メルセデスは近年のF1での活躍もさることながら、世界で初めてガソリンによる内燃式自動車を世に出した会社です。車造りからみたらこの世で一番古いワークスといえます。日本に多く輸入される高級外車の代名詞であるメルセデスベンツもF1でのキャリアはライバルと比較すればさほど長くありません。
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メルセデスAMG
    初参戦           :1954年第4戦フランスGP
    最終参戦       :2018年第4戦アゼルバイジャンGP
    参戦年数       :10年 / 68年 ※
    チーム参戦数:168戦 / 976戦 ※
    ドライバー数:11人 / 814人 ※
    優勝獲得数   :76勝 / 168戦 ※
    表彰台獲得数:154回 / 168戦 ※
    ポールポジション獲得数:88回 / 168戦 ※
    ドライバーズチャンピオン:6回 / 10年 ※
    コンストラクターズチャンピオン:4回 / 10年 ※
    ※各チーム横並びにするためデータは2017年終了時
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メルセデスはF1が制定される前の戦前からモータースポーツに関わりを持っていました。ただF1となると1950年代に2年間だけエントリーに止まっています。それは1955年に行われたル・マン24時間レースで多数の死亡事故を起こしてしまって、一時期モータースポーツから撤退を余儀なくされたためです。その後30年ほどの時を経た1980年代からザウバーとタッグを組み、少しずつ復帰。さらにはH・H・フレンツェン、K・ベンドリンガー、M・シューマッハといったドイツ人による若手育成ドライバーを設け、3人ともF1ドライバーとして送り込むことに成功しています。そしてまずは1993年にザウバーへエンジンのみの供給(バッジネームはイルモア)、1995年からは低迷の続くマクラーレンに供給先をスイッチし、参戦6年目となる1998年にドライバーズ、コンストラクターズのダブルタイトル獲得と徐々に自動車業界の巨塔がモータースポーツを席巻します。2009年からはマクラーレン以外のフォース・インディアとブラウンGPにも供給を始めつつブラウンGPの株を買収、2010年にシャシーまで携わる第2期ワークス時代を迎えて現在に至ります。ただ、第1期とは直結しておらず、系譜は異なります。
メルセデスのF1は正式には「メルセデスAMG」となっています。市販車でもよく見かけるAMGはメルセデスのチューニングブランドでハンス・ヴェルナー・アウフレヒトのA、エハルト・メルヒャーのMと2人のイニシャルとグロース・アスパッハのGという地名から名付けられています。またメルセデスのことを「シルバーアロー」と呼んだりしますが、あれはF1参戦のもっと前、1934年のレースでマシンの軽量化を図るべくナショナルカラーの白に塗られたマシンの塗装を剥がし、アルミの地の色が露わになって銀色になったのが起源と言われており、以降のドイツのナショナルカラーにもなっています。

《エントリー数》
  1  136戦 N・ロズベルグ     10pts ★
  2    98戦 L・ハミルトン        9pts ★ ●
  3    58戦 M・シューマッハ   8pts
  4    20戦 V・ボッタス           7pts ●
  5    12戦 J・M・ファンジオ 6pts ★
  6    11戦 K・クリング           5pts
  7      7戦 H・ヘルマン           4pts
  8      6戦 S・モス                  3pts
  9      2戦 P・タルッフィ        2pts
10      1戦 A・シモン              1pt
                 H・ラング             1pt

メルセデスに在籍したドライバーは総勢11人です。上位10人全員がノミネートされました。このブログをご覧頂いている方のほとんどは2010年から復帰した第2期のメルセデスワークスを指し示すと思います。ご存知の通り、第2期は4人の正ドライバーしか在籍しておらず、うち2人は現役引退しているため今回◯マークドライバーは無し。●マークは先日のアゼルバイジャンGPでおこぼれ優勝を遂げた王者ハミルトン、久々優勝を「破片」によって打ち砕かれたボッタスの2人となります。
第1期はF1創成期にたった2年の参戦に止まるため参戦数でいえば第2期が大半を占めます。さらにはメルセデスは「限られた者」だけが許される狭き門、生半可な輩では携われません。最多出走はチーム立ち上げに関わった半分ドイツ、半分フィンランド人のロズベルグで7シーズン139戦となっています。ウィリアムズで経験を積み、初めは新興チームで大丈夫かなぁなんて不安視した記憶があります。チーム下積みから常勝まで幾多の苦難やヘマを乗り越えて、最後はしっかりとチャンピオンになって若くして引退を迎えましたよね。名門との蜜月を見限り、賭けの移籍で大成功を収めた同胞ハミルトンは現在歴代2番目、先日のアゼルバイジャンGP終了時で102戦となります。現役のボッタスはまだメルセデス2年目ではありますが1年のレース数増加に伴い、レース数では早くも歴代4番目。3番目の方まではそう離れていませんので、そうなれるか否かは自身の今後の「結果」で決まってきます。

《ポールポジション数》
   1   46回 L・ハミルトン       10pts ★ ●
   2   30回 N・ロズベルグ         9pts ★
   3     7回 J・M・ファンジオ   8pts ★
   4     4回 V・ボッタス             7pts ●
   5     1回 S・モス                    6pts

《ポールポジション率》
   1 58.3% J・M・ファンジオ 10pts ★
   2 46.9% L・ハミルトン         9pts ★ ●
   3 22.1% N・ロズベルグ         8pts ★
   4 20.0% V・ボッタス            7pts ●
   5 16.7% S・モス                   6pts

ポールポジション獲得者となると、さすがに全員というわけにはいきません。半数の5人に絞られます。最多は、、言うまでもありませんね。ヤツです、キングです。チームでは先輩のロズベルグも及ばずでした。現役のボッタスは最強マシンでまだ可愛らしい4回となっています。近年のF1は決勝トラック上のパッシングが困難になってきています。おそらく半分近くが予選位置が優勝へのファクターを占めるはずです。できればロズベルグのように同じマシンに乗るうちに「ガチンコ」で勝ってチャンピオンを獲得できたらカッコいい!
一方で数によらぬよう割り出したいつもの「率」でみていくとクラシカルなドライバーが上位にきます。ファンジオもモスもこれまで複数回に渡ってお目見えしていますね。それも当然、名門チーム=古豪ですから、古いチームばかりです。今回のメルセデスはちょっと異質な経緯ではありますが。

《優勝回数》
   1   41回 L・ハミルトン       10pts ★ ●
   2   23回 N・ロズベルグ         9pts ★
   3     8回 J・M・ファンジオ   8pts ★
   4     3回 V・ボッタス             7pts ●
   5     1回 S・モス                    6pts

《優勝率》
   1 66.7% J・M・ファンジオ 10pts ★
   2 41.8% L・ハミルトン         9pts ★ ●
   3 16.9% N・ロズベルグ         8pts ★
   4 16.7% S・モス                   7pts
   5 15.0% V・ボッタス            6pts ●

優勝者も同様に5人です。ポールポジションと優勝者の違いは「率の順」でボッタスが上かモスが上か、という点です。2017年シーズン終了時でボッタスの優勝は3回でした。もし昨シーズンにもう一つ優勝して4勝していたとすると優勝率20.0%で先輩ロズベルグをも上回る結果となっていました。チャンピオンには失礼ですが、ボッタスがロズベルグを優勝率だけでみたら早々に上回る可能性があると思っています。先日のアゼルバイジャンGPでタイヤ交換を引っ張った走りはボッタスの巧みなタイヤコントロールの賜物でした。ロズベルグの経験した下積み時代があって、常勝マシンが完成し切った矢先の引退、そしてメルセデスデビュー。お膳立て充分!こんな絶好のシート、このままさらなる若手に譲るわけにはいかない!
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《表彰台回数》
  1    68戦 L・ハミルトン       10pts ★ ●
  2    55戦 N・ロズベルグ         9pts ★
  3    13戦 V・ボッタス             8pts ●
  4    10戦 J・M・ファンジオ   7pts ★
  5      3戦 S・モス                    6pts
  6      2戦 K・クリング             5pts
  7      1戦 H・ヘルマン             4pts
          1戦 P・タルッフィ          4pts
          1戦 M・シューマッハ     4pts

《表彰台率》
  1 83.3% J・M・ファンジオ 10pts ★
  2 69.4% L・ハミルトン         9pts ★ ●
  3 65.0% V・ボッタス            8pts ●
  4 50.0% S・モス                   7pts
                P・タルッフィ         7pts
  6 40.4% N・ロズベルグ         5pts ★
  7 18.2% K・クリング            4pts
  8 14.3% H・ヘルマン            3pts
  9   1.7% M・シューマッハ    2pts

決勝で2位、3位を含めた表彰台登壇者とすると、対象数が増えて11人中9人となります。クリング、ヘルマン、タルッフィと近代のシューマッハが加わりました。このシューマッハはご存知のフェラーリで一度引退した7回王者、2010年の第2期オープニングメンバーでした。勝ちに勝ち、各種で規格外の成績を得たシューマッハは、自身も育てられたドイツの名門復活に一役買うために自身ももう一度ステアリングを握りました。しかし未成熟なマシンと自身の衰えもあって最強時代の走りはなりを潜め、判断ミスや加齢による衰え、また若手の台頭に揉まれ、3シーズンをもって二度目の引退を迎えています。表彰台1回は3年目のバレンシアで行われたヨーロッパGPで予選12位からスタートした3位となっています。F1を一度離れて復帰することの難しさ、さらには最強王者も歳には勝てなかったということをまざまざと感じさせられました。

《ドライバーズチャンピオン》
  1954年 J・M・ファンジオ  6勝 / 9戦   10pts ★
  1955年 J・M・ファンジオ  4勝 / 7戦   10pts ★
  2014年 L・ハミルトン       11勝 / 19戦 10pts ★
  2015年 L・ハミルトン       10勝 / 19戦 10pts ★
  2016年 N・ロズベルグ         9勝 / 21戦 10pts ★
  2017年 L・ハミルトン         9勝 / 20戦 10pts ★

メルセデスは第1期の2年間で2回、第2期も復帰5年目から4年連続4回、合計6回のドライバーズチャンピオンを獲得しています。わずか10シーズンで6回、168戦で76勝ですから勝率45.2%に達します。コンストラクターとして超優秀クラスです。先日の調べの通り、この勝率はフェラーリもマクラーレンもウィリアムズも敵いません。これらを踏まえた最後の集計に入ります。

《メルセデス オブ メルセデス ランキング》
  1   96pts L・ハミルトン         ★★★
  2   79pts J・M・ファンジオ  ★★
  3   68pts N・ロズベルグ        ★
  4   50pts V・ボッタス
  5   41pts S・モス
  6   14pts K・クリング
                 M・シューマッハ
  8   13pts P・タルッフィ
  9   11pts H・ヘルマン
10     1pt   A・シモン
                 H・ラング

時代を隔てた名ドライバー達の中で見事に勝ち取ったのは言わずと知れた現チャンピオンのハミルトンでした。3回チャンピオンが思い切り利いています。チャンピオン1回に対して10ポイント与えていますので仮にそれを無くしてもハミルトンは-30ポイントとなり66ポイント、ファンジオは-20ポイントで59ポイント、ロズベルグは-10ポイントで58ポイントですのでノンチャンピオンでもハミルトンが1位でした。そう考えると既にモス超えのボッタスが今シーズンのチャンピオンになったとしたら、早くもロズベルグを上回ってしまうかもしれません。どうしてもハミルトンと比較してしまうと見劣りする面も多々ありますが、ボッタスも現役では速いドライバーの1人です。ボッタスのことばかり書いてしまいましたが、まだ年齢も若いのでいつかチャンピオンを獲得して欲しいです。