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紺系のカラーリングで四角い顔に二重で薄い唇。近代ではフェルスタッペンあたりが該当しそうですが、90年代中盤にはクルサードがいました。今ではだいぶ頭も真っ白になって、この前はビルのてっぺんでクルクル回っていましたね。セナが事故死したことでテストドライバーから急遽成り上がった彼も実はなかなかの期待の若手でした。今回はブラジルGPのお隣、1981年以来の復活を遂げた95年のアルゼンチンGPを振り返ります。このブエノスアイレスで行われたGPは低速レイアウトで抜き辛く、個人的にはあまり面白くなかった印象が強いです。
14年振りの開催ということで、当時の現役ドライバーは誰一人走ったことがありません。そんなイコールコンディションで参戦たった10戦目のこの若手が何とポールポジションをさらっていきました。驚くのは前年のチャンピオン争いを演じたチームのエースD・ヒルを0.8秒もちぎり、さらにはチャンピオンであるM・シューマッハから1秒も早いです。四角い顔でいい笑顔!
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《予選結果》
   1 D・クルサード     (ウィリアムズ・R)
   2 D・ヒル               (ウィリアムズ・R)
   3 M・シューマッハ(ベネトン・R)
   ※タイヤはグッドイヤーのワンメイク

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ポールは獲ったけど、スタートはどうなの?!F1はスタート勝負ヨ、見守っていると素晴らしい蹴り出しを見せてくれます。いきなりウィリアムズのトップシートを得て、後続をぐんぐん引き離してしまう優秀な若手。
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こちらは今年こそチャンピオンを獲得したい相方。シューマッハにスタートで先行されて、陰に隠れてモタモタしています。こりゃ後輩に一杯食わされたかな。

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すると6周目に入り突如クルサードがスキッドマークを付けてフラついて失速、シューマッハとヒルに一気にかわされる。幸いにもすぐに復帰しますが、ルノーエンジンが瞬間的なストールに見舞われてしまいました。
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「ちっ、絶好のチャンスに何たるザマだ」
苦虫。この冷たい眼差し、現在は娘クレアにちゃんと引き継がれています。

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すぐさまヒルに追いついたクルサードは遅れを取り戻すべく、右に左にと果敢にヒルを突きにいきます。この日のクルサードはキレッキレだなぁ。
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ヒルもここまでされたら黙っちゃいません。なかなかペースを上げないシューマッハの背後につき
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実にクリーンなパッシング。これを前で見せつけられたクルサードはどうする?!
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この日の若者は全く躊躇することはありません。ヒルがインから攻めたなら、クルサードはアウトから並んでシューマッハをたしなめていく。
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しかしイケイケのクルサードの躍進も長くは続かず、16周目にエンジンが再び不調に見舞われて今度は本当にストップ。打倒シューマッハへの追撃はヒル1人に託されることに。

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終盤そのヒルに6番手スタートだったフェラーリのアレジが忍び寄っていきます。シューマッハが冴えないレースはアレジだって初優勝が欲しい。セクター毎にギャップを縮めていよいよヒルのミラーにチラつき始める。ちょっとペースがよくありません。クルサード同様のアクシデントの兆候か?!
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「デイモン、ペースを目一杯あげていいぞ!」
フランク・ウィリアムズからのゲキが飛び、ヒルはペースアップ!ぐんぐんアレジを引き離していき、結果的には15秒近くの差を築いてシーズン初勝利を獲得しました。
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《決勝結果》
   1 D・ヒル               (ウィリアムズ・R)
   2 J・アレジ            (フェラーリ・F)
   3 M・シューマッハ(ベネトン・R)

優勝はヒルに渡り、残念ながらリタイヤで終えてしまったものの、初フル参戦早々にポールポジションを獲得して、決勝も臆することなく攻め立てたクルサードはまさしくこのレースの主役でした。セナ亡きF1で台頭するシューマッハに対抗できる1人と嘱望される若手の誕生です。

レースが早めに終われば、アイス食べながら先輩を見守る。
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そうそう、あなたの話をしているのです、将来期待していますよー!