スパ・フランコルシャンのレースと聞くと「夏の終わり」を感じます。今シーズンも夏の終わりには違いありませんが、2020年シーズンにおいてはまだ前半戦なんですよね。ファンのみならずドライバーや関係者からの絶大な支持を受ける人気サーキットのポール変遷をみていきましょう。

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《スパ・フランコルシャンの基本情報》
    全長  :14.120km(1950〜70)
        6.940km(1983〜91)
        6.974km(1992,93,95)
        7.001km(1994)
        6.968km(1996〜01)
        6.976km(2002,04,05)
        7.004km(2007〜)
 コーナー数:19箇所(2007〜)
   開催回数  :52回

「温泉リゾート」の代名詞でも使われるスパとフランコルシャンの2つの街にまたがる形で設営され、F1制定初年の1950年から山奥で行われるザ・パーマネントサーキットです。ただ面白いのは「半市街地サーキット」であること。14kmに及ぶ旧レイアウトのほとんどが日常的に一般車が往来する公道で構成されていました。一昔前の鋭角右コーナー「ラ・ソース」の日常はこんな感じ。
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F1ファンでは超有名なサーキットでも、日常を知らない異国の我々からしたら違和感を覚えますよね。今ではこの区間も別線が敷かれて一般車は通れないとのことです。これまでのサーキットレイアウト変更を以下に示します。
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 ・1950〜70年 14.120km 黒色(オリジナル)
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 ・1983〜91年    6.940km 紫色(シケイン設置)
 ・1992,93,95年 6.974km
 ・1994年            7.001km 青色(仮シケイン設置)
 ・1996〜01年    6.968km
 ・2002,04,05年 6.976km 緑色(シケイン改良)
 ・2007〜現在     7.004km 黒色(シケイン廃止)

上の図がF1におけるオリジナルレイアウトです。黒と赤の実線で構成される「黒」の部分が現在使用されていないものになります。ただし、先程も書いた通り「公道」ですので道路自体は現存し、生活道路として使用されています。線形からも察することができますが、速度が高く危険とされ、1970年台はニヴェルやゾルダーなどにベルギーGPの座を奪われることとなります。
下の図は皆さんもよくご存知の現レイアウトです。1983年よりオリジナルのちょうど半分となったこのショートレイアウト(とはいえ現F1サーキット最長の7km)に切り替わっています。実はこれ以外にも細かな変更を経てはいますが割愛しました。代表的なところを挙げると、94年は「F1で発生した久々の死亡事故」により、他のサーキットと同じく仮設のシケインが設けられました。ほか、同じくこのサーキットにおいてシンボリックな存在となった「バスストップ」を改良、のちの廃止と軽微ながら幾多の変更と開催休止を経て現在に至ります。山間にあるため起伏も大きく「スパウェザー」と称されるお決まりの不安定な天候がさらに難易度を上げてきます。高速かつ危険でも人気が止まないのはそれだけ「見応えと攻略しがいのあるサーキット」だからではないでしょうか。

《スパ・フランコルシャンの予選P.P.タイム変遷》
 50 14.120km 4分37秒000 ファリーナ
 51 14.120km 4分25秒000 ファンジオ
 52 14.120km 4分37秒000 アスカリ
 53 14.120km 4分30秒000 ファンジオ
 54 14.120km 4分22秒100 ファンジオ
 55 14.120km 4分18秒100 カステロッティ
 56 14.120km 4分09秒800 ファンジオ
 57
 58 14.120km 3分57秒100 ホーソーン
 59
 60 14.120km 3分50秒000 Jブラバム
 61 14.120km 3分59秒300 Pヒル
 62 14.120km 3分57秒000 Gヒル
 63 14.120km 3分54秒100 Gヒル
 64 14.120km 3分50秒900 ガーニー
 65 14.120km 3分45秒400 Gヒル
 66 14.120km 3分38秒000 サーティース
 67 14.120km 3分28秒100 クラーク
 68 14.120km 3分28秒600 エイモン
 69 
 70 14.120km 3分28秒100 スチュワート

 83   6.940km 2分04秒615 プロスト
 84 
 85   6.940km 1分55秒306 プロスト
 86   6.940km 1分54秒331 ピケ
 87   6.940km 1分52秒026 マンセル
 88   6.940km 1分53秒718 セナ
 89   6.940km 1分50秒867 セナ
 90   6.940km 1分50秒365 セナ
 91   6.940km 1分47秒811 セナ
 92   6.974km 1分50秒545 マンセル
 93   6.974km 1分47秒571 プロスト
 94   7.001km 2分21秒163 バリチェロ
 95   6.974km 1分54秒392 ベルガー
 96   6.968km 1分50秒574 Jヴィルヌーブ
 97   6.968km 1分49秒450 Jヴィルヌーブ
 98   6.968km 1分48秒682 ハッキネン
 99   6.968km 1分50秒329 ハッキネン
 00   6.968km 1分50秒646 ハッキネン
 01   6.968km 1分52秒072 モントーヤ
 02   6.976km 1分43秒726 Mシューマッハ
 03 
 04   6.976km 1分56秒233 トゥルーリ
 05   6.976km 1分46秒391 モントーヤ
 06
 07   7.004km 1分45秒994 ライコネン
 08   7.004km 1分47秒338 ハミルトン
 09   7.004km 1分46秒308 フィジケラ
 10   7.004km 1分45秒778 ウェバー
 11   7.004km 1分48秒298 ベッテル
 12   7.004km 1分47秒573 バトン
 13   7.004km 2分01秒012 ハミルトン
 14   7.004km 2分05秒591 Nロズベルグ
 15   7.004km 1分47秒197 ハミルトン
 16   7.004km 1分46秒744 Nロズベルグ
 17   7.004km 1分42秒553 ハミルトン
 18   7.004km 1分58秒179 ハミルトン
 19   7.004km 1分42秒519 ルクレール

先程のレイアウトからもわかるように、スパ・フランコルシャンは大きく2つの期間に分けられます。距離も倍半分異なるため当然並列比較はできません。IMG_5023
前半20年の14km時代は当初一周に4分37秒もかかっていたのに、末年の1970年には3分28秒と1分近く短縮しています。全く異なるマシンレギュレーションとはいえ、割合にして75.1%と同じカテゴリーとは思えない短縮っぷりです。この後出てきますが、これを速度換算すると、さらにその差が顕著に伝わってきます。
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現レイアウトとなる1983年以降にフォーカスを当てると、波はあれど1分40秒台から50秒台の間を推移しています。劇的な短縮や向上がみられません。飛び出たものに着目していくと、まず水色帯の1994年に記録した2分21秒163が一際目立ちます。仮シケイン設置と「悲しみの雨」によってダブルで思い切りタイムが落ちています。これがセナやラッツェンバーガーの怨念とでもいうべきか。ほか、2002年のM・シューマッハが8秒以上縮めたのちの2004年、ルノーのトゥルーリ2回目ポールは1分56秒233に落ち込んで、また逆戻りしているかのよう。でもご安心下さい、これも雨による影響です。フリー走行2回目にマクラーレンのライコネンがしっかり1分44秒701で走破しているため、誤差範囲とみてよいもの。2013年と15年、あとまだ記憶に新しい18年も2分近いラップタイムですが、これもウェットコンディションによるもの。そう、スパは予選や決勝に関わらず、容赦無く雨を降らせ、ドライバーに試練を与えるサーキットなのです。現状の歴代最速は昨年2019年の「眉唾」ルクレールが叩き出した1分42秒519となりますが、前年18年の雨が降り出す直前のQ2でフェラーリのベッテルが1分41秒501でトップ通過しています。全データを観返して確認はできていませんが、おそらくスパ最速はこちらになるでしょう。この頃のフェラーリが近年のフェラーリで最もキレのある走りをしていた記憶です。IMG_5025

《スパ・フランコルシャンの予選P.P.平均速度変遷》
 50 14.120km 183.5km/h 100%   ファリーナ
 51 14.120km 191.8km/h 104.5% ファンジオ
 52 14.120km 183.5km/h 100.0% アスカリ
 53 14.120km 188.3km/h 102.6% ファンジオ
 54 14.120km 193.9km/h 105.7% ファンジオ
 55 14.120km 196.9km/h 107.3% カステロッティ
 56 14.120km 203.5km/h 110.9% ファンジオ
 57
 58 14.120km 214.4km/h 116.8% ホーソーン
 59
 60 14.120km 221.0km/h 120.4% Jブラバム
 61 14.120km 212.4km/h 115.8% Pヒル
 62 14.120km 214.5km/h 116.9% Gヒル
 63 14.120km 217.1km/h 118.3% Gヒル
 64 14.120km 220.1km/h 120.0% ガーニー
 65 14.120km 225.5km/h 122.9% Gヒル
 66 14.120km 233.2km/h 127.1% サーティース
 67 14.120km 244.3km/h 133.1% クラーク
 68 14.120km 243.7km/h 132.8% エイモン
 69 
 70 14.120km 244.4km/h 133.2% スチュワート

 83   6.940km 200.7km/h 109.4% プロスト
 84 
 85   6.940km 216.7km/h 118.1% プロスト
 86   6.940km 218.8km/h 119.2% ピケ
 87   6.940km 223.3km/h 121.7% マンセル
 88   6.940km 220.0km/h 119.9% セナ
 89   6.940km 225.6km/h 123.0% セナ
 90   6.940km 226.7km/h 123.5% セナ
 91   6.940km 232.0km/h 126.4% セナ
 92   6.974km 227.1km/h 123.8% マンセル
 93   6.974km 233.4km/h 127.2% プロスト
 94   7.001km 178.5km/h    97.3% バリチェロ
 95   6.974km 219.5km/h 119.6% ベルガー
 96   6.968km 226.9km/h 123.6% Jヴィルヌーブ
 97   6.968km 229.2km/h 124.9% Jヴィルヌーブ
 98   6.968km 230.8km/h 125.8% ハッキネン
 99   6.968km 227.4km/h 123.6% ハッキネン
 00   6.968km 226.7km/h 123.5% ハッキネン
 01   6.968km 223.8km/h 122.0% モントーヤ
 02   6.976km 241.2km/h 131.9% Mシューマッハ
 03 
 04   6.976km 216.1km/h 117.7% トゥルーリ
 05   6.976km 236.1km/h 128.6% モントーヤ
 06
 07   7.004km 237.9km/h 129.6% ライコネン
 08   7.004km 234.9km/h 128.0% ハミルトン
 09   7.004km 237.2km/h 129.2% フィジケラ
 10   7.004km 238.4km/h 129.9% ウェバー
 11   7.004km 232.8km/h 126.9% ベッテル
 12   7.004km 234.4km/h 127.7% バトン
 13   7.004km 208.4km/h 113.5% ハミルトン
 14   7.004km 200.8km/h 109.4% Nロズベルグ
 15   7.004km 235.2km/h 128.2% ハミルトン
 16   7.004km 236.2km/h 128.7% Nロズベルグ
 17   7.004km 245.9km/h 134.0% ハミルトン
 18   7.004km 213.4km/h 116.3% ハミルトン
 19   7.004km 245.9km/h 134.0% ルクレール

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速度変換してひとまず全時代をみてみましょう。14km時代最終年の1970年の平均速度は驚くことに244.4km/hに達しています。もちろん現代とは異なりテクニカルな高速下りコーナーではなく緩やかなストレートが続くことで速度が高めに算出されることに尽きますが、第二期のショートレイアウトにも引けを取らない速度であることからも「危険」と言われた所以が想像できますね。ここはシルバーストンやモンツァといった平坦なクローズドサーキットではなく「山岳半市街地」のサーキットですから。
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慣れ親しむ近代の第二期を再びクローズアップしてみます。標高も高低差もあるサーキットならターボエンジンが有利なんじゃないかと思うのですが、80年台中盤のターボ時代よりもむしろ90年台の方がよっぽど高い速度となっています。パワーがあるに越したことはないのですが、スパは上り坂だけでなく下りながらの高速コーナーが続きます。やはり電子制御で最適な調整を施した方が安定したコーナリングができるのでしょうか。タイムと同様に速度も雨を除けば220km/h〜240km/h付近を上下しています。ドライバーやマシンは進化しても、スパの限界値はこのあたりが精一杯なのでしょうか。最速は2017年と19年が245.9km/hのタイ記録となります(厳密には19年が245.949km/hで最々速)しかし、先程18年のベッテルQ2はもっと速いタイムを出していましたね。「ポールタイム」という観点からは外れてしまいますが、参考までに計算すると248.4km/hとなります。決して広くない幅員に加え、鋭角なラ・ソースあり、度胸試しの上りとなるオー・ルージュ〜ラディオンあり、オマケに強い横Gに耐える必要があるプーオンやブランシモンありでこの速度。やはり並大抵のドライバーでは1ラップをキメるのは至難の業。F1ドライバーでもないmiyabikunが想像で語るのもおこがましいですが、数多くあるF1サーキットでも攻略に手を焼く最有力候補ではないかと、常々思っています。

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