今年のGP前特集は「各サーキットにおけるポールポジションタイムの向上」についてみていこうと思います。F1は「厳正な」レギュレーションの下、技術や戦略を投じてサーキットを最速でラップするモータースポーツです。ただ速く走ればいいわけではありません。日々進化し、最速ラップが更新される近年、サーキットを最速で走るために障害や制約となるのは天候やトラブルはもちろんのこと、マシンレギュレーションも大きく左右されます。全ての年の細かなレギュレーションまでは拾い切れませんが、ラップタイムに影響を及ぼす要素をいくつかピックアップして、サーキット毎に変遷をみていこうと思います。

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《アルバートパークの基本情報》
       全長     :5.303km(1996〜)
 コーナー数:16箇所    (1996〜)
   開催回数  :24回       (1996〜)

アルバートパークでのF1は1996年からアデレイド市街地に替わって行われている公園周回コースです。都市部に位置し、アクセスがいいのが魅力的ではありますが、普段は駐車場や周遊道路など常にサーキットとして使用されているわけではなく、周りは緑に囲まれてチリや落ち葉によってダスティであるため、F1マシンにとって最良な路面環境とはいえません。また、1996年の使用開始時からほぼレイアウト変更がありません。中央に大きな池がありますし、そもそもが「パーク」ですもんね。変更がないことはデータ比較する上では非常に助かるのですが(笑)路面も良くないし単調なストップアンドゴータイプで燃費もよくなく、さらには抜き辛いとなると、ドライバー側からしたらあまり面白みはないかもしれません。今後レイアウト変更を検討しているそうです。土地柄、大変更は期待できませんが、アルバートパークの綺麗な景観と共にアクティブな改良が施されることを期待したいです。

《アルバートパークのP.P.タイム変遷》
 96年 5.303km 1分32秒371 100%  Jヴィルヌーブ
 97年 5.303km 1分29秒369 96.8% Jヴィルヌーブ
 98年 5.303km 1分30秒010 97.4% ハッキネン
 99年 5.303km 1分30秒462 97.9% ハッキネン
 00年 5.303km 1分30秒556 98.0% ハッキネン
 01年 5.303km 1分26秒892 94.1%  Mシューマッハ
 02年 5.303km 1分25秒843 92.9% バリチェロ
 03年 5.303km 1分27秒173 94.4%  Mシューマッハ
 04年 5.303km 1分24秒408 91.4%  Mシューマッハ
 05年 5.303km 1分28秒279 95.6% ウェバー-2
 06年 5.303km 1分25秒229 92.3% バトン
 07年 5.303km 1分26秒072 93.2% ライコネン
 08年 5.303km 1分26秒714 93.9% ハミルトン
 09年 5.303km 1分26秒202 93.3% バトン
 10年 5.303km 1分23秒919 90.8% ベッテル
 11年 5.303km 1分23秒529 90.4% ベッテル
 12年 5.303km 1分24秒922 91.9% ハミルトン
 13年 5.303km 1分27秒407 94.6% ベッテル
 14年 5.303km 1分44秒231 113%  ハミルトン
 15年 5.303km 1分26秒327 93.5% ハミルトン
 16年 5.303km 1分23秒837 90.8% ハミルトン
 17年 5.303km 1分22秒188 89.0% ハミルトン
 18年 5.303km 1分21秒164 87.9% ハミルトン
 19年 5.303km 1分20秒486 87.1% ハミルトン

 ※2005年はポールポジションタイムではありません

各年のポールポジション獲得者のタイムを記しました。パーセンテージは開催初年(レイアウト変更があった場合はそれの初年)を100とし、どの程度のタイム変化があったかを比率で表したものになります。秒にすると、各サーキットで異なる全長に特性差が比較できません。このように数字で見る機会は多くあると思いますが、miyabikunはこれをグラフにして視覚的に見やすく表現してみました。
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こうすると視覚的にどの程度速くなっているのかとか、遅かった年はいつか入ってきやすいですよね(とはいえ、文字や数字はちっこいので拡大してご覧下さい)グラフ下部には一番の肝である「エンジン構成」を帯にし、タイムに影響があるレギュレーション変更の代表的なものを記載しています。これ以外にも本来であればタイムに影響の出る車重やウィング類の条件などを細やかに盛り込めたら何よりなのですが、、うー許して下さい。。
2014年は雨のためタイムが落ち、グラフが振り切れてしまっています。また2005年は第6戦モナコGPまで「予選2回の合計タイム」でポールポジションを決定していたため、2回のうちの速いいずれかを代表タイムとしましたのでタイムを黒く区別しています。それを除外して一番遅かったのは初年の1996年ウィリアムズのヴィルヌーブによる「デビュー戦で初ポール」の1分32秒371でした。それから24年の時を経て、昨年2019年のハミルトンが記録した1分20秒486が最速となっています。24年間で13%、11.9秒縮めたことになります。この企画で理想的なパターン(笑)当時のウィリアムズもF1のチャンピオンマシンですが、まるでカテゴリーが違うんじゃないかと思える差ですね。
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2005年までの3.0ℓV10NA時代は多少の上下はありつつも時間と共にタイム減少傾向がありました。2001年からいきなり3秒以上削りましたね。この時代最速は2004年のフェラーリ最強時代のM・シューマッハによる1分24秒408。2.4ℓV8NA時代は2011年に空気を味方にして躍進したエアロマシン、レッドブルのベッテルがたたき出した1分23秒529であり、ボリュームで敵わないと言われた3.0ℓV10を上回っています。今考えてみれば、KERSもDRSもオーバーテイクボタン以上の「反則的な裏ワザ」ちゃそれまでですが。そして現パワーユニットである1.6ℓV6ハイブリッドターボをみると、初年14年は全く参考にならないタイムとなるも、2年目は13年のタイムを上回り、右肩下がりの急激な向上で推移しています。マシン重量増加やウィング拡幅も何のその、といった具合ですね。

先日の合同テストまとめでmiyabikunは今年のスペインGP予選は昨年から3.5秒削ってくるのでは?!と予想しました。カタロニアサーキットに比べると、高速旋回性の要素は少ないので、そのままココでいきなり3.5秒も縮められるわけではありません。パワーユニットの向上によるストップアンドゴーの「ゴー」でどれだけ稼げるかがタイム更新のカギになるでしょうか。