FullSizeRender
現在カタロニアサーキットでは第2回目の合同テストが行われており、2020年型マシンを使って様々な仕様やシミュレーションが繰り返されています。ただでさえ走行機会が減ったにも関わらず、今年は各回3日間の合計6日間と2日も短縮されています。コストやスケジュールの都合はあるにせよ、正直少ないです。マシンもようやく出揃い、関係者やファンなどの期待や不安などが最も錯綜する時期ですね。毎年恒例となる合同テストのデータ整理を行いました。細かな仕様変更やプログラムは反映できませんが、まず第1回目の3日間についておさらいしたいと思います。

《日別周回数》
初めは日別の周回数をみていきます。いつもと同様にチームでイメージカラーを付けて積み上げていきます。今シーズンは「アルファタウリ(旧 トロ・ロッソ)を青から白(文字は濃紺)」に変更しています。それ以外もウィリアムズが大幅にカラーリング変更を行いましたが、赤でも白でも青でも近い色があるため、水色(文字は白)に留めました。いずれにせよ凡例によらずぱっと見でチームはイメージできるのではないでしょうか。グラフの横線はスペインGP決勝レースの66周刻みとしています。
IMG_2165
3日間10チームでトータル3,933周(距離にして18,308km)となっています。昨年は4日間行われたもののウィリアムズがまともに走れていないこともあって4,270周でしたので、1日あたりで考えるとだいぶ距離は稼げました。最も走ったのは2日目の1,370周でした。1チーム平均で137周は決勝レースの2倍に相当します。

《日別チーム別周回数》
IMG_2202
こちらは縦積みとなっていたチーム別を日別でバラしたものになります。左から2019年のコンストラクターランキング順に並べて、1日目は水色、2日目がオレンジ、3日目がグレーで区別しています。1日あたりで最も走ったチームは2日目のメルセデスでハミルトン106周、ボッタス77周のトータル183周となっています。3レース分に近い距離を稼ぎ、かつテストとはいえラップタイムも悪くなかったのはさすが。3日間で2レース分にあたる132周を全ての日で走破したのはメルセデスとアルファロメオ、レッドブルの3つだけです。単独で1日に最も多く走ったのはフェルスタッペンの1日目で168周でした。ロングランをたっぷりと。テストではこれ大事。一方で3日目のハースはグロージャンが48周、マグヌッセンがたったの4周と2人足してもスペインGPに及ばない周回数となっています。マグヌッセンがド派手にかまして赤旗中断でした。マルH軍団は今シーズンも健在といったところ。

《3日間チーム別周回数》
IMG_2164
チーム別の3日間トータルに換算するとこうなります。1位は「チャンピオンのところ」が500周まであと少しとなる494周。続いてレッドブルが471周、アルファロメオがペースより距離重視か424周、それを僅差の423周でマクラーレンが追っています。下位だったハースやウィリアムズはまあ想定内としても、フェラーリがたった353周と下から3番目に沈みました。初日のベッテルは体調不良、さらにはパワーユニットのトラブルと一抹の不安要素がありましたね。トラブルは合同テスト内で全て洗い出してしまいましょう。

《3日間パワーユニット別周回数》
周回数の最後は4社のパワーユニット別の周回数です。一応確認しておくと、メルセデスM11搭載はメルセデス、レーシングポイント、ウィリアムズの3チーム。フェラーリTipo065搭載はフェラーリ、アルファロメオ、ハースの3チーム。ルノーE-Tech20搭載がルノー、マクラーレンの2チーム。そしてホンダRA620H搭載がレッドブル、アルファタウリの2チームとなっているため、そこを配慮の上、比較してあげましょう。
IMG_2163
トータルはグラフの通りで「1台あたりの平均」とすると何とホンダ勢が427周と最多を誇ります。続いてルノーまでが平均400周を超え、メルセデス、フェラーリを上回りました。ホンダとルノーのチームは比較的距離を稼げているのに対し、メルセデスとフェラーリは「1チームは頑張っているのに、他が低調だった」ことが足かせになっています。メルセデスはワークス自ら距離を稼いでいるのに、フェラーリはアルファロメオ以外はイマイチ。どうか第2回の3日間で積み上げて下さい。

《タイヤ別チーム別最速ラップタイム》
続いてドライタイヤ5種類(C1〜C5)ウェットタイヤ2種類(IM、W)のタイヤ別の各チーム最速タイムをグラフにしました。いつもの通り、合同テストは様々なプログラムやシミュレーション、燃料搭載量に違いがあるため、一概に比較、勢力図を予想できるものではありません。でもやっぱり知りたくなるファンの関心。参考程度にご覧下さい。
IMG_2201
1回目3日間はウェット環境ではなかったため、各車ドライタイヤ5種類のみのテストでした。コンパウンドの違いは2018年までの色分けを使い、最速タイムのみをグラフ上で示しています。最速タイムを獲得したのはC4を除いた4種でメルセデス、C4はルノーとなりました。横破線で2019年の合同テスト8日間の各コンパウンド最速タイムを載せていますが、C4がほぼ同タイム、他のメルセデスが記録した4種は全てタイム更新がみられました。当然の結果ちゃ当然ですね。各チームで「記録したタイヤ」に様々な違いがみられます。全般的に昨年と同等かそれを上回るタイムで走れてはいるのですが、パッとしないチームがいくつかありますね。そう、フェラーリのパワーユニットを搭載する 3チームのタイムが芳しくありません。もちろん意図して最速タイムを狙わなかったり、テストプログラムに即した結果だと思うのですが、近年の合同テストでフルパワーを披露するフェラーリが珍しくこんな感じなので「どういう風の吹き回しか」なんて思ってしまいますね。

《チーム別C3タイヤ最速ラップタイム》
全チームが使用したコンパウンドがあります。スペインGPで使用される最も柔らかいコンパウンドであるC3(2019年の呼び方は「ソフト」)です。さっきのグラフではやかましいので、黄色いC3のみを抜き出して、タイムを添えてみました。そうすると、こうなります。
IMG_2200
これって、もしかしたら現時点の勢力図なのでは?!なんて思ってしまいそうですね。最速のメルセデスは放っておくとして、2番手チームは「ピンクのメルセデス」ことレーシングポイント、そして日本人とオランダ人の多くの注目が注がれるレッドブルが3番手か?!なんて。ここでみてもフェラーリ勢のタイムが目立ちますよね。何といってもあの若いウィリアムズにすら及ばないわけですから。裏を返せば、今年のウィリアムズは戦えそうと考えていいのでしょうか。タイヤとラップタイムからの「妄想」はひとまずこの位にしておきます。

《トピックス》
最後はトピックスを一つ。皆さんもご存知になり、驚かれた方、肩を落とされた方、ため息が出た方いらっしゃると思います。最強メルセダスがさらなる秘策となるとして「DAS」なる技術をテストに持ち込みました。そのDASって何ダスか?ということなんダスが、Dual Axis Steering(二重軸ステアリング)だそうダス。メカニックではないmiyabikunが語るより一見にしかずで、非常に分かりやすい動画を拝借してみていきます。
IMG_2213
IMG_2214
ハミルトンが走行中にステアリングを手前に引くと
IMG_2215
IMG_2217
フロントタイヤの向きが内向きになりました。
ステアリングを引くとトウ(つま先)がインする機構です。F1マシンはトウアウト(マシンを上から見た場合、フロントタイヤが逆ハの字)となっており、ステアリングを引いてトウをイン側(車の進行方向とタイヤの向きを同一)にすることで走行抵抗を無くします。ストレートとコーナーでこれをうまく使い分けできれば、タイヤに対しての熱入れや抵抗削減ときめ細やかに最適な状況を作れますね(間違えていたら修正しますのでご指摘下さい)こんなの反則だよ、と思った方もいるかと思いますし、よりによってこういうのをメルセデスがやっちゃうと今シーズン早くも、、とmiyabikunも思ってしまいましたが、これは「F1の技術向上」としてあるべき姿だと思います。メルセデスはライバルに比べて一歩先をいく次元にいます。ライバルが追い付こうと努力している最中、次なる技術に磨きがかけられる余裕があるから、またさらに先にいけるんですね。なかなか追いつきません(笑)

余談が過ぎましたが、合同テスト1回目3日間のまとめでした。もうすぐ早くも2回目が終わりを迎えます。同じような内容になるのか、はたまた本気を見せてくるチームがあるのか?!