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近年の最終戦に定着するアブダビGP。2009年から数えて今シーズンで11回目もシーズンを締めくくるトワイライトレースとして設定されています。本来この最終戦が「チャンピオン決定の舞台」であれば、シーズンを通して緊迫したレースを観られるわけですし、ドライバー達も決して息を抜けませんが、先日フォーカスした通りなかなかそうもいかない勢力図が続いています。
このブログで過去を振り返る際は「5年以上経過して懐かしさを感じるもの」そして世相と合わせて「特筆すべき印象に残るもの」とルール付けして選定しています。なかなか「面白さ」を感じにくいアブダビGPの中で、今回は2014年のレースを選択しました。まだまだ最近の事のようにも感じますが、2015年の開幕戦から開始したこのブログでリアルタイムで取り上げる直前のレースであり、ギリギリで5年も経過します。何より「ある人の健気な眼差し」がmiyabikunの中ではとても印象に残っていて、いつか必ず振り返ろうと、5年の経過を心待ちにしていました。
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2014年は現パワーユニット元年となるシーズンで、F1界に様々な変化をもたらす出来事が多くありましたね。トップチームのフェラーリに所属したアロンソはチャンピオン獲得にあと一歩届かず、チームを離れる決断をしました。
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そのフェラーリの後任には2010年から13年まで4年に渡って「絶対王者」として君臨し、このシーズンでまさかの陥落となったベッテルに白羽の矢が立ちます。地元の偉大な先輩M・シューマッハの系譜を辿る事に。
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そして貴重な貴重な日本人F1ドライバーの小林可夢偉も奇跡のF1復帰を果たすも、またもや危うい立場で未練無き参戦を誓っています。

チャンピオン争いは最強レッドブルを引きずり下ろす事に成功したメルセデスの2人がこの最終戦までもつれる形となりました。このレースはF1史上初「ポイントどん!さらに倍!」キャンペーンを導入、優勝には何と50ポイントも与えられるというレースでした。アブダビGPを前に2回目チャンピオンのチャンスとなるハミルトンは334ポイントでトップ、対する初戴冠を狙うチームメイトのロズベルグは前戦ブラジルGPで優勝して317ポイントと17ポイント差となっています。ロズベルグは自身が優勝(50pts)してハミルトンが3位以下(30pts)で終えた場合にチャンピオンとなり、ハミルトンは仮にリタイヤしてもロズベルグが6位以下(16pts)となればチャンピオンに輝けます。倍であろうが無かろうが、ロズベルグはかなりの窮地に立たされています。
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予選のロズベルグがQ3の1本目からハミルトンに前を絶対に明け渡さない姿勢を見せて、気合い充分!
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ハミルトンは、まあまあそう騒がずともチャンピオンはイケるでしょうと、無難に2位に腰を据えて決勝を待ちます。
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トップから久々の失墜を味わうレッドブルは5番手リカルド、6番手ベッテルともフロントウィングの「たわみ」が問題となりペナルティで予選結果を抹消されています。レッドブルにとって踏んだり蹴ったりのシーズンでしたね。小林可夢偉は参戦20人中チームメイトには勝つ19番手(17番手スタート)で「現時点の日本人ドライバーラスト予選」を終えています。
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《予選結果》
 1 N・ロズベルグ(メルセデス・M)
 2 L・ハミルトン(メルセデス・M)
 3 V・ボッタス (ウィリアムズ・M)
   ※タイヤはピレリのワンメイク

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「僕にはもう勝つしか手立ては無いんだ」
ハミルトンの順位も気になりますが、ボッタスでも4番手繰り上げマッサでも誰でもいいから間にさえ入ってくれたら希望が繋がります。
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スタートはせっかくのポールスタートのロズベルグが大失敗!イン側スタートのハミルトンにいとも簡単に「必要不可欠位置」をプレゼント。ハミルトンにそれをやっちゃあお終いよ。
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その後もロズベルグの調子が良くない。ブレーキングミスでオーバーラン。ますますハミルトンとチャンピオンの獲得が遠退いていく。
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挙げ句の果てにはレース半分を迎える前に、さらなる厳しい裁定が下る。
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「パワーが無い」
現パワーユニットで肝心な後押しとなるERSを失って、ロズベルグは完全に勝機も失いました。
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レース折り返しの27周目にはかつての名門、そして同じパワーユニットを搭載する格下ウィリアムズのマッサの餌食になっていく。
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33周目に若手のボッタスにも簡単にあしらわれて、観ているこちらも痛々しい。

残り2周、ハミルトンのラップダウンにもなり13位まで落ち、もう走る意味を失ったロズベルグに対してチームは無線で投降を提案。
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しかしロズベルグは抵抗します。
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「最後まで走りたい」
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最終戦ですのでマシンを労る必要もありませんし、かといってチャンピオンはおろか入賞もありませんから、いわば「消化試合中の消化ラップ」です。でもロズベルグは直面しているトラブルやスタートミスも受け入れ、最後までハミルトンと戦う姿勢を貫こうとします。トワイライトレースのアブダビGPは、ドライバーの使用するバイザーも通常の物と異なり、ドライバーの表情や視線もよく伝わります。悔しくて悔しくて堪らない、でも向き合うロズベルグの目が何とも言えない感情を生みます。とても感動したのを覚えています。

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《決勝結果》
 1 L・ハミルトン(メルセデス・M)
 2 F・マッサ  (ウィリアムズ・M)
 3 V・ボッタス (ウィリアムズ・M)

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一時期はチャンピオン争いで険悪でピリピリムードにもなったけど、歳もほぼ同じで幼い頃からライバル関係やチームメイト関係を過ごしてきた2人が再び身を寄せて、表彰式前の控え室でお互いのシーズンの戦いを讃えます。これもとても印象的でいいシーンですね。
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ハミルトンは無事に6年振りに2回目チャンピオンを獲得、ロズベルグは愛する妻にチャンピオン獲得の再挑戦を誓います。

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