そして今回振り返るレースは2010年のドイツGPです。前回の「F10」でネタバレしてしまっていますね。調べてからの流れですが、決して手抜きではありませんよー(笑)
少し前にも振り返ったドイツGPは2000年で森を抜ける超高速レイアウトのホッケンハイムでした。2010年はヘルマン・ティルケによる改修を受けた現行のショートレイアウトです。似たアングルからの空撮をみると、2001年で廃止された旧コースはだいぶ森に還っています。

この年のドイツGPは全19戦の第11戦にあたり、ちょうど今と同じようなシーズンの折り返し地点です。ここまでレッドブルのウェバーが3勝、ベッテルが2勝、マクラーレンのハミルトンが2勝、バトンとフェラーリのアロンソが1勝と前年2009年の「ブラウンフィーバー」から一転して混戦模様となっています。マシンの得意不得意や力関係などチャンピオン獲得に精力的な改善を施す時期にさしかかり、Fダクトの元祖でスピードが自慢のマクラーレンは「ブロウンディフューザー」を投入したり、フェラーリも新型のフロントウィングを持ち込みました。

予選ではメルセデスから復帰をした地元M・シューマッハがQ2突破ギリギリの9番手タイムを記録するも、こちらも地元のロズベルグがそれを上回る9番手タイム。
さらには同じく地元でウィリアムズのヒュルケンベルグがそれを上回る8番手タイムとなり、後輩2人の「ニコ」に引きずり降ろされてしまいました。近年無敵を誇るメルセデスはシューマッハをもってしてもこんな叩き上げ時代があったんですよね。世代交代、衰え、恐ろしや。。

空力で一歩先を行くベッテルの一番時計に対して、新パーツを持ち込んだフェラーリ2人は2番手、3番手が精一杯でした。

《予選結果》
   1 S・ベッテル(レッドブル・R)
   2 F・アロンソ(フェラーリ・F)
   3 F・マッサ   (フェラーリ・F)
     ※タイヤはブリヂストンのワンメイク

決勝のスタートはベッテルが2番手のアロンソを執拗にインへ牽制。結果3番手マッサの前方はクリアに開けて、ベッテルはフェラーリ2台に挟まれる形で前を許します。一番得したのは労せず2人抜きをゲットしたマッサでした。

1周目にトロ・ロッソのブエミとアルグエルスアリ、フォース・インディアのスーティルとリウッツィがチームメイト同士で接触。まずブエミをバックでガレージに引き込み、アルグエルスアリを出すという「ドリフ大爆笑」のような慌ただしいピットが繰り広げられます。

アルグエルスアリとスーティルもぶつかりそうだし。
先程タイヤ交換まで済ませたスーティルは左リヤだけタイヤを間違えて、早くも5周目に「一輪だけ」付け替えに戻るいうコントも見せてくれました。今のピンク・インディアともなればこんなミスはさすがにないですよね(笑)

トップを快調にファステストラップで走行するマッサに対して、3番手に落ちたベッテルは13周目にアンダーカットを狙って先にピットへ動きます。
翌周にそうはさせまいと2番手アロンソがカバー。そのまた翌周にマッサも入って順位は変わらず。

第2スティントのタイムが思わしくないマッサをアロンソが21周目に狙いにいきます。無線で「僕の方がペースがいい。こんなレースはバカげている」とアピール。レースが終盤になると3番手ベッテルがアロンソの背後にジワリジワリと詰め寄ってきます。48周目にさしかかってマッサにある無線が飛びました。
「君よりアロンソの方が速い。この意味がわかるよね?」
ここまで2位1回、3位1回は獲得しているマッサですが、チャンピオン争いを考えると、2勝しているベッテルの追走は侮れません。マッサへの「暗黙な」プレッシャー。ただし、チームオーダーは禁止されているため、チームから露骨にフォーメーションの指示はできません。マッサは「独断で」この無線を解釈しなければならないのです。
49周目にマッサはアクセルを緩めてアロンソがインからストレートで並び
アロンソが前に出ます。
マッサに対して無線でごめんよ」この言葉が後に審議対象となりました。
そしてそのままの順位でチェッカーフラッグが振られています。

《決勝結果》
   1 F・アロンソ(フェラーリ・F)
   2 F・マッサ   (フェラーリ・F)
   3 S・ベッテル(レッドブル・R)

ウィニングランでアロンソは
「マッサはギヤを失っていたのか?2位?」と無線で尋ねています。
何をあんた、さっき「マッサより速い」って言ってたじゃん、白々しい。チームメイトを心配しているようで、でもベッテルとのマージンも気にしているかのよう。こういうのがたまに出る「ワロンソ」

レース後、マッサはチームオーダーではなくタイヤに苦しみペースが落ちて抜かれたとコメント。アロンソはマッサがギヤを傷めていたのではないかとコメント。当然ドライバーはチームオーダーについて否定していました。FIAはこの件は「チームが暗黙のチームオーダーを図った」と裁定、フェラーリに対して10万ドルの罰金を課し、これ以降はチームオーダーは「合法」とするよう改定しました。チャンピオン争いはここでチームとして払った犠牲も虚しく、ご存知の通り最終戦アブダビGPでベッテルが逆転、チャンピオンをプレゼントする形で終えています。

以前からF1でチームオーダーはもっと露骨に頻繁に行われており、スポーツとしては少しガッカリする「黒な面」が多くありました。クリーンなレースが行われるよう、フェラーリがきっかけで2001年に定められたチームオーダー禁止でしたが、早くも2010年にまたしてもフェラーリがきっかけでチームオーダーが解禁されています。ファンとして観ていて残念な事実、でも今は合法。