イギリスのシルバーストン、モナコのモンテカルロ市街地、ベルギーのスパ・フランコルシャンと並ぶF1を代表するサーキット。イタリアのモンツァサーキットですね。紅一色に染まるフェラーリの聖地、いやF1の聖地の変遷をみていきましょう。
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《モンツァの基本情報》
    全長   :  6.300km(1950〜54)
       10.000km(1955,56,60,61)
         5.750km(1957〜59,62〜71)
         5.775km(1972,73)
         5.780km(1974,75)
         5.800km(1976〜94)
         5.770km(1995〜99)
         5.793km(2000〜)
 コーナー数:11箇所(2000〜)
   開催回数  :69回

イタリアを代表する大都市ミラノからほど近いモンツァの緑豊かな国立公園の中にサーキットがあります。シルバーストンやモンテカルロ、先日のスパ・フランコルシャンと同様に、古さの数だけ歴史と変化があります。それらよりも頭一つ出ている点の一つに「F1開催回数」があります。F1は今年で70周年を迎えましたが、フルで行われると71回のGPになる計算です。ところがモンツァで今まで開催されたのは69回。今週末無事に開催されれば70回目です。多いと思われがちなモンテカルロ市街地は66回、シルバーストンは今シーズンの2回を含めても55回、そしてスパ・フランコルシャンが53回ですので、モンツァは1980年シーズンを除いた全てでイタリアGPを行ってきた「キング・オブ・F1サーキット」なのです。大きな変更はなくとも、いくつもの大きな事故が起き、その度に軽微な改良を経て現在に至ります。過去に作図したサーキットレイアウトを使って、手短にみていきます。image
・1950〜54年             6.300km 灰色(オリジナル)
・1955,56,60,61年    10.000km 赤色(オーバル使用)
・1957〜59,62〜71年 5.750km 黄緑(オーバル廃止)image
・1972,73年   5.775km 紫色(シケイン追加)
・1974,75年   5.780km 土色(シケイン変更)
・1976〜94年 5.800km 水色(シケイン追加)
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・1995〜99年 5.770km 桃色(グランデ改良)
・2000〜現在 5.793km 黒色(シケイン変更)

以前も3つのグループに分けて描きました。一つ目のグループは1950年から70年台初頭まで使用されたレイアウトになります。今でこそ丸みを帯びた「靴下」のような線形をなしていますが、F1制定当初はシケインも無く最終セクションは角張ったコーナーでした。またF1で唯一綺麗なオーバルを組み合わせたレイアウトを採用し「メインスタンドを2回通過する」という唯一無二のサーキットだった時代もありました。
二つ目は70年台から90年台中盤までに使用されたグループになります。死亡事故が起きる度にシケインを増やし、また位置を変え、この高速サーキットにも「速度抑制」を取り入れることとなりました。
現在のレイアウトは2000年から使用されています。2000年と聞くとまだまだ最近の出来事のように感じますが、もうかれこれ今年で20年経ちます。カレンダーに並ぶ各サーキットの中でも、これだけ長い期間に渡って使用されているのはオーストラリアGPで使用されるアルバートパークとこのモンツァくらいではないでしょうか。アルバートパークの方は近々レイアウト変更が予定されていますね。一時期はサンマリノGPで使用されたエンツォ・ディノ・フェラーリ(イモラ)サーキットへ「イタリアGP移設案」の噂に挙がりつつも、今のところは2025年までこのモンツァで継続開催されることが発表されました。果たしていつまでこのレイアウトで行われるのか、個人的にかなり興味深いです。

《モンツァの予選P.P.タイム変遷》
まずはいつものポールタイムがずらっと並びます。先程も書いた通り、F1最多の69回ですからね。覚悟はよろしいですか?!とても付き合いきれないよという方は、グラフまでどうぞひとっ飛びしちゃって下さい。一応miyabikunめげずに一生懸命書きましたからね(笑)
 50   6.300km 1分58秒300 ファンジオ
 51   6.300km 1分52秒300 ファンジオ
 52   6.300km 2分05秒700 アスカリ
 53   6.300km 2分02秒700 アスカリ
 54   6.300km 1分59秒000 ファンジオ
 55 10.000km 2分46秒500 ファンジオ
 56 10.000km 2分42秒600 ファンジオ
 57   5.750km 1分42秒400 Lエバンス
 58   5.750km 1分40秒500 モス
 59   5.750km 1分39秒700 モス
 60 10.000km 2分41秒400 Pヒル
 61 10.000km 2分46秒300 Vトリップス
 62   5.750km 1分40秒350 クラーク
 63   5.750km 1分37秒300 サーティース
 64   5.750km 1分37秒400 サーティース
 65   5.750km 1分35秒900 クラーク
 66   5.750km 1分31秒300 パークス
 67   5.750km 1分28秒500 クラーク
 68   5.750km 1分26秒070 サーティース
 69   5.750km 1分25秒480 リント
 70   5.750km 1分24秒140 イクス
 71   5.750km 1分22秒400 エイモン
 72   5.775km 1分35秒650 イクス
 73   5.775km 1分34秒800 ピーターソン
 74   5.780km 1分33秒160 ラウダ
 75   5.780km 1分32秒240 ラウダ
 76   5.800km 1分41秒350 ラフィ
 77   5.800km 1分38秒080 ハント
 78   5.800km 1分37秒520 アンドレッティ
 79   5.800km 1分34秒580 ジャブイユ
 80 
 81   5.800km 1分33秒467 アルヌー
 82   5.800km 1分28秒473 アンドレッティ
 83   5.800km 1分29秒122 パトレーゼ
 84   5.800km 1分26秒584 ピケ
 85   5.800km 1分25秒084 セナ
 86   5.800km 1分24秒078 Tファビ
 87   5.800km 1分23秒460 ピケ
 88   5.800km 1分25秒974 セナ
 89   5.800km 1分23秒720 セナ
 90   5.800km 1分22秒533 セナ
 91   5.800km 1分21秒114 セナ
 92   5.800km 1分22秒221 マンセル
 93   5.800km 1分21秒179 プロスト
 94   5.800km 1分23秒844 アレジ
 95   5.770km 1分24秒462 クルサード
 96   5.770km 1分24秒204 Dヒル
 97   5.770km 1分22秒990 アレジ
 98   5.770km 1分25秒289 Mシューマッハ
 99   5.770km 1分22秒432 ハッキネン
 00   5.793km 1分23秒770 Mシューマッハ
 01   5.793km 1分22秒216 モントーヤ
 02   5.793km 1分20秒264 モントーヤ
 03   5.793km 1分20秒963 Mシューマッハ
 04   5.793km 1分20秒089 バリチェロ
 05   5.793km 1分21秒054 モントーヤ
 06   5.793km 1分21秒484 ライコネン
 07   5.793km 1分21秒997 アロンソ
 08   5.793km 1分37秒555 ベッテル
 09   5.793km 1分25秒066 ハミルトン
 10   5.793km 1分21秒962 アロンソ
 11   5.793km 1分22秒275 ベッテル
 12   5.793km 1分24秒010 ハミルトン
 13   5.793km 1分23秒755 ベッテル
 14   5.793km 1分24秒109 ハミルトン
 15   5.793km 1分23秒397 ハミルトン
 16   5.793km 1分21秒135 ハミルトン
 17   5.793km 1分35秒554 ハミルトン
 18   5.793km 1分19秒119 ライコネン
 19   5.793km 1分19秒307 ルクレール


長かったですね。書いた後、毎回一応ちゃんと確認はしているのですが、1秒や0.001秒間違えているかもしれません。もし誤りに気付かれた方がいましたらおっしゃってください。これらをグラフにおこしてみましょう。
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色の塗られているエリアより、塗られていないエリアが多いという、グラフとしてかなりもったいない形になりました。こうなっちゃった理由はただ一つ、薄いグレーで描かれたいつもの倍近い10kmの全長となる「オーバル追加期間」があるためです。この前のエルマノス・ロドリゲスにもあった「ぴったり」10kmって本当なのだろうか。グラウンドとかで距離を測るあの「コロコロ」がちょっと弾んだりしたら多少の誤差は生まれそうだけど、、先人を信じましょう!4本のオーバル期間グラフのおかげで、他の時代の細かなタイム差が打ち消されてしまっていますね。オーバルとトリップスさんには申し訳ないですが、この区間を除外して再作図してみました。image
これで少しはメリハリが出たでしょうか。いつもの通り、レイアウトの色とグラフの色は統一していません。ごめんなさい。同じモンツァとはいえ、初代の黒帯と現代のオレンジ帯の差が大きいですね。ただ今までのサーキットにもあったように、タイムが徐々に短縮された頃にレイアウト変更を伴ってタイムが落ち、またそれを短縮して、を繰り返しています。レイアウトで第一グループとくくった最終年71年にマトラのエイモンが5.750kmを1分22秒400で走破しています。シケインがあるにせよ、現代の5.793kmとさほど変わらない距離なのにタイムが近いというのはすごいです。この後の平均速度比較が楽しみです。やはりこのグラフでもまだ見辛いため、ちょうど非開催、miyabikunの生まれ年でもある1980年の切れ目を利用して、近代のみを抜き出してみます。image
これでもまだ物足りなさはありますが、タイム編のグラフはこの辺で折り合いを付けたい思います。ターボエンジンが活性化する1982年あたりから年々タイムを削り、比較的滑らかな頂点で波を打っているようにみえます。タイム的には1分20秒台を行ったり来たりしていますね。先日のスパ・フランコルシャンの時もそうでしたが、80年台のターボエンジンが90年台にNAエンジンに切り替わったところでタイムが落ち込むどころか93年までは順調に短縮の一途を辿っていたようです。徐々にターボエンジンのレギュレーションを厳しくし、うまくNAエンジンに移行できた表れなのでしょうか。空力やダウンフォース云々よりスピードがウリのモンツァであっても、馬力が高いだけが速いわけではないということを証明してくれているかのようです。08年と17年のグラフが特にビヨーンと飛び出しています。例の如く雨絡みです。まだ記憶にも新しい08年を覚えていますか?!以前にも「過去のレース」でも振り返ったことのある、若かりしベッテルちゃんがトロ・ロッソで雨のポールトゥウィンを決めた年です。まさかトロ・ロッソがチャンピオン候補であるマクラーレンやフェラーリを抑え切ると思いませんでしたよね。それも当時最年少ポールと最年少優勝の2つを更新してしまうというミラクルが起きました。今ではだいぶふて腐れてしまったベッテルにもこんなキラキラ輝いていた時代があったんだなぁ。優勝の方はのちにM・フェルスタッペンによって大幅更新されていますが、未だにポールポジションの最年少記録はベッテルが保持しています。モンツァ最速タイムは一昨年18年のラストフェラーリで記録したライコネンの1分19秒119です。スリップストリームをうまく使い、最後の最後でトップに立ちましたね。今の時点でこれがライコネン最終のポールポジションとなっています。まだ現役ドライバーだから今の時点で「これが最後の」なんていうと怒られちゃうけど、仮に来年も引き続きF1をドライブするなんてことになったとしても、おそらくポールポジションは、、難しいでしょうな。FullSizeRender

《モンツァの予選P.P.平均速度変遷》
 50   6.300km 191.7km/h 100%    ファンジオ
 51   6.300km 202.0km/h 105.3% ファンジオ
 52   6.300km 180.4km/h   94.1% アスカリ
 53   6.300km 184.8km/h   97.4% アスカリ
 54   6.300km 190.6km/h   99.4% ファンジオ
 55 10.000km 216.2km/h 112.8% ファンジオ
 56 10.000km 221.4km/h 115.5% ファンジオ
 57   5.750km 202.1km/h 105.4% Lエバンス
 58   5.750km 206.0km/h 107.4% モス
 59   5.750km 207.6km/h 108.3% モス
 60 10.000km 223.0km/h 116.3% Pヒル
 61 10.000km 216.5km/h 112.9% Vトリップス
 62   5.750km 206.3km/h 107.6% クラーク
 63   5.750km 212.7km/h 111.0% サーティース
 64   5.750km 212.5km/h 110.9% サーティース
 65   5.750km 215.8km/h 112.6% クラーク
 66   5.750km 226.7km/h 118.3% パークス
 67   5.750km 233.9km/h 122.0% クラーク
 68   5.750km 240.5km/h 125.4% サーティース
 69   5.750km 242.2km/h 126.3% リント
 70   5.750km 246.0km/h 128.3% イクス
 71   5.750km 251.5km/h 131.0% エイモン
 72   5.775km 217.4km/h 113.4% イクス
 73   5.775km 219.3km/h 114.4% ピーターソン
 74   5.780km 223.4km/h 116.5% ラウダ
 75   5.780km 225.6km/h 117.7% ラウダ
 76   5.800km 206.0km/h 107.5% ラフィ
 77   5.800km 212.9km/h 111.0% ハント
 78   5.800km 214.1km/h 111.7% アンドレッティ
 79   5.800km 220.8km/h 115.2% ジャブイユ
 80 
 81   5.800km 223.4km/h 116.5% アルヌー
 82   5.800km 236.0km/h 123.1% アンドレッティ
 83   5.800km 234.3km/h 122.2% パトレーゼ
 84   5.800km 241.2km/h 125.8% ピケ
 85   5.800km 245.4km/h 128.0% セナ
 86   5.800km 248.3km/h 129.5% Tファビ
 87   5.800km 250.2km/h 130.5% ピケ
 88   5.800km 242.9km/h 126.7% セナ
 89   5.800km 249.4km/h 130.1% セナ
 90   5.800km 253.0km/h 132.0% セナ
 91   5.800km 257.4km/h 134.3% セナ
 92   5.800km 253.9km/h 132.5% マンセル
 93   5.800km 257.2km/h 134.2% プロスト
 94   5.800km 249.0km/h 129.9% アレジ
 95   5.770km 245.9km/h 128.3% クルサード
 96   5.770km 246.7km/h 128.7% Dヒル
 97   5.770km 250.3km/h 130.6% アレジ
 98   5.770km 243.5km/h 127.0% Mシューマッハ
 99   5.770km 252.0km/h 131.4% ハッキネン
 00   5.793km 249.0km/h 129.9% Mシューマッハ
 01   5.793km 253.7km/h 132.3% モントーヤ
 02   5.793km 259.8km/h 135.5% モントーヤ
 03   5.793km 257.6km/h 134.4% Mシューマッハ
 04   5.793km 260.4km/h 135.8% バリチェロ
 05   5.793km 257.3km/h 134.2% モントーヤ
 06   5.793km 255.9km/h 133.5% ライコネン
 07   5.793km 254.3km/h 132.7% アロンソ
 08   5.793km 213.8km/h 111.5% ベッテル
 09   5.793km 248.1km/h 129.4% ハミルトン
 10   5.793km 254.4km/h 132.7% アロンソ
 11   5.793km 253.5km/h 132.2% ベッテル
 12   5.793km 248.2km/h 129.5% ハミルトン
 13   5.793km 249.0km/h 129.9% ベッテル
 14   5.793km 247.9km/h 129.3% ハミルトン
 15   5.793km 250.1km/h 130.4% ハミルトン
 16   5.793km 257.0km/h 134.1% ハミルトン
 17   5.793km 218.3km/h 113.8% ハミルトン
 18   5.793km 263.6km/h 137.5% ライコネン
 19   5.793km 263.0km/h 137.2% ルクレール

平均速度に換算してみます。スピード自慢のモンツァはタイムでみるより、速度でみた方が面白いかもしれません。
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各レイアウトの最速をピックアップしてグラフ頂部に示しています。薄いグレーのオーバル期間も速いには速いけど、やはり先程話題に出した71年は平均251.5km/hと高速サーキットの部類に属する現代のスパ・フランコルシャンよりも高速度となっています。さすがモンツァ。初年50年から20年間で31%も向上していますね。この平均速度は90年のマクラーレン・ホンダでセナが記録した253.0km/hまで20年近く最速を保持していました。
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タイム編と同じ81年以降を拡大してみます。緑色のグラフ、一周全長5.800km時代は91年のセナが257.4km/hで最速。黄色の5.770km時代を飛ばして、現代のオレンジ色5.793km時代に入ると04年にフェラーリのバリチェロが260km/h台に突入。そしてさらに14年後の18年に同じくフェラーリのライコネンが歴代最高平均速度の263.6km/hに達しました。たまたまだと思いますが、マシンレギュレーションはそれぞれ異なり、また年々変わっていくのに 13〜14年周期で速度のピークが訪れているのが何とも不思議。何回か260km/h台を超えようとしては断念を繰り返して、ようやく近年突破できたかのような変遷となっています。
平均速度260km/h超えという時点で言うまでもなく他には類をみないハイスピードサーキットであることは間違いありません。平均速度はご存知の通りスピードに乗り切ったストレート終端付近や高速コーナーの通過速度だけではなく、各所にあるシケイン進入のための減速、最終コーナー「パラボリカ」のための減速を均して割り出しているため「瞬間最高速度」(スピードトラップでの速度ではない)となると、もっと高速度が出ていることになります。このブログで何回か取り上げているF1瞬間最高速度については15年まではこのモンツァで05年予選にマクラーレンのモントーヤによって372.6km/hがマークされていました。しかし平均速度にするとそれは257.3km/hにまで落ち込み、タイムは1分21秒054と18年のライコネンと比べても7.3km/h、1秒935も下回っています。いくら瞬間最高速度が速くても、直線でないコーナー区間、またコーナー進入ギリギリまでブレーキングポイントを遅らせて突っ込むなど「限界まで速度を落とさず走れる」マシンの方が一周トータルでは速いということがよくわかります。これが現代のマシンが速いといわれる最も特徴的な部分です。

近年は安全対策万全の新興サーキットや収益の期待できる市街地サーキットが増えました。よく言えば世界各地でF1を楽しむことができるようになり、悪く言えばどこも似たり寄ったりなサーキットが増えたようにも感じます。でもココは違う。例え古臭かろうがパワーとスピード一辺倒であろうが、昔も今も「F1の真骨頂」がみられる貴重なサーキットの一つです。

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