年末年始など寒い時期になるとこういった知らせを耳にする気がします。昨年は開幕直後のC・ホワイティングやヨーロッパラウンドに入る頃にN・ラウダと立て続いて、F1界に不幸が重なりましたね。そして今年も入って早々に舞い込んできました。日本でF1をテレビ観戦したことがある方なら、一度は耳にしているであろう声。モータージャーナリストの今宮純氏が亡くなりました。中継や解説に無くてはならない人物でmiyabikunもF1ファン初期の頃から大変お世話になりました。経歴についてあまり詳しく知りませんが、今回は掲載予定を急遽変更し、今宮氏に対してmiyabikunが思う印象を言葉にし、偲びたいと思います。

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今宮純
 1949年3月18日生
 神奈川県小田原市出身
 慶應義塾大学文学部図書館学科卒業
 1973年から執筆開始
 1981年からピットレポート開始
 1987年からF1解説開始
 2020年1月4日没(70歳)

年齢的には昨年亡くなったラウダと1ヶ月違いの生まれということで、miyabikunの父と母の間の世代、いわばちょうど親くらいの方。母はまだ存命ですが、このご時世70歳で亡くなるのはまだまだ若過ぎましたね。
大学時代は自動車部に所属し、卒業後は特定の企業に就かずに自動車情報誌に記事を投稿することから始めたようです。文系の出身ですからメカニカルな面から入るというよりかは自動車に魅了された「生粋のマニア目線から」といったところでしょうか。慶應義塾大学出身なのは知りませんでした。優秀な方だったんですね。発言や立ち振る舞いからもインテリな香りはプンプン感じます。

まだF1が日本にあまり知られていない1973年ザントフォールトでの第10戦オランダGPを現地取材されています。奇しくも今シーズンからオランダGPが予定されていますが、残念ながらそのGP観戦には間に合いませんでした。きっと存命であれば当時のオランダGPとの対比を絡めつつ、フェルスタッペン人気をクローズアップされていたんだろうと想像します。
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1987年から始まった日本でのF1全戦放送では初期から解説者に就き「F1放送の顔(声)」と言っても過言ではないくらいの貢献度でした。miyabikunのみならず皆さんもF1を理解する上で重要な位置をなしていた方だったと思います。実直で落ち着きのある語り口はF1の走行シーンとぴったりリンクして頭に刻み込まれています。

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今宮氏の解説で印象的だったのは「数字」「歴史」を盛り込むことが多かったように思います。例えば「このレースが◯戦目」とか「ここで優勝すれば◯◯とタイ記録」「数年前も◯◯が似た事故を起こしていた」とか。miyabikunも観戦記だの過去のレースだのアマチュアF1ジャーナリスト気取りなわけですが、数字を並べたり絡めたりするあたり、どことなく似ていませんか?!意識して真似しているわけではないのですが、これ今宮氏の影響なんじゃないかなと思いました。長い歴史を持つF1ですし、順位や速さ、ポイントを争うF1ですから、単に◯◯が速いとか、抜き方がズルいだ何だというよりかは、それらを絡めた方が盛り上がるし見方も変わると思ってやっています。幼い頃から中継を観て今宮氏の解説を聞き、そういう「F1の見方」が浸透しているんでしょうか。IMG_1368
また時に今宮氏の解説は「無線の英訳能力が無い」や「メカニカルな面など専門性に欠ける」という批判も耳にしました。語学力についてはmiyabikunも恥ずかしながら言い訳できませんが、同じくフジテレビ時代の解説陣には工学の教養もある川井一仁氏をはじめ、実際にモータースポーツでメカニックの経験のある津川哲夫氏や森脇基恭氏なども就いています。それと比較すると感情論や感覚論で説く色が強い今宮氏の解説は少々物足りないと思う方もいたかと思います。でもF1放送は何もモータースポーツマニアや専門家ばかりが観るのではなく「多くの方に関心と楽しさを受け入れてもらう」ことにあると思います。miyabikun個人的にはその角度の解説でも充分楽しむことはできるし、逆に技術だ専門用語だ並べ過ぎるより、これでよかったのではないかなと考えます。現にmiyabikunもブログに書き記すにあたり、多少の専門用語は出てくるにせよ「F1自体を観始めたばかりの方」「久々にF1を思い出す方」「今回初めてブログを読む方」などにも取っつきやすい書き方にしたいと心がけています。そういった思いや考えが今宮氏にもあり、まだ日本にF1に馴染みの無い時代にファンの関心をグッと掴んでこれたんだと思います。

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訃報を聞き、改めて今シーズンの中継を振り返ると、最後にカメラの前に姿が映ったのは第17戦日本GPの「レース前GPニュース」であり、解説された決勝の最後は第19戦アメリカGPでした。声を聞く限り、最近呂律が悪くなったなと感じつつも、いつも通りの解説で違和感は感じませんでした。ただ顔が映ると急に痩せ、顔色を見るとどこか身体に不調があったのかなと不安に感じますよね。まさかこんな短期間で亡くなられるとは、体調が優れない中での解説だったのかと想像すると、心が痛くなります。
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妻の雅子氏と共に長くモータージャーナリストとして活躍され、時には感情的に感傷的にも語った今宮氏。2020年のF1観戦も楽しみにされていたことでしょう。もうあの落ち着きのあるソフトな語り口を聞くことはできなくなりましたが、今後も遠くからF1観戦し、大好きだったセナと思う存分に対談してもらえたらいいなと思います。心からご冥福をお祈りします。