この時期になれば、例年今シーズンの新車の話題がちらほら出てきます。なかには既に公式発表されたり、発表日が明らかになったチームむありますね。今回はその新車でなくいつもの「旧車」に関する話題。待ち望んでいた方、すみません。
前回はメルセデス常勝チームになる直前の2013年型W04を取り上げました。チャンピオンマシンではありませんが、戦績をみれば突如強くなったわけではなく、やはりその礎となる何かを準備したり、積み重ねてきたことがわかります。ごく稀に突然好成績をおさめてしまうケースもなくはないのですが、今回のマシンもW04と同様、チャンピオンにはならなかったものの、このマシンをきっかけに格段に戦闘力を増し、浮上の兆しを見せつけながら以降しばらくの間F1界で猛威を振るいました。メルセデスフィーバーの一世代前、今から12年前にあたる2009年型レッドブルRB5が今回の主役です。

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《設計》
 エイドリアン・ニューウェイ
 ジェフ・ウィリス
 ピーター・プロドモロウ
 ロブ・マーシャル

《外見》
レッドブルのカラーリングの基本である「紺に黄色いクチバシ」は変わらずも、ノーズに入っていた水色のラインを中央に細くまとめ、攻撃的にみえる赤のラインを差し込み、このマシンの特徴であるVノーズを引き立たせています。また、昨年まで使用していたフロントウィング翼端部のフィンやエンジンカバー直上のフィンに採用されていた銀が無くなったためか全体的に統一感のある締まった見た目となりました。
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2009年は各所のマシンレギュレーション変更を伴い、以前ニューウェイが手がけたマクラーレンMP4-20に比較的に類似した前作RB4からは大幅に変わりました。フロントウィングは1,800mmまで広げられ扁平になり、ブリッジウィングなどは廃止されたことで「ちり取り」のような存在感があります。その一方で前輪付近から後輪までの領域のエアロパーツが禁止されたため、ゴテゴテ付加されたウィングやフィンは無くなり「ハダカ」にされたようにスリムになりました。さらには1,000mmあったリヤウィング幅は750mmに縮小し、ウィング高さは950mmとなったため、細く高く、見慣れなく異様な存在感をなしました。今までのF1マシンより頭でっかちにもみえて、この頃から「カッコいいF1マシン」の印象が徐々に削ぎ落とされたように思います。
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このマシンでまず目を引くのが非常に細く高めノーズコーンにサスペンション元端付近のこぶ。これは「Vノーズ」と呼ばれ、見辛いのですがノーズ下は「下に凸」のUの字を形成し、フロントサスペンションはニューウェイがマクラーレン時代に培ったゼロキールを導入しています。これはノーズ下の気流をスムーズにすることが狙いであり、ノーズ下の欠損した断面積をノーズ上でこぶ状に突出させて補っています。以前に「メルセデスW01」の時にmiyabikunが「指紋認証できそう」と冗談を言ったやつと同じです。細いノーズコーンはニューウェイがマクラーレン時代に何回かトライし、失敗したことが思い出されます。こちらも第8戦イギリスGPからカモノハシ型の太く扁平なタイプに切り替えています。
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また低重心を徹底的に追求、リヤのサスペンションは当時下火であったプルロッド式を採用。サスペンションの機構をギヤボックス前方下部に集中させました。こうするとギヤボックス上部に何もない空間ができ、断面自体をコンパクトにすることができます。過激で緻密な構造をなすこれの弱点としては、ドライブシャフト自体が「上向き『ハ』の字」となり、信頼性において懸念を生み、かつこのシーズンで大いに流行った複層をなす「マルチディフューザー」の搭載が容易でない点です。こちらはブラウンGPから遅れること8戦、ノーズコーン同様に第8戦イギリスGPからギヤボックスとサスペンション、リヤウィングの翼端板を下部に延長させる形で対処しました。
レッドブルのマシンといえば、リヤエンドの開口にも目が行きますね。戦闘機にみられるようなエキゾーストは排熱に使用し、リヤウィングの整流に貢献することを狙っています。ライバルが採らない工夫をふんだんに盛り込み、さらにトレンドにする、それがニューウェイデザイン。

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《シャシー》
 全長: - mm
 全幅: - mm
 全高: - mm
 最低車体重量:605kg
 燃料タンク容量: - ℓ
 ブレーキキャリパー:ブレンボ
 ブレーキディスク・パッド:ブレンボ
 サスペンション:フロント プッシュロッド
          リヤ    プルロッド
 ホイール:OZ
 タイヤ:ブリヂストン

《エンジン》
 ルノー RS27
  V型8気筒・バンク角90度
 排気量:2,400cc
 エンジン最高回転数:18,000rpm(制限)
 最大馬力: - 馬力(非公開)
 スパークプラグ:チャンピオン
 燃料・潤滑油:トタル

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《ドライバー》
 No.14 マーク・ウェバー   (全戦)
 No.15 セバスチャン・ベッテル(全戦)

前年までレッドブル創成期を支えたベテランのクルサードが勇退。若手育成チームであるトロ・ロッソで飛躍的な活躍をみせたベッテルがこの年から加わり、若返りと育成の成果が問われます。ただ成長伸び盛りのベッテルとはいえ、当然ながら先輩ウェバーがエースとしてチームをしっかりと牽引する役割を任されます。

《戦績》
 153.5ポイント コンストラクター2位
 (1位6回、2位6回、3位4回、4位3回ほか)
 ポールポジション5回

開幕戦オーストラリアGPの予選はブラウンGPの2台がフロントロウに並び、ベッテルはそれに続く3番手を獲得するも、ウェバーはフェラーリやトヨタらに先行を許す10番手(トヨタ2台の車両規定違反で8番手に浮上)とチーム間で差がつく形で終えます。決勝はベッテルがスタートで2位に浮上し、ポールのバトンを追いかけたものの、終盤のクビカとの接触により13位、ウェバーは一つ前の12番手とつまずきました。
第2戦マレーシアGPはスコールに見舞われハーフポイントのレースとなり、ウェバーが6位入賞の1.5ポイントを獲得しますが、ベッテルは1周遅れの15位完走ノーポイント。そして第3戦中国GPでようやくRB5が開花します。マルチディフューザー問題でパドックがゴタゴタする中、ドライコンディションでの予選でベッテルがQ3をたった1回の走行でチーム初ポールを獲得。雨となった決勝もピットアウト直後以外はトップを守ったベッテルがチーム初の優勝を遂げました。
ヨーロッパラウンドに入ってもベッテル、ウェバー共にコンスタントに表彰台に登壇するようになり、第9戦ドイツGPでウェバーは参戦132戦目にして初のポールポジションを獲得、そのまま当時最遅となる初優勝を掴みます。結果的に先輩ウェバーはドイツとブラジルの2勝を挙げて合計8回の表彰台。ベッテルは中国、イギリス、日本と最終戦アブダビGPの4つの優勝を含む8回の登壇でドライバーズポイントは84となりますが、トップのバトンに11ポイント足らずのランキング2位で締めくくっています。IMG_8300
チャンピオンを獲得したバトンと惜しくも2位で終えたベッテルの戦績を比較すると、全17戦のうちバトンは前半の7戦で5勝を挙げ、あとは優勝は無いものの第12戦ベルギーGPを逃した以外は必ず8位入賞圏内でフィニッシュしています。一方ベッテルは前半8戦で2勝、後半9戦で2勝のトータルで4勝と1つ足りなかった以外にも、5レースのノーポイントがあった点が大きく響いています。それでも逃げパターンを形成したブラウンGPのバトンの相方バリチェロには競り勝ったことでチーム自体も自身のキャリアとしても上昇傾向であったことを証明しています。
マシン側の弱点となったのはリヤエンドの気流を低くすべく、少数派のリヤのプルロッド型にしたためマルチディフューザーへの対応が構造上遅れたこと。またKERS(運動エネルギー回生システムで今でいうERS)をシーズン通して搭載できなかったため、ライバルのKERS搭載車と比べスタートがやや伸びなかったという点も足かせになりました。IMG_8304
チャンピオンを逃してしまったことは悔やまれる結果ですが、これら弱点は翌2010年は克服した形で正常進化させたRB6を登場させ、見事にベッテルによるダブルチャンピオンを獲得、以降13年までレッドブルは4年連続のダブルチャンピオンを続けました。上昇レッドブルを作り上げたのは完成度の高いこのマシンでの弱みを克服することにあったわけで、ニューウェイは「このマシンが父であった」と後に振り返っています。
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RB5で得た教訓、それと相まって「勝ち方を覚えた若き才能の熟練期間」と考えれば、この年の結果は決して無駄ではなく、この後の大成功を得るためにむしろよかったのかもしれません。

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