F1 えきぞーすとのーと

よくあるニュースネタやこ難しいテクニカルな話ではなく、メインは予選や決勝のTV観戦したそのものを個人的観点から綴るF1ブログです。  また、懐かしのマシンやレースを振り返ったり、記録やデータからF1を分析。その他ミニカーやグッズ集めも好きなので、それらを絡めつつ広く深くアツくF1の面白さやすごさを発信し、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

タグ:サーキット

前回のアップからだいぶ時間が空いてしまいました。ずっと寝ていたというわけではなく、データ的には早い段階で整って少しずつ書き進めてはいたのですが、なかなか時間が取れず今日に至ります。miyabikunはまだ感染もせず何とか生きてはおりますです(笑)

ところで皆さん覚えていますでしょうか。miyabikun昨シーズンのGPウィークは「優勝可能な予選順位」と題して、開催サーキット(予定を含む)22サーキットの歴代優勝者の予選順位をまとめていました。シーズン開幕や合同テストまでまだ少し時間がありますので、この場を借りて抽出したサーキット毎のデータをまとめて、サーキットや時代別に優勝者の違いがあるのかまとめと検証したいと思います。今回は「サーキット別」に括りました。
IMG_8743
検証に入る前の前段として、まずは今回対象になるサーキットとその数をおさらいしておきます。

《サーキット別サンプル抽出数》
IMG_3787
 モンツァ        71回  (6回)
 モンテカルロ市街地   67回(11回)
 シルバーストン     56回(10回)
 スパ・フランコルシャン 54回(16回)
 ジル・ヴィルヌーブ   40回  (5回)
 カルロス・パーチェ   38回(11回)
 ハンガロリンク     36回  (5回)
 レッドブルリンク    35回  (4回)
 カタロニア       31回  (3回)
 鈴鹿          31回  (6回)
 エンツォ・フェラーリ  29回  (7回)
 アルバートパーク    24回  (2回)
 エルマノス・ロドリゲス 21回  (0回)
 バーレーン国際     17回  (0回)
 ポール・リカール    17回  (0回)
 上海国際        16回  (6回)
 ヤス・マリーナ     12回  (1回)
 マリーナ・ベイ市街地  12回  (1回)
 イスタンブールパーク    9回  (3回)
 COTA            9回  (1回)
 ソチ            8回  (1回)
 バクー市街地        5回  (0回)
 (  )内はウェット路面でのレース

上の一覧は対象数、つまり開催回数の多い順で並べています。一方グラフの順番にあまり意味はありません(データ整理した順くらいとお考え下さい)が、以下のグラフ関連と順番は揃えてありますので比較はし易いはずです。グラフのオレンジ帯はその数のうち「ドライ環境で行われた決勝レース数」を示し、グラフの水色の帯および上記( )に示された数は「決勝中や決勝前に雨が降り、ウェット環境(と思われる)決勝レース数」を示します。当時「濡」と添えていたものです。決勝レースの順位には天候や路面環境が影響されると考えて区別しましたので、今後この分けも検証に使用していますので参考下さい。
昨シーズン22サーキットで行ったデータは「現在のF1カレンダーに選ばれているもの(中止も含む)であり、全サーキットと全決勝レースをカバーできていません。またペナルティなどによる決勝スターティンググリッド降格も反映されていない点もご了承下さい(かなり大事なことなのに、やり出してしばらくしてから気付いちゃったのねー)このグラフと結果については、GP開催開始時期の違いがあるため、数字の大小は仕方無いというか問題にはしません。歴史あるサーキットがサンプル数が多く、近代より始まったところは必然的に数が少なくなります。

《サーキット別ウェットレース率》
IMG_3786
 上海国際        37.5%
 イスタンブールパーク  33.3%
 スパ・フランコルシャン 29.6%
 カルロス・パーチェ   28.9%
 エンツォ・フェラーリ  24.1%
 鈴鹿          19.4%
 シルバーストン     17.9%
 モンテカルロ市街地   16.4%
 ハンガロリンク     13.9%
 ジル・ヴィルヌーブ   12.5%
 ソチ          12.5%
 レッドブルリンク    11.4%
 COTA          11.1%
 カタロニア         9.7%
 モンツァ          8.5%
 アルバートパーク      8.3%
 マリーナ・ベイ市街地    8.3%
 ヤス・マリーナ       7.7%
 バーレーン国際       0.0%
 バクー市街地        0.0%
 ポール・リカール      0.0%
 エルマノス・ロドリゲス   0.0%

前段でもう一つ。先程の抽出数(およびウェット路面レース数)を単純比較すると、オールドサーキットと新興サーキットの差が大きく見えるものですが「決勝レースのウェット路面レース率」とすれば見え方が少し変わります。最も多い割合でウェット路面の決勝レースが行われたのは上海国際サーキットの中国GPとなります。その割合は37.5%に及び、いわば「3回に1回はウェット路面のレース」という結果となりました。ほか上位ではスパウェザーで有名なベルギーGPが29.6%、雨で大荒れするイメージの強いブラジルGPのホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス)も28.9%となっています。鈴鹿もまあまあ上位の位置付けですね。日本の10月はまだまだ台風到来のシーズンで、過去にはセッション自体が無かった年もありました。
逆にバーレーン国際、バクー市街地、ポール・リカール、エルマノス・ロドリゲスの4サーキットはmiyabikun調べではウェット路面でのレースは無い記憶です。雨の要素は波乱や番狂わせを呼ぶ要素ではあるのですが、できればF1はドライ環境でバトルできるのが一番ですね。

前段はこのくらいにして、以下でようやく検証に入りたいと思います。同じような配列が続きますが、全部異なる数字なので目を凝らしてついてきて下さいね。

《優勝を挙げた平均予選順位》
まずは率直に全時代におけるサーキット別の優勝者の予選平均順位を挙げます。もちろんF1はこれまで度々の異なるマシンレギュレーションやサーキットのレイアウト変更を経ているわけですが、今回それを踏まえると非常に複雑な検証になるので、サーキット単位に集約させていただきました。

〈全天候〉
IMG_3785
 カタロニア       1.45位
 ヤス・マリーナ     1.54位
 COTA          1.56位
 イスタンブールパーク  1.89位
 ポール・リカール    1.94位
 バーレーン国際     2.00位
 上海国際        2.25位
 ソチ          2.25位
 カルロス・パーチェ   2.26位
 エンツォ・フェラーリ  2.31位
 モンテカルロ市街地   2.37位
 シルバーストン     2.38位
 鈴鹿          2.39位
 ハンガロリンク     2.47位
 エルマノス・ロドリゲス 2.52位
 ジル・ヴィルヌーブ   2.70位
 アルバートパーク    2.71位
 マリーナ・ベイ市街地  2.83位
 スパ・フランコルシャン 2.98位
 レッドブルリンク    3.03位
 モンツァ        3.06位
 バクー市街地      4.20位

最も予選順位の低い(つまり前方スタート寄り)サーキットはスペインGPのカタロニアサーキットの1.45位でした。温暖な気候とストレートに各種コーナーが取り揃うカタロニアといえば、近年は開幕前合同テストの地としての役割を果たしているわけですが、レースとなると抜けないのが玉に瑕。この後集計していますが、ここでの優勝者はポールポジションから5番グリッドまでしか輩出していません。ほかの「低い」上位はこちらも抜けないで有名なアブダビGPのヤス・マリーナが平均1.54位、サーキットレイアウトはまあまあ好評なアメリカGPのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(通称COTA)が平均1.56位、こちらも好評なレイアウトながら近年は路面状況で荒れたトルコGPのイスタンブールパークが平均1.89位と続いています。平均して1位台ということは、開催回数の半分以上がポールポジションからの優勝が占めているということになります(このあたりの数値はこの後まとめています)
一方で平均値が高い(後方スタートからの優勝が多い)サーキットはアゼルバイジャンGPのバクー市街地の平均4.20位を筆頭に、イタリアGPのモンツァが平均3.06位、オーストリアGPのレッドブルリンクが3.03位となっています。見た目や立地はだいぶ違えど、いずれもスピード自慢のサーキットが多いように感じます。鋭角コーナーにズバッと切り込むレッドブルリンクは想像できますが、モンツァがココにくるのは意外でした。バクー市街地は2016年の初開催がポールトゥウィン、2年目はリカルドの10番手からの優勝、3年目が2番手、4年目がポールトゥウィン、2020年の非開催を挟んだ昨年5年目がペレスによる7番手からの優勝と、完全にリカルドとペレスに引っ張られた値となりました。2番目のレッドブルリンクもバクーほどではないもののポールから3番手までの優勝が多い中、1977年のエステルライヒリンク時代にジョーンズが14番手から濡れた路面での優勝を挙げており、平均値も上げています。近年は抜けないイメージが強くなりつつあるモンツァも90年代まではむしろポールトゥウィンの方が少ない傾向にありました。

今回はマシン差やレイアウト、路面状況を考慮せず、あくまでサーキット別にえいやで平均値を割り出したため、このような異常値(なんて言い方をしたら、下位スタートから頑張って優勝したドライバーに失礼か)ともいえる順位まで含めたことで精度に欠ける結果になってしまっていることも否めません。ではココで今までコツコツと集めた「荒れ要素」となりうるウェット路面のレースを除いて再度平均値を割り出してみましょう。

〈ドライのみ〉
IMG_3797

 イスタンブールパーク  1.17位(-0.72位)
 カタロニア       1.39位(-0.06位)
 COTA          1.50位(-0.06位)
 ヤス・マリーナ     1.58位(+0.04位)
 ポール・リカール    1.94位(±0位)
 バーレーン国際     2.00位(±0位)
 上海国際        2.00位(-0.25位)
 ソチ          2.00位(-0.25位)
 モンテカルロ市街地   2.09位(-0.28位)
 エンツォ・フェラーリ  2.14位(-0.17位)
 カルロス・パーチェ   2.19位(-0.08位)
 ハンガロリンク     2.23位(-0.25位)
 アルバートパーク    2.27位(-0.44位)
 シルバーストン     2.30位(-0.07位)
 ジル・ヴィルヌーブ   2.37位(-0.33位)
 エルマノス・ロドリゲス 2.52位(±0位)
 鈴鹿          2.60位(+0.21位)
 レッドブルリンク    2.61位(-0.42位)
 マリーナ・ベイ市街地  2.64位(-0.20位)
 スパ・フランコルシャン 2.89位(-0.09位)
 モンツァ        3.02位(-0.04位)
 バクー市街地      4.20位(±0位)
 (  )内は全天候の平均値との差

平均順位の隣のカッコ書きは先程の全天候の平均値からの差を示します。マイナスはウェット路面を外したことにより平均値が下がったもの。プラスは逆に平均値が上がったものとなります。完全ドライのレースしか行われていない4サーキットは変化がありませんが、先程の全天候の平均値と比べて多少の変化がみられました。
平均値の最低はカタロニアに代わってイスタンブールパークが台頭。それも平均値は驚きの1.17位ということで、ほぼほぼポールトゥウィン(笑)一代前の開幕戦の代名詞であるオーストラリアのアルバートパークやレッドブルリンクもドライのみを抜粋したことで-0.4位近く数値が低くなりました。やはりウェットは後方スタートからの逆転に有利な環境を生む要素と言えそうです。また平均値から読み解くと現在(昨年まで)のF1においては、予選2番手、強いて3番手にいないと、優勝に辿り着けない感じでしょうか。
この結果における変わり種といえば、ドライのみに絞ったら平均順位が増したものが2つありました。ヤス・マリーナと鈴鹿です。ヤス・マリーナは0.04位の微増といったところですが、鈴鹿についてはまあまあ大きめな0.42位も増加しています。何なんだろ、わかりません。鈴鹿といえば幅員が狭くテクニカルなドライバーズサーキットの一つとして数えられます。天候によらない「ドライバーとマシンの相性」で決まってくるのかな。

《ポールトゥウィン》
次はポールポジションからの優勝、すなわちポールトゥウィンについて整理していきます。
〈回数〉
IMG_3783
 モンテカルロ市街地   29回
 モンツァ        24回
 カタロニア       23回
 スパ・フランコルシャン 21回
 シルバーストン     20回
 ジル・ヴィルヌーブ   19回
 カルロス・パーチェ   17回
 ハンガロリンク     15回
 鈴鹿          15回
 レッドブルリンク    12回
 ポール・リカール    11回
 エルマノス・ロドリゲス 10回
 エンツォ・フェラーリ    9回
 アルバートパーク      9回
 上海国際          9回
 マリーナ・ベイ市街地    8回
 ヤス・マリーナ       8回
 バーレーン国際       7回
 イスタンブールパーク    5回
 COTA            5回
 バクー市街地        2回
 ソチ            2回

このデータは天候や路面に関係無く、全天候を対象としています。当初はフロントロウ(スターティンググリッド1列目)についても調べてみようと思ったのですが、オールドサーキットは特にフロントロウに2台以上並ぶ時代やポールポジションがアウトやインで入れ替わることもあるので諦めました。
ポールトゥウィン数については、当然ながら開催回数が多ければこちらも多くなるため、あまりこの回数のみでは議論できません。指標になるのはこの次の「ポールトゥウィン率」になります。

〈勝率〉
IMG_3782
 カタロニア       74.2%
 マリーナ・ベイ市街地  66.7%
 ポール・リカール    64.7%
 ヤス・マリーナ     61.5%
 上海国際        56.3%
 イスタンブールパーク  55.6%
 COTA          55.6%
 鈴鹿          48.4%
 エルマノス・ロドリゲス 47.6%
 ジル・ヴィルヌーブ   47.5%
 カルロス・パーチェ   44.7%
 モンテカルロ市街地   43.3%
 ハンガロリンク     42.7%
 バーレーン国際     41.2%
 バクー市街地      40.0%
 スパ・フランコルシャン 38.9%
 アルバートパーク    37.5%
 シルバーストン     35.7%
 レッドブルリンク    34.3%
 モンツァ        33.8%
 エンツォ・フェラーリ  31.0%
 ソチ          25.0%

ラインナップをみると、概ね平均順位の上位がこちらも上位付近に並んできます。ポールトゥウィン最高率はカタロニアの74.2%。4回中3回がポールトゥウィンとなる割合です。カタロニアは予選が全てと言われる所以ですね。カタロニアは(シルバーストンや鈴鹿も?)度々、トラクションや旋回、ブレーキ等々「マシンの総合力を問われる」なんて言われます。それはどちらかといえば決勝レースよりも予選時点から問われるということになります。カタロニアはトラック幅員が広いわけではありませんし、各種速度域のコーナーは揃っているもののパッシングの決め手となるコーナーは限られています。またカタロニアでのスペインGPはシーズン序盤のヨーロッパラウンドの初っ端に行われることが多く、ヨーロッパに拠点を置く多くのチームはココで大幅アップデートを行います。ココで当たればシーズンを有利に運べますし、外せば立て続くヨーロッパラウンドで忙しくなる。結構重要な位置付けのサーキットですね(スペインGPのレース自体を面白いと捉えるか、つまらないと捉えるかは別)
再びラインナップをぼんやりみていると、ポールトゥウィン率上位は開催10〜20年クラスの比較的新しめのサーキットが並び、下位は改修はあれど年代モノのオールドサーキットが集まっているようにみえます。近年は建築家であるヘルマン・ティルケが監修したサーキットが多く点在します。もちろんその土地に合った条件や思想、さらには近年の安全対策の要素もありますし、全てがティルケの意見によるレイアウトというわけではないものの、近年の追い抜きの少ない、困難な状況はマシン幅員や空力付加物の有無、ドライバーの力量やペナルティ云々といったソフト側以外にもハード側、つまりサーキットのレイアウトも遠因になり得ます。この手の話になると毎度「エンターテイメントと安全性」という相反する問題がぶつかります。これらがうまく調和したレースが行えるのが究極ですね。
ポールポジションはその年のマシンでそのサーキット一周を最速で走り抜けたという称号であり特権ですから、決勝レースの優勝に最も有利な位置であるのは当然なこと。たださすがに「勝率7割以上」は高過ぎですし、決勝レースを観なくてもほぼほぼ予選で決まりじゃん、はいただけません。せめてポールポジションからの勝率は5割位で、中団からもトップを狙える権利があるという具合が理想的かなとmiyabikunは思います。

今回最後の注目点はポールトゥウィンの逆、サーキット別の下位スタートの限界値を探ってみます。

《優勝を挙げた予選最後位》
〈全天候〉
IMG_3781
 COTA            3番手
 バーレーン国際       4番手
 ソチ            4番手
 ヤス・マリーナ       4番手
 エンツォ・フェラーリ    5番手
 カタロニア         5番手
 ポール・リカール      5番手
 上海国際          6番手
 イスタンブールパーク    6番手
 シルバーストン       7番手
 カルロス・パーチェ     8番手
 バクー市街地      10番手
 ジル・ヴィルヌーブ   10番手
 アルバートパーク    11番手
 モンツァ        11番手
 ハンガロリンク     12番手
 エルマノス・ロドリゲス 13番手
 モンテカルロ市街地   14番手
 レッドブルリンク    14番手
 マリーナ・ベイ市街地  15番手
 スパ・フランコルシャン 16番手
 鈴鹿          17番手

初めはドライもウェットも引っくるめた全天候での結果です。これは平均値ではなく下位優勝者の予選順位そのものですので、小数点以下の無い整数です。またグラフの方は今までの決勝レース出場数最多の26番手から表現しています。
「予選最後位」の最前位はアメリカGPの舞台のCOTAの予選3番手(ペナルティによる昇格のため、実質2番手)からでした。2018年のライコネンのラストウィンです。優勝がポールと2番手と3番手に限られているってのもすごいというか、予選順位でアタリがついてしまうというのもつまらない話ですね(笑)近代サーキットの中でもCOTAはまだ抜ける要素があるように感じますが、実際は勝てていません。4番手最後位はバーレーン国際、ソチ、ヤスマリの3サーキット。これらは全てティルケデザイン。近代F1=ティルケ多い=抜き難い、の構図が何となくみえてきそうです。
今回抽出の最後位の後方はシンガポールGPのマリーナ・ベイ市街地が15番手、スパ・フランコルシャンが16番手、そして我らが鈴鹿の17番手と続いています。それぞれ各GP前にクローズアップしたので、ご記憶にある方も多くいらっしゃると思いますが、マリーナ・ベイ市街地は開催初年の2008年に古巣ルノーに戻ったアロンソが「チームの指示により」遂行されたある出来事の助けもあって、追い抜きが比較的困難とされたレースで大金星を得たもの。スパはもう少し遡ること1995年にベネトンで連覇をかけたM・シューマッハが雨に翻弄されたレースを獲ってなし得ました。鈴鹿は今でも語り草となっている2005年のライコネンがリバースグリッド状態で下位スタートを強いられたのをものともせず、晴れた決勝で猛チャージをかけ、ファイナルラップに差し掛かかった直後に逆転したレースでした。振り返ると三者とも通常ではあまりあり得ないレース展開であり、特にマリーナ・ベイ市街地と鈴鹿の2つは「一部意図的な操作」も絡んだ荒れ模様でしたね。マリーナ・ベイ市街地の方はアロンソ自体に非は無いものののちに「クラッシュゲート」と呼ばれ、大問題になった事案。また鈴鹿の方は決勝前日の予選1アタックラップが雨による公平な環境で行えなかったことに加え、決勝でライコネン同様にハイペースで順位を上げたアロンソのショートカットとペナルティ回避対応にモタついたことで狂いを生みました。いずれにしても、これら出来事が劇的な下位スタートの優勝を演出しました。面白いことにこの2レースのどちらもアロンソがひと噛みしているという(笑)

決勝レースのウェット環境によって平均予選順位の多くは平均値を上げる形となりました。それではこの予選最後位もウェット環境を外すことにより厳選されるものなのかを確かめてみました。

〈ドライのみ〉
IMG_3780
 イスタンブールパーク    2番手(-4)
 ソチ            3番手(-1)
 COTA            3番手(±0)
 バーレーン国際       4番手(±0)
 ヤス・マリーナ       4番手(±0)
 エンツォ・フェラーリ    5番手(±0)
 カタロニア         5番手(±0)
 ポール・リカール      5番手(±0)
 シルバーストン       6番手(-1)
 上海国際          6番手(±0)
 カルロス・パーチェ     6番手(-2)
 レッドブルリンク      7番手(-7)
 アルバートパーク      7番手(-4)
 ジル・ヴィルヌーブ     8番手(-2)
 モンテカルロ市街地     9番手(-5)
 バクー市街地      10番手(±0)
 モンツァ        11番手(±0)
 ハンガロリンク     12番手(±0)
 スパ・フランコルシャン 12番手(-4)
 エルマノス・ロドリゲス 13番手(±0)
 マリーナ・ベイ市街地  15番手(±0)
 鈴鹿          17番手(±0)
 (  )内は全天候の順位との差

22サーキットの中で9サーキットは順位を上げる結果となりましたが、残る13サーキットは変化無し(つまり最後位優勝はドライ環境によるもの)となりました。想像していたよりかは影響力が小さいように感じます。
平均順位の時と同様に、ドライに絞ればイスタンブールパークの出番になります。ドライでの優勝はポールと2番手からしか生まれていない!フロントロウあるのみ!わかりやすい!(笑)ドライ環境ならば、そちはどうなんじゃ?!ソチはCOTAに並ぶ3番手までじゃ、となりました。やっぱり近代サーキットが上位に並ぶことには変わりありません。最も順位を上げた(下位優勝を狭めた)のはレッドブルリンクの-7位で7番手まで。モナコGPのモンテカルロ市街地も-5位となる9番手に狭められています。先程のマリーナ・ベイ市街地と鈴鹿はドライ環境の結果であるため変化はありませんでした。ちなみに下位の2つ、もしマリーナ・ベイ市街地の15番手をこのレースを省いたとすると、優勝平均予選順位は1.40位(ドライのみ)にまで下がります。また今回抽出最後位からの優勝を挙げた2005年日本GPのライコネンを仮に省くと、平均2.00位(同じくドライのみ)まで下がりました。やはり先述の通り、両者とも一般的には予選上位が有利、決勝レースでの挽回は難しめの位置付けであり、サーキット特性から考えても、今後はこのような順位からの優勝はほぼ無いと思っていいのではないでしょうか。
なお、今回は対象から漏れてしまいましたが、F1で最も後方順位からの優勝は以前「下位スタートから勝利した強者たち」でも書いた時から変わらず、1983年のロングビーチ市街地で行われたアメリカ西GPの予選22番手から優勝を挙げたワトソンのままです。

《サーキット別の優勝可能な予選順位まとめ》
・近代サーキットは予選上位が有利で追い抜きが難
・優勝の可能性が高いのは予選2番手あたりまで
・幅員が狭く追い抜きの決め手が無い場合、
 予選下位は辛い
・ウェットの決勝はドライに比べ下位に有利に働く
・下位からの優勝はアクシデント絡み頼み

簡単ではありますが、今回の検証で得られたことを一言でまとめてみました。集計前からある程度想像できた結果ではありますが、感情論や思い込みだけでなく、数字で並べるとより確証は得られました。次回はまた違う目線からデータ検証しますので、シーズン開幕前の時間潰しとしてお付き合いのほどお願いします。
FullSizeRender

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

この前は「次のアブダビが最終回」なんて言いつつ、忘れかけていたアルバートパークを差し込んでしまいました。だってせっかくデータ整理して、敢えなく中止になってしまったのがもったいなかったんだもん(笑)今度こそ最終回、アブダビGPの舞台であるヤスマリさんです。

今シーズンからメキシコシティGP、サンパウロGPという都市名が付けられたGPが続きました。アブダビはアラブ首長国連邦(UAE)の首都であり、都市名です。このアブダビGPも言ってみれば仲間、それらの先輩ということ。ヤス・マリーナでのアブダビGPは中東エリアでバーレーンGPに次ぐ第二の開催地として、2009年シーズンよりカレンダーに盛り込まれてきました。ただ、ナイトレース(トワイライトレース)としては、バーレーンGPが14年から始めたのに対して、アブダビGPは初年09年から導入されたため、こちらについても先輩にあたります。
IMG_3315
ヤス島にリゾートの一環として建設され、トラックの一部はリゾートホテルの下を通過するという何とも「イマドキな」サーキットです。常設サーキットでありながら長い直線と直角コーナーで構成されており、ピットロードは本線トラックをアンダーパスするあたりもこのサーキットならでは。ちなみにサーキット監修は皆さんご存知のヘルマン・、、ですね。今のF1は「何ヘルマンか」今度数えてみます(笑)
image
長いストレートに鋭角コーナーがいくつか設けられているため、パッシング自体は可能ですが、ストレートの先の鋭角コーナーを挟んで再びストレート(厳密には緩やかな左コーナー)があるため「一度抜いても抜き返される」という状況を招いてしまいます。一般的にはDRSを駆使したパッシングに頼る形であり、レース全般おとなしめな印象を受けます。それもあって今シーズンから一部改良を施したレイアウトで開催されることとなっています。新旧比較はこちら。
IMG_3324
左側の黒ラインが昨年までのオリジナル、右側の赤ラインが今シーズンから導入される新レイアウトです。2箇所はぱっと見でわかると思いますが、どこが変わったかわかりますか?!
IMG_3325
赤の新レイアウトが上になるように重ねてみます。黒がはみ出ているところが廃止された区間やコーナーということ。まずストレート手前の「拳銃の銃口」にあたるターン5,6,7が廃止され、一つの鋭角左側のコーナーになります。続いて二本目のストレート末端にあったカクカクエリア入口にあたるターン11,12,13,14の4つを廃止、Rの大きめな左一つに集約されています。ここまではすぐに気付く二箇所。実は細かにまだいくつかあります。トラック終盤の「引き金」に位置する左ターン18,19、右ターン20のRを緩やかにして通過速度が向上します。もしかしたら他にも見落としている箇所があるかもしれませんが、こちらが以前に公式発表されたレイアウトです。皆さんどう思いますか?!パッシングが増え、眠くならないバトルが期待できそうでしょうか。ミヤビマン・ティルケはストレート手前の鋭角コーナーはパッシングポイントになるかなと思うのですが、他は通過速度は高くなるものの、これでパッシングが促進されるとは思えない。と申しておりました(笑)ストレート先の緩やかな左はフランスGPの舞台であるポール・リカールの右ターン6「ボーセ」を彷彿とさせます。高速で進入していって、アウト側からかぶせて抜く?!ちょっと無理じゃないかなぁ。新レイアウトによりパッシングよりバッシングが多くならないことを祈ります。

《ヤス・マリーナの歴代優勝者の予選順位》
 09 ベッテル     予選2番手→優勝 終
 10 ベッテル ★      予選P.P.→優勝 終 決
 11 ハミルトン     予選2番手→優勝
 12 ライコネン    予選4番手→優勝
 13 ベッテル ★      予選2番手→優勝
 14 ハミルトン ★     予選2番手→優勝 終 決
 15 N・ロズベルグ    予選P.P.→優勝 終
 16 ハミルトン     予選P.P.→優勝 終 決
 17 ボッタス      予選P.P.→優勝 終
 18 ハミルトン ★     予選P.P.→優勝 終 濡
 19 ハミルトン ★     予選P.P.→優勝 終
 20 フェルスタッペン 予選P.P.→優勝 終

 ★はその年のチャンピオン、「終」は最終戦
 「決」はドライバーズチャンピオン決定
 「濡」は雨もしくはウェットコンディション
 ※予選順位はペナルティ降格を含みません

IMG_3342
調べた限り、アブダビGP決勝が行われた全12回において、雨もしくは雨上がりのウェットレースは18年の中盤にみられたものの、他はありませんでした。
また近年は「最終戦の地」として定着しつつあるアブダビGPは、初年09年から11,12,13年を除いた昨年20年までの9回が最終戦を担っています。何もないのもつまらないので、今回は特別に最終戦となったシーズンに「終」マーク、チャンピオン決定のレースに「決」マークを付けてみました。ちなみにドライバーズチャンピオンが決定したのは10年のベッテル1回目、14年のハミルトン2回目、16年のロズベルグの三例でした。今シーズンも最終戦かつチャンピオン決定の地として開催されます。

さて話を本題に戻し、ヤス・マリーナ優勝者の歴代予選順位ですが、見て感覚的にポールトゥウィンが多いことに気付きます。他を当たっても予選2番手と4番手がチラホラといった感じ。まとめるとこうなります。
IMG_3181
 予選P.P.  →優勝:7回 58.3%
 予選2番手 →優勝:4回 91.7%
 予選4番手 →優勝:1回   8.3%

全12回中、ポールトゥウィンが7回、フロントロウウィンが11回と見事なまでのフロントロウ有利。予選4番手からの優勝が一例あり、一般的には予選上位に該当するものの、ココでは優勝したうちの最下位、言ってみれば異常値みたいになってしまいます。今シーズンはご存知の通りドライバーズおよびコンストラクターズチャンピオン決定がかかっており、ドライバーズの方はフェルスタッペンかハミルトンのどちらかが「優勝=チャンピオン」となります(リタイヤ等々の状況は含めず)となると、両者は当然ポールポジション、ダメでも2番手のフロントロウスタートが必須となるはずです。この二人以外にも今シーズンはもう一人ポールポジションを獲れそうなドライバーがいますが、その方は「アチラの味方」ですので、もうひと方は予選(および決勝)を一人で戦うことになりそうですね。

先程も書いたように、パッシング「自体」は行えます。ただサーキットで数限られたパッシングポイントが続き、ストレートでDRSを使って前に出ても、その直後にまたギャップを検知されて次のストレートでDRSを使われて「結果、プラマイゼロ」みたいなことが起きてしまうのがこのサーキットの特徴でもあります。全ての例を挙げていられませんが、2つの年の順位変動数を示します。
IMG_3345
まずこちらが17年の2周目と
IMG_3347
最終周の55周目。中団から下位は大なり小なり順位変動はあるものの、今回の検証の対象である肝心な優勝争いは変動がありません。
IMG_7682
続いて、昨年20年の1周目終了時と
IMG_7709
ラスト2周にあたる54周目。当時アルファタウリのクビアトがガッツリ4つ順位を落とし、マクラーレンに移籍が決まった当時ルノーのリカルドが4つ順位を上げていますが、やはり上位3台はテコでも動かぬか。無論、現在のトップ2ないし3は後ろとの差が大きいため、バトルにならないのも事実。あまり期待してはいけないけど、セーフティカーの出番でもない限り、番狂わせも無く「お利口さん」で進行するのもヤスマリの特徴です。

というわけで検証にはいささか物足りない結果となりましたが、その特異(退屈?!)な環境の中、一応下位からスタートして優勝を挙げたケースを一例だけ簡単に観返してみます。

〈下位スタートから優勝を挙げたレース〉
 12 ライコネン    予選4番手→優勝

このレースはいつもの「過去のレースを振り返る」で17/11/23に書いています。12年のアブダビGPは最終戦ではなく、全20戦のシーズンの第18戦に行われました。このシーズンは全20戦のうち、初優勝も含め開幕から7戦連続で優勝者が異なるという、今では想像もつかない激戦が繰り広げられました。チャンピオン争いはこの終盤のアブダビGPまでにレッドブルのベッテル、フェラーリのアロンソに加え、ロータスでF1復帰を果たしたライコネンの3人に絞られています。IMG_3326
ポールポジションはマクラーレンのハミルトンが獲り、チャンピオン三連覇を狙うベッテルは3番手につけるも、予選アタック終了直後にガス欠のためパルクフェルメに自走できず失格。決勝は最後尾ではなくピットレーンスタートを選択しています。
IMG_3329
決勝レーススタートは2番手のウェバーがもたつき、4番スタートのライコネンがインから早くも2位に浮上。ハミルトン、ライコネン、ウィリアムズのマルドナドのオーダーとなります。ピットレーンスタートから追い上げをみせるベッテルは中団のマシンに手を焼き、フロントウィングを壊し、なかなか順位を上げられません。一方でスタートから逃げ切りを図ろうとするハミルトンは20周目に急遽パワーユニットの出力喪失し、敢えなくリタイヤ。
IMG_3332
IMG_3333
トップはチャンピオン争いに踏み止まりたいライコネンに代わっています。フェラーリでチャンピオンを狙うアロンソがマルドナドをかわしてペースアップ。ロータス陣営はライコネンにアロンソとのタイムギャップを逐一伝えるとのこと。それに対してライコネンは
IMG_3336
「放っておいてくれ。すべきことはわかっている」
ライコネンの無線の話題には欠かせない例のフレーズです。この時発せられたものでした。その後も中団でクラッシュが発生し、セーフティカーランの最中、チームから飛んだタイヤに関する指示についても
IMG_3338
「はいはいはい、いちいち言わなくていい」
まあね、ライコネンはブランクがあるとはいえ、この時既にF1で10年選手ですし、チャンピオン獲得者ですからね。言われなくても分かりますよね(笑)ただチームからしたら慎重にもなるし不安なのよ。
IMG_3339
チームや観戦するファンからの心配は一切無用。ライコネンはアロンソの追従も振り切り、4番スタートから見事にF1復帰後初優勝。シーズン8人目のウィナーとなり「復帰直後チャンピオン」を目指すのでした。
FullSizeRender
意図していたわけではなかったのですが、今回も下位スタートからの優勝として、またまたライコネンのレースを振り返ることとなりました。やっぱりライコネンは予選からの逃げ切りタイプではなく、決勝追いかけ型の走りが印象的ですよね。そんなライコネンは今週末のアブダビGPでいよいよF1ラストランを迎えます。チャンピオン争いに次いで、注目すべきドライバーの一人となりそうです。最後は例え10位でも入賞してステアリングを置いてほしいなあ。そんなの放っておいてくれって?!(笑)


これまでGPウィーク直前に各現役サーキットにおける「優勝を可能とする予選順位」をみてきました。これで対象のサーキットは簡単ながら全て検証したものとし、オフシーズンの空き時間にいつもの「まとめ」を行えたらと思っています。あまり面白くないネタだったかもしれませんが、miyabikunの素朴な疑問と趣味にお付き合い頂き、ありがとうございました。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

ごめんなさい、前回のサンパウロGP前の時に「この企画の最終回は最終戦のヤス・マリーナ」と言ってしまったのですが、ずいぶん前に作って温めていた一箇所をついつい忘れていました。当初の予定ではシーズン序盤に。さらに「春先」の今頃第21戦として組み込まれたにも関わらず、結局中止となりカタールGPに前倒しで託す形となったオーストラリアGPの舞台、アルバートパークです。追い抜きが困難であるという長年の課題を解消すべく、軽微なレイアウト変更まで行ったのに残念でした。miyabikun個人的にはレイアウト云々よりかは周りの環境や風景が好きなので、来シーズンは日本GPの開催と合わせて予定通り行えることを願っています。

大都市メルボルンのアルバートパークでのF1は1996年から開催されています。それまでのアデレイド市街地はシーズンの最終盤に設定され「シーズンの締めくくり」となっていましたが、それから一転アルバートパークになってからは主に「シーズンの幕開け」を担っていました。普段は一部公道の公園の周回路を使い、F1の時期だけ閉鎖という「ほぼ市街地」のサーキットで路面はダスティ。さらには開幕戦ということで「本来のマシンの出来や勢力図を評価し難い」なんてよく言われましたよね。以前このブログで「アルバートパークの戦績は本当に勢力図のアテにならないのか」というのを検証したことがあります(20/3/17掲載)検証の仕方はいささか乱暴だったかもしれませんが、調べた限りではまんざら外しているわけでもないんじゃないかというのが結論でした。どうしても開幕戦はドライバーやマシンも手探りなところがあり、F1チームの多くが拠点としているヨーロッパからみれば、フライアウェイの地ですから「本領発揮はまだまだこれから」といった「言い訳的感覚」が根付いていたようにも感じます。
IMG_8594
「走っては右に、また走っては右に」アルバートパークのレイアウトを見る度にmiyabikun毎回こんな例えをしてしまっています。いわゆるストップアンドゴーの部類です。確かにストレートの長さも中途半端ちゃ中途半端だし、コーナーも飛び込むには浅いし、ところどころキンク(よじれ)していますから、抜こうにも抜けない。下手に抜きにかかると接触するというリスクを伴ってきました。そこで先程冒頭で書いたように、ターン3とターン6、ターン15の円滑化、ターン9を廃止し、ターン13は鋭角化するという細かな変更をいくつか工事を行った上で、今シーズンの開催に臨むつもりでした。
FullSizeRender
確かに平均速度は高くなるのは間違いなさそうですが、限られた公園敷地や他のスポーツ施設、中央には池もありますから、かなりの制約がある中での改良に過ぎず「決定打」がまだ弱いように感じます。ミヤビマンティルケなら、もう少しああしたりこうしたりしたかった、と申しております(笑)

前段だけでごちゃごちゃ長くなりましたが、開催された全24回の優勝者とその予選順位をみていくこととしましょう。

《アルバートパークの歴代優勝者の予選順位》
 96 D・ヒル ★     予選2番手→優勝
 97 クルサード     予選4番手→優勝
 98 ハッキネン ★      予選P.P.→優勝
 99 アーバイン     予選6番手→優勝
 00 M・シューマッハ ★ 予選3番手→優勝
 01 M・シューマッハ ★ 予選P.P.→優勝
 02 M・シューマッハ ★ 予選2番手→優勝
 03 クルサード     予選11番手→優勝 濡
 04 M・シューマッハ ★ 予選P.P.→優勝
 05 フィジケラ     予選P.P.→優勝
 06 アロンソ ★       予選3番手→優勝
 07 ライコネン ★      予選P.P.→優勝
 08 ハミルトン ★      予選P.P.→優勝
 09 バトン ★        予選P.P.→優勝
 10 バトン       予選4番手→優勝 濡
 11 ベッテル ★       予選P.P.→優勝
 12 バトン       予選2番手→優勝
 13 ライコネン     予選7番手→優勝
 14 N・ロズベルグ    予選3番手→優勝
 15 ハミルトン ★      予選P.P.→優勝
 16 N・ロズベルグ ★  予選2番手→優勝
 17 ベッテル      予選2番手→優勝
 18 ベッテル      予選3番手→優勝
 19 ボッタス      予選2番手→優勝
 20
 21

 ★はその年のチャンピオン
 「濡」は雨もしくはウェットコンディション
 ※予選順位はペナルティ降格を含みません

その年のチャンピオンにはいつも通り★マークが付けましたが、開幕戦でこのサーキットが使われたのが22回、そのうちオーストラリアGPの勝者がチャンピオンを獲得したのが2006年のアロンソを除く12回ですから、チャンピオン獲得率は54.5%に達します。この結果を見て多いと捉えるか少ないと捉えるかは各々の感覚次第ですが、まんざらこのサーキットの戦績がアテにならないとも言い切れないのではないかと思います。特に2000年代はココの勝者の多くがチャンピオンを獲得してきました。以下で優勝者の予選順位を整理してみましょう。
IMG_1261
 予選P.P.  →優勝:9回 37.5%
 予選2番手 →優勝:6回 25.0%
 予選3番手 →優勝:4回 16.7%
 予選4番手 →優勝:2回   8.3%
 予選6番手 →優勝:1回   8.1%
 予選7番手 →優勝:1回   4.2%
 予選11番手→優勝:1回   4.2%

いつもながら最多はポールトゥウィンが9回、2位が2番スタートで6回となっていますが、割合からみても、他に比べて突出感がありません。ポールスタートからの戦績をざっとみてみると、開催2年目となる97年は鳴り物入りでF1に参戦したJ・ヴィルヌーブがポールを獲得しつつも、決勝は1周もすることなくリタイヤ。99年のポールはチャンピオン連覇のかかるマクラーレンのハッキネンが獲得しますが、マシントラブルによりリタイヤ。2002年はフェラーリのバリチェロが獲得して0周リタイヤ。03年はM・シューマッハは変化する路面に対応するのが遅れて4位入賞に止まり、2010年のベッテルはレース前半にリタイヤと多くはマシントラブルやアクシデントによりリタイヤもしくは順位を落としています。このあたりが「開幕戦(開幕直後)は何が起こるかわからない」といわれる所以かもしれません。
フロントロウ以外はセカンドロウから6回、サードロウから1回優勝があり、後方からだと7番手からが1回、そして11番手からも1回ありました。異常値というのも失礼ですが、いつものように下位スタートからどう優勝に繋げられたのかを簡単に振り返りたいと思います。

〈下位スタートから優勝を挙げたレース〉
① 03 クルサード 予選11番手→優勝 濡

この年のオーストラリアGPは開幕戦に設定され、さらには「新予選方式の採用」があったシーズンです。タイムアタックは「一台ずつの1ラップのみ」とし、タイヤの温まりをはじめドライバーの集中力も問われた方式でした。予選はブリヂストンタイヤを履く前年チャンピオンのフェラーリがフロントロウを独占。3番手はミシュランを履くウィリアムズのモントーヤが続き、同じくミシュラン履きのマクラーレンはクルサードが11番手、ライコネンが15番手に沈みました。完全に新予選方式に適合できていません。
IMG_3056
決勝の直前に雨が降り、スタート時は上がったものの路面は濡れた状態となりました。下位に沈んだライコネンはフォーメーションラップでピットイン、ガソリン継ぎ足しとドライタイヤに履き替える賭けに出ます。クルサードもオープニングラップ後の2周目に同様の策を採る。
IMG_3062
乾き始めの路面、さらには通常のサーキットよりダスティで雨でラバーが流れてしまった状態です。2番手スタートからフライングをかましたバリチェロもバチが当たったか6周目にスピンしクラッシュ。
IMG_3063
ジャガーで地元GPを迎えるウェバーはサスペンション損傷で真っ直ぐに走れず。
IMG_3065
乾き始めたらミシュランが有利、と序盤にタイヤをしれっと替えたライコネンがトップ、2位M・シューマッハ、3位クルサードのラインナップに変わっています。予選大失敗のマクラーレンが奇策を見事に成功させました。
IMG_3066
前の2台はコース外にまで及ぶバチバチのバトルを繰り広げ、ライコネンは33周目のピットイン時のスピード違反のためドライブスルーペナルティが下り、
IMG_3067
IMG_3069
M・シューマッハもライコネンのバトルでディフレクター(バージボード)を損傷して不必要なピットインを強いられて順位を落とします。
IMG_3071
代わってトップに立つモントーヤもスピンして後退。予選で大失敗をかましつつも結果的には「何事も無かった」クルサードが11番手から優勝。表彰台からフェラーリを久々に完全排除し、勢力拡大中のミシュランタイヤ勢で埋め尽くしました。IMG_3074

② 13 ライコネン 予選7番手→優勝

こちらは「過去のレースを振り返る」で19/3/15に取り扱いました。このレースも開幕戦です。
IMG_3085
予選は雨で荒れ、フェラーリのマッサをはじめマシンを壊す波乱が起きています。ポールポジションは三年連続のダブルチャンピオンを成し得たレッドブルのベッテルが獲得。2番手に地元のチームメイトであるウェバーが続き、この年もレッドブル旋風が吹き荒れる様相。
IMG_3086
IMG_3087
決勝は雨が上がりますが、スタート直前に2番手ウェバーにKERS不調が告げられ、幸先悪し。
IMG_3088
地元だろうがチャンピオンチームだろうが容赦無し「翼をもぎ取られた」オージーはハミルトンやアロンソの餌食になります。
トップを走るベッテルをはじめ、スーパーソフトタイヤスタートの上位の多くはタイヤのタレを懸念し、3回ストップでレースを企てています。ところが21周目のベッテル2回目のピットが2ピットストップを選んだフォースインディアのスーティルと重なり、思わぬフタをされてしまいます。IMG_3089
IMG_3090
それが仇となり、1周前に2回目を終えていたフェラーリのアロンソにアンダーカットを許す形となりトップから陥落しました。
IMG_3091
スーティル以外に2回ストップを選んだドライバーも少数ながらいました。7番スタートのロータスのライコネンです。ベッテルと同様にスーパーソフトタイヤスタートながら、1スティントを2周引っ張り、続いて履いたミディアムタイヤでもタイヤに優しい走りで23周目に暫定トップに立ちます。43周目に逆ストラテジーで2回ストップのスーティルを捉えてIMG_3092
パス。前年2013年にF1復帰を果たしてポイントランキング3位につけたベテランは、トップからやや劣るマシンでも戦略と走りで充分勝機を見出せることを証明しました。IMG_3093

FullSizeRender
今までは3月中旬から4月初頭のいわゆる「秋口」に開催されることが当たり前であったアルバートパーク。来シーズンが予定通りに進めば第3戦の4/10に決勝が行われます。繰り返し、改修後のアルバートパークに無事に「秋」が訪れることを祈りたいと思います。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

三連戦の2つ目、ブラジルです。また時差だ。。毎年のことながらこの時期の観戦は身が堪えます。ただチャンピオン争いにおいては重要な時期ですから、我々ファンもしかと臨まなければなりませんね。

先日のメキシコシティGPに続き、今シーズンからブラジルGPは開催都市であるサンパウロがGP名となります。舞台は変わらずも近年開催が危ぶまれ続けているホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス)です。
IMG_2720
ホセ・カルロス・パーチェの開業は古く、F1制定のだいぶ前となる1936年です。グアラピランガ湖とビリングス湖の間に挟まれた土地であることから「湖の間=インテルラゴス」と名付けられました。F1は南米出身のドライバーが台頭し始めた1973年にブラジル初のF1開催の地となり、初開催では若きチャンピオン経験者であるE・フィッティパルディが優勝を挙げています。2年目の74年もE・フィッティパルディが連覇、3年目の75年も地元のパーチェが優勝するなど、地の利を活かした結果が続きます。しかし77年にそのパーチェがシーズン中に飛行機事故のため他界し、それまでの功績を讃えサーキット名を「ホセ・カルロス・パーチェ」に改称しています。
一時期ブラジルGPは成長著しいピケのお膝元、リオ・デ・ジャネイロ郊外のジャカレパグア(後のネルソン・ピケであり、現存せず)に舞台を移しますが、新たにチャンピオンを獲得したセナの地元サンパウロのこのサーキットに90年から復帰し、現在に至ります。
image
サーキットレイアウトは当時珍しい「反時計回り(左回り)サーキット」であり、一度大きな改修を経ています。図の左側の赤ラインが初開催の73年から80年まで採用されたものであり、右側の黒ラインはお馴染みのものです。似てはいるけど昔は線を辿るととても複雑なレイアウトですよね。赤ラインの全長は7.960kmに及びました。90年の復活開催で一回り小さく、シンプルな4.325km(現在は4.309km)に短縮しています。面白いのは現在は左のターン3「クルヴァ・ド・ソル」から左のターン4「クルヴァ・ド・ラゴ」の順で駆け抜けるところ、旧レイアウトでは逆だった点です。南アフリカGPのキャラミも大改修を受けて「以前とは逆走になる区間」がありましたよね。

《カルロス・パーチェの歴代優勝者の予選順位》
 73 Eフィッティパルディ  予選2番手→優勝
 74 Eフィッティパルディ★ 予選P.P.→優勝 濡
 75 パーチェ       予選6番手→優勝
 76 ラウダ        予選2番手→優勝
 77 ロイテマン      予選2番手→優勝
 78 
 79 ラフィ        予選P.P.→優勝
 80 アルヌー       予選6番手→優勝

 90 プロスト       予選6番手→優勝
 91 セナ ★          予選P.P.→優勝 濡
 92 マンセル ★        予選P.P.→優勝
 93 セナ         予選3番手→優勝 濡
 94 M・シューマッハ ★  予選2番手→優勝
 95 M・シューマッハ ★  予選2番手→優勝
 96 D・ヒル ★      予選P.P.→優勝 濡
 97 J・ヴィルヌーブ ★   予選P.P.→優勝
 98 ハッキネン ★       予選P.P.→優勝
 99 ハッキネン ★       予選P.P.→優勝
 00 M・シューマッハ ★  予選3番手→優勝
 01 クルサード      予選5番手→優勝 濡
 02 M・シューマッハ ★  予選2番手→優勝
 03 フィジケラ      予選8番手→優勝 濡
 04 モントーヤ      予選2番手→優勝 濡
 05 モントーヤ      予選2番手→優勝 濡
 06 マッサ        予選P.P.→優勝
 07 ライコネン ★       予選3番手→優勝
 08 マッサ        予選P.P.→優勝 濡
 09 ウェバー       予選2番手→優勝
 10 ベッテル ★        予選2番手→優勝
 11 ウェバー       予選2番手→優勝
 12 バトン        予選2番手→優勝 濡
 13 ベッテル ★        予選P.P.→優勝
 14 N・ロズベルグ     予選P.P.→優勝
 15 N・ロズベルグ     予選P.P.→優勝
 16 ハミルトン      予選P.P.→優勝 濡
 17 ボッタス       予選P.P.→優勝
 18 ハミルトン ★       予選P.P.→優勝
 19 M・フェルスタッペン  予選P.P.→優勝
 20

 ★はその年のチャンピオン
 「濡」は雨もしくはウェットコンディション
 ※予選順位はペナルティ降格を含みません

まずはこのサーキット「通しの」戦績一覧です。第一期は78年の一年間だけジャカレパグアでのお試し開催があったため欠けており、第二期は昨年2020年は例のCOVID-19により非開催となっています。
優勝者のラインナップを見てみると第二期の91年以降、2002年あたりまで10年は見事なまでの★マークが続いています。この頃は「ブラジルGPを制するとそのシーズンを制する」なんてジンクスが謳われました。それも近年こそシーズン終盤に設定されていますが、この時代は開幕戦から第3戦とシーズン序盤に設定されていたため、観る側からすると「ブラジルGPを勝てたということはチャンピオンも、、」みたいな予感がしたのを思い出します。また今でこそ最終戦ではなくなってしまいましたが「チャンピオン決定の舞台」をなしていた時代もあります。05年と06年でチャンピオンを獲得したアロンソをはじめ、翌07年はライコネン、08年のハミルトン、09年のバトン 、さらには12年のベッテルもこの地でチャンピオンを決めています。ただし「ブラジルGPを優勝してチャンピオンを決めた」まで絞ると、上記一覧にあるように07年のライコネンのみとなります。最終戦で自力で勝ちチャンピオンってのが一番カッコいいシーズンの締めくくり方ですね。

少し本題から脱線してしまいましたが、優勝者の予選順位を整理するとこうなります。
IMG_2627
 予選P.P. →優勝:17回 45.9%
 予選2番手→優勝:12回 32.4%
 予選3番手→優勝:  3回   8.1%
 予選5番手→優勝:  1回   2.7%
 予選6番手→優勝:  3回   8.1%
 予選8番手→優勝:  1回   2.7%

ポールポジションと予選2番手がほとんどを占め、以下は4番手と7番手以外からちらほら8番手までで優勝が現れています。毎度ながらこの4番手と7番手がぽっかりと空いて優勝していない「理由」を知りたいですよね。7番手は後方寄りなので「たまたま」で納得できますが、4番手については、それ以降でいくつか勝者があるわけですから謎であり、何か怨念的なものでもあるのかと疑ってしまいます。本当はその点を掘り下げて解明していく方が面白そうですが、今回もやりませーん、ごめんなさーい(笑)

似て非なる第一期と第二期で違いがみられるかどうか分解して整理しました。

〈第一期 1973〜77,79,80年〉
IMG_2626
 予選P.P. →優勝:  2回 28.6%
 予選2番手→優勝:  3回 42.9%
 予選6番手→優勝:  2回 28.6%

〈第二期 1990〜2019年〉
IMG_2625
 予選P.P. →優勝:15回 50.0%
 予選2番手→優勝:  9回 30.0%
 予選3番手→優勝:  3回 10.0%
 予選5番手→優勝:  1回   3.3%
 予選6番手→優勝:  1回   3.3%
 予選8番手→優勝:  1回   3.3%

第一期の対象は7つ、第二期は37と割合に偏りが大きいため単純比較はできませんが、第一期は「ポールトゥウィンよりそれ以外からの優勝が多い」のが特徴的です。レースとして「予選は予選、決勝はまた別物」として楽しむことができる点はいいですね。第一期のポールシッターの戦績をみていくと、77年のハントは2位フィニッシュした以外の4ケースは全てリタイヤに終わっています。細かなリタイヤ理由までは追いきれていませんが、インテルラゴスは開催GPの中でも高標高かつパンピーな路面あることが有名で、当時のマシン信頼性を考えても必ずしもポールシッターが有利ではなかったことがうかがえます。
一方第二期は他のサーキットと同様にポールトゥウィンが最も多く、後方になるにつれて優勝の確率が下がっていきます。特に08年の「悲劇のマッサ」以降、優勝者はフロントロウから輩出しています。例外なくココでも優勝するにはフロントロウからのスタートが絶対的有利であることがわかりました。来シーズン以降のマシンレギュレーションではオーバーテイクが容易となり、この辺の固定概念が少しでも緩和してくれると、決勝レースもより盛り上がるのですが。

最後はいつものように異例の下位スタートからの優勝例を振り返り締めくくりたいと思います。今回も1ケースのみ、18年前の03年の8番グリッドからの優勝になります。

〈下位スタートから優勝を挙げたレース〉
 03 フィジケラ 予選8番手→優勝 濡

このレースも16/3/14に「過去のレースを振り返る」で扱っています。余談ですがこれを書いた頃のmiyabikunは仕事帰りの駅のエスカレーターから転落して左手足骨折のため、入院先の病院で書いたものです。ちょっと素材が古く乏しいため、今回用にリメイクしています。IMG_2723
第3戦に行われたこの決勝は雨に見舞われ、ローリングスタートとなりました。地元GPでポールポジションを獲得したフェラーリのバリチェロはダッシュにもたつき、開幕戦を制したマクラーレンのクルサードに先攻を許してしまいます。
IMG_2724
IMG_2726
その後、第2戦で初優勝を挙げた4番スタートのライコネンがバリチェロ、さらには先輩クルサードをターン1でかわし、2戦連続優勝の可能性を見出しています。IMG_2727
雨は止み、徐々に路面が乾きはじめた頃、サーキットの様相が急変します。17周目にジョーダンのファーマンがトヨタのパニスを巻き込むクラッシュ。
IMG_2730
ウィリアムズのモントーヤ、ジャガーのピッツォニアが24周目にコースオフによるクラッシュでレースを終えると、まだ処理が終わる前の2周後にフェラーリのM・シューマッハまでもが同じ場所でコースオフ。
FullSizeRender
ミナルディから参戦のJ・フェルスタッペンにIMG_2732
ホンダのバトンもリタイヤ。一台、また一台と戦列を離れていきます。
IMG_2735
何度もセーフティカーが入り、事故処理を繰り返す中、8番スタートのジョーダンのフィジケラがライコネンのミスの間にパス。マクラーレン三連勝に待ったをかけます。
IMG_2736
53周目の最終コーナー手前でジャガーのウェバーが派手にクラッシュし、タイヤがトラック上に散乱。黄旗が振られるも間に合わず
IMG_2737
ルノーのアロンソがそのタイヤに衝突して恐れていた二次被害が出てしまいました。赤旗中断となります。
IMG_2738
レースを再開するには危険と判断され、ジョーダンのフィジケラが初優勝を確信したものの
IMG_2739
表彰台の中央にはライコネンが選ばれて、初優勝から二戦連続となる優勝、マクラーレンの開幕三連勝で一旦幕を閉じます。
IMG_2741
ところが審議の結果、56周目に提示された赤旗に対して「2周前の順位を正とする」裁定が下り、翌サンマリノGPにライコネンからフィジケラへと優勝トロフィーが返還され、フィジケラの初優勝が決まりました。8番手からの優勝は異例中の異例、実に荒れたサバイバルレースによってもたらされたものです。
IMG_2742

GPウィーク直前に行ってきた「優勝を可能とする予選順位」ですが、この先に行われるカタールGP、サウジアラビアGPは共に初開催のため、この企画はできません。よって次回は最終回であり最終戦のアブダビGPとなります。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

アメリカと同様に日本からみれば「早朝開催」のメキシコです。舞台は変わらずエルマノス・ロドリゲスで行われますが、GP名は今回から「メキシコシティGP」に変わります。特異な標高と日本との時間帯は相変わらずです。歴代優勝者の予選順位をみていきましょう。

メキシコGPはF1創成期にあたる60年代に8回、世界的に認知と人気の高まった80年代に7回、そして2015年から現代まで5回の計20回開催されています。行われたり行われなかったり極端なメキシコGPも近い将来また開催されなくなるのではないかという噂もちらほら耳にしますが、現在はペレスの活躍もあり、GPウィークは大盛り上がりですね。
まずメキシコGPの歴史を簡単におさらいしておくと、初開催は1963年とかなり昔になります。サーキット自体は前年の62年に完成し、読み方にいささか自信はありませんが当時は「マグダレーナ・ミシウカ」という名のサーキットとして、F1のノンタイトル戦が行われています。そのレースで奇しくも地元の若手ドライバーであるリカルド・ロドリゲスが事故死したことがきっかけで、サーキット名を「リカルド・ロドリゲス」に改称、70年シーズンまで使用されました。メキシコGPが無くなった71年に今度はリカルドの兄ペドロもドイツのスポーツカーレースで事故死したため、その兄弟の功績を讃え「エルマノス・ロドリゲス」(ロドリゲス兄弟)とさらに改称して現在に至ります。
このサーキットの特徴といえば、他に類をみない2,285mという高い標高下にあること。マラソンで「高地トレーニング」という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、F1マシンも「息を吸って力を生み出す機械」ですから、マシンの心臓、つまりエンジン(パワーユニット)にとって負荷のかかるサーキットです。また空気が薄いということは、空気抵抗も小さくなりますから、普段のサーキットのようなドラッグ、ダウンフォースを得にくくなります。DRSの効果も通常より小さくなります。
image
サーキットは2回ほど改良を経て現在に至ります(水色→赤→黒の順)多くはコントロールラインから最も遠いセクター2の改良であり、ピストルのような、手羽先のような形の基本レイアウトは変わりません。こじんまりとした敷地の中、長いストレートに目が行きがちですが、それよりも中盤以降のコーナーをいかに速く走れるかがポイントです。また名物コーナーとして終盤にあったバンク付き小半径の180°右コーナー「ペダルターダ」は無くなり、こちらも特徴的なスタジアムの観客席の中を通過するセクションに変更となりました。今は「ナイジェル・マンセル」という名が付けられています。第二期メキシコGPの最終覇者であり、その年のチャンピオンですね。
IMG_2612

《エルマノス・ロドリゲスの歴代優勝者の予選順位》
 63 クラーク ★        予選P.P.→優勝
 64 ガーニー       予選2番手→優勝
 65 ギンサー       予選3番手→優勝
 66 サーティース     予選P.P.→優勝
 67 クラーク          予選P.P.→優勝
 68 G・ヒル ★      予選3番手→優勝
 69 ハルム        予選4番手→優勝
 70 イクス        予選3番手→優勝

 86 ベルガー       予選4番手→優勝
 87 マンセル       予選P.P.→優勝
 88 プロスト       予選2番手→優勝
 89 セナ         予選P.P.→優勝
 90 プロスト       予選13番手→優勝
 91 パトレーゼ      予選P.P.→優勝
 92 マンセル ★       予選P.P.→優勝

 15 N・ロズベルグ    予選P.P.→優勝
 16 ハミルトン        予選P.P.→優勝
 17 M・フェルスタッペン 予選P.P.→優勝
 18 M・フェルスタッペン 予選2番手→優勝
 19 ハミルトン ★      予選4番手→優勝

 ★はその年のチャンピオン
 「濡」は雨もしくはウェットコンディション
 ※予選順位はペナルティ降格を含みません

3つの時期がはっきり分かれた戦績一覧です。当然ながら空白期間も長いため、それらの期をまたいでドライブした者はいませんし、マシンレギュレーションも全く異なります。ひとまず全20回全ての順位をまとめてみます。
IMG_2616
 予選P.P.   →優勝:10回 50.0%
 予選2番手  →優勝:  3回 15.0%
 予選3番手  →優勝:  3回 15.0%
 予選4番手  →優勝:  3回 15.0%
 予選13番手→優勝:  1回    5.0%

優勝は5つの予選順位から生まれ、ポールトゥウィンを筆頭に順位が下がるとその優勝回数も減っています。ポール、2番手、3番手、4番手までは妥当に続くのは他とも変わりなくいつも通りですが、飛んで予選13番手からの優勝も一度だけありました。90年のフェラーリ時代のプロストによるものです。せっかく3つのグループに分かれているし、マシンもドライバーも異なりますから、細分化したらもう少し時代ごとの特徴がみられるかもしれません。

〈第一期 1963〜70年〉
IMG_2615
 予選P.P.   →優勝:3回 37.5%
 予選2番手  →優勝:1回 12.5%
 予選3番手  →優勝:3回 37.5%
 予選4番手  →優勝:1回 12.5%

こちらが第一期メキシコGPの8年間の優勝者の予選順位になります。時代はちょうどJ・ブラバムやクラーク、G・ヒルといった強豪がひしめき合い、マシンは葉巻型のシンプルなフォルムから少しずつ「ダウンフォース」という思想が生まれ、ウィングが前後に取り付けられた頃です。その中でも65年に3番手から優勝を挙げたギンサーは「F1でのホンダ初優勝」でもあります。
母数が少ないのでグラフにしても面白みがありませんが、ポールポジションと3番手が3回の同数で、2番手と4番手が1回ずつとなっています。この時代のメキシコGPは横一列二台の配置による決勝スタートが採用されてはいたものの、現在のような「縦に綺麗に二列」の配置ではなく、千鳥配置を採っていました。

〈第二期 1986〜92年〉
IMG_2614
 予選P.P.   →優勝:4回 57.1%
 予選2番手  →優勝:1回 14.3%
 予選4番手  →優勝:1回 14.3%
 予選13番手→優勝:1回 14.3%

ターボによるパワフルF1から、大排気量のNAかつハイテクF1に移行する時代の7年間の戦績です。円グラフの色分けは統一にしていますので、予選3番手をなすグレーに変わって、異端児である濃い青の予選13番手が加わっています。
プロストの13番手はレアケースということで除外しても、ポールポジションからの優勝に優位性が表れています。

〈第三期 2015〜19年〉
IMG_2613
 予選P.P.   →優勝:3回 60.0%
 予選2番手  →優勝:1回 20.0%
 予選4番手  →優勝:1回 20.0%

最後は最近のメルセデス天下、いや現代のパワーユニットで行われる5回の戦績になります。チャンピオンこそ5回全てでメルセデスが獲りましたが、17年と18年の2回はレッドブルのフェルスタッペンが獲っているんですよね。あと1回フェルスタッペンが獲れれば、地元のペレスを差し置いて「メキシコマイスター」になりますし、勝率もメルセデスと五分五分に並びます。
割合はやっぱりポールトゥウィンが最多。さらにはこの時代もなぜだか3番手からの優勝がありません。この5年間の「3番手スタート」がどうだったかを見返すと、15年のベッテルはリタイヤ、16年のフェルスタッペンはタイムペナルティを食らって4位フィニッシュ、17年のハミルトンは9位フィニッシュ、18年もハミルトンで4位フィニッシュ、最終19年のベッテルが何とか一つ順位を上げた2位表彰台と、若干呪われている感がありますね。


時代ごとに分けても明確な理由や根拠はありませんでしたが、エルマノス・ロドリゲスにおいても「ポールスタートが絶対有利」であることと「3番手は呪われがち」ということだけはわかりました(笑)
最後はいつものように下位スタートからの優勝例を簡単に振り返っておきましょう。振り返るのは一択しかありません。90年のレースです。

〈下位スタートから優勝を挙げたレース〉
 90 プロスト 予選13番手→優勝

このレースも2年前にあたる19/10/25に「過去のレースを振り返る」で扱っていますので、細かくはそちらをご覧下さい。
シーズン前半の第6戦に設定されたメキシコGPは雨季に入り、ただでさえバンピーな路面がいつも以上に難しい状況で迎えました。予選はマクラーレン・ホンダのベルガーがポールポジションを獲得。2番手はウィリアムズのパトレーゼ、3番手はマクラーレンのセナが続き、フェラーリ勢はマンセルが4番手、プロストは13番手に沈んでいます。IMG_2617
IMG_2618
決勝のスタートは2番手のパトレーゼの蹴り出しがよく、ポールのベルガーをパス。マクラーレン2台が追う形に変わります。
IMG_2619
2周目にベルガーに代わって2位に浮上したセナがパトレーゼをかわし、後続を少しずつ引き離しにかかりました。ところがタイヤチョイスに失敗したパトレーゼは後方から束になって猛追するフェラーリにやられ、少しずつフェラーリの順位が浮上し始めます。
IMG_2620
最大で18秒のリードを築いたセナもタイヤフィーリングに不安感を持ち、タイヤ交換を要求しますが、チームからはステイアウトを指示。
IMG_2621
IMG_2622
いよいよセナにフェラーリ2台が襲いかかります。IMG_2623
フェラーリ2台にかわされたセナはレース残り6周でタイヤバーストし、ピットに戻るもセナはレースに戻らず。
IMG_2624
予選で失敗しつつも、決勝では正しいタイヤチョイスをし、決勝は無理なく順位を上げたプロストが頭脳勝ちしています。

今シーズンも終盤に入り、ドライバーズ、コンストラクターズの両チャンピオン争いが激化してきました。地元の英雄ペレスも今シーズンからは「勝てるマシン」で凱旋を迎えます。仮にペレスが予選、決勝とも好調でも、優勝は譲る形になるのかな。ペレスも地元で勝ちたいだろうな。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ