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度重なるレイアウト変更に古くから数多く開催されたモナコGP。この企画の中で一番大変な回かもしれない。。華麗で伝統あるモンテカルロ市街地での歴代ポールポジションをグラフと共にみていきます。

《モンテカルロ市街地の基本情報》
    全長   :3.180km(1950)
        3.145km(1955〜72)
        3.278km(1973〜75)
        3.312km(1976〜85)
        3.328km(1986〜96)
        3.366km(1997〜02)
        3.340km(2003〜)
 コーナー数:19箇所(2003〜)
   開催回数  :66回(1950〜)

ザ・市街地サーキットです。豪華絢爛であるのはもちろんのこと、切り立った崖っ淵にある狭隘な集落でよくぞレース運営している、といった感じですね。普通車であっても高速度で走るのは困難です。市街地という限られた舗装の中、70年間で様々な軽微変更を伴って現在に至ります。レイアウト変更はスペインGPの時と同様に以前「モナコGPの歴史と地理」で使った図で簡単に示します。
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 ・1950年         3.180km 茶色(オリジナル)
 ・1955〜72年 3.145km 桃色(アントニーノウズ)
 ・1973〜75年 3.278km 紫色(プール、ラスカス)
 ・1976〜85年 3.312km 水色(キンク2箇所追加)
 ・1986〜96年 3.328km 緑色(ヌーベルシケイン)
 ・1997〜02年 3.366km 赤色(プール区間拡大)
 ・2003〜現在 3.340km 黒色(ラスカス改良)

今回もイジワルmiyabikunは以下のグラフの色分けとは統一していません。毎回手作りしているなら、そこもちゃんと合わせりゃいいのにね(笑)歴代のグラフ同士の色の順番は揃っています。レイアウト変更は7段階で区別しました。実のところ、本当はもっと細かく分かれています。
初年の1950年から基本的な形状は変わらずも、キンクは少なく比較的スムーズです。そこから55年に一度終盤セクションのラスカスが削られ、アントニー・ノウズ付近まで短縮されました。73年でヨットハーバー目前のプールサイドシケインとラスカスの復活。76年からターン1のサン・デボーテとアントニー・ノウズをキンク化、86年にヌーベルシケインを改称後に現在の位置に移動して概ね現在の位置と形が形成されました。

まずは年別のポールポジションタイムとドライバーの一覧をみていきましょう。

《モンテカルロ市街地の予選P.P.タイム変遷》
 50 3.180km 1分50秒200 JMファンジオ

 55 3.145km 1分41秒100 JMファンジオ
 56 3.145km 1分44秒000 JMファンジオ
 57 3.145km 1分42秒700 JMファンジオ
 58 3.145km 1分39秒800 ブルックス
 59 3.145km 1分39秒600 モス
 60 3.145km 1分36秒300 モス
 61 3.145km 1分39秒100 モス
 62 3.145km 1分35秒400 クラーク
 63 3.145km 1分34秒300 クラーク
 64 3.145km 1分34秒000 クラーク
 65 3.145km 1分32秒500 Gヒル
 66 3.145km 1分29秒900 クラーク
 67 3.145km 1分27秒600 Jブラバム
 68 3.145km 1分28秒200 Gヒル
 69 3.145km 1分24秒600 スチュワート
 70 3.145km 1分24秒000 スチュワート
 71 3.145km 1分23秒200 スチュワート
 72 3.145km 1分21秒400 Eフィッティパルディ
 73 3.278km 1分27秒500 スチュワート
 74 3.278km 1分26秒300 ラウダ
 75 3.278km 1分26秒400 ラウダ
 76 3.312km 1分29秒650 ラウダ
 77 3.312km 1分29秒860 ワトソン
 78 3.312km 1分28秒340 ロイテマン
 79 3.312km 1分26秒450 シェクター
 80 3.312km 1分24秒813 ピローニ
 81 3.312km 1分25秒710 Nピケ
 82 3.312km 1分23秒281 アルヌー
 83 3.312km 1分24秒840 プロスト
 84 3.312km 1分22秒661 プロスト
 85 3.312km 1分20秒450 セナ
 86 3.328km 1分22秒627 プロスト
 87 3.328km 1分23秒039 マンセル
 88 3.328km 1分23秒998 セナ
 89 3.328km 1分22秒308 セナ
 90 3.328km 1分21秒314 セナ
 91 3.328km 1分20秒344 セナ
 92 3.328km 1分19秒495 マンセル
 93 3.328km 1分20秒557 プロスト
 94 3.328km 1分18秒560 Mシューマッハ
 95 3.328km 1分21秒952 Dヒル
 96 3.328km 1分20秒356 Mシューマッハ
 97 3.366km 1分18秒216 フレンツェン
 98 3.366km 1分19秒798 ハッキネン
 99 3.366km 1分20秒547 ハッキネン
 00 3.366km 1分19秒475 Mシューマッハ
 01 3.366km 1分17秒430 クルサード
 02 3.366km 1分16秒676 モントーヤ
 03 3.340km 1分15秒259 Rシューマッハ
 04 3.340km 1分13秒985 トゥルーリ
 05 3.340km 1分13秒644 ライコネン ※
 06 3.340km 1分13秒962 アロンソ
 07 3.340km 1分15秒726 アロンソ
 08 3.340km 1分15秒787 マッサ
 09 3.340km 1分14秒902 バトン
 10 3.340km 1分13秒826 ウェバー
 11 3.340km 1分13秒556 ベッテル
 12 3.340km 1分14秒381 ウェバー
 13 3.340km 1分13秒876 Nロズベルグ
 14 3.340km 1分15秒989 Nロズベルグ
 15 3.340km 1分15秒098 ハミルトン
 16 3.340km 1分13秒622 リカルド
 17 3.340km 1分12秒178 ライコネン
 18 3.340km 1分10秒810 リカルド
 19 3.340km 1分10秒166 ハミルトン

    ※2005年はポールポジションタイムではありません

66回ともなると、さすがに長いし沢山ありますね。おまけにマシンやエンジンレギュレーションだけでなく、一周の距離も異なるため、当然ながら一様に比較はできません。ただグラフを眺めていると、不思議と右肩下がりになっているようにみえます。
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F1初年の1950年モナコGPは今よりも滑らかで距離も160m短いのに38秒も遅かったんですね。これほどタイム差は今までみてきたサーキットの比になりません。やはり70年の時を経ると同じF1とはいえ全くの別物ですね。モナコGPが行われなかった空白の4年間をまたいだ55年から3.145kmにラスカス分に相当する長さが短縮されたわけですが、同じファンジオが1分41秒100という9秒短縮し、そこから年々タイムを削っていっています。
今回はグラフに各レイアウトでの最速タイムを記しました。それをみていくと、全ての期間ではありませんが、概ね「レイアウト変更を行ってタイムが落ち、回数を重ねる毎にタイムが短縮されていく」という一般的に想像ができる「鍛錬の成果」のような現象がみられます。その間もグラフ下にあるような様々なマシンレギュレーションを経ているのに、モンテカルロ市街地においてはあまりそれには影響されず、その鍛錬や慣れという身体的な進化とマシン自体の性能向上でタイムが短縮されるということが明らかになります。よく「マシンパワーによらない、、」なんて言われるモンテカルロですから、あるメーカー、あるドライバーが突出して速い時代はあれど、全体が底上げされれば自ずとラップタイムは向上していきます。一応参考までに各レイアウトでの平均タイムを算出しましたので比較してみます。

 ・1950年         3.180km 平均1分50秒200
 ・1955〜72年 3.145km 平均1分33秒206
 ・1973〜75年 3.278km 平均1分26秒733
 ・1976〜85年 3.312km 平均1分25秒606
 ・1986〜96年 3.328km 平均1分21秒323
 ・1997〜02年 3.366km 平均1分18秒690
 ・2003〜現在 3.340km 平均1分13秒927

《モンテカルロ市街地の予選P.P.平均速度変遷》
続いて先日のカタロニアでも行った「全長から割り出した平均速度」の観点からみてみます。

 50 3.180km 103.9km/h 100% JMファンジオ

 55 3.145km 112.0km/h 107.8%  JMファンジオ
 56 3.145km 108.9km/h 104.8%  JMファンジオ
 57 3.145km 110.2km/h 106.1%  JMファンジオ
 58 3.145km 113.4km/h 109.2% ブルックス
 59 3.145km 113.7km/h 109.4% モス
 60 3.145km 117.6km/h 113.2% モス
 61 3.145km 114.2km/h 110.0% モス
 62 3.145km 118.7km/h 114.2% クラーク
 63 3.145km 120.1km/h 115.6% クラーク
 64 3.145km 120.4km/h 115.9% クラーク
 65 3.145km 122.4km/h 117.8%  Gヒル
 66 3.145km 125.9km/h 121.2% クラーク
 67 3.145km 129.2km/h 124.4%  Jブラバム
 68 3.145km 128.4km/h 123.6%  Gヒル
 69 3.145km 133.8km/h 128.8% スチュワート
 70 3.145km 134.8km/h 129.7% スチュワート
 71 3.145km 136.1km/h 131.0% スチュワート
 72 3.145km 139.1km/h 133.9%  Eフィッティパルディ
 73 3.278km 134.9km/h 129.8% スチュワート
 74 3.278km 136.7km/h 131.6% ラウダ
 75 3.278km 136.6km/h 131.5% ラウダ
 76 3.312km 133.0km/h 128.0% ラウダ
 77 3.312km 132.7km/h 127.7% ワトソン
 78 3.312km 135.0km/h 129.9% ロイテマン
 79 3.312km 137.9km/h 132.8% シェクター
 80 3.312km 140.6km/h 135.3% ピローニ
 81 3.312km 139.1km/h 133.9% Nピケ
 82 3.312km 143.2km/h 137.8% アルヌー
 83 3.312km 140.5km/h 135.3% プロスト
 84 3.312km 144.2km/h 138.8% プロスト
 85 3.312km 148.2km/h 142.7% セナ
 86 3.328km 145.0km/h 139.6% プロスト
 87 3.328km 144.3km/h 138.9% マンセル
 88 3.328km 142.6km/h 137.3% セナ
 89 3.328km 145.6km/h 140.1% セナ
 90 3.328km 147.3km/h 141.8% セナ
 91 3.328km 149.1km/h 143.5% セナ
 92 3.328km 150.7km/h 145.1% マンセル
 93 3.328km 148.7km/h 143.2% プロスト
 94 3.328km 152.5km/h 146.8% Mシューマッハ
 95 3.328km 146.2km/h 140.7% Dヒル
 96 3.328km 149.1km/h 143.5% Mシューマッハ
 97 3.366km 154.9km/h 149.1% フレンツェン
 98 3.366km 151.9km/h 146.2% ハッキネン
 99 3.366km 150.4km/h 144.8% ハッキネン
 00 3.366km 152.5km/h 146.8% Mシューマッハ
 01 3.366km 156.5km/h 150.6% クルサード
 02 3.366km 158.0km/h 152.1% モントーヤ
 03 3.340km 159.8km/h 153.8% Rシューマッハ
 04 3.340km 162.5km/h 156.4% トゥルーリ
 05 3.340km 163.3km/h 157.2% ライコネン ※
 06 3.340km 162.6km/h 156.5% アロンソ
 07 3.340km 158.8km/h 152.8% アロンソ
 08 3.340km 158.7km/h 152.7% マッサ
 09 3.340km 160.5km/h 154.5% バトン
 10 3.340km 162.9km/h 156.8% ウェバー
 11 3.340km 163.5km/h 157.5% ベッテル
 12 3.340km 161.7km/h 155.6% ウェバー
 13 3.340km 162.8km/h 156.7% Nロズベルグ
 14 3.340km 158.2km/h 152.3% Nロズベルグ
 15 3.340km 160.1km/h 154.1% ハミルトン
 16 3.340km 163.3km/h 157.2% リカルド
 17 3.340km 166.6km/h 160.4% ライコネン
 18 3.340km 169.8km/h 163.5% リカルド
 19 3.340km 171.4km/h 165.0% ハミルトン

同様にグラフで示しました。これで細かなレイアウト変更無しでマシンとドライバーそのものの素質を数値で並べられます。
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グラフをみていると、某優良老舗企業の売上高を見ているよう(笑)戦後から売上急成長!といった感じですね。
タイムでみた時の差も歴然としていましたが、速度差でみるとより大きな差に感じます。グラフに示した「レイアウト別最高平均速度」は当然ながら最速タイムと全く同じ年に計上されます。初年50年の速度は103.9km/hだったのに対し、最も速い昨シーズン19年のハミルトンは171.4km/hと67.5km/hも向上し、比率は65%アップとなります。これはもし同じ土俵で走らせたら、ハミルトンがコントロールラインを通過する頃、ファンジオはようやくタバコに到達する前あたりまで離されちゃいそうですね。それでもれっきとした「ポールポジション」には違いありませんが。

 ・1950年         3.180km 平均103.9km/h
 ・1955〜72年 3.145km 平均122.2km/h
 ・1973〜75年 3.278km 平均136.1km/h
 ・1976〜85年 3.312km 平均139.4km/h
 ・1986〜96年 3.328km 平均147.4km/h
 ・1997〜02年 3.366km 平均154.0km/h
 ・2003〜現在 3.340km 平均162.7km/h

こちらも平均値を示します。右肩上がりの向上の中、70年の間に65%の向上がありました。ちょうどその半分の32.5%付近にあるのが、濃いグレーのグラフ、72年にE・フィッティパルディがロータスで記録したあたりとなります。ということは、70年のうちの23年目が「進化の半分」を迎えたということ。つまり古い時代のF1の著しい変化と向上がみられたということが想像できます。

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モナコは色んな意味で特別。素直な結果なようでちょっと想像していたような変化がうかがえませんでしたが、レギュレーションよりもサーキットレイアウトに左右し、それでも日々のF1の進化がみられるといった、他のサーキットとは異なる結果となりました。

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