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今年のF1は「開幕戦遅延」「二週連続同一サーキット開催」さらには「一国三開催」など異例なシーズンで進行していますが、普段以上の記録更新続きでもあります。前戦は久々のニュルブルクリンクでのアイフェルGPでアルファロメオのライコネンが「F1決勝最多出走」を更新、またメルセデスのハミルトンによって後人未踏とも思われたM・シューマッハのもつ「F1最多勝」91勝に並ぶこととなりました。数年前まではまさかここまで到達すると予想もしませんでしたが、ハミルトンはそれを現実のものとしました。ただ91勝で並んだとはいえ、シューマッハとハミルトンはそれに至るまでには時代の違い以外にも様々な差を経て至ります。今回は2人の「91勝までの道のり」について、少し深く掘り下げていこうと思います。
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《91勝までの優勝GPと予選順位》
今回戦績比較するにあたり、ベースとなる「全優勝GPとその予選順位」となります。2人でトータル182勝ですから、いつものように下に182行並びます(笑)1000戦を超えた全F1レースのうち、1/5弱がこの2人による優勝と考えただけですごいこと。詳細はこの後に分類別で評価しますので、ココではあまり触れません。お急ぎの方は次の項までお進み下さい。

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M・シューマッハ 91勝/307戦 生涯勝率29.5%
91年 1年目 ベネトン 0勝/6戦 勝率0.0%
92年 2年目 ベネトン 1勝/16戦 勝率6.3%
   1勝目   18戦目 第12戦ベルギーGP 予選3位
93年 3年目 ベネトン 1勝/16戦 勝率6.3%
   2勝目   36戦目 第14戦ポルトガルGP 予選6位
94年 4年目 ベネトン 8勝/14戦 勝率57.1% ★
   3勝目   39戦目 第1戦  ブラジルGP 予選2位
   4勝目   40戦目 第2戦  パシフィックGP 予選2位
   5勝目   41戦目 第3戦  サンマリノGP 予選2位
   6勝目   42戦目 第4戦  モナコGP 予選1位
   7勝目   44戦目 第6戦  カナダGP 予選1位
   8勝目   45戦目 第7戦  フランスGP予選3位
   9勝目   48戦目 第10戦ハンガリーGP 予選1位
 10勝目   50戦目 第14戦ヨーロッパGP 予選1位
95年 5年目 ベネトン 9勝/17戦 勝率52.9% ★
 11勝目   53戦目 第1戦  ブラジルGP 予選2位
 12勝目   56戦目 第4戦  スペインGP 予選5位
 13勝目   57戦目 第5戦  モナコGP 予選2位
 14勝目   59戦目 第7戦  フランスGP 予選2位
 15勝目   61戦目 第9戦  ドイツGP 予選2位
 16勝目   63戦目 第11戦ベルギーGP 予選16位
 17勝目   66戦目 第14戦ヨーロッパGP 予選3位
 18勝目   67戦目 第15戦パシフィックGP 予選3位
 19勝目   68戦目 第16戦日本GP 予選2位
96年 6年目 フェラーリ 3勝/16戦 勝率18.8%
 20勝目   76戦目 第7戦  スペインGP 予選3位
 21勝目   82戦目 第13戦ベルギーGP 予選3位
 22勝目   83戦目 第14戦イタリアGP 予選3位
97年 7年目 フェラーリ 5勝/17戦 勝率29.4%
 23勝目   90戦目 第5戦  モナコGP 予選2位
 24勝目   92戦目 第7戦  カナダGP 予選1位
 25勝目   93戦目 第8戦  フランスGP 予選1位
 26勝目   97戦目 第12戦ベルギーGP 予選3位
 27勝目 101戦目 第14戦イタリアGP 予選3位
98年 8年目 フェラーリ 6勝/16戦 勝率37.5%
 28勝目 105戦目 第3戦  アルゼンチンGP 予選2位
 29勝目 109戦目 第7戦  カナダGP 予選3位
 30勝目 110戦目 第8戦  フランスGP 予選2位
 31勝目 111戦目 第9戦  イギリスGP 予選2位
 32勝目 114戦目 第12戦ハンガリーGP 予選3位
 33勝目 116戦目 第14戦イタリアGP 予選1位
99年 9年目 フェラーリ 2勝/10戦 勝率20.0%
 34勝目 121戦目 第3戦  サンマリノGP 予選3位
 35勝目 122戦目 第4戦  モナコGP 予選2位
00年 10年目 フェラーリ 9勝/17戦 勝率52.9% ★
 36勝目 129戦目 第1戦  オーストラリアGP 予選3位
 37勝目 130戦目 第2戦  ブラジルGP 予選3位
 38勝目 131戦目 第3戦  サンマリノGP 予選2位
 39勝目 134戦目 第6戦  ヨーロッパGP 予選2位
 40勝目 136戦目 第8戦  カナダGP 予選1位
 41勝目 142戦目 第14戦イタリアGP 予選1位
 42勝目 143戦目 第15戦アメリカGP 予選1位
 43勝目 144戦目 第16戦日本GP 予選1位
 44勝目 145戦目 第17戦マレーシアGP 予選1位
01年 11年目 フェラーリ 9勝/17戦 勝率52.9% ★
 45勝目 146戦目 第1戦  オーストラリアGP 予選1位
 46勝目 147戦目 第2戦  マレーシアGP 予選1位
 47勝目 150戦目 第5戦  スペインGP 予選1位
 48勝目 152戦目 第7戦  モナコGP 予選2位
 49勝目 154戦目 第9戦  ヨーロッパGP 予選1位
 50勝目 155戦目 第10戦フランスGP 予選2位
 51勝目 158戦目 第13戦ハンガリーGP 予選1位
 52勝目 159戦目 第14戦ベルギーGP 予選3位
 53勝目 162戦目 第17戦日本GP 予選1位
02年 12年目 フェラーリ 11勝/17戦 勝率64.7% ★
 54勝目 163戦目 第1戦  オーストラリアGP 予選2位
 55勝目 165戦目 第3戦  ブラジルGP 予選2位
 56勝目 166戦目 第4戦  サンマリノGP 予選1位
 57勝目 167戦目 第5戦  スペインGP 予選1位
 58勝目 168戦目 第6戦  オーストリアGP 予選3位
 59勝目 170戦目 第8戦  カナダGP 予選2位
 60勝目 172戦目 第10戦イギリスGP 予選3位
 61勝目 173戦目 第11戦フランスGP 予選2位
 62勝目 174戦目 第12戦ドイツGP 予選1位
 63勝目 176戦目 第14戦ベルギーGP 予選1位
 64勝目 179戦目 第17戦日本GP 予選1位
03年 13年目 フェラーリ 6勝/16戦 勝率37.5% ★
 65勝目 183戦目 第4戦  サンマリノGP 予選1位
 66勝目 184戦目 第5戦  スペインGP 予選1位
 67勝目 185戦目 第6戦  オーストリアGP 予選1位
 68勝目 187戦目 第8戦  カナダGP 予選3位
 69勝目 193戦目 第14戦イタリアGP 予選1位
 70勝目 194戦目 第15戦アメリカGP 予選1位
04年 14年目 フェラーリ 13勝/18戦 勝率72.2% ★
 71勝目 196戦目 第1戦  オーストラリアGP 予選1位
 72勝目 197戦目 第2戦  マレーシアGP 予選1位
 73勝目 198戦目 第3戦  バーレーンGP 予選1位
 74勝目 199戦目 第4戦  サンマリノGP 予選2位
 75勝目 200戦目 第5戦  スペインGP 予選1位
 76勝目 202戦目 第7戦  ヨーロッパGP 予選1位
 77勝目 203戦目 第8戦  カナダGP 予選6位
 78勝目 204戦目 第9戦  アメリカGP 予選2位
 79勝目 205戦目 第10戦フランスGP 予選2位
 80勝目 206戦目 第11戦イギリスGP 予選4位
 81勝目 207戦目 第12戦ドイツGP 予選1位
 82勝目 208戦目 第13戦ハンガリーGP 予選1位
 83勝目 212戦目 第17戦日本GP 予選1位
05年 15年目 フェラーリ 1勝/19戦 勝率5.3%
 84勝目 222戦目 第9戦  アメリカGP 予選5位
06年 16年目 フェラーリ 7勝/18戦 勝率38.9%
 85勝目 236戦目 第4戦  サンマリノGP 予選1位
 86勝目 237戦目 第5戦  ヨーロッパGP 予選2位
 87勝目 242戦目 第10戦アメリカGP 予選1位
 88勝目 243戦目 第11戦フランスGP 予選1位
 89勝目 244戦目 第12戦ドイツGP 予選2位
 90勝目 247戦目 第15戦イタリアGP 予選2位
 91勝目 248戦目 第16戦中国GP 予選6位
10年 17年目 メルセデス 0勝/19戦 勝率0.0%
11年 18年目 メルセデス 0勝/19戦 勝率0.0%
12年 19年目 メルセデス 0勝/20戦 勝率0.0%

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L・ハミルトン 91勝/261戦 現在勝率34.9%
07年 1年目 マクラーレン 4勝/17戦 勝率23.5%
   1勝目     6戦目 第6戦  カナダGP 予選1位
   2勝目     7戦目 第7戦  アメリカGP 予選1位
   3勝目   11戦目 第11戦ハンガリーGP 予選2位
   4勝目   15戦目 第15戦日本GP 予選1位
08年 2年目 マクラーレン 5勝/18戦 勝率27.8% ★
   5勝目   18戦目 第1戦  オーストラリアGP 予選1位
   6勝目   23戦目 第6戦  モナコGP 予選3位
   7勝目   26戦目 第9戦  イギリスGP 予選4位
   8勝目   27戦目 第10戦ドイツGP 予選1位
   9勝目   34戦目 第17戦中国GP 予選1位
09年 3年目 マクラーレン 2勝/17戦 勝率11.8%
 10勝目   45戦目 第10戦ハンガリーGP 予選4位
 11勝目   49戦目 第14戦シンガポールGP 予選1位
10年 4年目 マクラーレン 3勝/19戦 勝率15.8%
 12勝目   59戦目 第7戦  トルコGP 予選2位
 13勝目   60戦目 第8戦  カナダGP 予選1位
 14勝目   65戦目 第13戦ベルギーGP 予選2位
11年 5年目 マクラーレン 3勝/19戦 勝率15.8%
 15勝目   74戦目 第3戦  中国GP 予選3位
 16勝目   81戦目 第10戦ドイツGP 予選2位
 17勝目   89戦目 第18戦アブダビGP 予選2位
12年 6年目 マクラーレン 4勝/20戦 勝率20.0%
 18勝目   97戦目 第7戦  カナダGP 予選2位
 19勝目 101戦目 第11戦ハンガリーGP 予選1位
 20勝目 103戦目 第13戦イタリアGP 予選1位
 21勝目 109戦目 第19戦アメリカGP 予選2位
13年 7年目 メルセデス 1勝/19戦 勝率5.3%
 22勝目 120戦目 第10戦ハンガリーGP 予選1位
14年 8年目 メルセデス 11勝/19戦 勝率57.9% ★
 23勝目 131戦目 第2戦  マレーシアGP 予選1位
 24勝目 132戦目 第3戦  バーレーンGP 予選2位
 25勝目 133戦目 第4戦  中国GP 予選1位
 26勝目 134戦目 第5戦  スペインGP 予選1位
 27勝目 138戦目 第9戦  イギリスGP 予選6位
 28勝目 142戦目 第13戦イタリアGP 予選1位
 29勝目 143戦目 第14戦シンガポールGP 予選1位
 30勝目 144戦目 第15戦日本GP 予選2位
 31勝目 145戦目 第16戦ロシアGP 予選1位
 32勝目 146戦目 第17戦アメリカGP 予選2位
 33勝目 148戦目 第19戦アブダビGP 予選2位
15年 9年目 メルセデス 10勝/19戦 勝率52.6% ★
 34勝目 149戦目 第1戦  オーストラリアGP 予選1位
 35勝目 151戦目 第3戦  中国GP 予選1位
 36勝目 152戦目 第4戦  バーレーンGP 予選1位
 37勝目 155戦目 第7戦  カナダGP 予選1位
 38勝目 157戦目 第9戦  イギリスGP 予選1位
 39勝目 159戦目 第11戦ベルギーGP 予選1位
 40勝目 160戦目 第12戦イタリアGP 予選1位
 41勝目 162戦目 第14戦日本GP 予選2位
 42勝目 163戦目 第15戦ロシアGP 予選2位
 43勝目 164戦目 第16戦アメリカGP 予選2位
16年 10年目 メルセデス 10勝/21戦 勝率47.6%
 44勝目 173戦目 第6戦  モナコGP 予選3位
 45勝目 174戦目 第7戦  カナダGP 予選1位
 46勝目 176戦目 第9戦  オーストリアGP 予選1位
 47勝目 177戦目 第10戦イギリスGP 予選1位
 48勝目 178戦目 第11戦ハンガリーGP 予選2位
 49勝目 179戦目 第12戦ドイツGP 予選2位
 50勝目 185戦目 第18戦アメリカGP 予選1位
 51勝目 186戦目 第19戦メキシコGP 予選1位
 52勝目 187戦目 第20戦ブラジルGP 予選1位
 53勝目 188戦目 第21戦アブダビGP 予選1位
17年 11年目 メルセデス 9勝/20戦 勝率45.0% ★
 54勝目 190戦目 第2戦  中国GP 予選2位
 55勝目 193戦目 第5戦  スペインGP 予選1位
 56勝目 195戦目 第7戦  カナダGP 予選1位
 57勝目 198戦目 第10戦イギリスGP 予選1位
 58勝目 200戦目 第12戦ベルギーGP 予選1位
 59勝目 201戦目 第13戦イタリアGP 予選1位
 60勝目 202戦目 第14戦シンガポールGP 予選5位
 61勝目 204戦目 第16戦日本GP 予選1位
 62勝目 205戦目 第17戦アメリカGP 予選1位
18年 12年目 メルセデス 11勝/21戦 勝率52.4% ★
 63勝目 212戦目 第4戦  アゼルバイジャンGP 予選2位
 64勝目 213戦目 第5戦  スペインGP 予選1位
 65勝目 216戦目 第8戦  フランスGP 予選1位
 66勝目 219戦目 第11戦ドイツGP 予選14位
 67勝目 220戦目 第12戦ハンガリーGP 予選1位
 68勝目 222戦目 第14戦イタリアGP 予選3位
 69勝目 223戦目 第15戦シンガポールGP 予選1位
 70勝目 224戦目 第16戦ロシアGP 予選2位
 71勝目 225戦目 第17戦日本GP 予選1位
 72勝目 228戦目 第20戦ブラジルGP 予選1位
 73勝目 229戦目 第21戦アブダビGP 予選1位
19年 13年目 メルセデス 11勝/21戦 勝率52.4% ★
 74勝目 231戦目 第2戦  バーレーンGP 予選3位
 75勝目 232戦目 第3戦  中国GP 予選2位
 76勝目 234戦目 第5戦  スペインGP 予選2位
 77勝目 235戦目 第6戦  モナコGP 予選1位
 78勝目 236戦目 第7戦  カナダGP 予選2位
 79勝目 237戦目 第8戦  フランスGP 予選1位
 80勝目 239戦目 第10戦イギリスGP 予選2位
 81勝目 241戦目 第12戦ハンガリーGP 予選3位
 82勝目 245戦目 第16戦ロシアGP 予選2位
 83勝目 247戦目 第18戦メキシコGP 予選4位
 84勝目 250戦目 第21戦アブダビGP 予選1位
20年 14年目 メルセデス 7勝/11戦 勝率63.6%
 85勝目 252戦目 第2戦  シュタイアーマルクGP 予選1位
 86勝目 253戦目 第3戦  ハンガリーGP 予選1位
 87勝目 254戦目 第4戦  イギリスGP 予選1位
 88勝目 256戦目 第6戦  スペインGP 予選1位
 89勝目 257戦目 第7戦  ベルギーGP 予選1位
 90勝目 259戦目 第9戦  トスカーナGP 予選1位
 91勝目 261戦目 第11戦アイフェルGP 予選2位

《91勝までに要したの決勝レース数》
上でズラズラ並べた2人の91勝までに要したレース数をグラフにプロットしたものになります。約2年前に「ハミルトンの次なる野望」と題して似たグラフを挙げたことがあります。今回はそれを2人に絞り、先日のアイフェルGPまで更新したものに作り替えました。赤のプロットがシューマッハ、黒がハミルトンを示し、横軸はレース数となるため、優勝しなかった期間はプロットの間隔が広くなり、詰まっているものは連勝したとみることができます。image
両者同じ91勝を挙げた2人でも同じようなカーブを描かず、戦績の差が見受けられます。91勝の到達レース数について、ハミルトンは先日の261戦目に到達したのに対し、シューマッハはハミルトンよりも実のところ13戦早い248戦目で到達という差があります。
シューマッハは初優勝が2年目18戦目にあたる92年ベルギーGPであり、2回目が36戦目と若手時代は若干スロースタート(とはいえ、他と比べたら早い方)でした。また83勝を挙げる212戦目までは比較的順調に勝ち続けたものの、そこから91勝するまではもたつきがみられます。それに対してハミルトンの初優勝はデビュー年07年の6戦目カナダGPとかなり早いことが特徴です。120戦付近までは一定の傾きを示し、131戦からは急激な傾きに転じてシューマッハの13戦遅れで到達しました。これらの違いは何が原因なのか、両ドライバーを分けて所属チームで示すと、紐解きやすいものになります。image
こちらがシューマッハ単体のグラフです。所属チームのイメージカラーのハッチングを加えてみました。所属したチームは4チーム(ジョーダン、ベネトン、フェラーリ、メルセデス)です。ジョーダン時代は先日の「過去のレース」でも振り返った通り、たった1戦、それもスタート直後にリタイヤしたため、本検証の対象からは外れます。2戦目に移籍したベネトン時代からみていくと、駆け出し時代の93年はマシンはそこそこ戦闘力がありつつも、プロストやセナといった強者の存在もあって優勝をあまり稼げずにいました。シューマッハが優勝の常連になったのはその2人が離席した94年シーズンからとなります。ベネトン時代後半はウィリアムズからデビューした二世D・ヒルとの対決を打ち破り、2年連続のチャンピオンに輝くと、96年からはドライバーの多くが憧れるF1の名門「フェラーリ」の再建に抜擢されます。
しかし当時のフェラーリは氷河期であり、一からの立て直しを必要としました。フェラーリ期前半の参戦70〜130戦付近はウィリアムズの勢いに阻まれ、時折の優勝はあるものの、F1の主役はヒルやJ・ヴィルヌーブら二世ドライバーに明け渡すこととなります。さらにウィリアムズと入れ替わる形で台頭し、真価を発揮させた同世代のライバルであるハッキネンの存在もフェラーリ完全復活の足かせにもなりました。ところがフェラーリ参戦5年目、セカンドドライバーとしてバリチェロを迎え入れた2000年にマクラーレンを捉えることに成功。その年は9勝、翌01年も9勝、02年は11勝、一年挟んだ04年はシーズン個人最多となる13勝を挙げて、セナやプロストといった過去の偉大なドライバー達の勝利数を立て続けに上回りました。
210戦を超えたあたりから急に優勝ペースが落ちています。時期としては05年に入った頃になります。これは言わずと知れた「チャンピオン陥落」の時期です。ルノーのアロンソの飛躍と同期のライコネンやモントーヤといった若手の台頭、さらにライバルの履くミシュランタイヤの健闘などと重なり、優勝から遠ざかりつつあります。06年は盛り返して7勝を挙げるもチャンピオンに返り咲く事はなく一度引退。のちの2010年にメルセデスワークスの旗揚げのため現役復帰しますが、時代は既にレッドブル天下に切り替わっており、加齢も相まって06年中国GPでの優勝以降は優勝する事なく、308戦をもってF1から完全に引退することとなりました。
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ハミルトンの所属チームはマクラーレンとメルセデスワークスの2チーム、使用エンジンは全てメルセデス製のみとなります。シューマッハとちょうど入れ替わる形の2007年22歳のデビュー、それも当時トップチームの一つであるマクラーレンから、という点で他のライバル達と異なる経歴です。初優勝はデビュー6戦目に経験してしまうあたりもかなりの大物一年生っぷり。2年目の08年に早くもチャンピオンをギリギリで獲得してしまうわけですが「ギリギリ」の表現のように、近年の勝ちまくりに比べてマクラーレン時代はそう簡単に勝ち星を増やせず苦労はしています。先程のシューマッハ衰退のきっかけでもある「ハミルトンからみて一代前の先輩達」が活躍する中、その合間を縫う形で優勝を重ねたため、グラフにプロットすると緩やかな角度での上昇となります。ハミルトンが13年にシューマッハに代わってメルセデスワークスに移籍した直後はライバルとの位置関係は変わらず、ハミルトンにしては珍しい「シーズン1勝」という苦悩の時期も経験しました。
ハミルトンは130戦目、メルセデス移籍2年目にあたる14年に転機を迎えます。マシンレギュレーションが大幅に変わり、現在のハイブリッドターボのパワーユニットとなると、メルセデスのマシンが好調な滑り出しを決め、チームメイトのN・ロズベルグと優勝を分け合うレースが続きます。その初年14年は11勝、15年とチャンピオンこそ獲り損ねた16年は共に10勝。相方また最大のライバルであるロズベルグが引退し、若手の優良株ボッタスに切り替わった17年は9勝となりますが、シーズン全21レースとなる18年と19年は自身3回目の11勝を挙げています。これらのハイペースな優勝もあって、グラフのプロットもフェラーリ時代のシューマッハに引けをとらない角度をなしてシューマッハの持つ91勝に261戦かけて到達しています。
このようにシューマッハとハミルトンは様々なライバルとの出現やレギュレーション変更を経てこの91勝に至りました。

《シーズン別勝率比較》
こちらはシーズン別のレース走行数と優勝数を棒グラフに示しました。チャンピオンを獲得したシーズンは優勝数とグラフを強調しています。image
シューマッハはベネトン4年目の94年にセナに代わって優勝を多く重ねるようになり、2年連続となるチャンピオンを獲得。96年に移籍したフェラーリでは優勝は積み重ねつつもチャンピオンには届かず(ちなみに97年については「一身上の都合」によりポイント剥奪)移籍5年目にチャンピオンを獲得するまで勝ちを増やしました。晩年はメルセデスから復帰して3年ドライブしましたが、優勝はおろか表彰台登壇もたったの1回と寂しく終わりました。シューマッハのバイオリズムをみると移籍から4〜5年でチャンピオンを狙えるトップチームとなり、優勝を重ねてきました。タラレバな想像ですが、13年シーズンをもってF1引退したシューマッハがメルセデスの4〜5年後となると、、マシン大改革の14年シーズンにあたります。なるほど、法則はまんざらでもなかったか。でもその頃シューマッハといえば御歳45か。どうだったのでしょうか。
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一方ハミルトンの方は先程も書いたようにマクラーレン期は勝率が特別高いわけでもないものの(とはいえ優勝はしているわけですが)08年は5勝を挙げて、2年目にして僅差の当時最年少チャンピオンを獲得しました。現在のメルセデス期に入ると、初年13年はシーズン最小となる1勝に止まったことがありつつも14年からはシーズンの半分は優勝してしまうというとんでもない勝率でチャンピオン獲得をほしいままにしています。ハミルトンの特筆すべき点は「デビューから現在まで全てのシーズンで優勝している」こと「F1では全てメルセデスエンジンをドライブしてランキング上位にいる」点です。過去の偉大なドライバーでも駆け出しの初年に未勝利シーズンがあるわけで、今回の比較対象であるシューマッハもその流れにあります。しかしハミルトンはデビューが「優勝できるポテンシャルをもつトップチーム」であることもかなり助けになっています。デビュー前の幼少期からいかに期待されていたかを知らしめられますね。またマシンがライバルより劣るシーズンもどうにかして間隙をぬって優勝させる点もすごいです。これらのF1キャリアに共通しているのは全てがメルセデスによるものと考えると、前から多く噂される「メルセデス以外のマシンに乗ったらどうなのか」という興味にかられますね。おそらくけちょんけちょんに酷いマシンでなければ、早い段階で表彰台登壇にはこぎつけることでしょう。
今回は「91勝」という線引きでデータ整理しているため、今シーズンはまだ6戦を残しています。参考までに今シーズン現時点の勝率は11戦7勝の勝率63.6%となっています。今回の2人の過去と比べてもかなり高い数値です。まだ衰えを知らないハミルトンがどのようにシーズンを制して締めるのか、退屈ですか注目です。

《優勝したレースの予選順位》
先程示した優勝レースのうち「そのレースの予選順位」を円グラフで内訳を示しています。シューマッハとハミルトンの順位で色は順位で統一を図りました。
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シューマッハは予選1番手(ポールポジション)が40回、2番手が27回、 3番手が17回となっており、最も後方からスタートして優勝したのが63戦目、ベネトンで16勝目を挙げた95第11戦ベルギーGPで予選16番手でした。フロントロウスタートでみると、67回で優勝率73.6%となっています。image
ハミルトンは予選1番手が55回、2番手が24回、 3番手が6回で、最も後方からスタートは一昨年18年の第11戦ドイツGPで予選14位から66勝を挙げています。フロントロウからの優勝は79回でその優勝率は86.8%に達します。
2人を比較すると予選3番手までのスタート数はシューマッハが84回、ハミルトンは85回とほぼほぼ同数となっていますが、その内訳に差があります。ハミルトンはポールポジションと2番手スタートからの優勝が多く、シューマッハはポールポジションが多いのはもちろんのこと、3番手スタートからも多く優勝しました。これはシューマッハの予選が遅かったわけではなく、シューマッハ前半の時代はセナやプロスト、ヒルやハッキネンらチャンピオンクラスのドライバーと争うことが多く「予選はそこそこに、決勝で抜く」というバトルを強いられたためです。キャリア後半のフェラーリ時代はポールトゥウィンを多く重ねました。ハミルトンは言うまでもなくポールトゥウィンを得意とするドライバーの一人で、もちろん決勝スタートでダッシュを決めて逆転優勝はありますが、歴代でみていくと、後方スタートの大逆転は数えるくらいしかないのが両者の特徴といえます。

《優勝したサーキット内訳》
最後は優勝数とは直接関係はありませんが、サーキット別にみた優勝内訳をまとめてみました。全優勝サーキットをグラフ化せず、4勝以上のサーキットについて分けて表現しています。
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サーキットは時代によって開催非開催があるため、両者を一概に同列比較はできません。シューマッハは91勝のうち、最多は一昔前のフランスGPであるマニ・クールで8勝、今シーズンも急遽開催が決まったサンマリノGPの舞台エンツォ・エ・ディノ・フェラーリ(イモラ)とカナダGPでお馴染みのジル・ヴィルヌーブの2箇所で7勝、ほか鈴鹿を含めた3サーキットで6勝と、トータル23サーキットで優勝を経験しました。マニ・クールを得意としていたのは有名で、ハミルトンが今シーズンの第3戦ハンガリーGPで8勝を記録するまでは「1サーキット優勝回数最多」の記録でした。image
ハミルトンはそのハンガリーGPのハンガロリンクが最多の8回、地元イギリスのシルバーストンとジル・ヴィルヌーブの2箇所が7回、中国上海も得意とし6回とトータル28サーキットで優勝経験があります。ハミルトンの時期はシューマッハの時代に比べて新興サーキットが多く、もっといえば先日のムジェロのような今までカレンダーに組まれたことのないサーキットでも優勝すれば増えていくため、サーキット数でみるとハミルトンが有利ですね。まだ現役のドライバーですから、次戦行われるアルガルヴェ国際を制することとなれば、また数を増やすことになります。
2人の共通点は燃費やブレーキに厳しいジル・ヴィルヌーブと世界的に「ドライバーズサーキット」と称される鈴鹿で多くの優勝を挙げた点です。ドライビングスタイルも時代も異なる2人に共通点があるのは、どこか運命めいたものを感じます。あたかも「選ばれし者の中の選ばれ者が勝てる」という高いハードルがあるかのようです。

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今回は予選や表彰台、入賞、ポイントランキングなどは省き、あくまで「優勝」というキーワードに的を絞って比較してみました。ハミルトンについては今のところ来シーズンの去就を明らかにしていませんが、今シーズンの走りをみてもまだまだ衰えること無く脂の乗り気切った状態が続いており、単独最多92勝はそう間も無く獲得してくることでしょう。そろそろ他のドライバーの健闘や若手の台頭に期待したくもなりますが、果たしてどこまで記録を伸ばしてくるのでしょう。

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