前回はイギリスなのに「アメリカのサーキットのポールポジションタイム」を取り扱いました。今回はスペインなのに「メキシコのサーキット」を取り扱うことにします。理由は2つ。カタロニアサーキットは当初予定された5月初旬に行ってしまったため。そしてメキシコGPも今シーズンの開催を取り止めており、差し込むタイミングが無くなったためです。
梅雨が明け、昨日あたりから全国的に高温注意報発令が相次ぐほど暑い夏本番を迎えました。せっかくの夏休み、お盆休みの時期なのに今年は「Go To」いや「Stay Home」どっち?!とにかく例年とは様子が違いますもんね。朦朧としそうな暑さだけど、しっかり水分を摂りつつスペインGPまでしばしの暇つぶしになればと思います。
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《エルマノス・ロドリゲスの基本情報》
    全長   :5.000km(1963〜70)
       4.421km(1986〜92)
       4.304km(2015〜)
 コーナー数:17箇所(2015〜)
   開催回数  :20回

F1メキシコGPの舞台はエルマノス・ロドリゲスサーキットです。当初1962年は「マグダレーナ・ミシウカ」という名で開業したものの、地元のリカルド・ロドリゲス(弟)が事故死したことで改称。その後、F1でも活躍したペドロ・ロドリゲス(兄)も71年に事故死し、その兄弟の活躍を讃えて「エルマノス(兄弟)・ロドリゲス」と名付けられて現在に至ります。
サーキットそのものは高低差2.8mと平坦そのものですが、ご存知の通りF1のみならず世界に点在するクローズドサーキットにおいて最高標高にあたる2,285mに所在するサーキットのため、気圧が低くエンジン出力が低下してしまいます。ゆえに「エンジンに対してとても厳しい環境下にある」ことで有名です。

開催は3つの時期に分かれ、かつサーキットのレイアウトもその都度変更されてきました。image
 ・1963〜70年 5.000km 青色(オリジナル)
 ・1986〜92年 4.421km 赤色(ヘヤピン短縮)
 ・2015〜現在  4.304km 黒色(インフィールド)

サーキット全長は4km台前半と比較的短めです。オリジナルレイアウトは5kmちょうどということで「本当に?!」と疑いたくもなりますが、実測できないためmiyabikun数字を信じることにします(笑)まずサーキット中間のヘヤピンを短縮、続いて近年ヘルマン・ティルケの監修により野球場の外周を回る最終セクターを改良する形で徐々に全長が短くなっています。このサーキットの名物であったバンクの付いた180°ターンの「ペラルターダ」は数々の事故が起き、改良を前にティルケ自身もどうにか残したい意向もあったようですが、ランオフエリアを設けることが出来ない理由で廃止されました。野球場のスタンドを貫通しているため、あの独特な観客席が誕生したわけです。

《エルマノス・ロドリゲスの予選P.P.タイム変遷》
 63 5.000km 1分58秒880 クラーク
 64 5.000km 1分57秒240 クラーク
 65 5.000km 1分56秒170 クラーク
 66 5.000km 1分53秒180 サーティース
 67 5.000km 1分47秒560 クラーク
 68 5.000km 1分45秒220 シフェール
 69 5.000km 1分42秒900 Jブラバム
 70 5.000km 1分41秒860 レガッツォーニ

 86 4.421km 1分16秒990 セナ
 87 4.421km 1分18秒383 マンセル
 88 4.421km 1分17秒468 セナ
 89 4.421km 1分17秒876 セナ
 90 4.421km 1分17秒227 ベルガー
 91 4.421km 1分16秒696 パトレーゼ
 92 4.421km 1分16秒346 マンセル

 15 4.304km 1分19秒480 Nロズベルグ
 16 4.304km 1分18秒704 ハミルトン
 17 4.304km 1分16秒488 ベッテル
 18 4.304km 1分14秒759 リカルド
 19 4.304km 1分15秒024 ルクレール

3つの開催期間は大きな空白期間を伴うため、ドライバーやマシンレギュレーションも様変わりしています。62年のノンタイトル戦を除外し、翌年63以降のタイトル戦から比較することとしました。空白期間含めそのまま素直にグラフで表現すると、こんな見栄えになります。IMG_4633
第1期と第2期で15年間、第2期と現在の第3期で22年間の空白期間があるため全く繋がりませんね。このグラフからわかることとしては「段階的に全長が短くなれど、第2期と第3期でラップタイムに差があまりない」というところでしょうか。第1期についてmiyabikunはリアルタイムで観た時代ではないため、恥ずかしながら細かな出来事やマシンの違いを語れません。よって「大きなタイム差がみられない」第2期と第3期を抜き出して、拡大表示してみたいと思います。IMG_4631
第2期は「パワフルドッカンなターボ時代から完全NAエンジン縛りの時代」にあたり、第3期は現パワーユニットである「ハイブリッドターボ時代」となります。高地サーキットで空気が薄いならば、タービンで過給した方が有利なのでは、と思いきや、オールNAエンジン化された89年以降もタイム的な比較となるとほぼ差がありません。むしろ89年を境にガチガチのハイテクマシン化された92年まで順調にタイムを減少させ、第2期初年の86年を凌駕しています。エルマノス・ロドリゲスは長い直線に目が行きがちですが、実は直線が長くても低気圧かつダウンフォースも低下するため、直線速度向上より「後半のコーナー区間」で稼いだ方がゲインが大きくなります。よって、最適なコーナリングが可能となった第2期晩年の方がこのサーキットにおいては有利と出ます。
ドライバーもマシンも全く繋がらない第3期はいつもながら初年(今回は2015年)から時間経過と共に急激にラップタイムが減少。最速は昨年ではなく一昨年に当時レッドブルだったリカルドが記録した1分14秒759となっています。ちなみにこれが「現時点での」リカルドの最終ポールポジションです。今シーズンはメキシコGP自体中止されましたのでルノーでの更新は無くなりましたが、来シーズンはマクラーレン・メルセデスで挑む(予定)です。またチャンスが到来することとなるでしょうか。この第3期において17年レギュレーションである「タイヤのワイド化」を経てタイム大幅短縮されたことからも、後半セクションのグリップ向上がカギとなっていることが想像できますね。
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《エルマノス・ロドリゲスの予選P.P.平均速度変遷》
 63 5.000km 151.5km/h 100%    クラーク
 64 5.000km 153.5km/h 101.3% クラーク
 65 5.000km 154.9km/h 102.2% クラーク
 66 5.000km 159.0km/h 105.0% サーティース
 67 5.000km 167.3km/h 110.4% クラーク
 68 5.000km 171.1km/h 112.9% シフェール
 69 5.000km 174.9km/h 115.4% Jブラバム
 70 5.000km 176.7km/h 116.6% レガッツォーニ

 86 4.421km 206.7km/h 136.4% セナ
 87 4.421km 203.0km/h 134.0% マンセル
 88 4.421km 205.4km/h 135.6% セナ
 89 4.421km 204.4km/h 134.9% セナ
 90 4.421km 206.1km/h 136.0% ベルガー
 91 4.421km 207.5km/h 137.0% パトレーゼ
 92 4.421km 208.5km/h 137.6% マンセル

 15 4.304km 194.9km/h 128.6% Nロズベルグ
 16 4.304km 196.9km/h 130.0% ハミルトン
 17 4.304km 202.6km/h 133.7% ベッテル
 18 4.304km 207.3km/h 136.8% リカルド
 19 4.304km 206.5km/h 136.3% ルクレール

全長に差がある場合の比較は「平均速度」を割り出して比較してあげるしかありません。一応通期の平均速度グラフはこんな感じになります。IMG_4632
第1期も8年間で平均151.5km/hから176.7km/hへと25.2km/hの急激な上昇があるものの、200km/hオーバーとなった第2期、第3期には遠く及びません。IMG_4630
平均速度だけみたら、第3期よりも第2期の方が高い水準となっています。最も高いのはマンセルが記録した92年の208.5km/h、次いで前年91年のパトレーゼによる207.5km/hとどちらもウィリアムズ(・ルノー)のNAエンジンのハイテク機です。そしてようやく3番目に18年のレッドブル(・ルノー)のリカルドが記録した207.3km/hという順になりました。タイムは92年よりも18年の方が1.587秒も速いわけですから、やはり「速度が高いだけでは1ラップが速いとは言えない」ということがわかります。
今までエルマノス・ロドリゲスといえば「エンジンに厳しく、低い気圧でなかなか高速度に達しない」というイメージが強くありました。今でも気圧が低いことには変わりありませんが、16年決勝において当時ウィリアムズ(・メルセデス)のボッタスが372.5km/hという「F1決勝レース最高速度」が記録されています(予選最高速度はバクー市街地での16年ボッタスによる378.0km/h)ただ、決勝レース中のファステストラップはレッドブルのリカルドが獲っており、当のボッタスは予選8番手、決勝も8番手と振るいませんでした。F1は物理的な速度だけではない「1ラップした時の速さ」と「チェッカーフラッグが振られた瞬間の順位」がモノをいいます。