近年最強を貫くメルセデスはF1のみならず市販車についても世界規模で知れ渡る巨大企業です。いつからこんなに強かったんだっけと思い返すとパッと思い浮かばなくなりそうですが、参戦復帰してからまだそう古い話ではないんですよね。当然ながらいきなり強かったわけではなく、下積み時代もありました。今回は近代メルセデスワークスの初号機、2010年のW01をみていきます。
IMG_7535

《設計》
(ロス・ブラウン)
ロイック・ビコワ
ヨルグ・ザンダー
ケビン・テイラー

《外見》
今や「EQ Power+」なんて特別感のありそうなのが後ろに付きまとうネーミングとなっていますが、当時のこのマシンの正式名称は「MGP W01」というものでした。Wはこの頃から欠番無く現在まで一貫して付番されており、まだ発表されていませんがおそらく今シーズンは「W10」となればその名の通り「メルセデスF1の10年目」の節目となるわけです。つい先日みたように、それで5連覇しちゃうもんだから「モウイイデス」と言いたくもなる(笑)ちなみにWとはドイツ語の「車」を意味するWagenの頭文字からきています。
現在のメルセデスワークスの根源はご存知の通りの「ブラウンGP」でした。2008年限りで撤退したホンダから引き継いだブラウンはまさに束の間の「チャンピオン」という置き土産をもってそのままメルセデスという「巨大ワークス」に後任を託しました。イギリス系チームからドイツ系チームにこれからシフトしていきます。
IMG_7542
マシンも本流はブラウンBGP001の名残を感じることができます。ノーズコーンこそ高くなったものの、フロントウィングの造形、フィンの形や取り付き方は踏襲されています。エンジンカバーも低い位置まで絞られてエキゾーストを取り込んだ気流をリヤウィング下部へと導いています。サイドポンツーン開口はブラウン時代よりも縦に大きく開けています。
IMG_7547
ノーズ上面はこの時代のトレンドとなっていた両端がせり立つ断面形状をなし、これを見る度に指とはスケール感が全くマッチしませんが「指紋認証し易そう」と思ってしまいます(笑)
また併せてトレンドとなっていた「Fダクト」なるデバイス。多く知られているのがマクラーレンに端を発すると言われていた「エアインテーク後方から管を伝ってリヤウィングの『メインエレメント』に向かって取り付ける」タイプでした。少し前の「シャークフィン」がリヤウィングに繋がっている感じのやつ、ありましたよね。ただメルセデスはココでオリジナルな取り組みを行っていました。それは吸気をエアインテークからではなく「リヤウィングのメインエレメントやフロントサスペンション付近側面から吸気し、アッパーエレメントのスリットから排出する」方式を唯一採用しています(文字で説明するより絵を描けば想像しやすいのにね)昔みたいにリヤウィングにステーがあるわけでもないし、マシンからウィングまでどうやって?!と思いますよね。どうやらリヤウィング翼端板に厚みを持たせ、中を伝うようになっているそうです。メインエレメントの方は中央付近にコブがあるため、開口の存在もわかります。その効果の程は、、前者のシャークフィン型の方が強力に機能したようです。メルセデスはシャークフィンの設置を好まなかったからとのこと。確かにmiyabikunもカッコいいとは思わなかった。でも、目が出てきそうなリヤウィングのコブも決してカッコいいものでもない。
FullSizeRender
あと、このマシン独自のディテールといえば、エアインテーク付近のおさまりです。マシンが転覆した際の安全性を考慮し、カメラの搭載されているT型ピラーの強度を確保しなければなりません。そこをエアインテーク内も貫通させて開口が縦に二分された、いわゆる「ブタの鼻」みたいな形になっています。リヤウィングにあたる気流を考慮し、シーズン序盤の第5戦スペインGPからはエアインテーク自体を後退、低くしそのピラーがより目立つものとなっています。
IMG_7541
あとはこちらも流行った「ブロウン・ディフューザー」(別名 エキゾースト・ブローイング)はもちろん搭載されています。決してBrawnではありませんぞ、Blownね。
近年は嫌でも目に入るメルセデスのマシンはつや消しシルバーに黒とエメラルドグリーンのアクセントによって躍動的な演出をしています。この初期型メルセデスにはまだエメラルドグリーンはなく、どちらかといえば「黒みが強い」テイストでした。どうしてもシルバーに黒というと、同じくメルセデスのエンジンを搭載したマクラーレンを連想してしまいます。当時は戦績から格付けしてもマクラーレンの方が上手だったので、当初はワークスと言いつつも「マクラーレンのBチーム」なイメージが勝手にありました。ところがどっこい、今となっては天と地の差。マクラーレンにはメルセデスの「メ」の字もなく、目に見えないくらい離れた位置になってしまいましたね。

IMG_7543
《シャシー》
全長:4,800mm
全幅:1,800mm
全高:   950mm
最低車体重量:620kg
燃料タンク容量:− ℓ
ホイール:BBS
ブレーキキャリパー:ブレンボ
ブレーキディスク・パッド:ブレンボ
サスペンション:フロント プッシュロッド
                                 リヤ    プッシュロッド
タイヤ:ブリヂストン

《エンジン》
メルセデス・ベンツ FO108X
V型8気筒・バンク角90度
排気量:2,400cc(推定)
最高回転数:18,000rpm(制限)
最大馬力: - 馬力(非公表)
燃料・潤滑油:ペトロナス

IMG_7545
《ドライバー》
No.3 ミハエル・シューマッハ(全戦)
No.4 ニコ・ロズベルグ(全戦)

な、な、なんと、あのシューマッハ様が赤のユニフォームを脱ぎ捨て、4年振りに表舞台に復帰なさるとは!当時話題になりましたよね。元はといえばシューマッハはドイツ生粋のメルセデス出身。新興チームにはやはりベテランの経験と知恵、この晴れ舞台には必要なスキルだったと思います。miyabikunは熱烈なファンではなかったので半分以上冷静な目で見ていましたが、ブラウン&シューマッハとなれば、何かが起こるかもしれない?!この後その結果が明らかになります。

《戦績》
214ポイント コンストラクター4位
(3位3回、4位4回、5位5回、6位5回ほか)
ポールポジション0回

ブラウンGPからはドライバーを一新し、シューマッハに加えてウィリアムズでくすぶっていた若手N・ロズベルグを招集して「ドイツコンビ」による母国ワークス復帰のこけら落としとなりました。
序盤からシューマッハよりもロズベルグの方が予選、決勝ともマシンとの相性が良く、第3戦マレーシアGPの予選2位から決勝3位表彰台獲得。続く中国GPも3位と「時代はボクら」と言わんばかりの存在感を示します。第5戦スペインGPからマシンの改良に取り組み、先程のエアインテーク部の変更やロングホイールベース化を図っています。
改良以降もシューマッハ、ロズベルグとも堅実に入賞圏内は確保しつつも決定的な速さという点でライバルには及ばず。第10戦イギリスGPのロズベルグ3位を最後に表彰台はなく、チームはシーズン後半に早くも開発を翌2011年に向けて頭を切り替えることとしました。結果的に最上位は全てロズベルグによる3位3回、コンストラクターズランキングはレッドブル、マクラーレン、フェラーリに続く4位で初年度を終えています。内訳もロズベルグ142ポイントに対してシューマッハは半分となる72ポイントと大差となりました。皆が注目するシューマッハの復帰ではありましたが、往年の「シューマッハらしさ」は健在で第12戦ハンガリーGPではフェラーリ時代のチームメイトのバリチェロに危険な幅寄せ行為によるペナルティが下るなど、模範的走りというよりかは後輩や若手相手に「精一杯食らいつく姿」がちょっぴり残念だった印象を覚えています。
IMG_7544
今日の最強チームも過去には最強ドライバー、莫大な資金を投じても模索する時代を経験しました。変わらずは「銀のカラー」と「高出力エンジンサプライヤー」であること。世界最古の「ワークス」はF1においてもそのプライドと本質は貫いています。

にほんブログ村 車ブログ F1へ