F1 えきぞーすとのーと

よくあるニュースネタやこ難しいテクニカルな話ではなく、メインは予選や決勝のTV観戦したそのものを個人的観点から綴るF1ブログです。  また、懐かしのマシンやレースを振り返ったり、記録やデータからF1を分析。その他ミニカーやグッズ集めも好きなので、それらを絡めつつ広く深くアツくF1の面白さやすごさを発信し、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

タグ:チーム初ポール

近年はハンガリーGPとベルギーGPの間に夏休みを設けるのが定例化してきました。ただしこの年までは少し異なっており、夏休み前はヴァレンシア市街地でのヨーロッパGPとベルギーGPで夏休みを挟んでいます。夏休みの宿題に追われるような時期を思い出させてくれる、2009年第12戦のベルギーGPです。
「裏技」を駆使し、また他の「裏技」は搭載せずにシーズン前半を席巻してきたブラウンGPのバトンは第7戦トルコGPを境にズルズルし出しました。代わって第8戦イギリスGPでベッテル、以前に振り返った第9戦ドイツGPはウェバーが勝利して、遅れ馳せながらレッドブルがブラウン狩りに転じています。こういう勢力変化は面白いですね。

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ベルギーはフリー走行から参戦2年目のフォース・インディアが2人共々イケイケです。36歳となった「オールドイタリアン」フィジケラがQ1でトップ通過、Q2で4番手通過と番狂わせの予感がします。
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何とアロンソ、ハミルトン、バトン、コバライネンらがQ2でアウト。あと残っている強豪?!フェラーリのライコネン、レッドブルの2人、BMWザウバーとトヨタあたりか。
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Q3の残り30秒でもトップに立つ。代走バドエルは使えず一匹狼ライコネンは3番手止まり。その後BMWザウバー2台がライコネン超えをみせるもフィジケラには届かず。
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同胞の予選屋トゥルーリもダメ。ということは?!
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やった!
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やったぁ!
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フォース・インディアとしては初、フィジケラとしては3年振り4回目のポールポジションを獲得しました。そして上位3人の顔触れがシブい。どこか似たニオイのする3人。残念ながら「金」は獲れなかったいぶし銀たち。

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《予選結果》
   1 G・フィジケラ       (フォース・インディア・M)
   2 J・トゥルーリ        (トヨタ・T)
   3 N・ハイドフェルド(BMWザウバー・B)
   ※Tはトヨタエンジン、BはBMWエンジン
      タイヤはブリヂストンのワンメイク

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ベネトン時代に1回、ルノー時代に2回のポールスタートの経験のあるフィジケラですが、日の浅いチームのポールスタートとなれば期待は大きくなります。スタートの価値と重要さを痛いほど知るベテランです。
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今回は14番手に沈んだランキングトップのバトン。序盤の勢いは何だったんだ?!当時は言えなかったけど、貯金しておいて本当によかったですね。
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バトンに相対して4番手スタートとなったバリチェロは大失敗。6番手のライコネンが瞬時にアウトへ転じて受け流す。
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2番手3番手のいぶし銀は狭いラ・ソースの奪い合いでタイヤスモークからの接触。関係ないねと4位を狙うべくまたアウト側「あさってのライン採り」をしています。
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これだけオーバーランしたら逆に潔い。全車でこんなにワイドに膨らむのもココくらいでしょうか。ふた昔前、かのマンセルは鋭角ラ・ソースで縁石のさらに外を大きく膨らむ「反則ライン」を編み出し、後輩たちはこぞって倣いました。距離は長くなるけど、速度低下は小さく済みます。後ろでガチャガチャやっている間にポールのフィジケラは逃げモード。
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ハイドフェルドに代わって2位に浮上したクビカに対して、ライコネンは早くも王道のケメルストレートで追い込みをかけます。
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レ・コームでライコネンが前を奪うと、その後がよくなかった。続く左のターン8でインをカットして失速、クビカの左フロントウィングを蹴り飛ばしています。ターン1といいライコネンらしくない乱暴さ。

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先頭集団も接触を繰り返す中、中団以降も荒れ模様でした。ルノーの若手グロージャンがまったりのバトンを押し出して、バトンが反転。
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その後ろでトロ・ロッソをドライブする2戦目の最年少アルグエルスアリはハミルトンを道連れにして、4台が一気にリタイヤすることとなりました。1周目から毎年何かが起こるスパ。
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早速セーフティカーの出番となり、頭一つ飛び出たフィジケラにとっては辛い状況となります。4周目にローリングスタート。
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オー・ルージュからピッタリ張り付くライコネン。前は予選で大注目されたフィジケラです。
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マシンカラーやチームは変われど、見覚えのあるバトルだ。フィジケラ4年前のデジャヴか?!
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ケメルの中腹で簡単にパス。フィジケラもここまでか。仕方ない、相手は何せKERS搭載の「スパ王」ですから。

ただ今日のフィジケラはそう簡単にくじけたりしない。2年目の中堅フォース・インディアを駆るベテランはトップチームのスパ王から離れません。14周目のピットイン1回目で合わせ込む。
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ピットアウトしてジワリジワリとギャップを削りにいきます。今日のフィジケラはいつものフィジケラとはちょっと違う。ライコネンに飛ぶピットからの指示を受け、フォース・インディアもスパ王狩りを諦めていません。
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23周目のケメルはギャップ0.8秒に迫る。今ならばDRSという裏ワザがあるのに、当時はまだありませんので、パワーがモノをいいます。フォース・インディアはKERS非搭載車。あるのは文字通りの「インドの力」と「フィジケラの経験」それだけ。

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30周目にライコネンが2回目かつ最期のピットに入りました。もちろんフィジケラは今回も合わせて離さない。どこかにチャンスがあると信じて「目の前の敵」だけをしっかり見つめる。
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トップ争いとは毎回タイミングをズラして上位を狙うレッドブルのベッテルに好転が訪れました。何と3位クビカの前に空間があります。ピットをミスしなければ、イケるぞ?!
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そこをしっかり押さえて「だらしの無い」ブラウンGPの居ぬ間のチャンスをしっかり取ってくる。こういう積み重ねが将来の大成に繋がる重要なファクターです。
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そうそう、ボクだってファステストラップも獲れるんだよ、と。

一方で予選惨敗、スタート失敗、1周目のもらい事故と散々たる内容となる「だらしの無い」方は?!
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ファイナルラップでバリチェロのマシンから白煙が見えています。1周が長く、上下にも左右にもクネクネなスパに耐えられるのか?!
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何とか7位入賞でフィニッシュ。よかったね、ウィニングランの無いスパで。山奥で燃えるのだけは避けられました。

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結局フィジケラは0.9秒遅れのままの2位。フォース・インディア初の表彰台を獲得しました。スパ王相手によくやりました。そしてこのレースを最後にフィジケラはフォース・インディアを後にし、負傷欠場のマッサ、不甲斐無い代走バドエルに代わって、たった今負かされたフェラーリに移籍して「F1最終章」を迎えることとなりました。

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《決勝結果》
   1 K・ライコネン(フェラーリ・F)
   2 G・フィジケラ(フォース・インディア・M)
   3 S・ベッテル    (レッドブル・R)

ライコネンのベルギーGPは2004年、05年のマクラーレン時代で2勝、そしてフェラーリ第1期の07年と09年で2勝、2019年現役ドライバーで最多となる計4勝を挙げています。歴代ではM・シューマッハの6勝、A・セナの5勝に続く数です。ハミルトンもベッテルも及ばない面白記録の一つ。ちなみにハミルトンとベッテルは現在3勝で続いているため、2人のうちのどちらでもスパ王に並びます。もちろんライコネンが勝てば、5勝目に到達します。可能性は極めて少ないけど、ゼロでもない。えっ、そんな数字なんて関係ないねって?!
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2009年シーズンのフェラーリは全17戦のうち、優勝はこのライコネンのベルギーGPたったの一つ。そしてライコネンのフェラーリ第1期の最終優勝でもありました。10年の時を経たフェラーリも今非常に勝ちに飢えています。そのベルギーGPは勝てる貴重な貴重なチャンスです。

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これはブラウンGPのリヤエンドです。ブラウンGPといえば、2009年シーズンに突如現れて終了と共に消滅した「いっときのチャンピオンチーム」でした。このチームとマシンの強さの要素はいくつかありますが、その一つは「ディフューザー」であることに間違いありません。開幕戦オーストラリア、マレーシアと2連勝。他の名門チームが苦しみ喘ぐ中、3連勝の期待がかかる2009年の中国GPです。

レギュレーションの拡大解釈により、ブラウンGPをはじめトヨタやウィリアムズら数チームはディフューザーを多段式にした「ダブル(マルチ)ディフューザー」が合法として認められ、このGPからこぞってライバル達も導入し始めました。
一方開幕戦からKERSを搭載してきたフェラーリは不調が続き、このレースはルノーと共に非搭載で臨んでいます。当時まだ未成熟なシステムでパワー増を取るかバランス重視の軽量を取るか悩ましい選択です。
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予選Q1でマシンに不調が現れたレッドブルのベッテルはQ2に進出するもタイムアタックに出られず、残り2分半で一回きりのアタックに賭けるしかなくなっています。
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ブラウンGPのバトンは開幕からの勢いそのままにトップタイムをマーク、それをレッドブルの「マーク」が上回り、ブラウンGPの流れを断ち切っていきます。
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それをベッテルが上回る。確実に一回で仕留めました。Q3に入ってもレッドブルがウェバーがトップに立つとバトンもバリチェロも上回れず。ベッテルが再び一発勝負でトップに立ち、レッドブルのワンツーかと思いきや、
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白いルノーのアロンソが割って入る。パワーで及ばないルノーエンジン搭載車が見事にメルセデスエンジン搭載車を上回る結果となっています。レッドブルもアロンソもこの速さの一つにある理由がありました。それにしてもこのルノーは白という膨張色もあってかあまりカッコよくはない。。
自身2回目、レッドブル初のポールポジション獲得を21歳のちゃんベッテルは無線でキャンキャン騒いで喜んでいます。この点は今でも変わりませんね。
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《予選結果》
   1 S・ベッテル (レッドブル・R)
   2 F・アロンソ (ルノー・R)
   3 M・ウェバー(レッドブル・R)
      ※タイヤはブリヂストンのワンメイク

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決勝スタートは雨が強く、セーフティカー先導でマッタリ始まります。ここで各車のスタート時の燃料搭載量が明らかになります。
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ブラウンGPを見事上回ったレッドブル2台はバトンより15kg少ない燃料で予選を挑んでいました。少しでもブラウンGPの前からスタートして逃げ切る目的だったか?!また 2番手を獲得したアロンソは全チームで最も少ない637kg。方やチームメイトのピケJr.は最も重たい698kgで17番手でした。量を積んでおけば1ピットストップの策略を立てることもできますが、R・ブラウンが策士ならばF・ブリアトーレもあらゆる手を考えます。ピケJr.をいざとなれば、、いやいや、いけませんね(笑)

逃げを打ちたかったアロンソは通常レース再開を無線でアピールします。しかしセーフティカーラン7周目にとうとう給油とタイヤ交換に。
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その直後アロンソにとってガッカリなインフォーメーションが流れます「SAFETY CAR IN THIS LAP」2番手スタートから一気に最後尾へ。せっかく企てた作戦が文字通りの「水の泡」に。タイミングって、難しい。。8周目から通常のレインレース再開となり、トップのベッテルはブラウンGP勢からかなりマージンを築いて15周目にルーティンピットへ。

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雨は視界がほとんどありません。予選6番手からいつも以上にズルズル後退しているトヨタのトゥルーリにBMWザウバーのクビカが乗り上げる。トゥルーリはリヤセクションを大破して終了。クビカはフロントセクションを大破しても何とかコース復帰していきます。クビカってクラッシュが毎回派手ですよね。バラバラになるまで壊してしまう。
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この影響で18周目に再度セーフティカー発動。バトンはこのタイミングで1回目のピットを済ませます。たかがピットストップ、されどピットストップ。

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トヨタはピットに秘策を講じてきました。フロントウィングを壊したグロックを待ち構えていたのは、フロントノーズキャリアー。
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前へスッとスライドさせて止めるだけ。これならばグラつかずノーズ交換可能です。潤沢な資金を持ったトヨタはトップチーム顔負けな取り組みが可能でした。何でこれ今使われないんでしょう、トヨタがパテントを持ってるのかな。

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37周目に2回目ピットを終えたベッテルはまだピットストップを控えるバトンを特に抜く必要がないのに抜く。BGP001の強みの一つはタイヤに優しいマシンであること。ただそれと引き換えに雨で路面が冷えてしまうとタイヤが発動しないことが弱点でした。こういうレースはレッドブルに分がありました。
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終盤にウェバーもバトンをコース上でパスし、レッドブルの初表彰台をワンツーフィニッシュで締めくくります。個人的にポールトゥウィンを好まず、今まであまり振り返らないできましたが、このレースはなかなか荒れる中、ブラウンGPに対抗すべく若いベッテルが徐々に実力を見出したレースとして印象に残っています。

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《決勝結果》
   1 S・ベッテル (レッドブル・R)
   2 M・ウェバー(レッドブル・R)
   3 J・バトン     (ブラウンGP・M)

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2018年シーズンは開幕2連勝して優勝回数を49に伸ばしたベッテルちゃんはこのレースが2勝目でした。初優勝は前年2008年の雨のイタリアGPを制してトロ・ロッソ初優勝、今回も雨の中国GPを制してレッドブルに初優勝を献上しています。2009年はその後もバトンが翌戦のバーレーンから4連勝を挙げてシーズンを逃げ切りチャンピオン獲得。ベッテルはこの年はランキング2位で終えるも2010年に一気に開花し、30代となった今もトップドライバーに君臨し続けています。

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