近年勝つには勝つけど、長らくチャンピオンから遠ざかるフェラーリ。キングオブF1チームには間違いないのですが、フェラーリは「あと一歩チャンピオンに届かず」のシーズンも多くあります。今からもう20年も前になるフェラーリの「あと一歩マシン」1998年のF300を取り上げます。チャンピオンではないけど、このマシン、チャンピオン奪取に向けてあらゆる試行錯誤を試みています。

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《設計》
ロリー・バーン
ロス・ブラウン

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《外見》
ベネトン時代に名を馳せたバーンがフェラーリ着任2年目、存分にバーン色を盛り込んだマシンとなりました。シューマッハ×ブラウン×バーンの構図が無事にフェラーリへ完全移行、完成しています。
ノーズコーンは高く、突き刺さらんばかりの鋭利な銃弾型。先端を垂れ下げたローノーズを採るマクラーレンとはこちらも異なるアプローチです。シューマッハのキャリア前半に乗るマシンはベネトン時代を含めても高めが多いように思えます。
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以前に同い年のマクラーレンMP4-13、ウィリアムズFW20を取り上げていますが、この年からナローサイズレギュレーションに対してフェラーリは当初その中間にあたるホイールベース延長を採りました。そのホイールベースも第3戦アルゼンチンGPでのグッドイヤーのフロントタイヤのワイド化を受けて、長くするのではなく「短く」改良を加えて応戦するあたりが面白いです。これがマイナーチェンジ第1弾。
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マイナーチェンジ第2弾はティレルが先駆けて導入していたサイドポンツーン直上に小型のウィングを設けた通称「Xウィング」をフェラーリも第4戦サンマリノGPから導入。まさかフェラーリまでもが使ってくると思いませんでしたよね。空力レギュレーションもガチガチの現代ではあり得ないアイテムです。決してカッコ良くはないが、背に腹はかえられぬ、ナロー化して不足した分のダウンフォースを補う措置を施しました。しかしこちらはピットアウト時に張り巡らされたホースに引っ掛けて脱落する事故が起きたため、第5戦スペインGPを最後に禁止となって短命に終わりました。
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フェラーリのチャンピオン獲得に向けた飽くなき挑戦はまだ続きます。第3弾はその第5戦スペインGPからエキゾーストパイプをエンジンカバー後端部から上後方に向けて設置する「上方排気システム」を導入。リヤウィングの下空間に高温、高圧の気流を通過させています。以降、このシステムについては多くのメーカーが追従し、一時期とても流行りましたね。
それ以外にもフロントウィングを現在のような後退翼に形状変更を行うなど、あらゆる策を講じて打倒マクラーレンに徹していました。攻めのフェラーリです。

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《シャシー》
全長:4,340mm
全幅:1,795mm
全高:   961mm
最低車体重量:605kg
燃料タンク容量:− ℓ
ホイール:BBS
ブレーキキャリパー:ブレンボ
ブレーキディスク・パッド:カーボン・インダストリー
サスペンション:フロント プッシュロッド
                                 リヤ    プッシュロッド
タイヤ:グッドイヤー

《エンジン》
フェラーリ Tipo047
V型10気筒・バンク角80度
排気量:2,998cc(推定)
最高回転数:17,100rpm(決勝時)
最大馬力:710馬力(推定)
燃料・潤滑油:シェル

エンジンは前作Tipo046のバンク角を75度から80度に拡げて低重心化改良、さらにはギヤボックスも横置きから縦置きに変更するといった徹底的な体質改善を行いました。
先述の上方排気システムはエキゾーストパイプも短尺化できるため、馬力向上に貢献しています。

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《ドライバー》
No.3 ミハエル・シューマッハ(全戦)
No.4 エディ・アーバイン(全戦)

シューマッハとアーバインのコンビネーション3年目です。実はシューマッハよりアーバインの方が4歳も上なんですよね。知ってましたか?!
前年1997年は最終戦ヨーロッパGPで以前振り返ったように「大ポカ」をかましてチャンピオンをみすみす逃したシューマッハ。マシンは徹底改良、ドライバーも慣れた間柄のこのシーズンはどうだったか?!

《戦績》
133ポイント コンストラクター2位
(1位6回、2位5回、3位8回、4位3回ほか)
ポールポジション3回

フタを開けてみると開幕戦オーストラリアGPでは前評判通りマクラーレンの無双状態でした。予選では全く歯が立たず、決勝もシューマッハが序盤にリタイヤ、アーバインは入賞を果たすも屈辱的な周回遅れの4位でした。大幅レギュレーション変更にうまく対応できていないことを知らしめられてしまいます。フェラーリが先頭に立ってマクラーレンMP4-13が搭載していた「ブレーキステアリングシステム」を猛抗議するも、第2戦ブラジルGPでシューマッハは3位表彰台を獲得しますが引き続きマクラーレン優勢には変わりありませんでした。そこでフェラーリは先述のマイナーチェンジを繰り返し、対抗していく方策に出ます。
第3戦アルゼンチンGPからブリヂストン対策をグッドイヤーも行い、ワイドフロントタイヤでシューマッハが優勝。以降もXウィングと上方排気システムでシューマッハ、アーバインと揃って表彰台を安定確保しました。マクラーレンが足踏みし始めたカナダ、続けてフランス、イギリスで3連勝したシューマッハはチャンピオン争いに食らいつき、念願のフェラーリ久々のチャンピオン獲得に向けて猛追していきます。
ところがこちらも以前振り返った第15戦ルクセンブルクGP(ニュルブルクリンクでの開催)で余裕のポールポジションを獲得したシューマッハは、チームプレイを行使するもハッキネンの巧みなピット戦略で惜敗。チャンピオン争いは不利な形で最終戦日本GPを迎えることになります。
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こちらもポールポジションからハッキネンを封じることに注力したいところ、2度目のスタート直前にまさかのエンジンストール。最後尾から最前列のハッキネンとバトルする難題に直面しました。
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レースで猛追し、3位まで浮上するもトラック上のデブリを拾ったか痛恨のタイヤバーストに遭い、呆気なくフェラーリ×シューマッハの初戴冠を逃す形となりました。

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徹底したマシン改良。盤石なスタッフを揃えての巧みな戦略。そして当時現役最強を誇るドライバーをもってしても、ドライバーズ、コンストラクターズ共に2位止まりとなったフェラーリ。悔しさ無くして成功無し。これをバネに、以降フェラーリはさらなる向上を誓い、チャンピオン獲得に励みます。

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話は違うけど、こんな格好されたら、なおさら似てきたなぁ。1999年生まれなので、父がこのフェラーリF300をドライブする頃を知りません。
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