毎回GP前に見合った過去のレースを取り扱ってきましたが、今回はスケジュールの関係上見送る予定でいました。しかしご存知の通りの「開幕戦オーストラリアGP中止」となり、予選予想、予選、決勝の観戦記ができないため、急遽復活させて「擬似的な」オーストラリアGPをお送りしたいと思います。今回チョイスしたのはアルバートパーク2回目の開催となった1997年の開幕戦です。何気なく選んだのではなく、一応意図してこの年を選びましたので、是非思い返してみて下さい。
IMG_2471
このシーズンからいよいよ日本を代表する企業、ブリヂストンがF1に名乗りを挙げます。初年は全12チーム中、アロウズ、スチュワート、プロスト、ミナルディ、ローラというどちらかといえば下位の5チームに供給し、最高峰カテゴリーの小手調べ。浜島さん若い、そしてタイヤのように丸い!(笑)
IMG_2470

IMG_2477
予選は昨年デビューイヤーチャンピオンを逃したヴィルヌーブが余裕のポールポジションを獲得。2番手には新たにチームメイトとなったフレンツェンが獲得してウィリアムズがフロントロウで固めますが、ヴィルヌーブとフレンツェンの差は何と1.754秒もつきました。圧巻の走りです。3番手はフェラーリ2年目を迎えるM・シューマッハが続きました。一方でアロウズ・ヤマハに移籍したカーナンバー1は
IMG_2476
ローラ2台が予選落ちして全22台中20位。古巣に離されること5.4秒。腕は確かなヒルでもマシンが変われば順位も大きく変わりました。やはりF1はドライバースキルだけでは無い、マシンにも大きく左右されることが明白な結果に。ミナルディに乗る片山は15番手、プロストでデビューした中野は16番手と8列目に仲良く並んでいます。

《予選結果》
 1 J・ヴィルヌーブ  (ウィリアムズ・R・GY)
 2 H・H・フレンツェン(ウィリアムズ・R・GY)
 3 M・シューマッハ  (フェラーリ・F・GY)
   ※GYはグッドイヤー

IMG_2478
開幕戦のスタートはシーズンの行方を占うもの。ヴィルヌーブはチームメイトに対して行手を阻むかのようにマウントを採ります。
IMG_2479
クラッチミートに大失敗!フレンツェンがクロスラインで被せてトップに立つ。
IMG_2480
あれよあれよと後方に並ばれて埋もれるヴィルヌーブ。インからはヤンチャなアーバインがタイヤスモークを上げて切り込んできました。
IMG_2481
ターン1で水色のマシンが直進して土煙を上げています。この時代の青系マシンといえば、、
IMG_2482
ザウバーのハーバート、さらには白と紺のツートンカラーは何とウィリアムズのヴィルヌーブです。スタートに出遅れた後、イン側をアーバインに攻められ、アウトにハーバートと居場所を無くしたことで、圧倒的な予選をみせた優勝候補はコーナーを一つも曲がることなく開幕戦を終えました。ちょっとお粗末。

IMG_2483
IMG_2485
チャンピオンマシンで堂々とアタマを獲ったフレンツェンは混乱をくぐり抜けた2位クルサード、3位シューマッハを1周あたり1秒ずつ引き離すハイペースで逃げています。ウィリアムズは抜きにくいアルバートパークを予選から前に出て封じる2ピットストップ戦略を採ったためです。フレンツェンは18周目に1回目のピットストップに向かい、一度2人に前を譲って3位復帰。
IMG_2486
IMG_2488
その後、シューマッハが31周目、クルサードが33周目に最初で最後のピットを終えると、再びフレンツェンがトップに浮上、あと1回分のギャップを築きにかかっていきます。
IMG_2491
40周目にフレンツェンの2度目を迎えました。今のタイミングであれば、余裕でクルサードの前で戻れます。が、しかし
IMG_2492
IMG_2493
11.7秒、ちょっと遅くない?!右リヤタイヤがもたつきなかなかロリポップが上がりません。
IMG_2494
結局16.4秒費やし、トラックインすればライバルの後方となる3位に交代してしまいました。チャンピオンチームがまさかのポカをして優勝をみすみす逃しています。
IMG_2495
IMG_2497
2位を走行するシューマッハは1回目のピットストップで充分なガソリンが給油できていないことが発覚し、51周目に急遽2回目のストップを余儀無くされています。これもチームの誤算で首脳陣が心配そうに見守る。
IMG_2500
考えてみたらこの2人、今「渦中の立場」側にいらっしゃる方達ですね(笑)

IMG_2501
優勝からも引きずり下ろされたフレンツェンもまだまだ諦めていません。シューマッハが消え、あとはトラック上でクルサードを捉えて「本来の位置」に戻るのみ。猛追してミラーに写し出される位置に復帰してきました。ただこの日のフレンツェンはとことんツイていない。
IMG_2502
55周目のメインストレート上で悲劇が。
IMG_2503
ターン1のブレーキングで左フロントが黒煙に包まれて止まり切れず
IMG_2504
単独でグラベルへ。埋まれば自力脱出できません。ディスクが割れて、奇しくもヴィルヌーブと同様にターン1に散る。

IMG_2507
《決勝結果》
 1 D・クルサード (マクラーレン・M・GY)
 2 M・シューマッハ(フェラーリ・F・GY)
 3 M・ハッキネン (マクラーレン・M・GY)

IMG_2510
表彰台には2人の若きマクラーレンドライバーが揃い、楽しくシャンパンファイト。これは1993年のアデレイド市街地での同じオーストラリアGPでセナが生涯最終優勝を挙げてから4シーズン振り50レース振りの優勝となりました。

マクラーレンは1980年代中盤から90年台初頭まで一時代を築いた名門プライベーターです。常勝を味わったホンダと別れた後、フォードやプジョーエンジンで迷走と低迷を味わい、ようやく前年にドイツの巨人であるメルセデスエンジンを手にしました。
IMG_2474
この年、チームカラーも長年愛用したマールボロから脱却し、シルバーカラーを採用して心機一転した初戦に「冬眠」から抜け出すことに成功しています。近年のマクラーレンは再び低迷に陥り、昨年ようやくサインツが表彰台に登壇するまで復調してきています。そして来シーズンは長くパートナーとしてきた「マクラーレン・メルセデス」復活が決定しました。往年コンビの復活となると「辛い過去」もありますが、97年と同様に若いドライバー2人が引き続きチームの底上げに貢献できるかもしれません。また縁起のいいメルセデスエンジンを手に入れて名門復活を目指していくことでしょう。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村