今回の「過去のレース」は24年前にあたる1997年第6戦スペインGPです。このシーズンを取り扱うのは5戦目。97年ってもう四半世紀近く前の話なんですね。つい最近、はさすがにウソだけどちょうどmiyabikunは多感な年頃であり、少し前よりよっぽどこの頃の方が印象にあります。このあたりからF1をテレビだけではなく実際に鈴鹿で生観戦できるようになりましたので、いわば青春のよき思い出です。

当時の第6戦ということで時期は5/25決勝と今シーズンより一歩先をいくタイミングで行われました。これまでの5戦の戦績をおさらいすると、開幕戦オーストラリアGPではマクラーレンのクルサードが優勝。第2戦ブラジルGPと第3戦アルゼンチンGPはウィリアムズの2年目ヴィルヌーブが連勝。第4戦サンマリノGPはチャンピオンのヒルに代わってウィリアムズのシートを得たフレンツェンが初優勝を飾りました。またスペインGPの前戦となる第5戦モナコGPは勝ちに飢えたフェラーリのM・シューマッハが制し、チャンピオン争いは混戦状態です。また、このシーズンは前年1996年からの大幅なレギュレーション変更はなかったものの、我が国代表ブランドであるブリヂストンがF1に供給を始めた年でもありました。初年は全12チーム参戦のうち、比較的下位に位置するアロウズ、プロスト、スチュワート、ミナルディ、ローラの5チームへの供給に止まっています。しかしこのレースはこれら「タイヤメーカー」による違いでレースが盛り上がりました。

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予選は6戦連続のウィリアムズが制し、ヒルの移籍に伴ってエースを仰せつかるヴィルヌーブがシーズン5回目となるポールポジションを獲得。相方フレンツェンと共にフロントロウに並びます。
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一方でウィリアムズの厚い壁をどうしても破れないM・シューマッハはマクラーレンとベネトンの2台にも遅れをとった7番手。
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また第2戦ブラジルGPで見事シーズン初表彰台を獲得したプロスト・無限ホンダのパニスはブリヂストン勢最高位の12番手におさまりました。トップチームにはまだ遠く及びません。ちなみに前年チャンピオンで下位チームのアロウズに移籍したヒルは15番手。日本人ドライバー2人、パニスの相方の中野信治はヒルの後ろ16番手、ミナルディから参戦してこちらもブリヂストンを履く片山右京は20番手となりました。

《予選結果》

 1 J・ヴィルヌーブ(ウィリアムズ・R・GY)
 2 H・H・フレンツェン(ウィリアムズ・R・GY)
 3 D・クルサード(マクラーレン・M・GY)
 ※GYはグッドイヤー

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エンジンストール続出によるスタートやり直しで迎えた再スタートは3番手のクルサードの蹴り出しがよく、ポールのヴィルヌーブに食ってかかります。また7番手スタートのM・シューマッハも抜群のダッシュを決め、2番手のフレンツェン以下の3台をまとめてパスして3位に浮上しています。偶数スタートはモタつきました。
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M・シューマッハの猛追は止むことなく、2位のクルサードもパスして1周目で5人抜きを敢行、逃げを打つヴィルヌーブを追います。
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ところが好スタートをみせたM・シューマッハはその後のペースが芳しくなく、14周目にクルサードに2位の座を奪われてしまいます。その原因は
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リヤにブリスターが発現してしまっています。グッドイヤーはこのスペインGPから改良型を導入しますが、タイヤに厳しいカタロニアで酷使され、早々と劣化が始まりました。この現象はM・シューマッハのみならず、ベネトンのベルガーもこの有様。2回ピットでは保ちそうもありません。IMG_9399

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またこのシーズンからアロウズに移籍した現チャンピオンはというと、、IMG_9368
油圧系のトラブルに見舞われて18周でリタイヤ。前所属のチームがトップを快走する中、未だ入賞すら無しと屈辱的な日々が続きます。

上位を走るトップチームのほとんどがタイヤに不安を抱えるグッドイヤーユーザーです。となれば、中団に沈みつつ、2回ピット戦略が可能なブリヂストンユーザーに希望の光が灯ります。
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パニスは3位走行のクルサードをストレートエンドでパス。日本のタイヤだけでなくパワーで上手のメルセデスエンジンを日本のエンジンで見事さばいていきます。IMG_9405
首位を独走するヴィルヌーブもタイヤには苦しみますが、どうにか保たせて2回ピットストップで逃げ切る。このレースは2回ピットで済ませた者勝ちとなりました。ちなみにヴィルヌーブはこれがF1での7勝目、父ジルの6勝を上回った瞬間でもあります。
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《決勝結果》
 1 J・ヴィルヌーブ(ウィリアムズ・R・GY)
 2 O・パニス   (プロスト・MH・BS)
 3 J・アレジ   (ベネトン・R・GY)
 ※MHは無限ホンダ、BSはブリヂストン

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結果的にはポールトゥウィンというカタロニアらしいレース内容ではありますが、パニス、アレジは生粋のフランス人であり、ヴィルヌーブもフランス系カナダ人という表彰台の面子が絶妙です。このレースは格下ながら奮闘したパニスに注目がいきます。IMG_9409
参戦間もないブリヂストンにとっては2回目の表彰台登壇で浜島氏も涙が止まらず。このレースでブランド力をさらに上げたブリヂストンは翌年98年には採用するチームをさらに増やすこととなり、F1の名サプライヤーの仲間入りを果たします。IMG_9412
またエンジンも無限ホンダという「日本ブランド」が光りました。スペインの地でフランス人を陰で支えた日本の力。誇らしいですね。

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