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真ん中にド派手な色使いの展望台。そして、周りには何もないド田舎。2007年を最後にカレンダーから外れていたアメリカGPは、5年振りに新設のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(以下COTA)で復活を遂げました。2012年のアメリカGPです。
この年は近年稀にみる激闘がみられた年でしたね。ラリーから3年振りにライコネンがF1に復帰し、M・シューマッハを含めたチャンピオン経験者6人肩を並べることになりました。さらには今では想像もつかない開幕から7戦連続8人の勝者を生み出して、レッドブル&ベッテルの3連覇に待ったをかけています。この年は最終戦の一つ前となる第19戦に設定されたアメリカGPまでに、ベッテルがランキングトップの255ポイント。そして245で2位のアロンソまでがチャンピオン争いの対象となり、3位につける復活ライコネンは前戦アブダビGPで久々優勝を挙げるも、チャンピオン争いから脱落しています(アブダビGPは以前に振り返りましたね)

お決まりのヘルマン・ティルケによるデザインで初開催のCOTAは世界各国の名物コーナーを模していますが、正直未知数です。ただ明らかにわかっていることはコントロールライン付近の走行ラインはグリップに富み、偶数側のラインは先に控える険しい上り鋭角ターン1を考慮してもグリップが無く、不利だということ。予選はベッテルがCOTAの初ポールをもぎ取り、コンストラクターズチャンピオンに王手のレッドブルの邪魔をするかのようにマクラーレンのハミルトンが割って入っています。ベッテルより先に3回チャンピオンを獲れるかアロンソの予選はロータスやフォース・インディアにも先行されてなんと9番手。4番手のグロージャンがギヤボックス交換ペナルティによって9番手に降格するため、その結果一つ順位を上げた偶数側8番手となります。なお日本GPで表彰台登壇済みの小林可夢偉は相方ペレスと並ぶ16番手でした。

《予選結果》
   1 S・ベッテル    (レッドブル・R)
   2 L・ハミルトン(マクラーレン・M)
   3 M・ウェバー   (レッドブル・R)
   ※タイヤはピレリのワンメイク

偶数側、それもベッテルとも大きく離れたフェラーリ陣営は頭を使いました。事もあろうに、決勝を前に6番手繰り上がりの相方マッサのギヤボックスを開けて、交換も何もせずまた戻す。するとどうなるか
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交換はせずも開封したためグロージャンと同じ5位分降格ペナルティが発生します。するとするとどうなるか
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じゃじゃーん、アロンソ1up!奇数側7番手をゲットなりー!F1とはスポーツでもあり「一定規則の中でチャンピオンを争う競技」です。レギュレーションの拡大解釈で間違いはありません。ただ、マッサは自力でアロンソより速く走ったのに、もはや「モノ扱い」

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ならばみせてもらいましょう、犠牲を無下にしない立派な結果を。
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おお!
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なるほど。7番手スタートからターン1出口までに4位まで浮上。さすがアロンソ様だ。そして偶数側のグズグズなスタートを見ていると、前評判通りの結果ですね。

ベッテルが気にしていればいいのは「アロンソより前にゴールする」こと。2位のウェバーに対しても得意の「1秒以上差のDRS圏外クルージング」で早くもイージーレースを作り始めました。
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そんなことどうでもいいけど、偶数スタートで3位に順位を下げたハミルトンはただレースで勝てればいい。邪魔なウェバーを攻め立てています。ウェバーはハミルトンに抜かれると、オルタネーターの不調によりわずか18周で朽ち果てています。これでアロンソが3位に浮上しました。期待しても役には立たない、仕方ない、上出来なナンバー2だから。
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ギヤボックス交換ペナルティが無ければ4番手だったロータスのグロージャンは元気がいいです。
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黒と銀の出戻りチャンピオン2人をインから一気抜き!
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その勢いでヒュルケンベルグもいっておく?!
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勢い余って、誰にも触れずの単独スピン。何やってんだ?!6年経った今でもやってることがそう変わらないという。。

アロンソもスタートダッシュで一気にタイヤを使ったかコースアウトするようになり、22周目に2位ハミルトンと合わせてミディアムからハードタイヤへチェンジ。
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ただそのハードタイヤは仕上がりが良くなく、新品のはずが初めからハードを履き続けているマクラーレンのバトンに追い抜かれる。これはアロンソに限らずハミルトンもベッテルも同様でした。
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前回インディアナポリスでの2007年アメリカGPを制したのはハミルトンでした。チャンピオン争いには関係ないけど、COTAの初優勝が欲しい。第2スティントでファステストラップを積み重ねながらベッテルとのギャップを詰めにいきます。
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各サーキットでの適応力が高く先手必勝を得意とするレッドブル、対してパワーと伝統のマクラーレンがKERS放出のDRS開放で20km/hの速度差で最接近!
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ベッテルもハミルトンに負けじとファステストラップを記録して逃げる!そして42周目
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ハミルトンがベッテルをインから食って逆転!今のベッテルの敵はハミルトンでなくアロンソです、無駄な抵抗せず。今回はそれでいい。

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《決勝結果》
   1 L・ハミルトン(マクラーレン・M)
   2 S・ベッテル   (レッドブル・R)
   3 F・アロンソ   (フェラーリ・F)

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カウボーイハット、よく似合いますね。初開催のCOTAはハミルトンが制しました。アロンソも3位を堅実に守り260ポイント、ベッテルとのポイント差は13として何とか最終戦ブラジルGPまで持ち越しています(最終戦も以前に振り返っています)

レース後のハミルトンの回答が印象的です。
「アツくなっていたベッテルとあなたの違いは?」
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「勝ちたい気持ちがベッテルに勝った」
ハミルトンやベッテルのレースはポールトゥウィンが多めということもあり、面白みも少なく今まであまり振り返ってきませんでした。でもこの10年近くの期間ずっと最強最速を築いてきてきたのは間違いなくハミルトンです。近年は若い頃のおごりや尖りも薄れて、むしろ賢さと冷静さを兼ね備えた「非の打ち所がない」完成形になりつつあります。