今シーズンはチャンピオン争いに少し期待できそうなフェラーリ。その名門フェラーリが手の出しようがないくらい安定して強かったのは2000年代前半まで遡ります。今回は以前に書いたF2002と共に驚異的な戦績を誇る2004年型「F2004」を見ていきます。
このマシン、本当に強いです。F1にさほど興味のない生前の父もテレビを観ていた私をチラ見して「またシューマッハか?!」と言うくらいでした。そうです、またシューマッハです。
《設計》
ロリー・バーン
ロス・ブラウン
《外見》
基本は前年のF2003-GAを踏襲したリヤの絞りや小型のギヤボックスを採用しつつも、素材をチタン製からカーボンと混合の構成に変更して軽量化と低重心化、信頼性向上を図っています。特徴的なのは排熱対策で採用されている「チムニーダクト」を本家マクラーレンはエンジンカバー直上に向けていることに対して、このフェラーリは真横に開口を向けています。リアウィングのウィングレットに悪影響を及ぼさない配慮です。同じ排熱対策もプロセスの差か「パクりじゃないんだ、コンセプトが違うぞ」といったところでしょうか。シーズン中盤から採用しています。また、リヤタイヤの消耗に難のある部分はこのF2004でしっかり改善を施してきました。チャンピオン獲得に抜かりないです。
強いマシンを模倣して改良することは日常茶飯事です。チムニーダクトもフェラーリが追従したその例ではありますが、興味深いところは辛勝したF2003-GAの優れた部分をザウバーをはじめとした他チームが2004年シーズンに反映させてきたこと。結果、フェラーリが苦戦した問題に他チームは2004年に味わう形となりました。それがまたこのマシンの好成績へ繋げた理由の一つになりそうです。
カラーリングは前後のフェラーリカラーから大幅に変更されたものはありません。メインスポンサーのマールボロをはじめ、ボーダフォンにシェルと大型スポンサーがマシンにデカデカと入っています。このチームは歴代でスポンサーに困ることはありません。F1は人気商売、強いチームには大型スポンサーがつくし、大型スポンサーから潤沢な資金を受け取れば、開発や腕のいいドライバーも雇えます。
余談ですが、タバコ広告の代名詞マールボロの大元となるフィリップモリスは近い将来紙タバコの製造を止め、電子加熱タバコ「iQOS」に専念する報道がありました。iQOSならばF1をはじめとした広告は出せるのかな?!タバコには違いないから、やっぱりダメかな。マールボロカラーならぬiQOSカラーがあったら、どんな感じになるのか、ちょっと見てみたかった。
《エンジン》
フェラーリTipo053
フェラーリTipo053
V型10気筒・バンク角90度
排気量:2,997cc(推定)
最高回転数:18,600rpm(推定)
最大馬力:880馬力(推定)
最高回転数:18,600rpm(推定)
最大馬力:880馬力(推定)
スパークプラグ:NGK
燃料・潤滑油:シェル
《シャシー》
全長:4,545mm
全幅:1,796mm
全高:959mm
最低車体重量:600kg(ドライバー含む)
燃料タンク容量:− ℓ
クラッチ:ザックス、AP
ブレーキキャリパー:ブレンボ
ブレーキディスク・パッド:ブレンボ
燃料タンク容量:− ℓ
クラッチ:ザックス、AP
ブレーキキャリパー:ブレンボ
ブレーキディスク・パッド:ブレンボ
カーボン・インダストリー
ホイール:BBS
ホイール:BBS
サスペンション:フロント プッシュロッド
リヤ プッシュロッド
タイヤ:ブリヂストン
《ドライバー》
No.1 ミハエル・シューマッハ(全戦)
No.2 ルーベンス・バリチェロ(全戦)
《戦績》
262ポイント コンストラクター1位
(1位15回、2位9回、3位5回、4位1回ほか)
ポールポジション12回
※戦績は2004年シーズンのみ
このシーズンは全18戦あり、2人のドライバーで使用されました。表彰台獲得は最大で36回可能です。1位から3位を足すと29。7回は逃しますが、2人のうちどちらかは表彰台に乗るという「全戦表彰台」を獲得しました。こうなると逆に表彰台に乗らない時を数えた方が早いです。内訳はシューマッハが13勝で第6戦モナコGPのリタイヤを除くと第13戦ハンガリーGPまでに12勝してしまいます。一方バリチェロが2勝で「シューマッハがチャンピオンを確定した後」となる第15戦イタリアGPと第16戦中国GPのみです。結果的にシューマッハは4戦残しの第14戦ベルギーGPで早々とチャンピオンを獲得しています。
この戦績は何を表すか。若いF1ファンからしたら信じられない部分もあるかもしれませんが「優勝すべきエースドライバーと補佐となるセカンドドライバーを「初めから」明瞭に分けていた」ということです。悪い言い方をしてしまうと「シューマッハの相方になると、チャンピオンを目指す権利はない」ことを示しています。これを「絶対にチャンピオンを輩出する手段」と取るか「えこ贔屓、不公平」と取るかは我々ファンの取り方です。バリチェロの前任だったE・アーバイン然り、後任のF・マッサもそれを承知で契約しています。結果的にシューマッハの相方になると強い名門チームで「シューマッハのおこぼれ優勝」の可能性があります。もし皆さんがドライバーだったら、どの選択をするでしょうか?!
贔屓や不公平は別で、特筆すべきレースに第10戦フランスGPがあります。連続優勝をする中、このレースのポールポジションはルノーの若きF・アロンソでした。シーズンを長い目で見たら仮に1レース落としても痛くもかゆくもないタイミングではあります。予選2番手に「甘んじた」シューマッハは決勝で何と4回ピットと敢行、確実に優勝にこぎつける凄ワザをみせました。ピット回数が増えるということは、軽タンクで他車よりさらに多いロスタイム分早く走る必要があります。それをやってのけてしまう戦闘力がありました。
マシンの出来はもちろんのこと、今とは異なる予選方式の「抜け穴」を見出すこと。また巧みなピット戦略を採るなどロス・ブラウンの采配も大きく貢献し、輝かしい戦績と連続チャンピオンを獲得しました。一説には完成度は高かった前作F2003-GAのコンセプトを真似したライバル達がそれと同じ不安定な戦績を招き、信頼性向上の改良を図ったこのF2004に有利に働いた、というものもあります。
翌2005年はこのマシンの改良型F2004Mで迎えましたが、F1の勢力図がガラリと変わり、ルノーのアロンソ、マクラーレンのライコネンといった若手の台頭。ミシュランタイヤとのマッチングに翻弄される形で、残念ながら(内心は安心)シューマッハの6年連続8回チャンピオンは逃す形となりました。
コメント
コメント一覧 (10)
いやぁ、懐かしい!
シューマッハ王朝最期のチャンピオンマシン、まさしくラストエンペラーと呼ぶに相応しいF2004ですね。
あれからもう13年もの月日が流れたと思うと、時の流れとはなんと酷なものでしょうか。
そんなことはさておいて、2004年シーズンはあっけないほどにフェラーリ一色で染め抜かれたシーズンでした。
勝率で言えばここ3年のメルセデスよりも高かったのかも?
前年の混戦具合が嘘のように静まり返ったので、カナダGP以降は結果だけ見て済ますようになってしまったのを覚えています。
ドライバーの実力、チームの開発力と資金力、そして優れたストラテジーとどこから突かれても打ち返せるパワーは憎たらしいくらいでした。
ミハエルがおどけた顔をした上に「Catch me,if you can.」なんて文面が書かれたポスターが貼られたのもこの年でしたでしょうか。
技術陣の努力の成果がワンサイドゲームを生むのは本来賞賛を浴びるべきでしょうけど、見ている側からすると興味を削がれてしまうのはワガママですかね、ヤッパシ。
今年のフェラーリには本当に期待したいですね。
それとミハエルの一日も早い復活を心よりお祈りいたします。
名車シリーズ、いつも楽しく読ませてもらってます。
今後も期待してますので、頑張ってくださいね。
それではまた!
こんばんは。
いつもコメントありがとうございます。
本当に憎たらしいくらい強いマシンでした。
近年のマシン別勝率でいくと、
1 MP4/4 (1988)93.8%
2 W07 (2016)90.5%
3 W05 (2014)84.2%
3 W06 (2015)84.2%
5 F2004 (2004)83.3%
6 F2002 (2002)82.3%
となっています。メルセデスとフェラーリ
ばかりですね(笑)
当時はハッキネン以降の「ガチでやれる相手」
がなく、シューマッハのやりたい放題でした。
その上、相方まで護衛につけちゃうわけ
ですから、F1ならぬ「シューマッハ大会」
になっちゃってましたよね。
(シューマッハファンの方、ごめんなさい)
時は経ち、当時とはまた違うルールと世代、
スキルをもってF1も変化しました。
今年は久々の「政権交代」が期待できます。
盛り上がるシーズンに期待したいですね!
また、シューマッハの回復も願っています。
シーズン中盤で チャンピオンが決まってしまい、鈴鹿は 消化レースでした。
V10エンジンは 片バンクが 5気筒です。
5気筒だと、ピストンの位相差は 何度にするのでしょうか?
参考 … 2気筒 4気筒だと 180度、3気筒は 120度、6気筒は 120度 又は 180度
こんばんは。
確かにこの頃のフェラーリのノーズは
若干垂れた太めのもので重厚な感じでしたね。
以前にフェラーリF1は戦闘機とも
スタートダッシュ対決したことがありました。
V型5気筒エンジンのバンク角ですか。
あまりバイクは詳しくないので調べたら
以前ホンダにあったレース車両は
75.5度だったようですね。
勉強になりました。
写真を見た瞬間に かっこいい!! って思えるマシンです
そして強かった!! 美しいマシンは強い!でしたっけ(?)
2017年の新車発表で観た瞬間に かっこいい!って思ったのは無かった気がする・・・
しかもフェラーリは・・・たしかヤッターマンに似てるらしかった^^; (異論なしです!)
でも頑張ってるしこれからも頑張れそう
もしかしたらそろそろ 美しく見え始めるか!?
エンジンのピストンの 位相角です。
例えば 直列 2 気筒の場合、ひとつのピストンが シリンダー内の 一番上にある時、もう ひとつのピストンは 一番下に あります。
それが 位相差 180度に なります。
5 気筒だと バランスの良い位相差が よく わかりません。
こんばんは。
最近のマシンに見慣れてしまうと、
一昔前がスタイリッシュに見えてきますよね。
近年の見た目のガンはノーズコーンでしょうか。
詳しくは恥ずかしながら解けませんが、
レギュレーションで定まっている高さや
断面積だかの影響もあって中腹にコブができたり、
ノーズ下部の気流の扱いから
「あんな先っぽ」になってしまってます。
さらに今シーズンはシャークフィンに
Tウィングときたものですから、
せっかくのワイドで高横G対応のマシンなのに
あの見栄えです。ちょっとゲンナリですよね。
フェラーリはベースの赤、白や黒のポイント
は変われど、たまーにカッコいいモデルが
あったりします。
ヤッターマンに1票頂きありがとうございます!
あの見慣れない開口をどう表現しようか
少し幼稚な例えでしたが、よかったです!
バンク角でなく、1ピストンの下死点時に
他のクランクのなす角度のことでしょうか?
私は機械工学が専門ではないので
間違えているかもしれませんが、
ストローク数で一工程が決まるはずなので、
一工程の角度を気筒数で割れば
割り出せるものではないのでしょうか?
例えば4ストロークエンジンでしたら
クランクが2周して一工程なわけですから
360°×2=720°=一工程
それを気筒数で割ると、その位相差は
720°÷5気筒=144°
となり、それぞれ144°ずつを5つで分散して
打ち消しあう、とか。
2ストロークエンジンならば、
一工程が360°ですから÷5して72°
今度知り合いの整備士に聞いてみます。
分かればまた回答します。
F2004…
ミハエル。。
この年のDVD持ってます。。。
賛否両論ありすぎですが
私のF1はミハエル。。
すみません。
好き過ぎて
コメントが…
とりあえず
持ち帰らせて頂きます。
シューマッハお好きですもんね!
さすがにお持ちでしたか。
2002年と2004年は思い入れが深そうですね!
たまにブログで「お口が過ぎる」ことが
あるかもしれませんが、
シューマッハは素晴らしいドライバーだと
ちゃんと理解していますから、
怒らないで下さいね!(笑)
またいつでもシューマッハへの想いを
お聞かせ下さい。