IMG_1621
近年中団争いにもがくルノーワークス。エンジンサプライヤーとしては素晴らしい功績はあるものの、ワークスとなると「青い時代」を除けば歴代でパッとしませんし、歴史的に消えたり湧いたりを繰り返しています。現ルノーワークスの前身は「ロータス」というF1で名の通る冠を付けた「黒いルノー」でした。黒いといっても「中身が真っ黒い」という意味ではありませんよ(笑)2012年型のE20が今回の主役です。

5003
《設計》
 ジェームス・アリソン
 ディア・ダ・ビア

5003
《外見》
ルノーワークスは2010年末にグループ・ロータス(エスプリやエリーゼといった市販車を扱う部門)に株式を買収されたことで2011年シーズンを「ロータス・ルノー」という名で参戦しました。ところが小林可夢偉もドライブしたケータハムの前身も「チーム・ロータス」を名乗ったため「どっちがあのロータス?!」となりましたよね。結論としてはどちらのロータスもあのロータスの直系ワークスではないというのが答えで、クラークやヒル、アンドレッティやハッキネン、中嶋悟もドライブしたあのロータスは1994年で歴史的にピリオドを打ち、今回取り扱うロータスは「ルノーワークスの継承」となります。
冒頭から話が逸れましたが、この初代「新生ロータス」はカラーリングこそ前作ルノーR31と似ているものの、内容はガラリと変えた「挑戦と新技術投入」がうかがえるマシンでした。引き続きジェームス・アリソンの作品となったE20はまずR31がチャレンジして失敗に終えた「サイドポンツーン前方(側方)排気システム」を一新し、センターに排出する方法に切り替える決断をしました。高温、高圧の排気を側面に持ってくるアイデアは興味深いものでしたが、マシンが燃えてしまっては元も子もありません(笑)
5003
このE20は技術的に攻めの姿勢を密かにしていました。一つ目が「フロントの車高調節システム」(リアクティブ・ライドハイト・システム)です。一見ダメそうな技術っぽいですよね。リアクティブとは「反応的な」という意味です。では何に反応するかというと、ブレーキング時に前方が下がることに反応してプッシュロッドの車輪側(アップライト接続部)が伸びるというもの。そうすればブレーキング時も車高を一定に保てるため、挙動も安定します。以前にウィリアムズで一世風靡した車高調節システム「アクティブサスペンション」との違いは能動的「予め地点や作動量を定めて作動する」か受動的「あくまで外部からの負荷に反応して作動する」かの違いで、後者であるE20の技術はFIAに確認のもと開発されていました。しかし開幕前にFIAから「可変空力装置」という判断が下されお蔵入りとなっています。
5003
その他にはこの時代に盛んに開発された「ダブルDRS」がありました。ロータスはコクピット後方上部のエアインテークの左右にさらに開口を設けて二系統の空気を取り込みました。一つはリヤウィング下部にまたがるビームウィングへ排出、もう一つはリヤウィングのステーを介してウィングから排出してマシン後方の流速増加を行う「予定」でいました。しかし、シーズン後半で本戦採用のタイミングが合わず、惜しくも日の目を見ることはありませんでした。ライバルのようにもう少し開発が早ければ、功を奏していたことでしょう。
5003
このシーズンのマシンといえばTボーンクラッシュ(前車の腹部、サイドポンツーン付近に「T字」で衝突すること)の安全対策として「ノーズコーン高さは路面から550mm以下(ただしモノコック前部は高さ625mm)」というレギュレーションになったため、実に滑稽な、むしろブサイクな前面形状となりましたね。ところが黒いタキシードをまとう英国紳士E20は段差こそあるものの、カラーリングも相まってか平滑に上品に仕上げてきました。実績を問われるのはもちろんのこと、F1も「見た目」は非常に重要ですね。

カラーリングは前作から引き継ぐ伝統の「黒地に金文字」です。miyabikunは現役のジョン・プレイヤー・スペシャル(JPS)のカラーリングを見た事はありませんが、オトナになるとあのシブさが少しずつ分かる気がします。E20は残念ながらJPSではなく、GENIIというベンチャー投資会社になります。フロント、リヤのウィングレットの真っ赤もアクセントとしてカッコいいですね。黒や金だと、きっとボヤけて見えます。赤だから、締まる!ルノーといえば、トタル!

《シャシー》
 全長:5,038mm
 全幅:1,800mm
 全高:   950mm
 最低車体重量:640kg(ドライバー含む)
 燃料タンク容量: - ℓ
 ブレーキキャリパー:AP
 ブレーキディスク・パッド:AP
 サスペンション:フロント プッシュロッド
                                  リヤ    プルロッド
 ホイール:OZ
 タイヤ:ピレリ

シャシー名は前作ルノーR31からE20になりました。31から20に減っちゃった?!それもどうしてLotusなのにE?!それはファクトリーを構えるイギリスのエンストンからきています。ここで20番目に生み出されたマシンだからだそうです。余談ですがロータスの市販車、エリーゼ、エスプリ、エランにエリート。全てではありませんが、なぜか頭文字「E」がやたらと多E。面白Eですね。

5003
《エンジン》
 ルノーRS27-2012
 V型8気筒・バンク角90度
 排気量:2,400cc(推定)
 最高回転数:18,000rpm(制限)
 最大馬力: - 馬力(非公開)
 燃料・潤滑油:トタル

5003
《ドライバー》
 No.9   キミ・ライコネン(全戦)
 No.10 ロマン・グロージャン(第13戦を除く全戦)
    ジェローム・ダンブロシオ(第13戦)

フェラーリを離れてラリーに転身したライコネンがまさかの3年振りにF1復帰。今までマクラーレンやフェラーリのイメージが強かっだけにロータス(ルノー)に乗るライコネンは想像していませんでした。そもそもF1昇格前はフォーミュラ・ルノーでならしたんですよね。この話になると毎回タラレバで思ってしまうのが「クビカの怪我」の件。クビカが怪我して2011年シーズンをフルで戦えていたら、もしかしたらライコネン復帰の隙間は無かったかもしれないと想像してしまいます。そのライコネンの相方には2009年のルノー時代にサードドライバーから昇格し、スポット参戦していた若手のグロージャンがこちらも3年振りの復帰となっています。2010年もそのままルノーだと思っていたら、横からクビカが逃げ場を探して飛び込んで奪われちゃったんだよな。ってなんだ?どちらもクビカ絡みかい!(笑)そんなグロージャンも第12戦ベルギーGPでスタート直後に思い切り散らかしてしまい、罰金&1戦出場停止を食らったため、翌第13戦イタリアGPはサードドライバーのダンブロシオが代走しています。

5003
《戦績》
 303ポイント コンストラクター4位
 (1位1回、2位4回、3位5回、4位1回ほか)
 ポールポジション0回

開幕前からライコネンの復帰とシーズン前合同テストの好位置につけたロータスの期待度は高くありました。開幕戦オーストラリアGPの予選はライコネンではなく何とグロージャンの方がポールから0.2秒落ちの3番手を獲得しました。結果的にグロージャンがスタート直後にリタイヤ、ライコネンは7位入賞で終えています。
5003
その後、予選はグロージャンに分があり第11戦ハンガリーGPで2番手を獲得し、決勝はライコネンがしっかり表彰台登壇を連ねていきます。ただライコネンは第4戦バーレーンGP、第8戦のヴァレンシア市街地によるヨーロッパGP、ハンガリーGPで2位止まり。グロージャンも第7戦カナダGPで2位(ちなみに現時点まで含めての最高位)で、ダブル表彰台は獲得してもなかなか表彰台の最上段に到達できないレースが続きました。第16戦韓国GPでこの時代のトレンドとなっていた「コアンダ・エキゾースト」(サイドポンツーン後方のエンジンカバーを切り欠き、マシンに沿わせる形で排気するシステム)を導入。終盤の第18戦アブダビGPで以前にも振り返ったことのあるライコネンの「放っておいてくれ優勝」を迎えてシーズン優勝者8人目、チーム初優勝を獲得。結果的にはライコネンがドライバーズランキング3位、グロージャンが8位、コンストラクターズ4位とトップには及ばずもまあまあ上出来の初年でシーズンを終えました。

5003
秘めたる技術のお蔵入りは残念でしたが、マシンカラー同様「ダークホース的存在」でシーズンを盛り上げてくれた一台でした。

にほんブログ村 車ブログ F1へ
にほんブログ村