今回はちゃんといつもの定義に戻り、2007年ハンガリーGPを振り返りたいと思います。BMWザウバーにレンタルされていたベッテルちゃんがこのレース前に解雇されたS・スピードに代わってレッドブル塾であるトロ・ロッソちゃんから正式にステアリングを握ります。今のフェルスタッペン並みにガキンチョです。
第11戦ハンガリーGPまで10戦を終え、ランキングトップは新人ハミルトンでデビューから優勝2回を含む9戦連続表彰台。チームメイトのアロンソが優勝3回7表彰台の僅差で2位となっておりチャンピオンは「強烈な新人」の後塵を拝す形で進行しています。

ダスティで低速コーナーが続くハンガロリンクはモナコ並みに追い抜きが容易でなく、予選位置がモノを言います。皆がクリアなラップと複数回アタックを狙って早い時間から積極的に出たいばかりにピット出口で並びます。その先頭は前戦ヨーロッパGPで「初の入賞圏外」を味わったハミルトンがアロンソを先行出発させる指示に従わず、アロンソより前、赤い停止線の前でオープンを待つ行動をとりました。勢い冷めやらぬ新人の暴挙です。

Q3の1回目のアタックは前がクリアなハミルトンが当然ながらトップタイムを叩き出し早々と2回目アタックに備えて出発。アロンソは2回目のアタックでチャンピオン貫禄のトップタイムを塗り替え、すぐさまハミルトンがアロンソを上回り実力伯仲、いやほんの少しハミルトンが優位に事を進めています。

こうなれば時間いっぱいの3回目アタックにかけるしかないと、タイヤ交換を終えていつでも出発可能なアロンソはQ3の残り1分48秒でゴーサインが下ります。
が、アロンソはなかなか出発しません。それどころか同じくラストアタックに臨みたいハミルトンが真後ろで待機するハメになっています。
残り時間1分38秒でアロンソようやく出発。ゴーから10秒待たされた後続のハミルトンに残された時間は1分20秒弱の周回で残り1分26秒しかありません。アウトラップからフルアタックでギリギリなタイミング。

ハミルトン、やっぱり時間足らず。残りコーナー2つのところでタイムアウト。一方アロンソは
ハミルトンを0.1秒上回るトップタイムでポールポジションを獲得します。この方は普通でいるだけでも名うての実力者なのにズル賢く、新人相手にもちょくちょくやり方がキタナい。

《予選暫定結果》
   1 F・アロンソ(マクラーレン・M)
   2 L・ハミルトン(マクラーレン・M)
   3 N・ハイドフェルド(BMWザウバー・B)
     ※BはBMW、タイヤはブリヂストンのワンメイク

ハミルトンとアロンソは目を合わさず、形式的に握手して称えますが、アロンソの背後でチームボスがソワソワ。アロンソ無視。反抗期の親子みたいだ。
この予選は周囲の皆が不審に思い、ロン・デニスとアロンソは会見に臨みます。
「エンジン温度の関係でハミルトンを先に出発させた」本当に?!ちなみにガソリン量はハミルトンがアロンソより1周長くアタックできる量を積んでいました。よって先に出発したハミルトンとアロンソのピットタイミングがズレています。これは意図なの?「誰かから」の圧力?!タイヤコンパウンドを確認していたと語る疑惑の張本人は「うちの子は腐ったミカンじゃないんです!」とでも釈明しているかの担任の隣でフルーツかじってます。
オフィシャルはピットに留まったアロンソにスポーツマンらしからぬ悪意があったとして、予選順位5番手降格、さらに混乱を招いたチームに「ハンガリーGPで得るコンストラクターズポイント無効」を言い渡す厳しい裁定が下りました。

《スターティンググリッド》
   1 L・ハミルトン(マクラーレン・M)
   2 N・ハイドフェルド(BMWザウバー・B)
   3 K・ライコネン(フェラーリ・F)


決勝のスタートはポールポジションとなったハミルトンは順調、2番手ハイドフェルドは3番手ライコネンに食われて順位を落とし、6番手降格スタートのアロンソもBMWザウバーのお友達クビカとレッドブルのウェバーに先行を許す8位まで順位を失います。バチが当たったか?!
序盤で5秒近いマージンを築いて逃げるハミルトンに周回毎に離されるライコネン。今とあまり変わらない絵面です(笑)

1回目ピットを同時に終えた2人は2スティント目で逆にハミルトンのペースが落ち、ライコネンが1秒まで詰め寄りますが、ポール・トゥ・ウィンこそハミルトンの真骨頂!話題性抜群の予選から打って変わって、決勝は「ハンガロリンクとハミルトンらしい」結末でハミルトンがシーズン3勝目をあげました。手抜きっぽいですが、決勝の内容は大して特筆すべき点はありません。気になるアロンソは4位止まり。
《決勝結果》
   1 L・ハミルトン(マクラーレン・M)
   2 K・ライコネン(フェラーリ・F)
   3 N・ハイドフェルド(BMWザウバー・B)

ブログでこの話題は何回も書いていますが、このシーズン最速はマクラーレンであったことは言うまでもありません。2回チャンピオンと超大型新人は名門マクラーレンをもってしても翻弄し、さらにらこのレース直前に行われたことが後に発覚する「スパイゲート」も取り立たされて莫大な罰金、コンストラクターズポイント剥奪、僅か1ポイント差でドライバーズチャンピオンまでも失うことになりました。

隣で知らぬ顔してフルーツをかじるアロンソを横目にチームボスがポツリと本音を語りました。
「戦闘力あるドライバーを扱うのは困難を伴う」
ジョイントナンバー1を高らかと掲げたボスはこの20年近く前も似たようなトラブルを招き、F1界を震撼させましたよね。それも今年で完全に「過去の人物」となりました。
苦悩し、いまだに速いマシンを求めてこの2人がまたコンビを組むのではないかという憶測や期待も多く飛び交っています。当人同様に苦悩するファンの方には申し訳ないですが、個人的にナシです。この2人は必ずぶつかります。ドライで清々しいバトルではなく、陰湿でグレーなトラブルが目に浮かんでなりません。