年にはBMWエンジンを搭載したウィリアムズFW27でF1初ドライブ。翌年2006年にザウバーを買い取る形で参戦を始めたBMWザウバーのサードドライバー契約を「レッドブルから2年間レンタル」という名目でスタートし、本格的にF1に関わることとなりました。
IMG_6723
2007年第6戦カナダGPで大クラッシュを喫したクビカに代わり、第7戦アメリカGPでF1デビュー。予選は全22人中7番手、決勝は入賞ギリギリの8位でフィニッシュし、当時ウィリアムズのバトンが有していた「最年少入賞」を更新し、早くも才能をみせました。その活躍もあり、同じ年の第11戦ハンガリーGPでは解雇されたスコット・スピードに代わりトロ・ロッソから参戦をはじめ、シーズン終了までの7戦をドライブしています。
2008年からトロ・ロッソのレギュラードライバーとなり、同じ名のセバスチャン・ブルデーと共にシーズンを戦い抜きます。終始雨模様だった第14戦イタリアGPでは予選でチーム初、自身初のポールポジションを「最年少」で獲得。決勝も勢いそのままに挙げた初優勝も「最年少」、ポールトゥウィンも「最年少」と記録ずくめの2年目を過ごしました。IMG_6724
そして参戦3年目の2009年から「お兄さんチーム」のレッドブルに昇格。ポールポジションや優勝の常連に名乗りを挙げ、チャンピオンも夢ではない位置にまで飛躍しますが、シーズン序盤から好調をみせたブラウンGPとバトンに手が届かず、ドライバーズランキング2位に終わります。
参戦4年目、レッドブルで2年目を迎えた2010年もポールポジションと優勝を量産。チャンピオン争いでフェラーリのアロンソと競い、最終戦アブダビGPでポールトゥウィンを挙げた結果、ハミルトンのもつ「最年少」チャンピオンを獲得。以降もマシンレギュレーション変更もあり苦戦したシーズンはありつつも2013年まで四連覇を果たします。
FullSizeRender
IMG_6719
ただチャンピオン獲得以降のベッテルはキャリア初期にみられたひたむきな姿勢かつ少年のような無垢な笑顔から、チャンピオン特有でもある「チームの指示を無視する傲慢な言動」が出始めます。
IMG_6720
本来助け合うべきチームメイトとの不仲説やライバルチームのドライバーに対する差別的発言もあり、問題となったこともありました。
IMG_6722
そのバチが当たったか、2014年はパワーユニットの大幅変更もありベッテルは大不調。これまで絶対王者にまで上り詰めたレッドブルはメルセデスにその座を奪われ、さらには5年間チームメイトを務め、引退したウェバーに代わり、トロ・ロッソから移籍した若手のリカルドに大敗を喫する結果を経験します。そこでベッテルはレッドブルを離れることを決め、2015年からはアロンソの抜けたフェラーリと3年契約を結びました。
IMG_6729
公私共に交流のあるライコネンがチームメイトになってからは、レッドブル時代のピリついた表情は減り、兄弟のように戯れ合う姿が印象的でした。2015年、16年はメルセデスの勢力になかなか太刀打ちできない状況が続きますが、2017年からは再びポールポジションや優勝戦線に戻り、ランキング2位のところまで上り詰めてきます。
IMG_6721
2019年からはライコネンに代わってフェラーリアカデミー出身の若手、ルクレールをチームメイトとして迎え入れることとなりましたが、ルクレールは予選自慢のベッテルを上回らんばかりの予選自慢。ポールポジション獲得数だけでなく、ドライバーズランキングでも敗れることとなりました。
世界的なコロナ禍もあってイレギュラーなシーズンとなった2020年は再びノンポール、優勝無しの大転落に陥ります。ドライバーズランキングもレギュラードライバー時代で自身最下位となる13位にまで落ち込み「ベッテルもそろそろ引退か?!」と取り沙汰されるようになりました。ベッテルはフェラーリを離脱する決断をし、2021年からは新天地に中堅チームのアストンマーティンを選択しています。
IMG_6730
若手(とはいえ参戦5年目)のストロールのチームメイトとして、キャリア初のメルセデスパワーユニットをドライブすることとなったベッテルですが、マシンのポテンシャルかチーム力か、はたまた自身の衰えなのか、才能はなりを潜め、予選ではQ3進出も減り、決勝は2年間で1回(あと幻の1回)と、三度輝くことは叶わず、2022年第13戦ハンガリーGPを前にF1引退を発表。16年に及ぶF1ドライバー人生の幕を下ろしています。

《ベッテルの戦績とその特徴》
ここから過去のレジェンドドライバーと同様に、予選、決勝の全戦績をグラフ化しながら特徴をみていきたいと思います。

〈予選順位、決勝順位の全結果〉
まずは予選順位を全てプロットしました。一応チームカラーっぽい色でプロットし、パワーユニット交換等の降格前の「純粋な予選順位」で統一しました。またいつもながらQ1領域は水色、Q2は黄色、Q3は赤をバックに落としており、濃いグレーの期間はドライバー契約が無かったものを示します。
IMG_6699
デビュー間も無いBMWザウバー期やトロ・ロッソ期、そして晩年のアストンマーティン期こそQ1落ちが目立ちますが、中盤のレッドブル期やフェラーリ期はほぼQ3進出を果たしています。アルファベットの「M」の字に近い分布ですね。Mの谷間に位置するのが、、ベッテル一番の暗黒期である2014年です。よくてQ3進出でも中盤、ほかQ2止まりの結果がいくつかありました。
ポールポジションの高さで一本筋の絶好調レッドブル期はさておき、フェラーリ移籍後もポールポジションはいくつか獲得していました。2015年、16年はライバルのメルセデスが二枚看板で速さをみせていたこともあり、ライバルは3番手が精一杯という状況がありました。そう考えると、ベッテルは健闘していたように思います。
予選から上位を獲得できるベッテルとて晩年過ごした中堅チームでは苦戦を強いられ、アストンマーティン初年の2021年はQ2止まりが続き、最終年の昨年はQ1突破も難しい状況となりました。輝かしい時代を知るファンとしては、下位でくすぶるベッテルを観ているのも正直辛かったですね。
IMG_6698
こちらは決勝結果をプロットしたものになります。ベッテルはF1参戦300戦中、決勝でスタートしなかったものが1戦(2016年第2戦バーレーンGP)と決勝出走後に失格したものが1戦(2021年第11戦ハンガリーGP)の合計2戦あるため、決勝の結果としては298戦となります。今回はそれら2戦とリタイヤしたものを除外しています。
予選戦績と同様に全体観を俯瞰すると、ライバルのリタイヤやベッテル自身のドライビングにより、予選よりは当然ながら上位側に集まっています。また予選と同じく、レッドブル期やフェラーリ期は最上位が多い中、やはり2014年と2016年後半、2019年頃から順位に落ち込みがみられます。チームの戦闘力やマシン、そしてベッテル自身の成績不振が表れています。チームを去る前年の2014年と2020年が顕著。これはベッテルに限った話ではありませんが、特に所属しているチームの地位が高いほど、このような成績不振は移籍する(または強いられる)場合によくある話。2014年はまだ次の行き先がトップチームのフェラーリだったこともあり、移籍後も大きな変化が無く上手いことできているものの、2020年での不振による移籍は中団チームへの移籍だったため、順位の再浮上は厳しい状況となりました。

〈シーズン別の各種獲得率〉
続いてシーズン別の予選、決勝の獲得率に絞って集計してみました。昨年の「ライコネン」の時に図表を使わず数字だけで示した例のやつです。こちらも予選編から。
IMG_6697
各シーズンでレース数がまちまちであるため、その数でなく「割合」を算出し、積み上げ棒グラフとしました。色の内訳は下から青がQ1止まりの予選割合、黄色がQ2止まり、オレンジがQ3まで進出した割合を示し、Q3にした中で「ポールポジションを獲得した割合」はオレンジより濃い赤で表しました。
グラフ上部が長ければ長いほど好成績であったといえますが、先程のM字のプロットとは逆に、W字のような色の塗り分けとなりました。驚異的な結果となったのは、F1参戦4年目フル参戦3年目となる2010年と翌11年、フェラーリ移籍4年目にあたる2018年の3シーズンは全てQ3まで歩を進めている点。さらには2011年についてはポールポジション獲得率が78.9%(全19戦中15ポール)という驚異的な数字を記録。これはハミルトンやフェルスタッペン、ルクレールはおろか、M・シューマッハもセナもマンセルもなし得ていないシーズン歴代最多記録になります。とにかく予選から前に出て、決勝レースも逃げ切ってしまうというベッテルのお決まり「勝利への方程式」でしたね。
IMG_6696
決勝編は最下段の真っ黒はリタイヤの割合、青が入賞圏外フィニッシュで、薄いオレンジが表彰台以外の入賞、濃いオレンジが表彰台圏内、そして赤が優勝の割合となります。つまり暖色系がポイントを得た領域です。
予選編と同様に2011年や13年、18年は高い割合でポイントゲットはあるものの、毎年必ず1戦以上のリタイヤ(失格)もあり、シーズン全戦入賞は果たせませんでした。とはいえ、2011年のポイント獲得率は94.7%で勝率57.9%。2013年の勝率68.4%は驚異的な数字。全19戦で13勝を挙げています(ちなみに昨年勝ちに勝ちまくったフェルスタッペンは全22戦で15勝を挙げ、勝率68.2%)
また、表彰台に登壇できなかったのはスポット参戦となった初年度の2007年と最終年の2022年のみです。近年でこれと同じ系譜を辿るのがフェルスタッペン(デビューの2015年のみ未登壇)でこれを上回るのがハミルトン(デビューから全シーズン登壇)となります。今後の誰もがハミルトンと比較して勝ち目がみえそうなのは参戦数くらいか。

〈ポールスタート、決勝優勝の各内訳〉
よく言われるベッテルのお決まり「ポールポジションからの決勝レースの順位」また「優勝を挙げたレースの予選順位」はどんな結果になるのかを集計、グラフ化してみました。
IMG_6695
こちらはポールポジションスタートにおける決勝レースの順位になります。決勝順位は優勝からなぜか5位フィニッシュを除く8位までとリタイヤの8種類ありました。ベッテルの参戦した時代の入賞は8位以内と10位以内ですから、何らかの理由でリタイヤしない限りは、ポールポジションからの入賞は確実なものとしていたということがわかります。何せBMWザウバーでのスポットデビュー戦が8位入賞ですから、その時点で持ッテル。
調べてわかったのは、ポールポジションスタートから勝ちに勝ちまくった印象のベッテルも、結果的には31勝/57回で勝率54.4%に過ぎなかったんですよね。まあポールトゥウィンが31回もある時点でかなりのバケモノですが。
ポールポジションスタートから表彰台登壇と数えれば、44回/57回で登壇率は77.2%に達します。今回は歴代のレジェンドドライバーの計算をしていませんが、こちらもマシントラブルや高完走率の現代がだいぶ有利な結果となりそうです。
IMG_6694
続いて優勝レースの予選順位はこのようになりました。実にシンプル!予選で3番手以内で勝ちを量産してきた、言い換えれば3番手以内からでしか勝てていない、ということになります。前者の解釈するか、後者の解釈するかはファンそれぞれの思い入れや比較対象したいドライバーによって変わります。下位からでもバシバシ勝ってきたフェルスタッペン(14番手)やライコネン(17番手)らと比較してみるのも面白そうです。ん?アロンソ様も15番手から勝っているって?!そこは、、事実ではあるけど、、あまり触れない方が、、(笑)
先程のポールトゥウィン31回という数は変わりませんが、ベッテルの優勝はポールポジションよりやや少ないため、シェアが異なります。この手のデータ比較も興味深い。

〈ベッテルの得意サーキット〉
ポールポジションの獲得数、優勝回数が多いと、当然ながら各GPやサーキット、さらには複数回獲得するケースが出てきます。複数回のポールポジションや優勝を挙げたサーキットを集計してみました。

・サーキット別ポールポジション獲得回数上位
 5回  ジル・ヴィルヌーブ(2011,12,13,18,19)
   鈴鹿(2009,10,11,12,19)
 4回  マリーナ・ベイ市街地(2011,13,15,17)
   上海国際(2009,10,11,18)
 3回  アルバートパーク(2010,11,13)
   ヴァレンシア市街地(2010,11,12)
   バーレーン国際(2010,12,18)
   ハンガロリンク(2010,11,17)
   ブッダ国際(2011,12,13)
   モンツァ(2008,11,13)

・サーキット別優勝回数上位
 5勝  マリーナ・ベイ市街地(2011,12,13,15,19)
 4勝  セパン(2010,11,13,15)
   バーレーン国際(2012,13,17,18)
   鈴鹿(2009,10,12,13)
 3勝  アルバートパーク(2011,17,18)
   ブッダ国際(2011,12,13)
   スパ・フランコルシャン(2011,13,18)
   ホセ・カルロス・パーチェ(2010,13,17)
   モンツァ(2008,11,13)
   ヤス・マリーナ(2009,10,13)
   韓国国際(2011,12,13)

ポールポジションは全23サーキットで獲得し、3回以上の獲得は10サーキットあります。ポール最多はカナダGPの舞台であるジル・ヴィルヌーブサーキットと日本GPの行われる鈴鹿サーキットでの5回。また、優勝は全21サーキットで挙げ、3勝以上挙げたサーキットは11サーキット。最多優勝はシンガポールGPの行われるマリーナ・ベイ市街地サーキットでの5勝となっています。
時代的にはレッドブル上昇時代とフェラーリ惜しい時代に積み重ねているのですが、これら回数を重ねたサーキットの種類や特徴といえば、、市街地系もあるし、クラシックサーキットも高速サーキットもストップアンドゴーもあるので絞り込めません(笑)ただ強いていうならば、鈴鹿といい韓国や中国、インドにシンガポールとアジア圏のサーキットが多いように感じます。鈴鹿については本音かリップサービスかわかりませんが、好み誉め称えるコメントが有名でしたよね。我々日本人にとって、鈴鹿を愛し、かつ多く勝利しているとなれば、ファンも多かったことと思います。ちなみにインドGPの行われたブッダ国際サーキットは3回の開催のうち3勝の3ポール獲得と、ベッテルが完全に独占しています。あのハミルトンも獲れなかった希少なサーキットです。

〈ベッテルの記録関連〉
ここまでみただけでも歴代上位に名を残すスーパーチャンピオンの一人であることに間違い無いものの、今まで最年少記録をはじめとした多くの記録を保有していました。そのうちのいくつかは現役のフェルスタッペンに塗り替えられることとなりますが、未だにトップの記録をいくつか保有しています。

・シーズン最多ポールポジション獲得:15回
それまでは1992年のマンセルがウィリアムズ時代に全16戦中14回(獲得率87.5%)という驚異的な記録を保有していましたが、2011年にベッテルが全19戦中15回(獲得率78.9%)で上回りました。開催数が増えたため獲得率ではマンセルには劣るものの、シーズン15回はなかなか強烈。今シーズンに当てはめた場合、18.1回相当、つまり19回ポールポジションを獲得するレベル。ただでさえ近年のF1は追い抜きが難しく、予選順位はかなり重要であり、これだけポールポジションを獲れたら、、いや、獲れてもどこぞのチームのように決勝でコケたらノーポイントか(笑)いつの時代も大切なのは決勝の戦績。

・連続優勝:9連勝
こちらは2013年第11戦ハンガリーGPから第19戦ブラジルGPでなし得ました。それまでは1952年のアスカリ、2004年のM・シューマッハが記録する7連勝が最多でした。その後、メルセデスを駆るロズベルグが2015年から16年の年またぎで7連勝に到達しますが、ハミルトンもフェルスタッペンも9連勝はおろか7連勝にも到達せず現在に至ります。当時miyabikunは2008年からのベッテル推しだったものの、さすがにこんなに勝たれると、、優勝の有り難みが、、今よりもつまらないカモ(笑)

・最年少ポールポジション獲得:21歳72日
これはトロ・ロッソ時代の2008年第14戦イタリアGPの時のもので、ルノー時代のアロンソの記録を更新。この翌日の決勝も初優勝を果たし、同じくアロンソが保有していた最年少優勝も更新しました。ただし、最年少優勝については2016年第5戦スペインGPでレッドブルの後輩であるフェルスタッペンが移籍初戦で塗り替えたため消滅しています。特に最年少系はフェルスタッペンに勝てない状況になってしまっていますが、これだけベッテルしばらくしのげるかな。

・最年少ドライバーズチャンピオン:23歳135日
ベッテルがこの記録を達成したのは、F1参戦4年目の2010年で、23歳135日の若さでの獲得となっています。一代前は2008年にようやく(とはいえF1でまだ2年目の)ハミルトンが23歳300日でした。
近年は若年化が進み、キャリア2年目あたりには中団上位やトップチームのシートを獲るドライバーも増えてきています。一見簡単そうにみえて、この記録も破られず早くも13年目に入ります。この記録を破るには、20歳くらいにデビューして3年目には獲得しないと難しいものです。あと計算上、誕生日にも影響してきます。現役で例えるならば、最年少のピアストリが来シーズン後半のなるべく早い段階でチャンピオンを獲得しないと更新できないことになる。いやーこれもなかなか厳しいものであり、この先もベッテルが最年少記録を保持し続ける可能性が高そう。

〈シーズン別の「愛車ニックネーム」〉
他のドライバーにはあまりみられない点として、ベッテルは毎年F1マシンにニックネーム(それも決まって女性)を名付けることで有名でしたね。確かに自分の命を預け、またそのマシンをドライブすることを生業としているわけですから、そのような一体感や愛着があっても不思議ではありません。言わないだけで、他のドライバーもやっているのかな。このあたりもベッテルのユーモラスな性格といえます。

 2007 STR2
 2008 STR3   Julie                      ジュリー
 2009 RB5     Kate                      ケイト
      RB5    Kate’s Dirty Sister ケイトの汚れた妹
      RB5    Sexy Sadie           妖艶なセディ
 2010 RB6     Luscious Liz          官能的なリズ
      RB6    Randy Mandy       淫乱なマンディ
 2011 RB7      Kinky Kylie           変態カイリー
 2012 RB8      Abbey                  アビィ
 2013 RB9      Hungry Heidi        腹ぺこハイジ
 2014 RB10    Susie                    スージー
 2015 SF15-T EVA                      イヴ
 2016 SF16-H Margherita           マルゲリータ
 2017 SF70    Gina                      ジーナ
 2018 SF71H  Loria                     ローリア
 2019 SF90     Lena                     リーナ
 2020 SF1000 Lucilla                   ルキッラ
 2021 AMR21 Honey Ryder        ハニーライダー
 2022 AMR22

何なんだよ、ケイトの汚れた妹って(笑)凡人のmiyabikunにははっきり言って意味がよくわからないものの、レッドブル時代は遊び心満載で、マシンを壊すとその名前も変えるほどの熱心さだったのに、フェラーリ移籍以降はあまり捻りのないシンプルなものが続いています。マシンに愛着が無くなってしまったのでしょうか(それがもしかしたら戦績にも影響か)最終年の昨年も当然話題に出たわけですが、正式な命名が無かったように記憶しています。
余談ですがmiyabikunの愛車にはニックネームこそないものの、一号機の性別だけは「女性」ということにしています。いわれはココでは書けません(笑)どデカい身体ながらフォルムが実に女性的、という感じからです。

《チーム内対決》
予選、決勝におけるチームメイトとの戦績比較を行います。輝かしい戦績を誇るベッテルでも、全てのシーズンでチームメイトに勝ったわけでもなく、負けたシーズンがいくつかあります。
IMG_6717
予選はデビューイヤーの2007年にリウッツィ相手に3勝5敗。レッドブルを離れることとなった7年目のリカルド相手に7勝12敗。フェラーリ2年目の2016年も仲良しライコネンに対して10勝11敗で惜敗し、ライコネンの後任である若手のルクレールには2年連続で敗北し、フェラーリをあとにしています。
逆にレッドブル時代のウェバーには2009,11,13年で圧勝したことも印象的です。結果的には16年間で5敗という結果で191勝109敗の勝率63.7%となっています。
IMG_6716
決勝についても予選と似たような勝敗が続きますが、レッドブル移籍初年の2009年は負け越しに転じています。ウェバーのリタイヤ2回に対して、ベッテルは3回のリタイヤと2回の入賞圏外があり、ポイントでは勝るも、単純に順位での勝敗でみれば負けるという不思議な結果に。またキャリア晩年を過ごしたアストンマーティンでは、ストロールに対し2021年は惜敗、最終年の昨年は辛勝とやや勢力を失いつつあることも見受けられます。年齢的にはまだまだ走れそうな35歳ですが、当時23歳のストロールには敵わなくなりつつあったのか。こうしてみていくと、ベッテルのピークはチャンピオンを獲得したレッドブル時代からフェラーリ前期の頃であり、2014年のリカルドに大敗したシーズンは不思議と鬼門であったことがわかります。2014年はパワーユニットも大幅に変わり、走りをアジャストするのに苦戦したか。

《ドライバーズランキング》
今回は最後にドライバーズランキンググラフを持ってきました。正しくベッテルのバイオリズムがわかりやすいまでに表現されています。
IMG_6738
こちらも先程みた予選、決勝戦績のプロットに近いカーブを描いています。2014年の失意から立ち上がれるのかどうかにも当時注目されましたが、フェラーリに入ってもランキング上位に復帰しています。ただタイミングがよくなかったのか、新マシンレギュレーションのタイミングを謳歌したメルセデスの壁を破るには至らず、晩年はまるで別人かのように若手に前をいかれるキャリアとなりました。キャリア序盤のインパクトが強過ぎて、そのインパクトが「ベッテル」だったのかもしれません。
IMG_6686
ベッテルのF1キャリアにおける、トップドライバー達とのランキンググラフはこうなります。ベッテル自身もその恩恵を受けた一人ともいえますが、近年はマシン依存度が高く、ドライバーのセンスや腕だけではなかなか上位キープは難しく、ある一定のドライバーやチームが勝ち続ける傾向にあります。ベッテルはいいタイミングでレッドブルに移籍を果たし、またマクラーレンで苦しむハミルトンはいいタイミングでメルセデスに移籍し、成功しています。2回目のチャンスをもぎ取ず苛立ちを随所にみられたベッテルではありますが、強いていうならば、ちょうど入れ替わりでF1を去った母国の巨匠M・シューマッハに代わってドイツF1の顔としてトップを繋ぎ止めることができたことは、シューマッハにとっても誇らしい結果と思っているのではないでしょうか。
IMG_6736

IMG_6734
ここまでベッテルのF1に関する戦績盛り沢山でまとめてきました。ベッテルのいないF1はどこか物足りなさや寂しさがありつつも3戦が過ぎ、不思議なもので徐々に慣れてきました。ベッテルは当時miyabikunが応援していたライコネンが腑抜けになりつつある2008年から2009年頃に活きのいい若手がいると、ファンを乗り換えチャンピオン獲得前から注目したドライバーでした。miyabikunとしては初の「自身より歳の若いのドライバー」のファンだったわけですが、ベッテルがチャンピオンを連覇した以降は特定の誰かを応援するということから離れたため「最後の推しドライバー」だったように記憶しています(以降もクビアトやノリスに期待した、みたいなことはありますが)そんなこともあり、複数回天下を獲ったとはいえ、常にF1シーンにいたライコネンに続いてベッテルまでもが居なくなると思うと、また一つの時代に終わりを感じてしまいます。
ベッテルがドライバーとしてF1に復帰することはないと思いますが、将来もしかしたら違った形でF1の世界に戻ってくるかもしれません。若くしてF1を席巻した「希少なドイツの星」は人生の半分近くをF1に費やしてきました。ゆっくり休息し、またいつか少年のような屈託のない笑顔を見られる日が来るといいなと思っています。
IMG_7410
シーズンオフの間にゆっくりと特集を組めず、こんな時期まで引っ張ってしまってごめんね。16年間のF1キャリア、お疲れ様でした。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

アブダビGPがシーズンの終わり。好き嫌いはさておき、近年はすっかり定着しましたね。今回振り返るのは先日のブラジルGPの続き。今から12年前の2010年最終戦アブダビGPです。アブダビでのF1開催は2回目。この前振り返ったブラジルGPの勝者とポイントランキングは覚えていますか?!このシーズンは最終戦まで、それも近年では異例の三つ巴ならぬ「四つ巴」で最終戦までドライバーズチャンピオンを競っています。
FullSizeRender
前戦ブラジルGPまでのランキングを今一度おさらいしておくと、3回チャンピオンをかけるフェラーリのアロンソがトップの246ポイント、2位は獲れば初戴冠となるレッドブルのウェバーで238、前戦ブラジルGPを制して波に乗るレッドブルのベッテルは3位231、そして2年前のチャンピオンであるマクラーレンのハミルトンが222となっており、数字上チャンピオン獲得可能なのはこの4人に絞られています。このシーズンより優勝者に25ポイント付与されるようになりましたので、トップのアロンソは2位以上で無条件のチャンピオン獲得、以下は優勝かつアロンソの順位に委ねられています。またハミルトンに至ってはアロンソとのポイント差は24もあるため、上位3人が優勝以外のポイントを得ても負けるという絶体絶命状態で2回目を狙います。
IMG_7304
そしてこのレースで忘れてはならないのが、我が日本ブランドであるブリヂストンもF1参戦最終年を迎え、以降はご存知の通りのイタリアのピレリのF1復帰ワンメイクに移行することとなります。ブリヂストン時代も多くのドラマを生み、2005年にはミシュランが白旗を揚げたアメリカGPでもしっかり適応してきたレースが印象的でしたね。

IMG_7306
予選はフリー走行からベッテルが好調、その勢いのままポールポジションを獲得。2番手は立場上一番不利なハミルトン、逆に最も有利な立場にいるアロンソは3番手。そしてアロンソの前でのフィニッシュが必要なウェバーはチャンピオン争いから脱落したマクラーレンのバトンを挟んだ5番手に終わっています。ザウバーから参戦の日本代表、小林可夢偉は相方ハイドフェルドを上回る12番手を獲得しています。
FullSizeRender
前戦ブラジルGPで初のコンストラクターズチャンピオンを獲得し、2人のドライバーズチャンピオンの権利を有する代表のホーナーはウェバーとベッテルを公平に扱うことを宣言。チャンピオンになりたければ、自力で獲らなければなりません。
FullSizeRender
先代の最年少チャンピオンと当時の最年少チャンピオンを両側に従えるベッテル。初かつ最年少チャンピオン獲得なるか?!
FullSizeRender

《予選結果》
P.P. S・ベッテル (レッドブル・ルノー)
  2 L・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)
  3 F・アロンソ (フェラーリ)
 ※タイヤはブリヂストンのワンメイク

IMG_7317
スタートはベッテル、ハミルトンのフロントロウは順調に発進したものの、3番手アロンソの前には4番手バトンが割って入っています。バトンにとってはチャンピオン争いに関係無くなりましたが、自身の順位によってチャンピオンが左右されるという意味で気を遣います。一番はチームメイトのハミルトンのためになることか。
IMG_7312
FullSizeRender
中団ではメルセデスワークスで8番スタートとなった復帰1年目のシューマッハがターン6手前でスピン。
IMG_7318
16番スタートのフォースインディアのリウィツィが避け切れず、シューマッハ様に乗り上げる。ハロがほしくなるヒヤヒヤもの。トラック上でこんなド派手なクラッシュがあれば、当然セーフティカーが発動されます。
IMG_7316
比較的下位のチーム数台がこのタイミングで早くもプライム(ハード側)タイヤに履き替えています。2台目に見える黄色いルノーのペトロフがこの後思わぬキーマンになりますので、覚えておいて下さい。

FullSizeRender
6周目にレース再開すると、5位走行中のウェバーがタイヤへの不満を漏らし、翌12周目にオプション(ソフト側)タイヤを捨て、プライムタイヤに履き替えています。
FullSizeRender
タイヤ交換後のウェバーはまずまずのペースで走れるようになり、アンダーカットを嫌ったアロンソは16周目にまだ使い切っていないオプションからプライムに合わせ込む。
FullSizeRender
ウェバーのアンダーカットは回避したものの、下に黄色いルノーのペトロフが見えます。そう、ペトロフは格下の若手ではありますが、同一周回ですから、もちろん青旗無しの自力でパスするハメになります。
IMG_7331
アロンソはペトロフとの間合いは詰めてもなかなかパッシングに至りません。トップのベッテルとの差が気になり焦る。
IMG_7332
パッシングを試みてはみ出す。チャンピオン獲得に有利な状況から一転。ちょっと余裕が無くなってきました。

FullSizeRender
上位は24周目にハミルトン、25周目にベッテルがオプションからプライムに履き替え、バトンに至っては55周レースの40周目までオプションを引っ張っています。残り15周を硬い側のタイヤで走るなんて、もったいない(笑)

FullSizeRender
34周目にベッテルはファステストラップをマーク。一方でアロンソはまだペトロフを抜けず。ウェバーを従えてはいるけど、現在のトップはベッテルであり、レース後半でアロンソは未だに10位。これは本当にヤバいぞ。
IMG_7345
アロンソはまたはみ出す。まさか余裕こいてウェバーに合わせ込んだばかりに、こんな状況に陥るとは。。
IMG_7343
ベッテルは2位のハミルトンに徐々に詰められてはいるものの、残り5周で9.5秒のギャップを有しています。まさにクルージング状態。

FullSizeRender
まずはベッテルがアブダビGPを制し、自身のやれることは達成しました。残るはアロンソとウェバーの順位次第。どうだ?!
IMG_7347
アロンソはまだペトロフの後ろ6位、ウェバーはその後ろの7位フィニッシュ。ということは、、?!

IMG_7349
《決勝結果》
 1 S・ベッテル (レッドブル・ルノー)
 2 L・ハミルトン(マクラーレン・メルセデス)
 3 J・バトン  (マクラーレン・メルセデス)

IMG_7350
ベッテルは256ポイント、アロンソは252ポイントに止まったため、ベッテルがランキング3位からの大逆転チャンピオン獲得となり、レッドブルは初のダブルチャンピオンを獲得したのでした。
IMG_7354
ベッテルはご存知の通り、この後の13年までの4年間は絶対王者として君臨したわけですが「誰でも勝てるチートなマシンでポールトゥウィンにより築いたもの」と評されることがあります。ただ常に最速マシンで獲得し続けられたわけでもなく、特に初年の2010年はライバルが手強く、最終戦までもつれるなど決して簡単なものではありませんでした。現にチームメイトのウェバーは一度も獲得できない結果に終わったわけで、これはマシンだけでなくチーム力、チーム内での序列、そして何よりもベッテルの若き才能とそこからの鍛錬によってもたらされた時代でした。

IMG_6542
多くの最年少記録を塗り替えてきた神童ベッテルも今週末のアブダビGPでいよいよF1のステアリングを置き、また一つの時代が終わりを迎えます。中堅のマシンながら奮闘している姿をみれる最後のチャンスですので、しかとラストランを目に焼き付けておきたいですね。
FullSizeRender
この方のその後はマシンの色を赤や黒、青から新たに緑に変え、飽くなき挑戦はこれから先も続きます。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

今日のmiyabikunはブラジルを前に山梨の甲府にいます。お昼過ぎに山梨リニア実験線に行き、夕方は富士急ハイランドをバックに雪化粧を始めた富士山を眺めて、、
IMG_5481
ほらね!って、、ウソウソ!遊びに来ているのではなーい!これも仕事!毎年この時期に山梨に来るのが慣例になっているのです。山梨を終えたらすぐにブラジルへ向かいますよー。またネムネムウィークか。。

今回振り返るのは今から12年前にあたる2010年第18戦ブラジルGPです。2010年の振り返りは7回目、ブラジルGPは11回目となります。何気にブラジルGPも多くやっています。まだまだ振り返っていないブラジルGPはたくさん控えていますから大丈夫!2010年は前年2009年に迎えたエアロダイナミクスの大幅削減に加え、フロントタイヤ幅の縮小、レース中の再給油禁止とそれに伴う燃料タンク拡大によるホイールベースの延長、車体重量増、タイヤウォーマーの規制など、それまでのマシンとはまた異なるディテール、規制が加えられました。さらにはポイント付与も優勝が25ポイント、10位フィニッシュまでが入賞となる現ポイント制の初年でもあります。
ここまでの17戦は5勝を挙げて231ポイントを得ているフェラーリのアロンソがランキングトップ。ランキング2位はレッドブルのウェバーで4勝の242ポイント、以下マクラーレンのハミルトンが3勝の240ポイントで3位、レッドブル2年目のベッテルは3勝を挙げ206ポイントの4位、マクラーレンのバトンは2勝でポイント189の5位につけており、この5人からのみの優勝とブラジルGP段階でのチャンピオン獲得の権利を有しています。残るはブラジルと最終戦アブダビの2戦。非常に熾烈。

予選時には雨は降っていないものの、それまでの雨により路面は濡れ、予選はインターミディエイトタイヤで進行していきます。
IMG_7105
ところがQ3に入ると徐々に走行ラインが乾き始め、インターミディエイトからドライへのクロスオーバーの見極めが求められるようになります。
IMG_7107
残り5分でルノーのクビカを皮切りに緑ラインの施されたドライのオプション(ソフト側)タイヤを履きトラックイン。
FullSizeRender
残り15秒でフェラーリのアロンソがハミルトンを上回り暫定トップに躍り出ると
FullSizeRender
何とF1デビューイヤーで18戦目を迎えたウィリアムズのヒュルケンベルグがアロンソを上回りトップへ。
FullSizeRender
その後はハミルトンもアロンソ超えを果たすもヒュルケンベルグに及ばず、勢いに乗るドイツの若手、ベッテルもヒュルケンベルグを超えることができません。まさか、まぐれ?!
FullSizeRender
まぐれだなんて失礼な!ヒュルケンベルグの快走はまぐれではなく、時間いっぱいで挑んだラストアタックで自身のベストをさらに更新。文句無しの100%でポールポジションを自身の手中におさめるのでした。
IMG_7121
若くて可愛いですね。あたかも優勝を祝うかのような盛り上がりです。それも無理はありません。名門ウィリアムズにとって、このポールポジションは2005年第7戦ヨーロッパGPのハイドフェルドが獲得して以来の5年振り。ヒュルケンベルグは当時歴代で6番の若さ、参戦18戦目での初ポールポールポジションは歴代36位の早さであり、アロンソやベッテル、その後のルクレールよりも早い記録なのですから(ちなみにハミルトンは参戦6戦目)
唯一の日本人ドライバーである小林可夢偉はこの年ザウバーから初フル参戦を果たし、予選12番手。デ・ラ・ロサからスイッチしたベテランのハイドフェルドの16番手に対してしっかり勝ち越しています。絶賛成長中。

《予選結果》
P.P. N・ヒュルケンベルグ
 (ウィリアムズ・フォードコスワース)
 2 S・ベッテル
 (レッドブル・ルノー)
 3 M・ウェバー
 (レッドブル・ルノー)
 ※タイヤはブリヂストンのワンメイク

IMG_7123
ドイツの若手2人が堂々とF1の頭に並んで迎えたスタート。ヒュルケンベルグよ、予選はよくても肝心なのは決勝ですぞ!まずまずの蹴り出しをみせ、イン側の同郷を追い詰めつつも
IMG_7124
2番手ベッテルがそのまま下りながらのターン1でインを獲り、一瞬にして順位が入れ替わります。ヒュルケンベルグも成長中ならベッテルも成長中。伊達に8勝を挙げていません。
ベッテルと同じマシンをドライブするウェバーも負けていられない。何せポイントランキングはベッテルより上をいっています。
IMG_7127
ストレートでアウト側に振るウェバー。
IMG_7128
左のターン4「クルヴァ・ド・ラゴ」で一瞬前を譲ったかのように見せかけておいて
IMG_7129
アウトにはらんだヒュルケンベルグをすんなりパス。職人業。これで早くもレッドブルがワンツーに。
IMG_7135
ハミルトンのミスから4位に浮上しているアロンソは7周目のヒュルケンベルグに対して先程のウェバーと同じシチュエーション。
IMG_7136
アウトからターンインし、
FullSizeRender
インに抜けてヒュルケンベルグをパス。アロンソも久々のチャンピオン獲得がかかる大事なレースですから、あまり構ってもいられません。ヒュルケンベルグはこれで学習できたかな?!
IMG_7138
11周目に今度はハミルトンがやってきたぞ。ヒュルケンベルグ、さっきと全く同じだよ?!
FullSizeRender
おー、そうそう!インをしっかり閉めて、それが正解!インプットとアウトプットは完璧。

FullSizeRender
チャンピオン争いをしている上位が着実に順位を上げる中、母国の予選9番手とややしょっぱい位置でくすぶるマッサは13周目にプライム(ハード側)タイヤに履き替えています。でも、
FullSizeRender
え、今のタイヤ交換、ダメじゃね?!
IMG_7143
翌周に再びピットインを行い、ダメなのはそこだよそこと問題の右フロントを付け直し。フェラーリマジックに陥って23番手で復帰しています。散々たる母国GP。フェラーリは今も昔も変わらないでしょ(笑)
FullSizeRender
土曜の予選は夢のような華々しい結果をおさめたヒュルケンベルグは15周目にタイヤ交換を行い、14位まで転落。結果的に8位入賞でブラジルGPを終えています。大丈夫、その成長っぷりでいつかはきっと表彰台に登れるはずだから。

FullSizeRender
トップ争いに目をやると、ベッテルは26周目にタイヤ交換を終え暫定2位に下がり、翌27周目に暫定トップのウェバーの番となります。フェラーリと比べると、レッドブル2台はだいぶオプションタイヤを保たせましたね。
FullSizeRender
ウェバーがタイヤ交換を終えた頃、ベッテルは本線側の似たような位置関係にいます。当然速度差がありますから、合流すれば
IMG_7152
こうなります。ウェバーはオーバーカットならず。

レース後半の49周目にフォースインディアのリウィツィがエス・ド・セナで単独クラッシュを起こし、セーフティカーが発動されても
IMG_7156
順位はそのまま変わらず。トップ争いだけでみれば正直面白みに欠けますが、スタート直後にトップに立ったベッテルはその勢いのままトップチェッカーを受け、ポイントランキング2位とランキングトップとはこの差。
ほか、ザウバーの小林はギリギリの10位入賞を果たしています。

《決勝結果》
 1 S・ベッテル
 (レッドブル・ルノー)
 2 M・ウェバー
 (レッドブル・ルノー)
 3 F・アロンソ
 (フェラーリ)

IMG_7157
そう。このレースでワンツーフィニッシュしたレッドブルは初のコンストラクターズチャンピオンを獲得しました。2005年のチーム創設から6年目にしてトップチームに名を残した瞬間となりました。また、このレースによりドライバーズポイントは3位フィニッシュのアロンソが246、2位フィニッシュのウェバーはランキングもそのまま2位の238で優勝したベッテルがランキング3位となる231に変わって最終戦アブダビGPに向かいます。今でこそこの年のチャンピオンが誰になったかは周知の話ですが、ベッテルの初戴冠は波いる先輩を少しずつ切り崩した結果もたらされたものなんですよね。
IMG_7162
FullSizeRender
そうそう、先生は2005年にバカっ速だけど急に果てちゃうか弱いマシンを造ってしまい、悔しい思いをしましたもんね。そろそろ先生の苦労も報われるカナ。それにしても先生はいつの時代を見ても変わらんな(笑)

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

マクラーレンに続いて見ていく2022年型新車は同じくメルセデスパワーユニットを搭載するも、昨シーズンは正直期待外れの結果で終えた「アストンマーティンAMR22」です。

《設計》
 アンドリュー・グリーン
 羽下晃生
 イアン・ホール
 サイモン・フィリップス

《外見》
新車発表会でのアンドリュー・グリーンのコメント
「2022年マシンは2021年マシンから引き継がれる
 部分は非常に少ない」
「このレギュレーションの最適解は誰も知らない。
 それはチャンスでありチャレンジでもあるが、
 開発コストの上限値や空力開発には規制がある」
「厳しい規制の中、このマシンは初めの開発であり、
 今後は走行を繰り返して改良し、2023年以降の
 方向性となる」
 (一部省略、抜粋)

これをを聞いた時、ごもっともではありながらも開幕前から早くも消極的な印象を受けました。今年もイマイチなのかな。ではその「初めの開発」見ていきましょう。
FullSizeRender
アストンマーティンのカラーリングは目立たないし地味という声をよく聞きますが、miyabikunはオトナな感じが好きです。一番好きかどうか問われたら迷うところですが、停まっている時が特にシブい。ただ昨シーズンはレースシーンになると、メルセデスと区別がつかなくなることがありました(走行している順位で大方の判断はできちゃいますが)今シーズンはメルセデスがシルバーに戻したこと、さらにワンポイントで使っていたピンクのラインを黄緑色(黄色?miyabikunは色盲なので繊細な色の違いに自信が無い)に変えたことで、ほんの少し明るいイメージで、区別もつきやすくなったかなと思います。
FullSizeRender
フロントセクションをみると、ノーズはマクラーレンよりもやや細めではありますが、フロントウィングの取り付き方はマクラーレンと同じ上から3枚目で、最下段が最先端となるしゃくれ形。フロントサスペンションはプッシュロッドを採用しています。
IMG_3817
AMR22に下目遣いされると、ノーズコーンおよびフロントウィングの中心付近が結構上がっていることがわかります。前回見たマクラーレンはここまで上がっていなかったような。。前方の気流をフロアの下へ下へと欲しがっているかのよう。欲しがり過ぎて、跳ね馬の如く上下にピッチングしたり浮き上がったりしないようにね(笑)併せてサイドポンツーン開口も見てしまうと、外側は黒で塗られつつも、実際の開口は真四角です。ほぼ正方形。そして案外小さい。マクラーレンとの違いはフロントサスペンションの関係?!プッシュロッドを選択した他全車とは言いませんが、今後見ていくライバルも似たような形状をしています。
IMG_3814
この角度からのAMR22はシブくないですか?!ラインに沿って開口下のえぐりもなかなかエグいです。腰のベルトを思い切り締めてグラマラスにも見えるこのマシン、見る角度によって様々な表情というか「顔」をしています。上からみると、、
FullSizeRender
でっぷり!あ、子供の頃コレに似た虫を捕って虫かごに入れた気がする!しかもこの虫は「背中からラジエターの呼気をエラで」吐き出す品種なのか、なんて(笑)目を見張る数と長さのルーバーを備えていますね。何とも個性的。マクラーレンと同じパワーユニットを搭載しているわけですが、開口下の絞りはキツいのに後方にかけては落ち込みも少なく意外となだらか。考え方が異なります。このルーバーをライバルが今後追従するのか、はたまたAMR22が意味無しとして埋めるのか。これは先程のアンドリュー・グリーンの導き出した解答によりますね。このマシン、本当に大丈夫かな。。

FullSizeRender
《シャシー》
 AMR22
 全長:  - mm
 全幅:2,000mm
 全高:  - mm
 最低車体重量:795kg?
 最大燃料搭載量: - kg
 ブレーキキャリパー:ブレンボ
 ブレーキディスク、パット:
 サスペンション フロント:プッシュロッド
          リヤ :プルロッド
 ホイール:BBS
 タイヤ:ピレリ

FullSizeRender
《エンジン》
 メルセデスF1 M13 E Performance
  V型6気筒・バンク角90° シングルターボ
 排気量:1,600cc
 最高回転数:15,000rpm(制限)
 最大馬力: - 馬力(非公開)
 燃料・潤滑油:ペトロナス
 
IMG_3806
《ドライバー》
 No.5   セバスチャン・ベッテル(ドイツ)
 No.18 ランス・ストロール(カナダ)

ドライバー2人は昨シーズンと変わらずです。昨シーズンはこのブログの各種記載、データはチームの先輩であり、父が加担していることもあって、ストロール、ベッテルの順で表現していました。しかし結果的にはベッテルが表彰台登壇を含む、ポイントランキングも上位で終えたため、今シーズンはベッテルを前にしていきます。パパに訴えられそうになったら急いで戻します(笑)
一昨年は落ちるところまで落ち、暗黒キャリアを経験したベッテルはどうにか無職を免れ、中堅のアストンマーティンに拾ってもらうことができました(思い起こせば2020年のベッテルはフェラーリながらランキング13位、現同僚で当時はレーシングポイントだったストロールの11位にも負けていたんですよね)ベッテルも昨シーズン移籍組の一人でしたが、シーズン前半にコツを掴んで2回の表彰台(うちハンガリーGPの1回は幻)フィニッシュしたわけですから、さすが4回チャンピオンという結果を残しました。ただベッテルの特徴でもある「予選一発の速さ」はみられず、決勝レースは下位スタートを強いられていました。こればかりはベッテルのセンスではどうしようもできない、マシンの仕上がりにも原因もあるといえるのでベッテルを責めるわけにはいきません。また近年しばしばみられる決勝レースで突発的に起きる「発作」はアストンマーティンに移籍しても抜け切れていない様子。F1を離れた時の言動は非常に紳士かつユーモアに富んだいい人なのに、ひとたびレースとなると「もう一つの顔」ともいえる別人格が姿を表します。ベッテルについては、F1で既に大成功を収めたドライバーですし、近年著しい若手の台頭もあって、今更チャンピオン云々にこだわる必要もありませんが、せめて若手の模範となる走り、決勝での底力を知らしめてほしいと願うばかりです。最近のキャリアはお友達のライコネンをトレースしてしまっているように感じます。いくら仲良くても、そこは真似しなくていいんだよ(笑)
昨シーズンのちゃまは全く存在感がありませんでしたね(笑)もちろん今のF1には欠かせない「人材」ではありつつも、金がありゃ何でもいいわけではありません。一時期は成長もみられてイイ感じだったんだけどなぁ。若いとはいえ、ストロールも今や表彰台登壇歴もある中堅ドライバーの一人。何事も無ければこの先も長くF1をドライブできるはずで、今まで先輩と組む機会の多かったストロールもいずれはベテランと呼ばれる時代を迎え、若手をチームメイトに組むことになります。チームメイトとガチャガチャやるのではなく、いいところを盗み、吸収して熟してほしいと思います。

今日は仕事で東京の青山の「あるショールーム」の前を通り過ぎる機会があって、これはチャンス!と思ったのですが、、あまりの人だかりにビビって止めました。miyabikun、仕事中仕事中!(笑)

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

FullSizeRender
去る第6戦アゼルバイジャンGPでは、今シーズン移籍を果たしたレッドブルのペレスの優勝、同じくアストンマーティンに移籍したベッテルも久々の2位表彰台を獲得するという結果に終わりました。今シーズンは昨シーズンからいくつかのチームでドライバーの移籍があり、そのドライバーがことごとく成績不振となっていることが取り沙汰されていますね。今シーズンも予定から場所を変えるなど工夫して何とか6戦を終えることができましたが、次のフランスGPまで少し時間がありますので、移籍のあったチームのドライバー達の戦績を比較し、チームメイトとどの程度差がついているものなのか、いつものグラフを使いながらまとめてみました。

《移籍ドライバーのチームメイト対決》
まずは移籍を伴った4チームの予選、決勝のチームメイトの勝敗をグラフで示しました。アルピーヌのアロンソも2年振りとなるF1復帰であり、チームメイトのオコンとの差も話題となっていますが、今回は「現役で移籍したもの」を対象としているため、本検証からは除外しています。
IMG_0031
IMG_0030
上から昨シーズンのコンストラクター順(レッドブル、マクラーレン、アストンマーティン(旧 レーシングポイント)、フェラーリ)で並べ、グラフ左側が昨年から引き続きドライブする者(以下「継続ドライバー」)、右側が今年移籍してきた者(以下「移籍ドライバー」)で揃えました。ざっと見る限り、中には6戦で3勝となるドライバーはいるものの、勝ち越している者はおらず、まんまと移籍ドライバーは継続ドライバーにやられてしまっています。ココが世に言う「移籍ドライバーが苦戦を強いられている」というイメージを持たれている根源です。
興味深いのはチームでは先輩にあたる継続ドライバー達よりも移籍ドライバーの方がF1キャリアは全チームにおいて上であること。マクラーレンのリカルドは優勝経験もあるベテラン、アストンマーティンに至ってはご存知の通り4回のチャンピオンを獲得したベッテルです。レース数や戦績豊富なドライバーであっても、よくてイーブン、ほとんどが完敗してしまうのですから、そんなイメージを持たれてしまうのも仕方がないところです。

《開幕前合同テストの走行距離》
今シーズンはバーレーン国際サーキットで行われたシーズン開幕前の合同テストが3日間に短縮され、さらには各GP金曜日、土曜に設定されているフリー走行も時間短縮が導入されました。これもまたベテランの移籍ドライバー達の手を焼く原因とされています。そこで先日もみた合同テストでの各対象ドライバーの走行周回数を振り返ってみます。
IMG_0033
マクラーレンのリカルドを除くと移籍ドライバーよりも継続ドライバーの方が距離は稼げています。合同テストについてはいつもながらチームやドライバー毎にテストプログラムの差やトラブルなどがあるわけで、一概に比較できるものではありません。ベテランとはいえ、本来であれば不慣れなチーム、特性の異なるマシンで距離を稼げておきたいところが、逆に稼げていないという状況で開幕してしまったのはやはり辛いでしょうし、今シーズンから適用されたレギュレーションを恨みたくなってしまいますよね。

《予選、決勝順位のチームメイト比較》
ここからは先程のチームメイト対決をもう少し掘り下げ、GP毎に予選、決勝の順位で比較したいと思います。4チームをまとめて表現しても良かったのですが、描いてみたところ煩雑になってしまったため、細かくチーム単位で分けて表現しました。似たようなグラフが沢山続きますが、ご理解のほどお願いします。
平均順位は順位そのものを単純に平均化していますが、決勝については完走扱いの順位を含めmiyabikunお得意の「リタイヤ(および不出走)は最後尾20位扱い」として算出しています。リタイヤはこの6戦8人の中では2回だけ、第5戦モナコGP決勝のルクレールと第6戦アゼルバイジャンGP決勝のストロールのみであり、ストロールと同じくタイヤバーストしてリタイヤしたフェルスタッペンは記録上「18位完走扱い」となっています。

〈レッドブル・H〉
           予選平均  決勝平均
 フェルスタッペン   2.33    4.33
   ペレス      6.83    5.00

今シーズンは近年で久々にチャンピオン獲得の可能性を秘めているレッドブルです。ペレスは昨年メルセデスパワーユニットを搭載するレーシングポイント(現 アストンマーティン)から、パワーユニットも異なればマシンも一癖あるレッドブルに「塾生以外」からの移籍を果たしました。ベッテルでのチャンピオン獲得以降はフェルスタッペン好みのマシン造りや体制に向いており、白羽の矢が立ったペレスも初ドライブから操作や慣れに時間がかかるなどの発言もありました。
IMG_0022
IMG_0018
ここまでの6戦は予選、決勝とも当然ながらフェルスタッペンが充実しており、予選においてはいずれも3番手以内、決勝も第5戦モナコGPまでに2勝含めた5連続表彰台を記録するなど、チャンピオン争いのトップに立っていますね。一方でペレスは開幕戦で予選Q2敗退の11番手、決勝は盛り返すも5位止まり。第2戦は予選でフェルスタッペンを上回る2番手を獲得するも、決勝は濡れて荒れたレースとなり3番手から優勝を挙げたフェルスタッペンに対して11位入賞圏外で終えるなど、まだまだ安定しない序盤を過ごしています。結果的にペレスがフェルスタッペンよりも高順位で終えたのは第2戦の予選と先日のタイヤバーストを食らって順位を下げ、代わりに優勝を手にした第6戦決勝のみとなっています。第6戦の予選こそQ3下位の7番手(スタートは6番手)に沈んだわけですが、決勝では早い段階で一台ずつ丁寧にかわして3位まで浮上し、ハミルトンをピットでかわしてからは巧みなブロックを使って「鉄壁」を築きました。元々ペレスは予選よりも決勝の粘り強さに定評のあるドライバーですから、ようやくマシンに慣れて「自分のマシン」として乗りこなせるようになったように感じます。

〈マクラーレン・M〉
           予選平均  決勝平均
  ノリス          6.83    4.67
 リカルド        10.00    8.17

マクラーレンは後に出てくるフェラーリへ移籍を決めたサインツに代わって、リカルドがルノー(現 アルピーヌ)から移籍してきました。パワーユニットはルノーからメルセデスに替わったわけですが、この点については相方の先輩でありF1後輩のノリスも同条件であり、パワーユニットに合わせたマシン改良を施したことで昨年まで復調傾向にあったチームの勢いがどうなるのかにも注目が集まりました。
IMG_0021
開幕前の合同テストではノリスよりも距離を延ばし、マクラーレンでは先輩だけど所詮ノリスはまだF1で3シーズン目だもんね、とさほど不安視はしていませんでした。しかし蓋を開けてみれば腕を上げたノリスは昨シーズンの勢い止まらずに予選はこれまでの6戦全てでQ3に進出し、リカルドはノリスと近い位置ではあるものの、第3戦ポルトガルGPでのQ1落ちをはじめ、得意なはずの第5戦モナコGP、アゼルバイジャンGPでQ2落ちを連発してしまっています。
IMG_0017
また決勝も第2戦と第5戦で表彰台に登壇して全戦入賞を続けるノリスに対して、リカルドは入賞が精一杯であり、モナコGPでは入賞圏外の12位となるなど、なかなかリカルドらしい走りがみられていません。リカルドといえばタイトコーナー手前でビッグブレーキを踏んでパッシングする特技を持っていますが、まだマクラーレンではその様子はなく、むしろノリスの方がギリギリまでブレーキを粘り、スムーズな加速をしているといったデータもありました。シーズンはそろそろ中盤戦に入りますから、この状況はちょっと深刻かも。。

〈アストンマーティン・M〉
           予選平均  決勝平均
 ストロール       13.33     11.83
   ベッテル      12.17     10.50

レーシングポイントから色を変え名前を変え、往年のアストンマーティンの名(だけ)を手にしたローレンス・ストロールは息子の相方にペレスではなく、フェラーリから抜けたベッテルを選択。ベッテルは負のループからの再起、チームとしてはチャンピオン経験者でウィンウィンの関係を築きたいところです。合同テスト前までは評価や期待は非常に高いものでしたが、いざ合同テストを迎えるとテストとはいえトラブルを抱え走行距離を稼げず、何よりタイムが今ひとつに終わり、開幕前にしてかなり不安である状況が露呈されました。
IMG_0020
嫌な予感は的中し、予選はストロールが何とかQ3に辛うじて進出するも、それが精一杯で第3戦以降はQ2敗退が続いています。またベッテルはもっと深刻で開幕戦は何とQ1敗退の18番手、その後第3戦と第5戦で何とかQ3に進出していますが、基本はQ2止まり常連でフェラーリ時代から続く負のループからなかなか脱することができていません。
IMG_0016
決勝についてもストロールは波があり、第2戦と第5戦で8位入賞を果たしていますが、入賞圏外で終えることも多く、先日のアゼルバイジャンGPは逆ストラテジーを唯一採り入賞を目指すも、タイヤバーストに阻まれてしまいました。一方ベッテルは序盤はチャンピオン経験者の片鱗を微塵も感じないレースで「ベッテルはもうそろそろ限界か」なんて言う声もチラホラある中、第5戦モナコGPのピット戦略がさえ渡り5位入賞、続く第6戦もパワーとタイヤ温存が功を奏して久々の2位表彰台を獲得。レッドブル時代は「予選先行、決勝逃げ切り」で大成したベッテルは「決勝粘り勝ち」のスタイルを採り、再起に向かおうと必死に戦っています。

〈フェラーリ・F〉
           予選平均  決勝平均
 ルクレール      3.67    7.33
   サインツ        6.50    6.83 

昨シーズンは参戦10チーム中6位という地獄をみたフェラーリはベッテルを放出し、未勝利ドライバーながら多くのチームを渡り歩き、マクラーレンの復調に貢献した中堅サインツを起用。チーム期待の星ルクレールと共に近年珍しい「非チャンピオン経験者」で今シーズンに挑んでいます。ライバルからみたらパワーユニットのパワー不足、さらには我々素人F1ファンには想像できない「個性的な戦略」もあって、サインツのみならずルクレールをもダメにしないかという不安でしかない幕開けを迎えました。
IMG_0019
チームも重たい腰を上げ改革に臨んだわけですが、開幕してみると効果があったか無かったか、昨シーズンまでの不調を少し取り戻す形で「フェラーリにしてみれば好スタート」を切れている印象です。ルクレールは予選から速く6戦全戦でQ3進出を果たし2回のポールポジションを獲得するなど、メルセデス、レッドブルに続く3番手チームの地位を予感させます。サインツにおいてもマクラーレン時代から大きく順位を落とすことなく第2戦エミリア・ロマーニャGPの11番手以外の5戦はQ3に進出し、第3戦以降はスターティンググリッドで2列目や3列目は確実に獲ってくる安定感があります。
IMG_0015
決勝においてもサインツはルクレールに大きく劣ることなく、共に6戦中5回の入賞を記録。第5戦モナコGPではルクレールに悪夢がありましたが、サインツは第3戦ポルトガルGPの11位入賞圏外以降は調子を取り戻し、モナコGPでは2位表彰台を獲得してルクレールの分も奮起しました。トップ2チームはチーム内での優劣がみられますが、フェラーリは表彰台こそ一回キリなものの「2人揃って着実なポイントを得る」という流れが定着しつつあります。

《獲得ポイントのチームメイト比較》
順位も大切ですが、最終的にF1はドライバー、チームもどのくらいのポイントを稼げるかで勝敗が決まるスポーツです。こちらもチーム毎にいつものような尺度統一でグラフ化してみました。

〈レッドブル・H〉
IMG_0027
チャンピオンランキングトップを走るチームだけあってグラフは右肩上がり、と言いたいところですが、フェルスタッペンは先日の第6戦でのノーポイントの影響で連続ポイントが途絶え、スロースターターでありながらペレスの方が順調な右肩上がりとなりました。その成長と慣れもあって、ペレスはドライバーズポイントランキングでノリスを上回り、3位につけています。ドライバーズチャンピオンはともかく、コンストラクターズチャンピオンを獲得するにはペレスの存在と結果が求められます。誰とは言いませんが、昨年まではここまで力強い成績を出せておらず、今シーズン維持できているのは、堅実にポイントを稼ぐペレスの存在があってのことです。優勝まで経験したのだから、クセのあるマシンにはもう慣れたと考えていいのではないでしょうか。

〈マクラーレン・M〉
IMG_0026
レッドブルを見た後にこのグラフを見ると低迷しているようにも感じてしまいますが、ポイントランキングはノリスが4位、リカルドは10位に位置します。先程の決勝順位からもわかるように、ノリスは2回の表彰台を含め全戦で入賞していますので、ポイントグラフも右肩上がりです。一方でリカルドもポイントは加算していますが上位フィニッシュのビッグポイントがないため、上がり方は実にゆっくりとし、ノリスとの差は毎戦で広がってしまっています。普通の若いドライバー相手ならリカルドが本調子を出せばシーズン終了までに追い付き追い越すことも容易ですが、常に自分より上位フィニッシュを続けるノリノリなノリスはなかなか捕まえられそうにありません。

〈アストンマーティン・M〉
IMG_0025
紙の、グラフの無駄遣いみたいなグラフですね。このグラフはランキングトップを走るレッドブルのフェルスタッペンを上限値として作成した関係上、アストンマーティンのグラフは残念ながら地を這うような位置になってしまいます。開幕直後はストロールの10位入賞にはじまり、第2戦で8位と小さなポイントを稼いでいましたが、肝心のベッテルが第4戦まで入賞圏外フィニッシュだったためノーポイントが続きました。ところが一気に覚醒したか第5戦に5位、そして第6戦で2位を獲得したため、チーム内での形勢は一気に逆転し、ベッテルはリカルドを抜いて28ポイントのランキング9位に浮上しました。これぞ元チャンピオンの底力、ようやく「ベッテルの存在価値」が表れる形となっています。

〈フェラーリ・F〉
IMG_0024
ミスターF1の今シーズン序盤はポイントリーダーのちょうど半分の52。ルクレールとサインツを足して94ポイントとフェルスタッペンにちょっと届かない感じ。ちなみに昨シーズンは第6戦スペインGP終了時でルクレールが45ポイント、ベッテルが16ポイントでしたのでトータルは61ポイント。マクラーレン時代のサインツは23ポイントでしたから、ルクレールも飛躍、さらに失敗かとささやかれたサインツの移籍はひとまず御の字ということになりますね。非凡にポイントを稼ぐこの2人はエースのルクレールが先行しつつも、ここまでなかなか近接しています。最も近付いたのは奇しくも地元で悔しい思いをしたモナコGPでした。逃げるルクレールに追いすがるサインツの構図がいい相乗効果を生み出しているようにみえます。それも仲違いもないというのが観ているファンからしてもいいですね。

〈チームメイトのポイント差〉
最後は今まで見てきた4チーム2人のドライバーの獲得ポイントを差し引きしてグラフ化しました。継続ドライバーから移籍ドライバーを引き算することで「どちらのドライバーがポイント的に勝っているか」をみます。プラスであれば継続ドライバーが優勢、マイナス側であれば移籍ドライバーが優勢ということ。言葉では伝わりにくいかもしれないのでグラフをご覧下さい。
IMG_0032
今回は4本線なのでいっぺんに一つのグラフで示しました。レッドブルはフェルスタッペンの上位フィニッシュのため点差が大きく、ペレスがよくないように見えてしまいますが、あくまでペレスはランキング3位なので健闘はしています。アゼルバイジャンGPのノーポイントと優勝の差でペレスが25ポイント取り返しました。フェラーリは先程見たように両者が接戦しているため、イーブンの0からさほど遠くない位置を進んでいます。
一方で差が大きく出ているのはマクラーレンとアストンマーティンの2チームです。マクラーレンは毎戦のノリスの健闘でリカルドのポイントを打ち消してプラス側に突き進んでいます。残るアストンマーティンは当初ストロール優勢のまま進んでいたところが、ベッテル覚醒により一気にマイナス側へ転じ、19ポイント差となりました。こちらも先日のアゼルバイジャンGPでのノーポイントと2位表彰台獲得の差が大きく出ています。カーブ的にはベッテルがこのまま復調に向けてまっしぐらといきたいところですが、アストンマーティンはいわば「ストロールのチーム」ですから、チームとしては喜んでいいのやら、、ちょっとフクザツ。

IMG_0011
今シーズンの移籍ドライバーとチームメイトの差、位置関係を戦績、ポイントで比較してきました。継続ドライバーと共に切磋琢磨するドライバー、どんどん差をつけられるドライバーに逆転したドライバーと4者4様の内容で6戦を終えました。シーズンが終了まで優劣を示すことはできませんが、移籍ドライバー全員が劣勢にあるわけではなく、徐々に慣れたりコツを掴んで個性を出せていると思います。これからの活躍も楽しみですね。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ