「記録は塗り替えるためにある」
どんなジャンルにおいても、抜かれる側の者が決まって言うセリフです。もちろん歴史が長く続く以上、いつまでも昔の記録ばかりを追いかけるわけにはいきません。ことにF1はエンターテインメントだけではなく、四輪最高峰に位置する「スポーツ」です。日々進化や向上が求められます。今回はある者の偉大な記録に並んだ瞬間がみられた、今から20年前にあたる2000年第14戦イタリアGPを振り返ります。
F1において2000年と聞けば、どんな年だったか頭に浮かぶ方も多いと思います。このブログで取り扱うこと4回目です。この年はマクラーレンのハッキネンによるチャンピオン3連覇がかかったシーズンでした。ところが前年99年にコンストラクターズチャンピオンを獲得したフェラーリの勢いが止むことはなく、そう簡単にハッキネンに3連覇をもたらしてくれそうにありません。前戦ベルギーGPまでにランキングトップのハッキネンは4勝、9回の表彰台を獲得。対してフェラーリのM・シューマッハは5勝、8回の表彰台獲得と非常に熾烈な争いを繰り広げています。日本人ドライバーは残念ながらこの年から不在となりました。
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この年からモンツァは第1シケインである「バリエンテ・レティフィーロ」を改良、右側に一つ折れる線形に変更になりました。全力スタートダッシュののちに待ち構えるこのシケインは昔も今もモンツァにおける限られたパッシングポイントでもあり、渋滞ポイント。

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ベルギーGPでは雨上がりのケメルストレートで劇的逆転勝利をおさめたハッキネンでしたが、イタリアの予選となるとフェラーリ勢に圧倒されてなかなか前に出られません。フェラーリは改良したリヤウィングを搭載して見事フロントロウを獲得。
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「おい、ウチにとっておきのモノは無いのか?!」
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残念ながらありません。決勝は敵陣の地元で高く厚い壁がハッキネンの前に立ちはだかります。

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《予選結果》
 1 M・シューマッハ(フェラーリ・F)
 2 R・バリチェロ (フェラーリ・F)
 3 M・ハッキネン (マクラーレン・M)
 ※タイヤはブリヂストンのワンメイク

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スタートは3番手ハッキネンが絶好のスタートを決め、ひとまずバリチェロをかわして2位浮上。
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新シケイン手前、中団で変な姿勢なのが一台。やはり混乱する。
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土煙にタイヤスモーク、ショートカットはモンツァあるある
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混乱はまだ続きます。第2シケイン「バリエンテ・ロッジア」で黄色いジョーダンからタイヤが吹き飛ぶ。
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あーあ、ぐちゃぐちゃしている。
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フェラーリ一台、そしてマクラーレンも一台土煙の中に。
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「活きの良さそうなクロマグロ」の如く縦に一尾。アロウズのデ・ラ・ロサの模様。
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冗談じゃない!とジョーダンから出走の地元トゥルーリも激おこ。ドライバーには怪我はありませんでしたが、不幸な事にコースマーシャル一人がマシンの破片によって命を落としています。
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一気に6台が1周目の騒動で消えつつも、赤旗再スタートとはならず、セーフティカーで事を鎮める。

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10周目、セーフティカーがこの次の周で退去するぞー
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混乱を潜り抜け、珍しく3位まで浮上したBARのJ・ヴィルヌーブ。
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右はベネトン、左はウィリアムズからデビューした20歳のバトンがコースアウトしながら猛スピードで追い抜いていく。まだ正式に再スタートしていないのにどういうこと?!
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これは先頭のM・シューマッハが再スタートの間合いを見計らうために急減速を入れたためで、驚いた後方が乱れてしまったわけです。バトンは結局マシンを壊し、その先に控えるパラボリカを曲がり切れずジ・エンド。巧みな(姑息な)先輩によるF1の洗礼を浴びています。
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2位を走行するハッキネンはM・シューマッハを後方から見つめつつも、なかなか射程圏内に入れずにいます。2位でもランキングトップは維持できますが、このシーズンはこの後アメリカ、日本、マレーシアの3戦を残しています。縮められては3連覇が怪しくなってしまう。
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M・シューマッハからタイヤ交換&給油へ。
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ハッキネンにもこの後ピットインする必要があります。ギャップを築くべく、この間に飛ばす!
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持っている力を全て使い、ぺったんこウィングで飛ばす!

残念ながらオーバーカットならずでM・シューマッハがポールトゥウィンでシーズン6勝目、F1通算41周目を挙げます。

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《決勝結果》
 1 M・シューマッハ(フェラーリ・F)
 2 M・ハッキネン (マクラーレン・M)
 3 R・シューマッハ(ウィリアムズ・B)
 ※BはBMW

F1における41勝といえば共に走り、時には叱責され、惜しくも6年前に他界したA・セナの勝利数と同じ数です。レース後の会見で当然ながらこの質問がM・シューマッハに飛びます。
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「41勝でセナと並んだことに大きな意味は?!」
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「チョーリー、、」
若かりし頃に突如F1の将来を託され、これまでの道がとても長く重たかったこと。偉大な先輩を目標にドライブを続け、ようやく追い付いたこと。さらには命を落とした94年サンマリノGPで「出来事」を一番近い位置から生で目撃、自力で抜かずしてレースに勝ったこと。色々な意味が込められたセナとの関係性を思い返し、カメラや人目もはばからず涙を流す。多くの言葉は要らない、この様子だけでも気持ちは我々に充分伝わってきます。隣でハッキネンがそっと肩に手をかける。image
とても話せる状態でなくなってしまったM・シューマッハを飛ばして、ハッキネンにインタビューが向けられますが、共にポストセナ時代を支え、切磋琢磨してきたハッキネンも感極まり、結局話せずに3位フィニッシュしたR・シューマッハに回されたのはとても有名なシーンとして語り継がれていますね。シューマッハも、人の子。

実際のところ、当時の最多勝はプロストの51勝でさらに上の位置にいたわけですが、シューマッハにしてもハミルトンにしても「セナ超え」に照準を絞るドライバーが多いように思います。プロストの記録も確かに偉大なものではあるものの、セナは現役当時のスター性やレース中に絶命してしまったという事実がファンのみならず後輩ドライバーに大きな影響を与えてきたのだと思います。
先日ポールトゥウィンを果たしたベルギーGP時点でハミルトンは89勝となり、いよいよ「後人未踏」ともいわれたM・シューマッハの持つ91勝まであと2勝にまで近付きました。今シーズンは今週末のイタリアGPを含めあと10戦が予定されていますので、おそらく今シーズン中にこの大記録を上回る可能性が高くなってきました。ハミルトンはM・シューマッハ超えに対して何を思い、また共にレースをしたこともあるM・シューマッハは何を思うのでしょうか。
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