F1 えきぞーすとのーと

よくあるニュースネタやこ難しいテクニカルな話ではなく、メインは予選や決勝のTV観戦したそのものを個人的観点から綴るF1ブログです。  また、懐かしのマシンやレースを振り返ったり、記録やデータからF1を分析。その他ミニカーやグッズ集めも好きなので、それらを絡めつつ広く深くアツくF1の面白さやすごさを発信し、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

タグ:セナ

今回選んだ過去のレースは1988年第12戦にモンツァで行われたイタリアGPです。あーそれ知ってる!それって今話題のさあ、、、しーっ!!知ってる方、まだ答え言わないのー!そうですよ、皆さんが予想した通りのやつで、今がそれを彷彿とさせるやつだから選んだんです。答え知ってるならわざわざやらんでもいいか、しゃんしゃん!



っておい、言い出したのにやらんのかい!!もしかしたら知らない人がいるかもしれないでしょう、一人くらいは。こんなシーズン二度と無い(ようになってもらわなきゃ困る)でしょうし、あまり振り返ることがない88年ですから久々にいってみましょう!何故あまり振り返ることがないかって?!そりゃあF1史の中で伝説なシーズンではありますが、F1史の中で結果が偏り過ぎて面白くないから。人にもよりますが「すごい」って、度を超えると「つまらない」という境地に達することもあるんですね。

1988年のF1はどんなシーズンだったのか、簡単におさらいしておくと、マシンはそれまで青天井だったパワーについてとうとう抑制が入り、このシーズン限りでターボチャージャー搭載禁止。それに先駆け、前年87年に規制された過給圧の制限がより厳しくなりました(4気圧から2.5気圧に制限)また、それまでウィリアムズとロータスにエンジンを供給していたホンダは、この年からマクラーレンとロータスに変更。ドライバーについてもロータスでホンダと結び付きのあったセナがホンダエンジンと共にマクラーレンへ移籍、初戴冠を目指し、空いたロータスのシートにはチャンピオンのピケが座っています。
ここまでの11戦の戦績は、、ココ重要ですね。一言で済んじゃいますので、耳の穴かっぽじってよーく聞いてください。「マクラーレンの全勝」です。ん?全勝って、ここまでのシーズン全戦で?!はい、その通り。マクラーレンに所属するプロストとセナしか優勝を挙げていません。セナが11戦中7勝9表彰台登壇(2位2回)、プロストが11戦中4勝10表彰台登壇(2位6回)です。いつだかによーく似ていますねー。

IMG_0201
今回の予選でのポールポジションは(も)セナです。12戦中10回目の当時シーズン最多ポールポジション獲得(ちなみに逃した2回の内訳は2番手1回、3番手1回)、2番手はプロストでした(プロストはポール1回、2番手7回、3番手1回)シーズン8回目のフロントロウを占めるガチガチさ。こちらも似てはいますが、このマクラーレンは「両ドライバーが常に予選最上位を占める」あたりがやや異なります。具体的にどの辺が異なるかって?!それは、、miyabikunの口から言うまでもありません。皆さんお察しの通りです(笑)
3番手はセナから0.68秒落ちでフェラーリのベルガーが獲得し、ロータス・ホンダから参戦の中嶋悟は12番手となっています。

《予選結果》
P.P. A・セナ  (マクラーレン・ホンダ)
 2 A・プロスト(マクラーレン・ホンダ)
 3 G・ベルガー(フェラーリ)
 ※タイヤはグッドイヤーのワンメイク

話題はどうしてもマクラーレンの連勝記録に注目しがちですが、地元イタリアのフェラーリにとっても、このGPは例年以上に重要なものとなっています。
IMG_0200
チーム、そして会社の創設者であるエンツォ・フェラーリが同年8月14日に亡くなり、初めてのイタリアGPとなります。フェラーリはマクラーレンに続く二列目。表彰台のテッペンが決して狙えない位置ではありません。

IMG_0202
スタートはイン側2番手のプロストの蹴り出しがよく、セナを引き離しにかかります。
IMG_0203
IMG_0204
しかしセナはプロストの背後にピタリとつけ、第1シケイン手前で再びアウトに出てブレーキ勝負。
IMG_0206
セナがトップでシケインを通過していきます(第1シケインことヴァリアンテ・レティフィーロは現在と線形が異なります)

IMG_0213
プロストに対し早くも大きなギャップを築くセナ。
IMG_0214
プロストのすぐ後ろにはフェラーリ2台がしっかり追尾。

IMG_0216
51周レースの後半に入った30周頃、プロストがペースダウン。ベルガーにあおられるようになります。
IMG_0218
ベルガーがかわして2位に浮上。
IMG_0221
プロストはたまらずピットに帰還しますが、新型エンジンの不調により、34周でリタイヤ。最強マクラーレンの一角が崩れます。

IMG_0222
セナはプロストのものとは異なるエンジンでトップ快走中。
FullSizeRender
シーズン8勝目、チームの全勝記録更新もほぼ手中におさめると思われた残り2周。
IMG_0225
シケインのアウト側から周回遅れをさっくりかわしにかかろうとしたその時!
IMG_0226
マシンが急に浮き上がり
IMG_0227
スピンし
IMG_0229
縁石に乗り上げてお手上げ。セナは病気のためマンセルに代わって出走したウィリアムズのシュレッサーと接触し、リタイヤを喫し、敢え無くマクラーレンのシーズン全勝記録が途絶えました。
IMG_0231
IMG_0230
スタンドのティフォシは大喜び!それもそのはず、今までやりたい放題してきたマクラーレンが消え、今先頭を走るのは
IMG_0233
フェラーリの28番、ベルガーだから。
IMG_0237
さらには2位には27番のアルボレートが続き、フェラーリがワンツー。
IMG_0238
イタリアGPは意外な形でこの上無きドラマを生みました。天国で見守るエンツォも喜んだことでしょう。

IMG_0239
《決勝結果》
 1 G・ベルガー  (フェラーリ)
 2 M・アルボレート(フェラーリ)
 3 E・チーバー  (アロウズ・メガトロンBMW)

プロストはマシントラブルによるものでしたが、セナは完璧なレース運びをしていたにも関わらず、よりによって代走の周回遅れと絡み、マクラーレンは伝説的な記録をフイにしてしまいました。レースに完璧は無い。いくらドライバーやマシンが優れていても、天候や他車とのトラブルまでは読み切れない。連勝するということは全ての要素が合致して成り立ちます。簡単なことではありません。

IMG_0365
が、今シーズンのモンツァはワンチャン何か起きないかなぁ。。そろそろ。。(笑)
IMG_0296
無理そやな。。

モータースポーツランキング にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

最近は最近の過去のレースが続きましたので、今回は古めの過去のレースをピックアップしました。今から37年前、1986年第2戦に行われたスペインGPになります。86年の振り返りは3戦目、スペインGPは9戦目となります。舞台はこの年からヘレスサーキットに代わっています。
IMG_8597
サーキットレイアウトはこんな感じ。この向きならば円周率を示す記号π(パイ)ような、北上でみると湖畔を飛び立つ白鳥のような形状をしています(下図の実線が当時のレイアウトになります)
IMG_8627
現在スペインGPが行われるカタロニアでのF1は91年からであり、今回取り扱う86年より前のスペインGPはマドリード郊外のハラマで81年まで行われていました。その間4年間はスペインGPが途絶えていました。よってスペインでは5年振り、ヘレスでのスペインGP初開催となります。

86年は前年まで参戦した3回チャンピオンのラウダが2度目のF1引退を迎え、若きトップドライバー達が拮抗し始める時代に入ります。また、マシンはターボエンジンの全盛期であり、ターボエンジン搭載がレギュレーションで義務付けられた年でもあります。
前戦の開幕戦ブラジルGPはジャカレパグア(のちのネルソン・ピケ)で行われ、ポールポジションはロータス・ルノーを駆る地元セナが獲得するも、決勝は同じく地元(セナよりも地元の)でウィリアムズへ移籍したばかりのピケが優勝を挙げるなど、ブラジル勢が健闘しています。

予選はセナが2戦連続(年またぎでは3戦連続)セナが獲得。2番手にはピケ、3番手マンセルのウィリアムズ・ホンダ勢。4番手はマクラーレン・タグポルシェで前年チャンピオンを獲得したプロスト、5番手はチームメイトのK・ロズベルグが続いています。上位陣の名前だけでもかなり豪華な面々。

《予選結果》
P.P. A・セナ
  (ロータス・ルノー グッドイヤー)
 2 N・ピケ
  (ウィリアムズ・ホンダ グッドイヤー)
 3 N・マンセル
  (ウィリアムズ・ホンダ グッドイヤー)

IMG_8598
紅一点、ならぬ「黒一点」の周りに味方がいない寂しい状態のセナを先頭に決勝レーススタート。
FullSizeRender
セナは順調に加速し、強者揃いの先輩達を置き去りにしていく。
FullSizeRender
いいぞいいぞ!逃げろー!

ウィリアムズのカーナンバー5といえば、そう、マンセルです。マンセルもセナ同様に無冠ながら期待の有望株の一人。前方を走るマクラーレン2台に対してようやくエンジンがかかってきたか。
IMG_8601
82年のチャンピオン、ロズベルグをインからパス。
IMG_8602
そして前年85年チャンピオンのプロストもターン1のインから。これで3位に復帰。
IMG_8603
81年、83年チャンピオンのチームメイトはマシンが不調のため2位をマンセルにバトンタッチ。
IMG_8604
これでマンセルの前を走るのは、ロータスのセナただ一人。
IMG_8605
マンセルが前に出てトップへ。
IMG_8606
「オレはどこかヤツのこと気に入らねえんだ」
とでも言いたげ。今日のマンセルどうしたの?!キレキレやん。
FullSizeRender
ただセナも黙っちゃいない。プロストと束になってマンセルを追尾。
セナ、インからいくか?!
IMG_8609
「いや、行かせねえなぁ」
いいですねー他チームのバチバチバトル。

IMG_8610
飛ばしに飛ばしてトップに浮上したマンセルも、気持ちの前にタイヤが果ててしまいます。セナが再びトップへ。
IMG_8611
マンセルはタイヤを履き替えて再浮上にかけます。
IMG_8612
いってらっしゃい!

IMG_8613
まずはプロストをロックオン!パスして2位復帰。
IMG_8615
セナも正直タイヤが苦しくなってきました。ただもうピットインしている余裕は無くなってきました。最後までしのぎ切るか、やられるのみ。
IMG_8617
さあマンセルが来たぞー!耐えられるかセナ。
IMG_8618
今日の流れは完全にマンセル。再び前に出られるか?!IMG_8619
チェッカーフラッグまで最後のストレート。鋭角の左コーナーを立ち上がり、マンセルはアウト側に並ぶ。
IMG_8620
IMG_8621
うーどっちだ?!マンセルがやや前か?!
IMG_8622
逆視点から見てみましょう。
IMG_8623
チェッカーフラッグが待ち構える先にあるコントロールラインに注目。
IMG_8624
セナだ!ギリギリのポールトゥウィン。

IMG_8625
《決勝結果》
 1 A・セナ
  (ロータス・ルノー グッドイヤー)
 2 N・マンセル
  (ウィリアムズ・ホンダ グッドイヤー)
 3 A・プロスト
  (マクラーレン・タグポルシェ グッドイヤー)

現在各スポーツで審議の際は一度試合を止めてビデオ判定するのがトレンドとなっています。F1にはその性質上「一度レースを止めて正否判定する」ということはなかなかできません。このレースも実際に現地で見ているだけではとても優勝者を決められない実に際どい戦いとなりました。優勝したセナと2位マンセルのタイム差はたったの0.014秒。当時の予選ですらこんなギリギリバトルはなかなかありませんでした。セナもマンセルも、もっといえばプロストも、皆チームやエンジンサプライヤーが異なる中で毎戦一進一退の攻防が繰り広げられていました(こんな中でも名門フェラーリはいないのね)

近年は一つがアタマを飛び出してしまう形でシーズンが進行するのが続いています。一際強さをみせることは決して悪いことではありませんが、miyabikunはどちらかといえばこのような接近バトルのレースやシーズンの方が楽しめるかなぁ。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

モナコGPを得意とする者、苦手とする者、様々います。もしかしたらドライバー側だけでなく「サーキット側が選ぶ」なんてこともあるかもしれません。今回振り返るのはそんな様子もうかがえる1993年第6戦に行われたモナコGPです。モナコGPの振り返りは8回目、93年の振り返りは5回目になります。
このシーズンの主な出来事として、前年チャンピオンであるマンセルの引退、その空いたウィリアムズのシートには一年の休養を経たプロストが復帰したこと。また長らくマクラーレンとタッグを組んでいたホンダは前年をもって撤退したため、10年振りにフォード(コスワース)を搭載することとなりました。

このモナコGPを迎えるまでの5戦の戦績は開幕戦南アフリカGPほか3勝を挙げたプロストがランキングトップ。2位は第2戦ブラジルGPと第3戦ヨーロッパGP(俗にいう「雨のドニントンパーク」)で二連勝したセナとなっており、優勝こそないものの、ウィリアムズのD・ヒルやベネトンのM・シューマッハといった若手後継者達も表彰台登壇で追っています。

この年のモナコは例年ながら多くのドライバーのクラッシュがみられました。IMG_4860
モナコGPでこれまで5勝を挙げるセナはフリー走行1回目のサン・デボーテでクラッシュしフロントセクションを大破。わずか6周しか出来ず。
IMG_4861
こちらは片山右京の相方、ティレルのデ・チェザリス。まあこの方のクラッシュはさほど珍しくもない(笑)濡れた路面での予選1回目はF1で二年目、ウィリアムズのヒルが暫定ポールポジション。
FullSizeRender
予選2回目はドライコンディションになるも、スクーデリア・イタリアでデビューのバドエルもクラッシュ。バドエルは結局ドンケツタイムにより予選を通過することができませんでした。予選1回目を5番手で終えたセナは
IMG_4864
振るわず3番手止まり。
IMG_4865
「アーア、予選終ワリマシタカ。ポール誰デスカ」
ポールポジションは今シーズン6回目となるウィリアムズのプロストが獲得。このモナコGPは第6戦ですから、ココまでの全戦でということになります。 2番手のシューマッハに0.633秒も引き離す突き抜けっぷり。
IMG_4866
日本人ドライバーの2人。フットワーク・無限ホンダの鈴木亜久里はチームメイトのワーウィックからだいぶ離された18番手。ティレル・ヤマハの片山右京も結局デ・チェザリスの後ろとなる22番手。

IMG_4867
《予選結果》
 1 A・プロスト  (ウィリアムズ・R)
 2 M・シューマッハ(ベネトン・FC)
 3 A・セナ    (マクラーレン・FC)
 ※FCはフォードコスワース、
  タイヤはグッドイヤーのワンメイク

IMG_4868
3番グリッドのセナのスタート前オンボードカメラ。左上付近にあるシグナルは赤。
IMG_4869
静止画では伝わり辛いですが、青に切り替わる前にポールポジションのプロストの始動が早過ぎ。ジャンプスタート(フライング)をとられてしまいます。
IMG_4870
あーあ、プロストはせっかく優勝まで最も近い位置、かつセナとの間にシューマッハなる若造を挟んでいる絶好のチャンスだっていうのに、つまらぬミスでいとも簡単に失うこととなります。プロストらしくありません。
IMG_4871
「モウ、走リタクナクナリマシタ」

IMG_4872
12周目にペナルティ消化のためにピットインするプロスト。
IMG_4873
「モウ、発進シテイイデスカ?!」
再スタートの際にビクビクっとエンジンストール
FullSizeRender
「アーア、ヤッテシマイマシタ」
トップから一気に22位に後退。最速マシンとはいえココは抜けないモナコ、モンテカルロ。プロストの勝機は無くなりました。
IMG_4875

IMG_4876
プロストのペナルティかつストールもあり、トップはF1で3年目を迎えたシューマッハに渡ります。2位のセナとは21周目に入る時点で19秒近い大差で逃げており、モナコでの初優勝目前で力が入ります。
IMG_4877
ところがレース折り返し目前の32周目にリヤサスペンションに不調をきたしリタイヤ。モナコGP初優勝はお預け。若きシューマッハよ、未来のmiyabikunがこっそり教えてあげる。将来君はココでバカスカ勝てるようになるから安心して(笑)
セナの前は自然と消え、労せずトップに浮上します。

IMG_4879
2位には予選4番手のヒルがそのまま浮上。終盤の70周目その背後には7番スタートだったフェラーリのベルガーがじわじわ迫っています。
FullSizeRender
ミラボー上からロウズヘヤピンで狙うか?!
IMG_4882
接触!
IMG_4885
ココは昔から詰まって渋滞多発ポイントになるのねー。ヒルはどうにか戦列復帰。欲をかき攻めたベルガーは3位表彰台からの14位完走扱いに急転直下。先日のエミ・ロマのルクレールを思い出しますね。側からみたらもったいないの一言になりますが、ドライバーたる者はこういう生き物。

IMG_4886
優勝は半ば諦めかけていた。ただ、ライバル自滅という強運も舞い込み、勝つのは結局この方。ファイナルラップで4位まで取り戻したプロストをラップダウンにしていく。えっ、ていうかプロスト4位なの?!よくもまあここまで這い上がってきたことか。

IMG_4887
《決勝結果》
 1 A・セナ (マクラーレン・FC)
 2 D・ヒル (ウィリアムズ・R)
 3 J・アレジ(フェラーリ・F)

3番スタートから誰ともバトルすること無く優勝を手にしたセナは5年連続となるモナコGP通算6勝目を挙げ、偉大なG・ヒルを抜き、単独の最多勝。そして以降もこの記録は抜かれていません。しかしながらセナは翌94年のモナコGPが行われる前の第3戦サンマリノGPで命を落としたため、この勝利は「最後のモナコGP勝利」となっています。
IMG_4888
セナの象徴的な走りの一つに「予選から抜群の速さでポールポジションを獲得し、決勝もそのまま逃げ切る」というものがあります(ポールトゥウィン29回 / 41勝=ポールトゥウィン率70.7%)もちろんモナコで挙げた通算6勝からも、モナコは間違い無くセナが最も得意としていたGPといえます。ただこのシーズンは前年に引き続きウィリアムズが圧倒的であり、予選も宿敵プロストが獲得するという絶体絶命の状態ながら、上位の脱落により3番手からの優勝を手にすることができました。「美化した着色」なんて言われてしまうかもしれませんが、このモナコマイスターのラストウィンはもしかしたらモナコを得意とするセナに対する「誰かからの最後のプレゼント」だったのかもしれません。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

サンマリノGPは昔からシーズン序盤に設定され「ヨーロッパラウンド初戦」を担うことが多くありました。F1の多くのチームはヨーロッパに拠点を置きますので、ヨーロッパの初戦ということは「シーズン開幕以降のマシン改良を投入する舞台」にもなり得ます。今シーズンも今週末に行われるエミリア・ロマーニャGPよりいよいよヨーロッパラウンド突入。もしかしたらマシンを改良してくるチームが出てくるかもしれません。今回は遡ること32年前、1990年第3戦にエンツォ・エ・ディノ・フェラーリ(イモラ)で行われたサンマリノGPを振り返りたいと思います。

IMG_4299
サンマリノGPはサンマリノと呼ばれつつも実態はイタリア共和国内に属します。フェラーリこの地元から641/2を投入(ノーズの形状やウィング類の色使いにどこか見覚えがありませんか?!)
ウィリアムズもルノーエンジンに改良を施したFW13Bを投入。それよりも周囲の目を一番奪ったのはこのチームです。
FullSizeRender
高いノーズコーンからハの字に生えるアンヘドラル(下反角)フロントウィング。日本の中嶋悟が駆るティレル019です。このマシンは今でも非常に人気のあるマシンとして語り継がれていますね。このレースでデビューしました。

このレースでは34台のマシンがエントリーしています。近年は10チーム20台が長らく続いていますので、それだけでも世界的な景気のよさやモータースポーツへの関心、取り組み方が大きく異なっています。決勝に出走できるのは26台までとなっていますので、予選の前段階に「予備予選」を設け、まず「予選に参加できる台数」にまで絞らなければなりません。その中にはこんなマシンもありました。
FullSizeRender
スバル?!日本のあのスバル?!そう、インプレッサやフォレスターでお馴染みのスバル(当時は富士重工業)です。イタリアのコローニの株式を半分取得したスバルは水平対向12気筒を搭載してF1に参戦していたことがあります。しかし残念ながら一度も予備予選を突破できず、F1から撤退しています。ガショーもまたかよと言わんばかり首をうなだれる。

予選はセナ、ベルガーのマクラーレン2台が頭一つ出たタイムでフロントロウを獲得。セカンドロウにはブーツェン、パトレーゼのウィリアムズ2台、サードロウにマンセルと前年チャンピオンのプロストのフェラーリが綺麗に並ぶ形となりました。スバル以外の日本勢はローラから参戦の鈴木亜久里が15番手、新車投入のティレル中嶋は2年目のチームメイトであるアレジの7番手から大きく離された19番手となっています。

《予選結果》
 1 A・セナ   (マクラーレン・H・GY)
 2 G・ベルガー (マクラーレン・H・GY)
 3 R・パトレーゼ(ウィリアムズ・R・GY)
 ※Hはホンダ、GYはグッドイヤー

IMG_4305
決勝スタートでは2番手のベルガーがセナに競り勝ちトップを奪いますが、それも束の間。セナと4番スタートのブーツェンにやられて3位に後退しています。
IMG_4306
現在と異なり、改修される前の左高速コーナーのタンブレロ出口でマンセルがアウト側にはらみ土煙が上がる。スタート直後で前後の車間が近い中団にとって、高速旋回中の前方の土煙はドキッとします。
IMG_4309
IMG_4310
18番手でスタートしたレイトンハウスのカペリが何か後方から追突され、0周リタイヤ。イン側のグリーンに大破したもう一台。
IMG_4311
追突した側の中嶋も当然リタイヤ。新車を入れたばかりなのに。。

IMG_4313
先頭はポールスタートの面目を保ったセナ。そして5位にはアレジが何とフェラーリを従えて走行しています。
IMG_4314
1周目で上手くフェラーリの前に立ったアレジもレースが落ち着けばマンセルの餌食に。今はいい、ボクもいつかはあの紅い跳ね馬に乗れる日が来るはず。その夢は近い将来訪れることとなりましたね。

IMG_4280
トップのセナは3周目のブレーキングで白煙を上げて止まり切れず、グラベルの中でマシンを止めています。
IMG_4316
「こりゃダメだべー。タイヤがベコベコだわ」
マーシャルと共に不可解なマシンを覗き込むセナ。右リヤタイヤのスローバンクによるものでした。
IMG_4318
これでトップに立ったのはウィリアムズのブーツェンです。振り向かずしてもブーツェン、お早い登場。

IMG_4282
先程はマンセルに抵抗すらしなかったアレジに対し、今度はベネトンのピケがアウト側から仕掛けに向かっています。全盛期は過ぎたとはいえ、ピケもれっきとした三回チャンピオンです。
IMG_4283
フェラーリはともかく、ベネトンには負けたくない!
FullSizeRender
ピケを弾き飛ばす!そして何食わぬ顔でレースに戻る。末恐ろしい若手ですね。今でいうマゼピンがアロンソを突き飛ばす感じか。あ、マゼピンもう居ないんだったか(笑)
IMG_4325
ただ序盤のハイペースがたたったか、アレジとピケの2回目はあっさりとピケが前に。ここらへんが若手とベテランの差。

IMG_4326
労せずしてトップに立ったブーツェンも17周目にギヤボックス不調からのエンジントラブルにより戦線離脱。トップは代わってスタートダッシュを決めたベルガーの手に渡ります。
IMG_4330
IMG_4333
2位に浮上したブーツェンの相方パトレーゼに対し、1周目で取り乱したマンセルがかわしていきます。
FullSizeRender
ティフォシのボルテージは最高潮に。
IMG_4338
ところがマンセルは周回遅れのダラーラ、デ・チェザリスをかわす際にインを閉められコースオフ。
FullSizeRender
さらにのうのうとトップを走るベルガーを捕まえるところまでたどり着いたと思えば、
IMG_4340
なぜかスペースのあまり残されていないイン側から攻めて
FullSizeRender
スピーン。
FullSizeRender
からのくるりんぱっと。
IMG_4345
終いは38周目にエンジンブローによりリタイヤ。
IMG_4346
ガレージで怒るマンセル。せっかくチームの地元で優勝のチャンスがあったのに、一人で何度も大騒ぎして結果はゼロ。この辺がマンセルが憎めず、また愛されてきた一面でもあります。

IMG_4349
このままベルガーの逃げ切りでレースが終わると思いきや、61周レースの51周目にパトレーゼがタイヤバランスに苦しむベルガーをヴァリアンテ・アルタでパス。3番スタートから黙々と走り切ったパトレーゼが自身3勝目、シーズン初優勝を手にしました。

《決勝結果》
 1 R・パトレーゼ(ウィリアムズ・R・GY)
 2 G・ベルガー (マクラーレン・H・GY)
 3 A・ナニーニ (ベネトン・FC・GY)
 ※FCはフォードコスワース

FullSizeRender
レース中は真剣な眼差しのフランク・ウィリアムズも優勝したレース後は肩の力をふっと抜いてほころぶ顔が懐かしいですね。
IMG_4359
パトレーゼのF1デビューは1977年。F1初優勝は82年のブラバム時代に経験し、2勝目は翌83年。それから7年の歳月を経た90年に3勝目と非常にスローかつ長い息のドライバーでした。苦労人、鉄人などと呼ばれ、93年までF1をドライブし、決勝レース参戦数256戦の記録は長い期間保持しました。後にその決勝参戦数はバリチェロやライコネンに上回れることになりますが、今シーズンこのままでいけば、アルピーヌのアロンソが更新することとなります。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

来シーズンはいよいよマシンに大幅変更を伴います。テクニカル(マシン)レギュレーションやスポーティング(運営)レギュレーションが変更になる時は、F1関係者のみならず、我々ファンも「勢力図の変化」を大いに期待するものです。今回選んだ1989年はマシンに大幅な変更が行われました。アデレイド市街地で開催された最終戦オーストラリアGPです。89年の振り返りは4戦目、オーストラリアGPは6戦目、そしてアデレイド市街地のレースは初となります。
image
アデレイド市街地でのF1は1985年から95年までの11シーズンでヴィクトリア公園と一部周辺街路を使用して作り上げられた市街地サーキットでした。現行のアルバートパークと成り立ちは似ていますね。所在地やレイアウトが異なるのはもちろんのこと、他にはアルバートパークはシーズン開幕直後に行われていたのに対し、アデレイド市街地はシーズンの最終戦に行われていた点です。南半球ですから11月は「初夏」にあたります。

89年シーズンは前年まで採用されたターボエンジンが廃止され、自然吸気3.5ℓV10もしくはV8エンジンを搭載することになりました。そこで勢力図の変化が期待されますが、蓋を開けてみれば前年と同じマクラーレン・ホンダの突出した強さには変わりなく、前年チャンピオンのセナとその相方プロストによるチャンピオン争いが続きました。コンストラクターズランキング2位はフェラーリに代わってウィリアムズが浮上し、マクラーレンの2人が取りこぼしたレースを制しています。ドライバーズチャンピオンは前戦第15戦日本GPのシケインで同士討ちとなり「失格」となったマクラーレンのセナに対し、マクラーレンが提訴。
IMG_3094
セナには罰金と「執行猶予付き出場停止」となり、一度チャンピオンが決定したものも「暫定」という形でオーストラリアGPを迎えます。プロストもマクラーレンだし、セナもマクラーレンです。プロストにしてみたら、チームがどちらにテコ入れしているのか考えると複雑な気持ちになりそうですね。IMG_3095
またmiyabikunもセナに魅了され、F1にハマった口ではありますが、やり方にいささか疑問を持つことがあります(今冷静に考えてみたら、なおさら)美化されがちなセナの戦績や闘志、また周囲のフォローなど、今現在のドライバーに当てはめたらどんな物議がなされたのか、興味があります。

ドライ環境で行われた予選はプロストがセナに対して0.3秒上回り金曜予選を制しますが、土曜予選はセナが唯一となる1分16秒台を記録、プロストに約1.0秒もの差を付けてポールポジションを獲得。3番手は驚くなかれ、ミナルディのマルティニが獲得しています。また日本代表、ロータスの中嶋悟は予選23番手、ザクスピードの鈴木亜久里は予選前の「予備予選」に突破できず終わっています。

《予選結果》
 1 A・セナ   (マクラーレン・H・GY)
 2 A・プロスト (マクラーレン・H・GY)
 3 P・マルティニ(ミナルディ・FC・PI)
 ※GYはグッドイヤー、PIはピレリ
  FCはフォードコスワース

IMG_3096
決勝は予選とは打って変わって大雨。予定を30分遅らせてスタートが切られますが、ただでさえ路面のよくない市街地サーキットですから、危険極まりない。
FullSizeRender
後方視界が全くありません。
IMG_3098
雨のレースを苦手とするプロストはチャンピオン争いそっちのけでピットに戻り、自主的リタイヤ(棄権)を採ります。
IMG_3102
IMG_3099
こりゃ本当にレースどころではありません。レース中断です(上にチラッと見えている赤旗「中断」なので意味がわかるんだけど、2枚掲げられている黒旗は「失格」を示す旗ですが何で提示されているんだろう)
IMG_3101

IMG_3103
プロストのチャンピオンはひとまず「暫定」であるため日本GPの優勝が復活し、このレースも制することができれば、プロストを2ポイント上回れる可能性を残しています。限りなくゼロに近い希望に賭け、再スタートはセナが雨を味方につけ、優勝のみをめがけて逃げを打ちます。
IMG_3137
ただ雨が得意とはいえ、このコンディションでは足元をすくわれてしまいます。
IMG_3106
まるでコマのようにクルクルと回ってマシンを制御できずにいます。

FullSizeRender
13周目のブラバムのブランドルの後方車載カメラの映像です。背後には黄色いロータスのピケ、その後ろにはセナがモヤっと見えていますが、やはり視界不良。
IMG_3109
ピケが向かって左側にラインを変えると、セナはそれをかわすべく右側のブランドルに近付き
FullSizeRender
クラッシュ。ブランドルはリヤウィングを失い、セナは右フロントタイヤをサスペンションもろとも破壊してリタイヤ。この瞬間にセナは裁定はどう下ろうとも、プロストのポイントに追いつくことはできず、完全にチャンピオンを防衛することができませんでした。
IMG_3111

IMG_3112
その後も波乱は続きます。17周目にフェラーリのマンセルもスピンしてタイヤバリヤに激突、リタイヤ。
FullSizeRender
19周目には先程難を逃れたピケも周回遅れのオゼッラ、ギンザーニにおかまをほってしまいリタイヤ。猛者が次々と戦線離脱していきます。
IMG_3116

IMG_3117
プロストは棄権、セナもピケもクラッシュし、マンセルがスピンとなると、中団勢にチャンスが巡ってきます。トップはウィリアムズのブーツェンが名乗りを挙げ「2時間レース」適用により、当初予定された81周レースが70周終了とともに打ち切られています。

IMG_3119
《決勝結果》
 1 T・ブーツェン(ウィリアムズ・R・GY)
 2 A・ナニーニ (ベネトン・FC・GY)
 3 R・パトレーゼ(ウィリアムズ・R・GY)

実に地味な表彰台の顔ぶれ(笑)失礼、荒れたレースを堅実にこなした面々が顔を揃えています。出走は26台(予選落ち9台)のうち完走扱いはたったの8台、70周をこなしたのはわずかに4台というサバイバルレースでした。ブーツェンは第6戦カナダGPに続くシーズン2勝目。また前戦日本GPで繰り上がり初優勝を挙げたナニーニが2位となり、連続表彰台獲得となりました。さらに4位の中嶋が日本人初のファステストラップを獲得し、気持ちのいいシーズンの締めくくり方をしました。

新たなマシンレギュレーション元年。勢力図に大きな変化はなく、マクラーレンがウィリアムズに対してダブルスコアでダブルチャンピオンを獲得した形で幕を閉じましたが、チーム内の抗争、意図的な同士討ち、勝利数はセナが6勝したにも関わらず、チャンピオンは4勝のプロストの手に渡るなど、何かと遺恨を残した89年シーズンとなりました。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ