オーストラリアGPというと、未だに開幕戦のイメージの色濃くあります。オーストラリアGPが開幕戦を担っていたのはコロナ禍前となる2019年まで。2020年も予定では開幕戦として組み込まれて、半分開催、というか開幕してF1関係者をはじめファンもサーキットに足を運び始めた最中に中止が下ったという過去がありましたね。以降はバーレーンGPに開幕戦を譲る形となったわけですが、まだ(もう)3年前の話なんですよね。今回の過去のレースはバッチリ開幕戦の時代。とはいえ四半世紀前にもなる1999年開幕戦オーストラリアGPです(ちなみにオーストラリアGPと聞いて「最終戦」を連想する方はもうだいぶベテランファン)
この年も現在と同じ、メルボルンにあるアルバートパークで行われています。アルバートパークでのF1は以前この「過去のレース」で18/3/23に扱った1996年からで、今回このレースで4回目の開催となります。サーキットは池の周回路を用いたいわゆる「半市街地」で、チリが多く滑りやすいことに加え、当時はニューマシンによるトラブルも頻発するため、マシンポテンシャルを評価するのも難しいとされていました。
戦績確認については、開幕戦ということもあり、前年の結果から簡単におさらいします。
前年1998年はマシンレギュレーションが大幅変更。マシン全幅が200mm狭められ、タイヤはドライタイヤにも関わらず回転方向に3本ないし4本の溝が入る「グルーブドタイヤ」を導入してダウンフォース減少とコーナリングスピード低下が図られました。その結果、勢力図に大きな変化が生まれました。
今回からレギュラーシーズン観戦記で用いるドライバーズならびにコンストラクターズランキングを交えていくことにします。
《前年ドライバーズポイントランキング》
1 M・ハッキネン 100pts ★
2 M・シューマッハ 86pts(-14pts)
3 D・クルサード 56pts(-30pts)
4 E・アーバイン 47pts (-9pts)
5 J・ヴィルヌーブ 21pts(-26pts)
《前年コンストラクターズポイントランキング》
1 マクラーレン 156pts ★
2 フェラーリ 133pts(-23pts)
3 ウィリアムズ 38pts(-95pts)
4 ジョーダン 34pts (-4pts)
5 ベネトン 33pts (-1pt)
ブリヂストンとメルセデスエンジン、さらにはウィリアムズから移籍したエイドリアン・ニューウェイ加入を強みにシーズン前テストや開幕戦からマクラーレンが飛躍。ハッキネンが初のチャンピオンならびにコンストラクターズチャンピオンを獲得しました。一方で前年(97年)までチャンピオンを誇ったウィリアムズはルノーエンジン撤退とニューウェイの離脱もあって急降下。ランキング2位のフェラーリから100ポイント近く離される3位という屈辱的なシーズンを送りました。
近年は頭一つ突出したレッドブルの強さが目立っていますが、いつの時代もトップと中団チームには大きな隔たりがあるものです。すごいのはこの時代も現在もニューウェイがひと絡みしているところ。
大きなレギュレーション変更があった98年に対し、この99年は小変更に止まったわけですが、そうなれば勢力図の大きな変化も期待できません(いつしかの年とダブりますな)
予選はやはりマクラーレンのハッキネンがチームメイトのクルサードに0.5秒弱、フェラーリのM・シューマッハに対しては何と1.3秒の差を付けてポールポジションを獲得。チームが違うとはいえ、この大差を付けられてはぐうの音も出ません。ガン決まりした時のハッキネンはチームメイトも手が付けられぬ(いつの時代にもいるんですなぁ)
この年は日本人ドライバー1人が参戦しています。中嶋悟の秘蔵っ子(息子ではない)高木虎之介がティレル消滅によりアロウズへ移籍、チームメイトのデ・ラ・ロサの一つ上となる17番手を獲得しています。また無限ホンダを搭載して2年目のジョーダンはフレンツェンが5番手、前々々年チャンピオンのヒルは9番手につけています。
《予選結果》
P.P.M・ハッキネン
(マクラーレン・メルセデス)
1分30秒462
2 D・クルサード
(マクラーレン・メルセデス)
1分30秒946(+0.484秒)
3 M・シューマッハ
(フェラーリ)
1分31秒781(+1.319秒)
※タイヤはブリヂストンのワンメイク
前年と変わらぬフロントロウと3番グリッドによるスタート(ちなみに翌2000年も3年連続で同じです)3位以下周回遅れというレースの再現になるのか?!
あら黄旗。何があった?!
13番グリッドのスチュワートを駆るハーバートから白煙。
そして何と4番手を獲得したチームメイトのバリチェロも同じ。いずれもオイル漏れ。せっかくマクラーレンMP4-13を真似っこして、エンジンも新製フォードエンジンをこしらえたのに。スタートやり直し。エキストラフォーメーションに移るも、動かないマシンが2台。
あ、3番グリッドのフェラーリ!M・シューマッハか。ギヤが入らない。さらに高木もエンジンストールにより2台は最後尾スタートを強いられます。M・シューマッハは前年最終戦の日本GPもやらかして最後尾に下がっていましたよね。年またぎの2戦連続で暗雲立ち込めます。
再スタートはこんな感じ。3番グリッドがガラ空き。マクラーレンは楽になりましたなぁ。2台ともボディカラーの煙を上げたスチュワートは上位グリッドのバリチェロにTカー(予備マシン)が与えられ、ハーバートは「0mリタイヤ」となっています。
今度は上手くいった。早速開幕戦ならではの慌ただしさとマシントラブルが出始めています。
2台で逃げるマクラーレン。3位に自動浮上したフェラーリのアーバインを徐々に引き離しにかかります。その頃M・シューマッハといえば、、
下位に紛れてマシンを1台ずつ抜いていく。観ている側としては、こちらの方が見応えはあるのね。とはいえ当時19歳目前の若かりしmiyabikunはハッキネンしか見ていなかったけどー(笑)
1台リヤウィングのないマシンがタイヤスモークを上げています。「555」
いや「ラッキーストライク」って、2台で絡んだのか?!
いや違います。1台です。正面から見ればわかる。左右非対称のカラーリングなんです。以前クイズにも出題した新興チームBARのエースで前々年チャンピオンのヴィルヌーブが14周目で散る。これによりセーフティカーが発動されます。
このタイミングでこれまで快調に飛ばしてきた2位クルサードは油圧に異常をきたし、四角いガレージにマシンをアタマから四角く突っ込む。
前々年チャンピオンのスピンにより、前年チャンピオンが築いてきたギャップも水の泡。第2ヒートが始まります。
セーフティカー明けの再スタート。さあみんな加速して!
加速、、おい、ハッキネンよ、加速して!
スロットルに問題が発生したハッキネンはみるみるうちに後続に呑み込まれる。セーフティカーまで好調だったマクラーレンは2台ともマシントラブルに泣くことになりました。
ドライバーのせいじゃないけど、怒る?!
となれば暫定トップはこの真紅のマシン。シュー、失礼アーバインということになります。千載一遇のチャンス!
まだまだレースは荒れます。一度F1から離れ渡米、CART(現 インディカー)で2回チャンピオンを獲得してウィリアムズから復帰したザナルディが21周目にスピン。
2回目のセーフティカーが入ります。この荒れっぷりこそ開幕戦。
後方から追い上げを強いられたM・シューマッハは右リヤのトレッドが剥離。
さらには29周目にベネトンのヴルツはサスペンション破損によるスピン。1台また1台とマシンが離脱していきます。
ひと昔、いやふた昔前までのF1開幕戦はマシントラブルに巻き込まれた者負け。逆を言えば、巻き込まれずに速く走ったものが栄冠を掴みます。トップは巻き込まれなかったこの方、アーバイン。実はこのレースがF1キャリア初優勝です。
《決勝結果》
1 E・アーバイン
(フェラーリ)
2 H・H・フレンツェン
(ジョーダン・無限ホンダ)
3 R・シューマッハ
(ウィリアムズ・スーパーテック(ルノー))
《ファステストラップとそのタイミング》
M・シューマッハ(フェラーリ)
1分32秒112 55周目/57周
参戦7年目、フェラーリ移籍4年目、82戦目にようやく表彰台の頂点に上り詰めたアーバイン。年数とレース数が今の計算と合わないのは、昔は年間16〜17戦だったためです。これでもハッキネン(参戦99戦目)やN・ロズベルグ(参戦111戦目)らチャンピオン獲得者に比べると、早い方なんですよね。勝てるマシンでもグッと堪えてチームに貢献し、鬼の居ぬ間に勝つ。このチャンスを掴むのも重要です。
ちなみにその赤鬼はタイヤトラブルがあり最後尾8位入賞圏外となるも、しっかりと終盤にファステストラップを計上。存在感だけは示しました。
波乱となった開幕戦は出走22台中8台のみの完走となるサバイバルレースでした。開幕戦はやっぱりこうでなくっちゃ(笑)
最後、参考までにレース後のドライバーズとコンストラクターズのランキングを載せておきます。予選で速さをみせたチャンピオンチームはノーポイントのシーズンスタートとなりました。
《レース後ドライバーズポイントランキング》
1 E・アーバイン 10pts
2 H・H・フレンツェン 6pts(-4pts)
3 R・シューマッハ 4pts(-2pts)
4 G・フィジケラ 3pts(-1pt)
5 R・バリチェロ 2pts(-1pt)
《レース後コンストラクターズポイントランキング》
1 フェラーリ 10pts
2 ジョーダン 6pts(-4pts)
3 ウィリアムズ 4pts(-2pts)
4 ベネトン 3pts(-1pt)
5 スチュワート 2pts(-1pt)
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