同じ乗り物である航空機とF1マシン(自動車)は鉄道や船舶以上に密接な関係があり、航空機由来の技術がF1マシンに多く享受されています。


例えば「フライ・バイ・ワイヤ」(FBW)という技術が航空機で採用されています。以前の航空機はパイロットが操縦桿(自動車でいうハンドル)を動かし、そこに付いているワイヤを引っ張ったり押したりする加減で各種の舵(方向舵や昇降舵)を機械的に、または油圧を介して指示を送っていました。それによって操縦桿にダイレクトに負荷がかったり、場合によってワイヤが断線でもしたら、指示系統が途絶えてしまう危険性もありました。
そこで「ワイヤを機械的に押し引きする機構ではなく、電気信号やその強弱で指示先のコンピューターを介し油圧などに変換・伝達する」ものを開発しました。コンピューターの力を借りて、人力操作を人工的に電気制御すれば、より操縦も楽になり、レスポンスタイムも向上します。
かなりかい摘んで話しましたが、この技術は航空機で採用になった後、自動車業界、特にF1で積極的に導入開発され、先日書いたマクラーレンMP4/7Aが1992年の第3戦ブラジルGPにて初採用して以降広く伝わりました。F1をはじめとした自動車業界ではこの機構を「スロットル(ドライブ)・バイ・ワイヤ」と呼んでいます。結果、スロットルを絶妙に扱った際のニュアンスを電気信号でコンピューターを介して再現したり、エンジンマッピングの情報を追加して変換するなどの機械的なワイヤ操作では難しかった指示なども容易になりました。近年のマシンにはさらに「ブレーキ・バイ・ワイヤ」なるものがブレーキ時の回生用にも使われています。


またもう一つ、航空機で採用された技術がF1にも一瞬採用され、のちに禁止になった代表的なものがあります。それは「アンチロック・ブレーキ・システム」(ABS)です。市販車には今となれば大抵装備され、当たり前になった技術ですが、これもそもそも航空機(さらに起源は鉄道)から持ち込んだ技術です。
ブレーキングはタイヤ(車輪)そのものや同様に回転するディスクなどに制動装置を押し付けて行います。もちろん強力に制動装置を働かせれば車輪やディスクはピタッと止めることができても、制動装置そのものの摩耗やタイヤをロックさせて地面と擦れてしまっては、ゴムが発する白煙や路面に黒いスキッドマークを残すのみで、必ずしも短い制動距離になりません。そこでブレーキをかけ、タイヤがロックしそうになったらブレーキを機能させる空気圧や油圧を一瞬軽減させて、無駄なタイヤロックを防ぎ、タイヤを転がしつつ制動力を地面に絶やさず与える技術、それがABSです。航空機では「アンチ・スキッド」と呼ばれます。航空機でいえば他のブレーキ機能(空力ブレーキやエンジンの逆噴射)が不能な
際の滑走路のオーバーラン、鉄道においても停車位置をオーバーしたり、緊急停止時に止まらないのでは困ってしまいますもんね。
F1においては1983年にロータスで採用され、1993年シーズンのウィリアムズFW15Cはアクティブサスペンションによる車高調など電子制御の塊であることも相まって「リアルラジコンカー」と揶揄され、そのシーズンをもって「空力デバイス」の扱いで禁止を食らってしまいました。確かにブレーキをロックさせず減速できたら、タイヤにフラットスポットを作ったり、路面にスキッドマークを付けたりもしなくなり、だいぶ有利です。今のF1レースシーンでもブレーキングでロックしたり、タイヤを傷めてしまうのは、人間ではうまく調整しきれていない証です。それをABSは機械的に行う優れモノでした。


機械屋でもない単なる乗り物マニアが自分なりに分かりやすくかい摘んで「航空技術とF1マシンの関係」について書いてみました。あまり深くならないよう端折っていますし、また間違えている部分があれば、補足して頂けると嬉しいです。

空気を相手に空を翔ける航空機、方や空気を相手に路面を這いつくばって直線や曲線を速く駆け抜けるF1。フロントやリヤのウィング類、底面のスキッドブロックやリヤディフューザーも空気相手の技術。両極端なアウトプットの両者ですが、航空機の発展と技術もふんだんに使って、今のF1マシンは成り立っています。
さらに頭部保護装置もキャノピータイプで決まれば、さらに航空機との類似点や共通点も増えそうです。
Congratulations dear to you from the blog.



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